追加戦士になりたくない黒騎士くん   作:クロカタ

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お待たせしました。

今回はちょっと長めになってしまいました。
ハクア視点でお送りします。


全てが揃う時 1

 そのとき感じたのはざわつくような得体の知れない不快感だった。

 

 “恐ろしい何かがやってくる”

 

 漠然とした予感のようなものを感じた次の瞬間には、KANEZAKI・CORPORATIONのビルを衝撃が襲った。

 社長が用意していたバリアが作動し、建物こそは瓦解することはなかったけれど、地下にまで届くその衝撃に社に残っていた人たちは一種の恐慌状態に陥った。

 すぐに冷静さを取り戻した私は、途中で合流したシロと共にオペレーションルームへと駆けこむ。

 

「お、大森さん! グラトさん! これは———」

「襲撃です!! 今映像を出します!!」

「よりにもよってレイマがいない時にやってくるとは……!!」

 

 そこにはスタッフ達が社員の避難、防護システムの構築・サポートを行っていた。

 社長の代わりに大森さんがシステム面の指揮を任されているようだけど、様子からしてまずい状況なのは聞かなくても分かった。

 

「シールドバリア! 最初の一撃で七割近くエネルギーが持っていかれました!!」

「我々の……いえ、そもそも想定していたエネルギーとは別種の力です!! 次、同じ攻撃を受ければ本部は建物ごと崩壊します!!」

 

 スタッフたちの悲鳴とも思える声に大森さんと似た真っ白い髪の容姿の女性、グラトは忌々し気な様子で爪を噛む。

 

「……ッ、まずいぞ、マナ。星界戦隊の所有エネルギーはエナジーコアとは異なる代物だ……!!」

「対象の位置を補足して! 撃たれた方向を解析して、そっちにバリアを集中!!」

「敵、捉えました!! 今映します!!」

「!」

 

 暗転していた大画面モニターに本部の遥か上空に滞空している何かを映し出す。

 

「巨大な剣?……いえ、五機の衛星……?」

 

 赤色、青色、黄色、緑色、桃色の五機の衛星。

 巨大なそれらはそれぞれが機械的な剣のようなデザインをしており、見た目だけならば柄も刃に当たる部分も見られる。

 しかし、円を並ぶように配置されたそれらの中心には、混沌とした色を混ぜ合わせたエネルギーボールのようなものが作り出されており、その真下には私たちのいるビルが存在している。

 

「本部を襲った一撃は五機の敵衛星から発射されたもののようです!!」

「まもなく発射段階に移行!! どうします、副主任!!」

「……ッ」

 

 早い……!? さっきの一撃からもう次が放たれようとしているの!?

 これじゃあ、ジャスティスクルセイダーは間に合わない!!

 すると、大森さんの隣にいたグラトが、無言のまま部屋から出ていこうとしていることに気づく。

 

「グラト! どこに行くの!?」

 

 大森さんも気づいたのか、どこか慌てた様子で彼を呼び止めた。

 

「私が二撃目を阻止してくる。今の私でもアレの一撃くらいは止められるはずだ」

「死ぬ気なの!?」

「そのような問答をしている暇はない。私は行くぞ」

 

 ……あの攻撃の威力は素人の私から見ても異常なのは分かる。

 グラトさんだけじゃ無理だ。

 確実に命を落としてしまう。

 

「シロ、いける?」

「……ガゥ」

「ごめんね、かっつんじゃなくて……」

 

 私も先に行ったグラトさんを追いかける形でその場を走り出す。

 

「白川さん、貴女まで……!?」

「勝手なことしてすいません!!」

 

 もう自分だけ何もしないのは嫌だから……!!

 そういう無力感はもう何度も何度も何度も味わってきた。

 

「そんな後悔なんてしたくない……! 私は、私がしなくちゃいけないことをするんだ!!」

「ガゥ!!」

LUPUS(ルプス)DRIVER(ドライバー)!!!!』

 

 シロの目が輝くと私の腕に白色のチェンジャー“シグマチェンジャー”が光と共に現れる。

 

「へ、へんしん!」

Σ(シグマ) CHANGE(チェンジ)

 

 ぎこちない掛け声と共に通路いっぱいに光が溢れ、私の全身をスーツが覆う。

 

TYPE(タイプ) LUPUS(ルプス) Σ(シグマ) FORM(フォーム)!!! COMPLETE(コンプリート)……』

 

 そのまま白騎士への変身を完了させ、非常階段を駆け上がるグラトさんへと追いつく。

 

「ハクア、どうして君まで来るんだ!!」

「私もなにかできることが、あるはずだから……!!」

「しかし……、くっ、口論している時間すら惜しい!!」

 

 一階へ通じる扉をけ破り、社内へと飛び出す。

 まだ人もいるけど、そもそもここからじゃ砲撃を防ぐことはできない。

 せめて、屋上に上がればいいけれど……!!

 

「先ほどの衝撃でエレベーターが停止している! このまま私が蓄えたエネルギーを解放して……」

「そうだ! シロ、バイクって出せる!?」

 

 いつもかっつんが使っているバイクなら一瞬で屋上まで行けるはず。

 私の声にすぐにバックルの瞳を輝かせたシロがその瞳から外へと向けて光線を放つ。

 

LUPUS(ルプス) STRIKER(ストライカー)!!』

RED(レッド) BLASTER(ブラスター) PACKAGE(パッケージ)!!』

 

「へ?」

 

 会社の前に現れたのは白と黒のバイクと、その少し先に現れた赤色のL字型の赤色の機械。

 一瞬、なにが現れたのか理解できなかったけれど、瞬時に頭にそれの扱い方が流れてきた。

 

「え、嘘!? そうやって使うの!?」

「な、なんだあれは? ものすごく嫌な予感がするのだが」

「じ、時間もないししょうがない!! グラトさん、後ろに乗ってください!!」

 

 グラトさんと外に出てバイクに跨る。

 この一年の人生の中で当然バイクに乗るなんて経験は皆無だけど、使い方は教えてもらったしぶっつけ本番で頑張るしかない!!

 バイクを進め、ブラスターパッケージに車輪を固定し、両側面にロケットエンジンを模した機構を取り付ける。

 

「このまま空へと打ちあがるそうです!!」

「恐ろしく不安なのだが!? 大丈夫なのかこれは!?」

「……」

「黙り込むのはやめてくれないか!?」

 

 前輪が上へと向き、そのままバイクごと縦になるように傾く。

 そのタイミングで私はアクセルを回し、全力でエネルギーを噴射し空へと舞い上がる。

 

「わあああああ!?」

「おおおおおお!?」

 

 予想以上の加速でビルの側面を突き進んでいくバイクに絶叫してしまう。

 それでもなお、必死にしがみついていたグラトさんは、息も絶え絶えな様子で私に話しかけてくる。

 

「降りている、時間は、ない!! このまま私がため込んだグルメパワーであの砲撃を相殺する!!」

「グルメパワー!? そ、それって、大丈夫なんですか!?」

「死にはしない!! だが私の蓄えたエネルギーを全て投入したとしてもそれが限界だ!! それでも、時間は稼げるはずだ!!」

「……ッ、空が!」

 

 暗雲に雷が走る。

 なにかを避けるように消えていった雲の先には、五色に輝くエネルギー弾が落ちてこようとしていた。

 それと同時に私は装備されたロケットブースターをパージし、会社の壁面を走らせながら―——勢いに任せて屋上から天高くルプスストライカーを飛び上がらせ、着地する。

 

「来るぞ!!」

 

 空から迫るエネルギー弾を見据えた彼はバイクから飛び降りながら自身の胸に手を当て上空を見据える。

 

「この星の食文化は滅ぼさせはしないぞ!! まだ私は食べたりない!! 食べたりないのだ!!」

「そんな理由!?」

「私が命を懸けるほどの理由だ!!」

 

 すっごい利己的な理由だ———!?

 でも、私も援護しなくちゃ駄目だよね!!

 

「シロ、かっつんが使ってるでっかい武器ちょうだい!!」

「ガゥ!」

GRAVITY(グラビティ)BUSTER(バスター)!!』

 

 手の中に大砲のような大きな武器が現れる。

 っって、なにこれ重ぉ!? かっつん、いつもこんなの軽々と振り回してるの!?

 で、でもこれなら、グラトの助けにもなるはず!!

 

「い、いくよ!!」

Σ(シグマ) CHARGE(チャージ)!』

 

 エネルギー弾へと向けて、大砲の引き金を引く。

 グラトさんと、私の攻撃が同時に空へと打ちあがり———エネルギー弾と空中で激突する。

 

「ぬ、おおおお!?」

「わっ、うわああ!?」

 

 とてつもない衝撃と光が頭上から降り注ぎ、屋上から吹き飛ばされそうになる。

 こ、こんなのビルに直撃したら跡形もなく吹き飛んでいたかもしれない……!!

 下手をすれば、一瞬で何千人の人たちを危険にさらしていたかと考え背筋が凍るような気分にさせられていると、衝撃に耐えきったグラトさんが力なく、地面に倒れ伏したことに気づく。

 

「ぐ、グラトさん!? だ、大丈夫ですか!」

「心配ない。お腹が空いただけだ」

「いや、お腹というより、干物みたいになってますけど!?」

「いいんだ。所詮、エネルギーはエネルギー……真に価値あるものは、私の味覚を通して記憶に刻まれているものなのだ……」

 

 勝手に納得して何言ってんのこの人!?

 なんだかものすごい悟ったことをいっているグラトさんに、ちょっとだけ引く。

 

「それより、早くこの場を離れよう。さすがに次の攻撃までの時間は稼げたはずだ。その間にここの人々の避難を急がせよう」

「そ、そうですね」

 

 今のグラトさんを放置するわけにもいかないし、早くこの場を離れよう。

 そう思いバイクの元にまでグラトさんを運ぼうとしたその時、頭上から五つの光の柱が私たちのいる屋上に現れる。

 

「さすがにそこまで甘くはなかったようだね」

「……」

「ジャスティスなんとかはいねぇのか? ああ?」

「ねえ、レッド! あの子がそうなの? ねえねえレッド!!」

「私、戦うのダルイんだけど」

 

 五人の、戦士。

 ジャスティスクルセイダーとは異なるスーツ。

 とても敵の組織とは思えないヒロイックな姿に一瞬呆気にとられるが、目の前の奴らが星界戦隊と呼ばれる危険な連中と理解したその瞬間、私はグラトを連れてそこから逃げ出そうとする。

 

「イエロー」

「はぁ……」

 

 だ、駄目だ!

 あいつらとは戦っちゃいけない!!

 いくら変身しても実力差くらいは分かる!!

 一人ならまだしも、あの五人を相手にするのは私じゃ無理だ!!

 

「あぐっ!?」

 

 しかし、ビルから飛び降りようとした私の背中に電撃を流されたような痛みが走った。

 そのまま屋上の床に叩きつけられた私は、全身の痺れに苦しむ。

 

「う、ぐぅ……!!」

「貫けない? へぇ、さすがはコア印の強化スーツ」

 

 何かに背中を刺された……!

 幸い、スーツそのものは貫いてはいないようだけど……泣きそうなくらいに痛い……!!

 

「ふむふむ、星将序列072位が寝返ったという情報は真実のようだね」

「……星界戦隊……!!」

「安心するといい、俺たちは別に裏切者の君を糾弾するつもりなんてないさ」

 

 私と一緒に地面に転がったグラトさんを見下ろす赤い戦士。

 頭全体を覆うマスクでその表情はうかがえないが、それがかえって何を考えているか分からなくて不気味だ……!!

 

「俺たちも同じだからさ。気持ちはよく分かるんだ」

「同じ、だと?」

「ああ、同じ。俺達は俺達を選んだ“外なる意思”を裏切り、こちら側についた。地球の言葉では、“同じ穴の狢”というものかな?」

 

 身体の痺れが抜けてきた……。

 このままこいつが悠長に長話を続けていれば、ジャスティスクルセイダーも到着するはず。

 

「しかし、誰が責められようか。誰か分からない者たちのために戦いを強いられ、得なんて一つもない」

「誰かに感謝されることもなかったしねー」

「逆に攻撃されたこともあったよな!」

 

 揚々とそう語るレッドにピンクにグリーンに、得体の知れない気持ち悪さを抱く。

 ブルーの方は変わらず沈黙しているけど、イエローの方は我関せずと周囲を見回している。

 

「だから俺たちはつく側を変えたんだ。殺されそうになっていたし、しょうがないだろう? 誰だって死にたくないし?」

「———ざ、けるな」

「ん? なになに? 聞こえないぞ?」

「ふざけるなぁ!!」

 

 弱弱しくも衰弱したグラトさんがレッドに怒鳴る。

 その剣幕に一瞬驚きの表情を浮かべたレッドに、彼は続けて罵声を叩きつける。

 

「自分を裏切ったお前達と、私を一緒にするな!」

「どういうことかな?」

「どういうこともなにも言葉通りだ! この私の食への探求心を、汚らしい承認欲求と混同させるな! 貴様たちのそういうところが私は——」

 

 グラトさん……!

 それ以上刺激しちゃ駄目!!

 

「虫唾が走る!!」

「あ、じゃあ、君はいらないや」

 

 前触れもなしに、興味を失った赤い戦士が無造作にグラトさんの胸に剣を突き刺した。

 驚愕に目を見開いたグラトさんの血が、私のマスクの右目部分にべちゃりと飛び散る。

 

「グラト……さん?」

「が、ふ……!?」

 

 刺された。

 目の前で、グラトさんの心臓に剣が突き立てられた。

 血も流さず、そのまま白い結晶のような姿へと変わっていく彼に呆然となった後に、私はすぐに我に返った。

 

「……んん? 結晶化? いや違うな、これは面白い生態だなぁ、72位だけはある」

 

 殺された。

 仲間を、殺された。

 これまで一度も感じることのなかった恐怖と震えが私の身体を襲い掛かる。

 

「あぁ、悲しいなぁ。でもしょうがないよ。俺達の敵は殺さないといけないんだ。折角、仲間になれると思ったのに……!!」

「あんなの仲間にいれてどーすんだよ!!」

「私はレッドがそれでいいなら、文句ないよ!!」

「……胸糞悪……こいつら皆、はやく死んでくれないかな……」

 

 痺れはほとんど消えてきていた。

 それでも動けない。

 彫刻のような姿に変質してしまったグラトさんを前にただただ絶望するしかなかった。

 

「さて、次は君だ!」

「……ぅ、あ……」

 

 グラトさんの死体にも目もくれずに倒れている私を見るレッド。

 駄目だ……終わりだ。

 やっぱり、かっつんがいてくれないと、私駄目だ……。

 

「そうじゃないでしょ、私……!!」

 

 かっつんは、いつもこんな中で戦ってきた。

 いつ死ぬかも分からないのに、顔も知らない誰かのためにずっと自分の身も顧みずに。

 

「時間を、稼ぐ。私に、できることをする」

「ガゥ!!」

Σ(シグマ) SABER(サーベル)!』

 

 手の中に現れたシグマサーベルを握りしめ、それを杖にして立ち上がる。

 いつまでも打ちひしがれてちゃ駄目なんだ。

 ここで死ぬ気でこいつらを足止めして、アカネ達とかっつんが来るまでの時間を稼ぐ……!!

 

「見たところ、スーツの性能は俺達と同等程度かな? 全然使いこなせてないけど、使いこなせればすぐにいい戦力になりそう」

「……こいつ、どうするのよ」

「それに、白って色がいいよね!! 俺達にはない色だ!! 仲間にしたくならないかな!?」

「……そう。……今のうちに殺してあげた方が幸せかも

 

 仲間になる……!? 冗談じゃない。

 こんな奴らの仲間になるなんて死んでも嫌だ。

 しかし、私の感情とは別に、サーベルを握る手が震えてしまう。

 

「かわいそー。怯えてるじゃん。どうする? どうする? レッド?」

「抵抗されると、邪魔になるし適度に痛めつけて、船に連れて行こうか。ピンク、頼めるかな?」

「いいよー! レッドの頼みならなんでも聞いちゃうっ!」

 

 無邪気な振る舞いと共にピンクが前に歩み出てくる。

 他の4人は後ろで見ているだけなのかは分からないけど、それでもまだ絶望的な状況には変わりない。

 

「今日は我がかつての宿敵も来てくれているからね。格好悪い姿は見せられないよ。さあ、これから地球のヒーロー、ジャスティスクルセイダーを迎え撃つ準備をしよう!!」

 

 ピンクが両手に武器のようなものを出現させる。

 それは、機械的なデザインの刃がノコギリのような形状の双剣。

 ぎゃりぎゃりと耳障りな音を立て、それでも変わらない明るさで近づいてくるピンクが、どうしようもなく怖くなってくる。

 

「痛めつけるっていったけれど、どれくらいなのかな?」

「っ……」

「腕かな? 足かな? あ、でも私、レッドが好きだから、どばーって血がたくさん出るようにしよう! そうしよう!!」

 

 なにこのやべぇやつ。

 恐怖以前に、私の正気がなくなりそうだよ……!?

 

「嫌だ……」

 

 会いたい。

 今この場にいない彼に会いたい。

 声が届かなくてもいい。

 幻覚でもいい。

 この、どうしようもない絶望的な状況にいるよりも、私は……。

 

「かっつん……助けて……」

「手元が狂うといけないから、抵抗しないでねっ!」

 

 振るわれる二刀のノコギリを前にして、サーベルを構える。

 それでも、諦めかけたその時———私の視界に赤い線のような何かが走った。

 目の錯覚、と認識した次の瞬間には、私に武器を向けようとしていたピンクの両腕の肘から先が消え失せていた。

 機械で構成された部品と、燃料のようなものを噴出させたピンクは不思議そうに首を傾げた。

 

「あれ? ……私の腕は?」

 

「こいつのことか?」

「あ、うん! ところで君は誰?」

 

 両腕を失ったピンクの傍に立っていた黒い戦士が、無造作に持っていたピンクの両腕を放り投げながら——、

 

お前らの敵だよ

 

 ——強烈な蹴りを腕を巻き込みその胴体へと叩きつけ、空へと打ち上げた。

 

「あ、返し——」

もう必要ないやろ

 

 そんなピンクを上から降ってきたイエローが斧を叩きつけ、ピンクの脳天から真っ二つにし落雷と見間違えるほどの電撃で燃やし尽くしてしまった。

 

「……ぁ」

 

 目の前に立っている黒い仮面……黒騎士を見て、足の力が抜ける。

 

「おっと、無事か?」

「あ……あ……」

 

 身体を支えられ、ゆっくりと座らせられる。

 この声を間違えようもはずがない。

 

がっづんぅ……ざびしがったよぉ……

「ガッズン!? ま、まさかそれが記憶を失った俺のコードネームなのか……!? ……悪くねぇな……」

「悪くないんだ……」

 

 そういう天然なところもかっつんだぁぁ……。

 感情が抑えられず泣き出してしまう。

 我ながらみっともないと思う。

 でも、抑えきれないくらいに彼という存在が傍に居ることが嬉しかったのだ。

 

「ッ!!」

「わっ!?」

 

 私の前に立ったかっつんの腕がブレるように一瞬消え、軽くのけぞる。

 え、な、なに!?

 不思議そうに首を傾げた彼が、掌を掲げるとそこには針のような形状をした弾丸のようなものが存在していた。

 

「……なんだこれ」

「ッ、回避不能の跳躍弾を掴み取った……!?」

 

 あっちのイエローが銃のようなものを構えて驚いている。

 ということは、かっつんは攻撃を受けたってこと?

 

『直撃するまで空間に現れない攻撃だと思う! 空間の揺らぎで直撃個所を割り出―——』

「なら、直撃してから防げばいいだけだろ!!」

『そうと思ったけど、その方が速いよね!! うん!!』

 

 私がさっき食らった攻撃があれ、なの?

 今のかっつんが直撃するまで気づけなかったということは、そういう特殊な攻撃ということになる。

 ……無傷で掴み取っているけど。

 

「一応、言っておくが今の俺は無茶苦茶、ものすごく頭にきている。自分でもよく分からねぇし、我ながら理不尽だと思うが……今から、お前ら全員原型を残さねぇから覚悟しろ」

 

 弾を地面に投げ捨てぐるんと腕を回すかっつん。

 見て分かるほどの怒気を滾らせた彼は、傍で斧を肩に担いでいるイエローに話しかける。

 

「きらら、こいつらの処理は任せろ」

「う、うん! あと、今はイエローって呼んでね……?」

「おっとそうだな。悪い、気を付ける」

「えへへ……うん……」

 

 ……は?

 なんでそんな親し気?

 いつからそんな距離感狭まったの?

 きらら、君、今日まで何してた?

 

「イエロー、なにか私に言うことある?」

「あ、あれぇ、どうしたんやろ。なんか敵よりもすごい圧が後ろから……」

 

 いや、今は騒いでる場合じゃない。

 グラトさんが殺されてしまったのだ。

 その事実だけを伝えなくちゃ。

 

「イエロー、グラトさんが……!」

「それについては心配いらないって、今司令から連絡が来たから」

「だ、大丈夫って……」

「それより、今は目の前の敵に集中!!」

 

 ッ、かっつんの出現で攻めてくる様子を見せなかった星界戦隊が動きを見せた。

 レッドが背中を押すように現れたのは、緑のスーツを纏った戦士、モータルグリーン。

 そいつは棍棒のような武器から怪しい光を放つ。

 

「腐食しろ、クァ・テル———」

 

 グリーンが光の放つ棍棒を地面に突き刺し、何かをしようとする。

 な、なにか攻撃してくるの!? とにかく、防御しなくちゃ……!!

 

「——アンゲッ……!?」

「わざわざ技名、叫んで隙晒してくれるなんて、嘗めてんのか?」

 

 かっつんの呆れた声が聞こえると同時に傍にいた彼の姿が消え、グリーンの胸と頭部を消し飛ばし、レッド、ブルー、イエローの前に立つ。

 続けて間髪を容れずに振るわれる三度(・・)の拳。

 それらをかろうじて目で追い、戦慄する。

 

生身(・・)なのは一人だけか。大したことねぇな、負け犬戦隊」

「やっぱりお前は宿敵だ!! さあ、戦いを始めようじゃないか!!」

 

 ものすごい興奮した様子のレッド。

 他の二人も同じかと思いきや、ブルーは無言、イエローはその場から全力で後ろに下がった。

 

「イエロー!! まだ撤退には早いぞぉ!!」

「……ッ、や、やばかった。死ぬところだったじゃない……!」

 

 地面に膝をつき肩で息をするイエローに呆れた様子のレッドだが、見ている私からすれば未だに気づいていないレッドに呆れるしかない。

 

「あんたら、不死身だからって危機感なさすぎよ!! さっさとその風穴(・・)開けられた体を入れ替えて戻ってきなさい!!」

「———え?」

 

 レッドとブルーの胸に開けられた拳大の穴。

 それを認識したレッドはがくんと膝から崩れ落ちた。

 

「は、はは、前回よりも強化したはずなのにまだ及ばないのか。でもまだ次に―——」

「次なんてあると思ってんのか?」

「!」

 

 膝をつくあっちのイエローを無視し、かっつんは頭上を見上げる。

 遥か空には衛星のように浮かぶ、五本の剣を模し機械のようなもの。

 

「お前らの本体なんてとっくにプロトがお見通しなんだよボケ共が。つまり、こっからあの仰々しい乗り物にいるお前らの本体をぶっ倒せば、二度と復活できないってことだよなァ?」

「ま、待ってくれ!!」

今度はテメェのおうちを破壊してやるぜぇ!!

 

 どこからどう見ても悪役全開なセリフと共にかっつんが空に拳を突き出し、赤色の閃光を放つ。

 原理も何もかもが滅茶苦茶な拳により放たれたビーム。

 それらはまっすぐに空へと突き進み———、

 

HAJIKERO

 

 ———まるで何かに弾かれるように、直撃する直前で霧散してしまう。

 何が起こったか理解できない私に、かっつんが警戒するように拳を構え空を睨みつける。

 

「!」

「は、はは、そうだ。彼がいたんだった!! いや、危ないところだった!!」

 

 空からまた別のなにかが下りてくる。

 まるで階段を降りるように空気に足をかけ降りてきた新たな異星人は、黒い生物的な鎧と外套に身を包んだ……黒騎士に似た姿をしていた。

 しっかりと目視できる位置にまで降りてこようとしたその人物に、レッドはやかましく喚きたてる。

 

「彼こそは我が星界戦隊のかつての宿敵であり、今や共に戦う同胞!! 序列はち―——」

 

 不意に、空から流れ星のように落ちてきた黒色の剣がレッドの頭に突き刺さる。

 貫通し、胴体ごと真っ二つにされたレッドの傍に降り立った男に、あっち側のイエローは恐怖に震えた声を漏らす。

 

「ひ、どうして、あんたが……」

KUDAKE

 

 なんらかの言葉と共に黒い剣が光を放ち、貫いたレッドの肉体を粉みじんに分解する。

 よく見なくても……やばい奴だ。

 さっきのピンクなんてめじゃないくらいに。

 

「名を明かす必要はない。序列も明かす意味がない。それに値する者かは、私の目で見極める」

 

 剣を引き抜き、鞘に納めた黒い戦士がかっつんへと向き直る。

 

「黒騎士、同じ異名()で呼ばれる者よ」

「……あぁ? なんだ?」

「問いかけを一つ、よろしいか」

「え? あ、おう……」

 

 思ったよりも丁寧な質問に応答しちゃった!?

 なんでそういう変なところで律義さを発揮するの!!

 

「なぜ……」

 

 どんな質問が飛んでくるの……!?

 全然、分からずきららも警戒した様子を見せる。

 やや、間延びした口調でそいつは続きの言葉を口にする。

 

「剣を使わない?」

「えっ?」

 

 ……はい?

 

「黒騎士なのに」

「「「……」」」

 

 ……。

 それは、今の状況で聞くべき質問なのか逆に聞きたい……!!

 いったいこのあっちの黒騎士はなんなの……!?

 

 




作中誰もツッコまなかったことをツッコむド天然なあっち側の黒騎士でした。

星界戦隊は割とギリギリなメンツって感じです。
レッドとピンクが特にやばい……。
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