お待たせしました。
最初は、きらら視点
中盤は、ジェム視点
後半は、モータルイエロー視点となります。
襲撃から三日。
私たちの日常はあっという間に元の姿を取り戻しつつあった。
まず、星界戦隊に瀕死の重傷を負わされ結晶化したグラトは、翌日に社長が無理をして行った“カツミ君復活パーティ”にて出された大量の料理を前にして無事に復活を果たした。
『おなかへった』
『ナツがちっちゃくなってるぅぅ!?』
『省エネもーどだ』
……まあ、子供くらいの大きさになっていたけど。
グラトにとって食べることそのものが生きること、という事実を改めて認識させられながらも彼とカツミ君の復活をスタッフと共に祝った。
その後は社長は事態の後処理に追われている。
半壊したビルで働いていた社員たちのケアと、場所が判明してしまった本部の代わりになる場所を用意したりだとか、聞いているだけでも大変そうなことを行ってくれているようだ。
『無用な心配は必要ナッシング!! この天才、あらゆる可能性を考えている天才なのだ!! 貴様らは心配せずにいつも通りの日常を過ごすがいい!!』
と、まあこんな感じで私たちはなにもすることがないのだが……。
「辞世の句を詠め、介錯してやる」
「掟は絶対。守れておらぬぞ」
「きらら、信じてたのに。私は悲しいよ」
カツミ君をうちに匿っていた事実を仲間に知られてしまった今の状況の方がやばい。
現在いる場所は私の家の部屋。
遊びに来るという名目でカツミ君に会いに、加えて私に天誅を下しにやってきたアカネと葵と白川ちゃんの前に私は正座をしたまま肩を震わすことしかできない。
「まあ、隠してたのは駄目だよねー……」
三人を前に正座をしている私を気の毒そうに見ているアルファ。
元は妹たちと住んでいた部屋なので五人いたとしても全然狭いというわけではないが、この絶望的なアウェーな状況では息苦しいことには変わりない。
「何言っているのかな?」
「ひょ?」
「カツミ君と失踪して碌な連絡も寄越さなかった君は次だよ?」
「……」
笑顔のアカネの顔を見て途端に肩を震わすアルファ。
まあ、あの子の場合はななかに見つけられなかったらずっとカツミ君と隠れているつもりだったらしいからなぁ。
「その前にきららだね」
「証拠は挙がっているんだよ? 彼を匿っている間、どんなイベントを経験したのか白状して」
「ぐ、うぅぅ……」
バレたらもっと酷い目に遭わされる。
一緒にゲームしただとか、朝起こしてもらったりだとか、多分その時点でこの嫉妬の権化共は私を絶対に許しはしない。
「出来心でした……とでも言うと思うたかァ!!」
「「!?」」
突然声を荒らげる私に驚愕する二人。
それに構わず立ち上がった私は、足が痺れて倒れかけながら指を突き付ける。
「あんたらも同じ立場になったら絶対私と同じことしたでしょ!!」
「それは……ッ」
「否定、できない……!?」
「いや、してよ。なんで正義の味方三人が駄目な方向で突き抜けてんのさ」
図星を突かれたアカネと葵に至極真っ当にツッコむ白川ちゃん。
「白川ちゃんには言われたくないよね?」
「真っ先に屈した人のツッコミは違いますね」
「ごめんなさい……」
そうだよ、立場が同じならきっとこいつらは同じ手段をとる。
最早、これは確信だ。
てか、二人の言う通り白川ちゃんもよく考えなくても私と同じことをしているのでこっち側だ。
「私はちゃんと社長に連絡したからね!」
「でも私たちに隠してたことは事実だよね?」
「黙っていたってことは後ろめたいって気持ちがあったからだよね?」
「はい……ごめんなさい……」
一瞬で撃沈し正座しなおす。
いくら開き直ろうとも仲間に嘘をついた事実は変えようがない。
「今日のために罰ゲームを用意してきたの」
「用意したものがこちらになります」
料理番組のようにどこからともなく箱を取り出す葵。
くじ引きの箱……?
それに手を突っ込んだアカネが一つの紙を取り出し、広げる。
「ふふふ、これは最初からとんでもないのがきたね……」
え、な、なに……?
怯える私にアカネが紙面を読み上げる。
「小さい頃のアルバムをカツミ君に見せる」
「……あ、それなら別にいいよ。もう母さんに暴露されたし」
「君のお母さん大丈夫!?」
まさかのアカネに心配されてしまった。
もうそれくらいの酷い所業をされた事実に葵も珍しく引いている。
そんなやり取りをしていると、私の部屋の扉がノックされる。
「あ、カツミ君? どうぞー」
「へぇ、ノックする音でカツミ君って分かるんだね……?」
「罪状を一つ追加っと」
しまった……!
ナチュラルに返事をしてしまった。
私の声に、扉を開けたカツミ君はその手にお盆に乗せた飲み物とお菓子を持っている。
「コヨミさんがお前たちにだって。……なにしてんだ?」
カツミ君の視線は部屋の真ん中で正座させられている私へと向けられている。
助けを求めようとすると、それより先にアカネが彼に話しかける。
「ゲームしてたんだ。今はその罰ゲーム中」
「そう、なのか?」
「あ、そうだ。カツミ君、ここに居候している時、なにかあったかな?」
!? い、いったいなにを……!?
「なにか? いや、お世話になってるだけで特になにも?」
「えー、本当にー? きららを朝起こしたとかそういうものでもいいんだけどなー」
「ああ、それならコヨミさんに頼まれてな」
ぎろり、とカツミ君から見えない角度でアカネと葵の視線が向けられる。
「まあ、それはアルファで慣れてるから別にって、感じだったけど」
「ひんっ……」
いきなり話の矛先が変わってかわいらしい悲鳴を上げるアルファ。
私としては助かったという心境だ。
「こいつ、うちのボロアパートに住み着いた頃から、結構だらしなかったんだぞ? ほっといたら昼まで眠っているような奴だったんだ」
「ハクアもそうだよねぇ! カツミ!!」
「姉さん!?」
これ以上の暴露を防ぐためにアルファが白川ちゃんを売り払った!?
「確かになぁ。記憶を失っていたとはいえ、放っておいたら駄目だって思うくらいの生活してたしなぁ。飯なんて自分で作ってなかったもんだから、俺が作ってたんだよな」
「テリョウリ?」
「……ハイ」
片言のアカネに消え入りそうな声を漏らすハクア。
やばい、私もアルファも白川ちゃんも全方位に被害が出始めている。
「そろそろ戻るか」
「え、もっと話そうよー」
「いや、俺までいたら狭いだろ? リビングでななかとこうたとゲームしてるし、そっちにいるわ」
「へー、何やってるの?」
ゲーム好きの葵が興味津々といった様子で尋ねる。
「今、ボードゲーム系のテレビゲームやってんだ。なんか、ぼんびー? ってやつをつけられてさ。すっげぇ良いところなんだ」
それは全然いいことじゃないよ!?
むしろ凶兆だよソレ!?
うわあ!? ゲーム知識ほぼ皆無だから何が起こっているか理解できていないんだ!?
この後のカツミ君の悶絶する姿が容易に想像できてしまう。
「拙者、パーティゲーム大好き侍。義によって助太刀いたす」
「なんだその口調」
驚くほどの決断の速さで立ち上がった葵。
その様子を見た彼は、少し考える素振りを見せた後に私たちを見る。
「葵だけ来るのもなんだし、皆でやるか?」
思わず顔を見合わる。
少なくとも、たった一人で戦っていた時の彼ではこんなことは言わなかった。
でも、記憶を完全に取り戻した彼が誰かと行動を共にすることを自分から言い出したことは、疑いようもなく彼が変わることができた証とも言えた。
「「「やる」」」
その場にいた全員が頷いたのを見て、カツミ君が不敵な笑みを浮かべる。
「フッ、誰が来ようともゲームでは負けないがな……!!」
いや、現状で君が一番窮地に陥ってそうなんだけれども。
教えてもよかったけれど、なんだか面白そうだったので、あえてそれは言わないでおくのだった。
我慢できなくなった姉がバイオスーツから飛び出して完全復活した黒騎士へと向かっていった。
正確に言うのならば、かつての力を取り戻した白騎士というべきだが、今や黒騎士も白騎士、本当の意味でどちらの名を持つ戦士へと覚醒を果たした。
まあ……強いということは分かっていたがまさかあの姉を地球外に力技で追放するまでの力だとは思いもしなかった。
その後の、我らがボス……ルイン様と黒騎士の邂逅を見て、俺の仮説と行動は正しいことも証明された。
「いや、本当に早めに負けておいてよかったな。MEI」
「まさしく慧眼でした。戦う時期が少しでも遅れていれば、私も貴方様も今頃ここにはいなかったことでしょう」
都市郊外の高層ビルの屋上で、俺とMEI、そしてサニー様はいた。
俺とMEIはともかく、まさか序列3位のサニー様まで同行するとは思いもしなかったが……このお方は自由すぎる姉とは比べ物にならないほどに常識人な方だ。
俺たちの会話にサニー様は微笑まし気な笑みを浮かべる。
「そうねぇ。地球の守護者たちと戦い散っていった侵略者のことを考えると、貴方が一番状況を見ていたと思うわ」
「正直、戦闘データを見た瞬間に勝てない、と思いましたね。それくらい異様な集団ですよ」
例えを出すなら、地球で最初に確認されたという怪人“クモ怪人”と呼称されたそいつも序列二桁クラスの化物だ。
六本の腕から様々な形状、粘性の糸を作り出すことで捕縛から斬撃まで多数の攻撃手段を持っていた怪人だが、そいつが力を発揮した時には都市部の一画を糸の斬撃にて細切れにするという被害をもたらしたそうだ。
そんな相手に黒騎士は、初めての実戦にも関わらず圧倒しその拳でとどめを刺した。
その映像を見ただけで機械の身体で感じるはずのない寒気が走ったのは今でも記憶に新しい。
あれは本当に地球人なのかと疑いたくなるが、実際のところは俺にも分からない。
「サニー様はルイン様が黒騎士に……その注目していたのはご存じだったのですか?」
「ええ、知っている者がそれほど多くはなかったけれどね。私も半信半疑ではあったけれど、実際に目にすると納得しちゃったのよね」
序列二桁といえども末端同然の俺でもルイン様がどれほど規格外な存在なのかはよく知っている。
……だが、一番ありえないと思っていた仮説がドンピシャに当たるとは……うーん。
……ん?
「来たわね」
「MEI」
「はい。バイオスーツを用意しておきます」
頭上からの気配に顔を上げる。
空で星のように輝いた光は徐々にこちらに近づいてきたエネルギー体、レアムはゆっくりと減速しながらビルの屋上へと着地してくる。
「んー! ようやく帰れたー!!」
「レアム様、スーツです」
「お、ありがとー!」
バチバチと電撃をまき散らすレアムにMEIがバイオスーツを渡す。
空気の抜けたマネキンのようなそれに、レアムが入り込むと一瞬にして体表が地球人のソレに近いものへと変わる。
金色の髪に、同じく金色の瞳を持つ少女。
エネルギー体になる前の人間だった頃の姿へ変わったレアムは、すぐにその場で大の字に寝転がった。
「あー!! 楽しかったー!!」
「まずは服を着ろォォォ!!!」
バイオスーツに着せていなかったのはこちらの不手際だが微塵も気にしないのはおかしいだろ!!
一切の恥じらいのないレアムに、怒ると奴は口を尖らせる。
「いやぁ、私常時全裸みたいなものだし、今更服ってなー。面倒くさくない?」
「前にも言ったが、地球では捕まるからちゃんと服着ろ!! つか、大抵の星では公共の場で全裸は許されてないんだよォ!!」
「ぶー」
ぶつくさと言いながらMEIに渡された服に袖を通すレアム。
こ、この姉の適当さ加減は割と肉体があった時から変わってないが……。
「苦労しているわねぇ。ジェムちゃん」
「はい……」
「でも微笑ましいわねぇ」
楽しそうに俺とレアムのやり取りを見ていたサニー様が、服を着た彼女に声をかける。
「レアムちゃん、カツミちゃんとの戦いはどうだった?」
「楽しかったわ。初めてよ、あそこまで攻撃されたの。でも次は同じ技は食らわないわね。もっと長く楽しみたいもの」
腰まで届く髪をゴムで括りながらサニー様と会話するレアム。
……、生きている実感か。
戦闘の最中にレアムが嬉々として叫んだ声。
エネルギー体となってしまったレアムが望んでいたものがそれだったとは……。
いや、おかしな話でもないのか。
不満に思っていないはずがないのだ。
望まずに肉体を失ってしまい死んでいるか生きているか、その境界があやふやになってしまった彼女が、生きているということを実感したいというのはある意味で当然の思考とも言える。
「分かっていると思うけど……」
「ちゃんと理解しているって。地球は壊さない。まあ、ここの食文化とか好きになってきたし、気長にやるとする」
地球で言うツインテールのような髪型にさせたレアムは、屋上の縁に腰かけ足を組む。
妙に様になっているあたり非常にムカつく。
「このバイオスーツも結構気に入っていることだし」
「レアム……」
「ジェムも今度からあんな趣味の悪いゴテゴテしたものじゃなくて、こういう可愛いものばかり作ればいいのに」
今なんつったこいつ。
「俺の作品を趣味が悪いだと! この電気ナマコ特攻生命体がァ!!」
「ご主人様、落ち着いてください!! ご主人様は喧嘩でも腕力でもレアム様には勝てません!!」
なぜ俺は頼れる従者にすらボロクソに言われなきゃならんのだ!?
くっ、事実だけに反論できない……!!
頭脳なら絶対勝ってるのにィ……!!
「で、あんたもそうなの?
「!?」
レアムの向いた方向には、屋上の壁に背を預けるように座っている女性がいた。
地球人ではありえない、紫色の髪に毛先が赤みがかかっている長髪と、見て分かるくらいの高めの長身。
え、く、黒騎士? 地球の……じゃないということは……。
「サニー様、もしやこの方は……」
「ええ、八位のイレーネちゃんね。ついさっき到着したのよ」
ということは俺だけが気づいていなかったということか。
無理もないが、この場に序列一桁が三人も集まっている事態に、場違い感がいなめない。
「レアムちゃんは地球で大人しくするようだけど、イレーネちゃんはどうするのかしら?」
「んー……」
ぽわー、と中空を見上げるイレーネ様。
十秒、一分と間を空ける彼女に、おかしな空気になる。
ようやく言葉を口にしようとしたのか、彼女はサニー様へと顔を向ける。
「黒騎士の名前って、カツミっていうの?」
「今その質問してなかったわよね……!? えぇと、そうね。黒騎士の名前は穂村克己って言うのよ?」
「覚えた。それで、カツミはどこにいるの……?」
「因みに聞くけど、どうするのかしら……?」
再び、ぼんやりと思考に耽った彼女は今度はすぐに返答する。
「ちょっと捕虜になってくる」
「駄目に決まっているでしょ!? あ、貴女は私達と行動しなさい! 目を離すと大変なことをやらかしそうで怖いわ!?」
ものすごい動揺するサニー様と、マイペースすぎるイレーネ様のやり取りを見てから、姉を見る。
……うーん。
「八位を見てると、レアムがまともに見えて……いや、ないな」
「ちょっとどういうこと?」
「ぐ、あ、く、首を絞めるなァ……構造は地球人と同じなのだぞォ……!」
首に腕を回され閉められる。
や、やっぱりまともではない!
ME、MEI! た、助けてくれぃ!
「はぁ……イレーネちゃんも合流できたのはいいけど、問題は星界戦隊よねぇ」
「ごほっ……彼らは序列14位のモータルピンクが機能的な損傷を負ったので当分は活動できないのでは?」
「私が懸念していることはそういうことじゃないのよ」
そういうことじゃない?
レアムから解放されせき込みながら、サニー様の言葉に首を傾げる。
「勝利にこだわるあまり、大きな過ちを犯さないか……それが心配なのよ」
「大きな過ち?」
「極力、手は出したくないけど、場合によっては干渉する必要があるかもしれないわね」
いったい、なにを懸念しているのだろうか?
いや、あの星界戦隊だ。
今の状況を動かそうとするためならばどんな手段を使ってもおかしくない。
星界戦隊は20位から11位に位置する変わった序列にある。
勿論、実力を評価され与えられた序列ではあるが、その区分は11位から15位までを私達個人の序列として扱われ、16位から20位までがそれぞれの母船である五機の“星界剣機”にあてがわれている。
その星界剣機こそが私以外のメンバーにとっての本体であり、彼らを不死身たらしめている重要なものとも言えた。
「ピンクは当分無理そうね」
先の戦闘でピンクは完全復活を遂げた白騎士の攻撃を受け、本体に絶大なダメージを受けた。
その修理を任されていた私は、連結された星界剣機の船のメインルームにて、リーダーであるレッドにそれを報告していた。
いくら狂ってしまったレッドでもこれ以上の戦闘は無意味なのは分かっているはずだろう。
黒騎士、それにジャスティスクルセイダーは疑いようもなく強かった。
「地球から手を引きましょう。このまま戦っても無意味よ」
「……」
「無理に地球をどうにかしようとすれば、ルイン様の怒りを買うことになる。そうなる前に私たちはさっさとここを離れるべきよ」
仮に地球を滅ぼそうとすればそれをする前にルイン様が私たちを滅することだろう。
……いや、既にこの会話そのものも聞いているのかもしれない。
「いいや、地球から手を引かない」
「……あんた、分かってるの? どう戦っても黒騎士にもジャスティスクルセイダーにも勝てないっていうの」
「それは足手纏いがいたからだろう?」
———ッ!?
足手、纏い?
今、レッドの口から出た言葉に動揺する。
「そろそろ入れ替えようかなって思っていたんだ」
「……は?」
「ああ、勿論、イエロー、君は必要な存在だ。心配することはないよ。グリーンも、先の戦いでは活躍できなかったがそれは相手が悪かっただけだ」
レッドの視線が半壊した桃色の星界剣機へと向けられる。
「もうピンクは駄目だろう」
「……。その言葉の意味を、分かっているの?」
「なにがかな? ピンクはもう星界戦隊として役には立たないって言っているんだ」
ピンクは、あんたのことが……。
誰のためにピンクがあんなことになっているか分かっていないの……!?
レッドは失望の目をピンクの船に向けながら、次に青色の船を見る。
「ブルーは親友だからずっと我慢してきたけど、彼ももう駄目だ。使い物にならない」
「あんたは……!!」
「君も見ていられなかっただろう? 狂った兄を見ているのは? ここで終わらせた方が彼のためになるんじゃないのかな?」
手元に銃を転送し、その銃口をレッドへと向ける。
意味はない。
それは分かっていても抑えられなかった。
「よりにもよって、あんたがそれを言うの!! 今までバカで愚かなあんたを支えてきたはずの仲間を、あんたはゴミのように見捨てるっていうの!?」
「見捨てるんじゃない。入れ替えるんだ」
どう違うって言うんだ。
もう自分が矛盾したことを言っている自覚すらないレッドに嫌悪感しか抱けない。
銃口を向けられても尚、私に敵意すら見せない奴はそのまま手を広げ雄弁に語りだす。
「ピンクとブルーの代わりを見つけよう。もっと強い奴を。そうすれば俺たちはより強くなれる。分かってくれイエロー、これも悪に打ち勝つためなんだ」
「……ッ、どの口が言うのよ」
もうレッドは駄目だ。
来るところまで来てしまった。
自身の中でレッドの行動と言葉を決別ととらえた私は、銃の引き金を引———、
『もしもーし、星界戦隊の皆さん、おりますかー』
「「!!」」
船に響く場違いな声。
それと同時に船のすぐ傍に、一瞬で現れる“反応”。
すぐに傍らのコンソールを操作し映像を映し出すと、宇宙空間から空間から溶け込むように宇宙船が現れた。
「君は誰かな?」
レッドが返答をうながすと、すぐにモニターにあちらの船から交信を持ちかけてきた者の姿が映り込む。
そいつは、ショッキングピンクの装甲を身にまとった、サソリを連想させる外見を持つ仮面の戦士。
『初めまして! 序列46位のヒラルダでーすっ! 今日は星界戦隊の入隊試験にやってきました!!』
ヒラルダ……。
先に地球に降りていた序列持ちの一人。
あまりいい噂は聞かないが、実力を隠していることで有名な奴……だったかしら。
どちらにしてもこちらの状況を見越したようなタイミングでやってきたからして、警戒するべき相手だ。
「へぇ、俺たちの会話を盗聴していたってわけか」
『はい! それだけの技術力があるので隠しませんよー! むしろアピールポイントですよねー!』
取り繕ったような口調と喜色の声を発するヒラルダにレッドが笑みを浮かべる。
「面白い、気に入ったよ。目的は星界剣機かな?」
『ご名答でーす! さすがに船と同一化なんてキモいことはしませんが、船は欲しいので来ましたー!』
「君は本当に運がいい。こちらに招こうじゃないか」
『ありがたき幸せー!』
ああ……駄目だ、もう反対しても無駄だろう。
今のレッドは地球の戦士たちへの憎しみに憑りつかれているから、ただでさえまともじゃない判断力がさらにまともじゃなくなったようなものだ。
だからこそ、気づけないんだ。
『あっ、そうだ。一つ、美味しい話を持ってきましたけど聞きます?』
「聞こうじゃないか」
レッドはヒラルダの言葉の端から伝わる嘲りの笑みを理解できていない。
あれはまさしく魔性。
『そちらの役立たずのブルーさんの代わりになる元星将序列の“青い戦士”ちゃんがいるんですよ! なんと、今その子もちょうど地球にいるので、仲間にしませんかぁ?』
自分の実力を隠し、目的のために周りを意のままに利用する、レッドが言葉にしていた悪そのものだ。
状況が変わる。
ヒラルダという異物のせいで、これまで危うい均衡を保ってきたバランスが崩れる。
クモ怪人は外伝にて登場した怪人ネタとなります。
ヒラルダの登場。
星界戦隊はやばい奴を取り込んだようです。
そしてどうしても捕虜になりたい黒騎士ちゃんでした。
なぜこんなキャラになったのだろうか……?(他人事)