追加戦士になりたくない黒騎士くん   作:クロカタ

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お待たせしました。

前回から引き続きコスモ視点でお送りします。


彼を巡った居候先争い

 状況に流されてジャスティスクルセイダーの仮の本拠地に行くことになってしまったが、別の意味でピンチに陥ることになってしまった。

 ホムラはなんだかんだで敵対することはないと思っていたけれど、今はジャスティスクルセイダーに取り囲まれ、ホムラ達と共にどこかの広い部屋へと移動させられてしまったのだ。

 

「ここは我がジャスティスクルセイダーの仮拠点。外から見れば若干見すぼらしい施設ではあるが、本部の準備が整うまではここで活動することになっている」

「……それをボクに教えてもいいのか?」

「……」

「……」

 

 なぜそこで押し黙る?

 あれ、そういえば教えても大丈夫? みたいな顔をして後ろのレッド達を見るゴールディに呆れた視線を向ける。

 

「レイマ、こいつはシンドウさんを守っていたらしいからな。少なくとも敵対するつもりはないと思う。……そうだろ? コスモ」

「あ、ああ」

 

 割り切りがいいというかなんというか……。

 ボク相手によくそんな簡単に信じられるんだな。

 ……敵対するつもりはないのは本当だけれども。

 

「だが君が我々と敵対していた事実は変わらん。改めて問う。君は敵か、それとも星将序列に敵対する我々の味方か? できることなら、この場ではっきりと答えてほしい」

「……」

 

 当然、そんな問いかけが来るのは分かっていた。

 正直な気持ち、今日ボクが戦った理由は地球という星そのものではなく、自分を救ってくれたシンドウを守るためだ。

 地球を守るだとか、そういう大それた考えは全くない。

 

「ボクは、最初はホムラを殺せばルイン様に認めてもらえると思っていたんだ。ホムラが……黒騎士が目覚めた夜に死ぬはずだったけど、どういうわけか生き残ってしまった」

「ルインへの復讐のためか?」

 

 ゴールディの言葉に首を横に振る。

 

「今でもルイン様は尊敬しているし、憧れてもいる……けど、ルイン様が求めているのはそういうことじゃなかったんだ」

「……そうだな。あいつが求めてんのは従順な僕じゃなく、対等に戦える相手。……まったく、はた迷惑な奴だ」

 

 辟易したようにホムラがため息をつく。

 ボクからしてみれば、あのルイン様に執着と言えるほどに特別視されているこいつも異常と言える。

 

「ホムラに完全に負けてから、しばらくはシンドウに拾われてあのカフェに住んでた」

「うわー、私みたいな境遇送ってるじゃん。私もマスターに拾われて、しばらくあそこで住んでたんだよ?」

 

 白い髪の……たしか、ハクアと名乗ったこいつと同じなのか。

 シンドウもボクより前に同じように居候していた奴がいたって言っていたけど。

 

「それで今日、星界戦隊と戦って決めた。」

「聞かせてくれ」

「ボクは、ボクを助けてくれた地球人のために戦う。多分、そういう理由がルイン様が望んだ反逆でもあるし、ボク自身がようやく選ぶことができた生き方だと……思えたから」

 

 そこまで言葉にして、自分はこんなところで何を言っているんだろう、と頬が熱くなる。

 前は敵だった奴らの前でこんなこと言うなんてどうかしている。

 ボクの宣言に腕を組んだまま無言だったゴールディは、不意にくわっと目を見開いたかと思うとボクを指さした。

 

「そうか、ならば今日から君はジャスティスグリーンとなれ!!」

「……は?」

「そして白川君! 君もついでにジャスティスホワイトだァ!!」

「ええええ!?」

 

 突然のW任命にボクもハクアもあんぐりと口を開ける。

 は? なんで? ボクがジャスティスグリーンってどういうことだよ!!

 

「い、嫌だ!! こんな全身凶器みたいなやつらの仲間なんて無理だぞ!!」

「全身凶器……言われてるよ。きらら」

「そういう意味じゃないよねぇ!? どちらかというと、アカネの方が全身凶器だよ!」

「ねえ、私女の子」

 

 強くなった今ではジャスティスクルセイダーと互角に渡り合うことはできるだろうけど、スーツの性能以前にこいつらの戦闘技術が並外れて高いのが厄介なのだ。

 そしてそれは黒騎士を纏うホムラにも同じことが言える。

 

「ルインが敵となればいくら戦力があったとしても足りない。だからこそ、我々はこれからも強くなっていかなければならない。……そのために、戦力の増強は必須事項なのだ」

「それがどうしてボクがジャスティスクルセイダーになるんだよ……!!」

「……特に理由はない!! 強いて言うならば、グリーンカラーだからだ!!」

 

 こいつとんでもないバカだ!?

 星界戦隊と同じ思考レベルだぞ!! 悪魔の天才科学者要素どこにいった!?

 

「ボクは敵だったんだぞ! そう簡単に味方にしようとするな!!」

「私もこう見えて元星将序列、なによりお前より序列も上だわァ!」

「んなこと知ってるわ!!」

 

 同じ裏切者でも色々と違うだろうが……!!

 

「そもそもうちには星将序列持ちだったグラトがいるのだ。今更お前を味方としたとしても全く以て気にしない。むしろ、星将序列裏切者大歓迎だ」

「おかしいだろ……」

「おかしくはない。今しがた別室で絶賛落ち込み中のマスターこと、シンドウからもお前の人となりは聞いている。断言しよう、お前はいいグリーンになれるぞ、グリーン」

 

 もうグリーン呼ばわりじゃん……。

 思わず頭を抱えながら、この様子を傍観していたジャスティスクルセイダーを見る。

 

「お前らは反対じゃないのか……!?」

「いや別に。裏切られたら斬ればいいし

「さっき自分を女の子って言ってた奴の台詞とは思えないんだが!?」

 

 本当になんなんだお前!?

 割と本気で父上みたいな何気ない物騒な発言を飛ばしてくるな!?

 

「ホムラァ! お前は反対だよな!?」

「ん? ああ、別にいいんじゃないか? 進藤さんを守ってくれたんだろ?」

 

 なんでこんなに好感な印象を受けているか謎でしかないんだが……?

 

「く、うぅ、わ、分かったよ。でもジャスティスクルセイダーの枠組みに入れるのはやめろ。そもそもボクじゃ見た目が合わな———」

「ガオ!」

「見た目が合わないだろ……!!」

 

 今「合わせられるよー」と言わんばかりに自己主張してきたレオの鳴き声を遮っておく。

 

「む、仕方があるまい。ならば追加はジャスティスホワイトのみだな」

「いや、ちょっと待ってください……!!」

 

 そこで今まで黙っていたハクアが声を発する。

 

「かっつんは黒騎士って別枠だし、というより私白騎士なので、ジャスティスホワイトもいらないのでは……!?」

「黒騎士も白騎士もカツミくんのもんじゃい!! そもそもシロに作り出されたチェンジャーは、ジャスティスクルセイダーのスーツを基本として作られたものだから、君はほぼジャスティスホワイトなのだぁ!!」

「無茶苦茶すぎます!」

「戦えとは言わん!! だが、今回の本部襲撃事件のようなことが起こり、君自身が戦わなければならない状況に陥る可能性がないとは言えないだろうがぁ!!」

「!」

 

 なにがなんだか分からないが、こいつはあまり実戦経験を積んでいないのか?

 それでよく星界戦隊の前に出てこれたな……。

 

「いいか、白川君。戦う力を持つことは一種の呪いのようなものだ」

「……!」

「これはこの場にいるスーツ装着者全員に言えることだが、強化スーツを纏ってからお前たちは皆、人類の枠を超える存在へとなった。それはいわば、これまで不可能だったことを可能にする力を得たと同然だ」

 

 ゴールディの言葉に黙り込むハクア。

 

「自分にできる、可能なことならばやるしかない。状況をなんとかできる手段を持ってしまえば、否応なく行動に出てしまう。今回、それで命を落としかけたのが君なのだ」

「確かに。その通りです」

「だからこそ、君は戦う術を学ぶべきなのだ」

「……レイマの言う通りだぞ。ハクア」

 

 そこでホムラがゴールディの言葉に同意する。

 

「お前には戦ってほしくはないが、ここまで二度も変身する事態になっているからな。自分の身を守れる程度の訓練はしておくべきだ」

「かっつん……」

「お前はいつ見ても危なっかしいから用心には越したことはねぇだろ。ま、俺も侵略者が出てくるまでは結構暇だし、訓練見てやるからさ」

「……うん」

 

 なんかいやに面倒見がいいなこいつ。

 ボクの傍でとんでもない気配を発しているアルファとジャスティスクルセイダーが怖すぎるけれども。

 

「最初の話がまとまったな。あとは……今回の襲撃についての報告……いや、それはこの後でいいか」

 

 腕を組み、思考を巡らせたゴールディは再びこちらを見る。

 

「とりあえず、次は本部の話をする」

「まだできていないんですよね?」

「ああ。現在、急ピッチで作業を進めているわけだが、侵略者がそれを待ってくれるとは限らないのでこの仮の研究所を拠点としているのが現状だ」

 

 星界戦隊に壊されたって話だもんな。

 逆によくあの攻撃で地上が無事でいられたか不思議でならないけど、そういう意味でもこいつらは地球の守護者と呼ばれているのかもしれない。

 

「整備自体は問題はない。問題があるとすれば……それはカツミ君、アルファ、お前達だ」

「俺達、というと……住むところか?」

「うむ、本部が襲撃されていなければ、そこに君たちを移す手筈だったのだが……ものの見事に襲撃を受けた上に、世間に場所が明かされてしまったからな」

「俺のアパートは未だに帰れないし、もうきららの家の世話になるわけにもいかないし。どうすっか……」

 

 ……いや待て、住むところというならボクもないんじゃないか?

 

「おい、ボクも居候している喫茶店を爆破されたんだが、どうしたらいい?」

「勿論、その件も合わせてこれから話すつもりだ」

 

 シンドウからある程度の事情を聴きだしていたのか……?

 いや、そりゃ当然か。

 

「選択肢としては二つある。一つはこのビルの居住スペースに住むか、それともここではない安全な場所に住むか。後者の場合は、アルファの認識改編を多少は用いる必要があるが……」

 

 認識改編?

 それがこの星のアルファの能力なのか?

 規模によっては大したことないが、いったいどれほどのものだろうか……。

 

「……。ハクアはどこに住んでんだ?」

「ん? 私はこのビルに住んでるね。職員用の居住スペースもあって、それほど苦じゃないよ?」

「……そうか」

 

 暫し思い悩むように腕を組んだホムラ。

 彼はおもむろにアルファを見ると、やや真剣な声で話しかけた。

 

「アルファ。お前はハクアと一緒に住んどけ」

「えっ、なんでさ!? カツミ!」

「なんとなく複雑なのは分かるけど姉妹なんだろ? いや、なんか俺が弟だったっていう意味分からん過去があるけど、それ関係なしにお前らは一緒の方がいいと思う」

 

 突然の提案に慌てるアルファだが、ホムラはその真剣な表情を崩さない。

 

「ハクア、悪いが頼めるか?」

「え、そ、それは構わないけど……かっつんはどうするの?」

「俺はここには住まない」

「!?」

 

 彼の言葉にハクアとアルファだけではなくここにいる全員が驚く。

 

「ど、どうしたのカツミ、なにか理由があるの?」

「……ちょっとばかし厄介な奴に目をつけられてな。そいつが一度、お前を気絶させて成り代わろうとしやがったんだよ」

「……え?」

「時折、そいつの視線を感じるんで、お前に危険が及ばないように距離を取っておこうと考えた」

 

 成り代わろうと……って、もしかして六位のアズって名乗っていたあの女か。

 目の前のアルファとほぼ瓜二つな星将序列で、ルイン様を殺すとかいっていた……。

 

「カツミ君、その話は……」

「後でちゃんと説明する。あとは、俺とコスモの住むところだが……どうする?」

 

 話を切り替えたホムラにゴールディは唸った様子を見せる。

 

「そう、だな。本来はこのようなことをするべきではないのだが……」

「「?」」

「本部が完成するまでに、君たちにはジャスティスクルセイダー三人の家に居候してもらおう……!!」

「「!?」」

 

 居候ゥ!?

 は!? ボクが!? なんで!?

 

「なんでボクがこいつらの家に居候しなきゃならないんだ!? 適当に住むところ用意してくれれば勝手に住むわ!!」

「お前は料理も家事もあまりできないとシンドウ氏が言っていたのだが……?」

「あのコーヒー狂いがァ!!」

 

 あいつ何言ってんだ!

 実際、そうだったけれど! 仕方ねーじゃん料理なんて生まれてからずっとクソマズ栄養食しか食ってねーんだから!!

 で、でも掃除とかはレオが自分からやってくれるし……って、そういうところで駄目な子って思われてんのかボク!?

 

「さすがにそれはアカネ達に悪い。俺は別の場所でいいから———」

「カツミ君」

 

 やや申し訳なさそうな様子で断ろうとするホムラの両肩にゴールディの手が載せられる。

 

「君が思っている以上に、この提案には地球の未来がかかっているのだ」

「そこまで……?」

「それに彼女たちを見てくれ」

「?」

 

 ゴールディに促され背後を見るとそこには鬼気迫った様子でじゃんけんを行っているレッドとブルーの姿が。

 

「理系ジャンケン読み……!」

「直感ジャンケン読み……!」

「あんたら本当に地球人?」

 

「地球の戦士たちは既に乗り気だ」

「なんで……?」

 

 信じられない目で連続であいこを繰り出し続ける二人を見る。

 イエローはなぜか参加せずに遠い目をしているけれども。

 

「いや、お前ら冷静に考えろよ。男の俺がお前らの家に転がり込むとか駄目だろ。なぜかきららの家じゃ認められちまったけど、そういう常識はあるつもりだぞ」

「常に常識外れな行動と状況にしかいないカツミ君に言われたくないよ!」

「……。なんだとこの野郎!

 

 レッドの指摘に立ち上がるホムラ。

 常識外れという点では認めるしかない。

 

「だってそうじゃん! 二回も記憶喪失になった後にきららの家に転がり込むとか非常識の極みみたいなものだよ!?」

「ぐ、うぅ、確かに……!! 我ながら否定できん……!!」

 

 あ、認めるのか。

 しかしルイン様のせいとはいえ二回も記憶喪失とか宇宙でもそうそうない経験しているなこいつ。

 するとコソコソとホムラの隣に腰かけたブルーが、彼に話しかける。

 

「カツミ先輩、うち神社なんです。大きいです。広いです」

「どうした突然。てか先輩ってなんだ?」

「私、一つ年下」

「……嘘だろ……?」

 

 衝撃の事実といった様子で狼狽える彼に、ブルーは得意げな笑みを浮かべる。

 

「ふふん、先輩って呼ばれた気分はどうかな?」

「いや、なんか……お前からそう呼ばれるのは、むず痒いからいつも通りでいいぞ」

「きゅん」

「……なんだ今の音」

「ときめき音」

「なにそれ……?」

 

 この空間には変人しかいないのだろうか。

 ホムラが普通に見えるとか変身しなくても大分やばいなジャスティスクルセイダー。

 

「つーかお前、散々理系って言っておいて神社かよ」

(ことわり)系です」

「……。あれそういう意味だったのぉ……?

 

 よく分からないブルーの発言になぜか震えるホムラ。

 

「失礼、噛みました」

「絶対嘘だろ」

「神降ろしました」

(ことわり)系じゃん!?」

 

 そのやり取りになぜかものすごく満ち足りたような笑顔を見せるブルー。

 なんだこのやり取り、と思っているとそんな二人に割って入るようにレッドが歩み寄る。

 

「あ、あの……」

「え? アカネ、どうした?」

 

 しかし、さっきの様子と違ってどこか自信なさげである。

 

「私ん家、一般家庭です。あとワンちゃんがいます……」

「いや、嘘だな」

「なんでそこで嘘って言われるのか分かんないんだけどっ!!」

 

 一般家庭……!?

 それってあれだよな、この星では普通の家の生まれってことだよな?

 ……いや、意味分からん。

 今日、何回意味が分からないことになっているか知らんけど、これは本当に意味が分からない。

 

「だってお前、いや……実は剣道道場とかそういうところじゃないのか?」

「ううん、普通の家だよ」

「……やっべぇ、逆にどういう暮らししているのか気になってきやがった……!?」

「!!!?」

 

 思わぬ呟きに驚愕に目を丸くするブルー。

 もう滅茶苦茶である。

 

「なあ、コスモちゃん」

「ん? イエローか。ボクになんの用だ?」

「いや、行くところがないならうちに来る?」

「……」

 

 今一度レッドとブルーを見る。

 レッドは未だにちょっと斬られたことがトラウマだし、ブルーはなに考えているか分からない。

 

「頼む……」

「よろしくね」

 

 こいつも苦労してんだなぁ、と少し話してそれを理解できてしまうのであった。

 




どうあがいても面白い一般家庭生まれのレッド。
イエローは普通だけれど、その家族が普通じゃないという罠でした。

外伝『となりの黒騎士くん』の方も、二話ほど更新いたしました。
第五話「となりのホムラくん2」
・カツミの学生生活編その2

第六話「ハイル、二度目の不運」
・黒騎士VSクイズ怪人編

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