───────────エルメェス・コステロ
ヤナギ「"夜顔"…灼炎!」
先程"夜顔"で奪った魔力から、炎魔法を抽出し武器に纏わせクラウスを切りつける。
クラウス「グッ、チぃ…!」
思いの外手応えがあった。ソルトと共に与えていた傷がよほど答えているのか、はたまた先程魔力を奪ったことで上手く魔法が扱えなくなっているのか…
いずれにせよ、ヤツは攻撃を防御しきれず炎の斬激をまともに食らった。
クラウス「フンッ!!」
ヤナギ「ッく…!」
とはいえやられっぱなしというわけでもなく。直ぐ様激しい風の刃がこちらに向かって飛んできた。
それを回避してまた攻撃を仕掛ける。今度は土属性、その次は月、陽、火、風、水…次々と属性を変えて攻撃を仕掛け続ける。
…分かっている。これらを続けているだけでは決定打にはならない。
今のうちに
~~~~
…ヤナギさんがヤツの魔力を奪った。
そしてその力を使ってヤナギさんはクラウスと渡り合っている。
…私が倒すべき仇と。
なのに、私は…
ソルト「っ!?」
そう考えていた直後に、私はなにかに
ソルト「…何の、つもりですか」
ヤナギ「何って?決まってるだろ、お前を安全な場所に…」
ソルト「ヤツは私の!私の家族を殺した仇なんです!!私が、私が…私がやらなきゃ…!!」
ヤナギ「落ち着けよ。そんな気が立った状態で立ち向かったってまたさっきみたく一方的にやられるだけだ。
…それにな、お前はまだ…こう言ったらアレかもしれないが、まだ子供なんだよ。そんなお前に手を汚させるわけにはいかない」
ソルト「…っ」ギリッ
ヤナギ「分かったら大人しくしてろ。そろそろ分身を解かないと…」
ソルト「嫌…です」
ヤナギ「…」
ソルト「…それでも、私は納得できません。私が、ヤツを…クラウスを倒します」
ヤナギ「…お前!」
ソルト「確かに…私の力はヤツの足元にも及んでいないかもしれません…貴方のように復讐なんてしたって殺された奴等は喜ばないと、解ったような事を言う人も居るでしょう。でも…
それでも!今目の前に家族を…大切な仲間を殺した仇が目の前にいるのに!今ヤツから逃げてしまったら、私はきっと一生後悔することになる!!
大切な家族を理不尽な欲求のために殺されて…それで私だけが何事もなかったかのようにただ生き続けるだけなんて私は絶対に御免だ!!」
ヤナギ「ソルト…」
「「復讐」とは自分の運命への決着を着けるためにあるッ!
私はヤツをこの手で倒して…自分の『運命への決着』を着けるッ!!」
ヤナギ「……………」
…ある、1つの『気高さ』の様なものを感じた。
自分よりも幼い…されど自分よりも遥かに苦しい道を歩んできたであろうこの少女から。
自分にはない『気高さ』を…
ヤナギ「…分かった。ただし、今すぐに戦わせられる訳じゃない。作戦を伝える…」
ソルト「作戦?」
ヤナギ「そうだ。確実にヤツを仕留めうる…その上で『俺もお前も生き残るための作戦』だ」
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クラウス「チッ…」
クラウスは腹を立てていた。先程まで自分が手玉に取っていたはずの相手が、逆に自分の力を利用して自分を苦しめている。
クラウスにとって自らの肉体とそれに宿った
それをなんの苦労も無く…と言うには厳密には違うかもしれないが、他人が行使していることがクラウスにとって何より許せないことだったのだ。
…が、その反面クラウスは内心安心していた。その理由は…
クラウス「たとえ私の力を奪ったとしても、たとえ私の力をあなたが使えたとしても…それは何ら私が負ける理由にはならない。…なぜだか分かりますか?」
ヤナギ「…」
クラウス「その力は所詮私から奪い取った物。あなた自身の才能ではない…それを無理やり使って戦っているならば、大層お疲れの事でしょうねぇ?」
ヤナギ「…っ」
クラウス「…クフフフッ!それに、です。…私の力を使ったところで、あなた自身の攻撃力が変わったわけではない!所詮貴方では私を仕留めきる事などできない!!」
ヤナギ「…ああ。そうだな…このままじゃ、お前を倒すことなんて出来ないよ。…
クラウス「?」
ヤナギ「…仕方ないな。…腹をくくるか…!」
クラウス「!?(何だ!?ヤツの中の魔力が、武器に向かって集まっていく!?それに、凄まじく増大して…!)」
ヤナギ「…光剣、創成」
クラウス(…なるほど。あえて己の防御を捨てて、魔力を武器一手に集中させたのか。…その凄まじい魔力量の余り、巨大な光の剣のようになった、と…)「…ですが、わかっているのですか?」
ヤナギ「…何がだ?」
クラウス「そんな防御を完全に捨てた状態で、私の攻撃を受ければどうなることが…分からないハズがないでしょうッ!!」
そう言い放ち、クラウスはヤナギに向かって手をかざす。
そして巨大な炎の爆発が起こった。
クラウス「フン、だから…」
「…ああ、そうだな」
クラウス「…!?背後ッ」
ザシュッ!!
クラウス「グ、うぉ…お!?」
ヤナギ「たしかにこの状態じゃあ、お前の攻撃を一撃でも喰らえばまずいことになるな…なら、
クラウス「ば、馬鹿な…!?そんな事、できるわけがないッ!!」
ヤナギ「…お前、俺の主体が風魔法だって忘れたのか?自分を加速させる事ぐらい訳ないんだよ」
クラウス「何、ィ…!」
ヤナギ「ハッ!」
クラウス「ッ!(あの威力をまともに食らうのはマズイ!更に防御を強めて…!)」
ザシュッ!
クラウス「ガハ!?(ぼ、防御を貫通して…!!?)」
ヤナギ「…」
クラウス「…チッ…!(いや、落ち着け…そもそもヤツは私にようやくマトモなダメージを与えられるようになっただけ。そしてそれにより自分の防御は薄っぺらくなっている…いわば諸刃の剣。目の前の宝物を求めるあまり今にも崩れ落ちそうなボロ橋を渡っているようなものだ…)
(高速移動する相手に直接攻撃をぶつけるのではない…ヤツの移動する先に…
ドゴオッ!!!!!
ヤナギ「が…!!」
クラウス「…(ビンゴ。あの爆炎をモロに喰らえば…)」
ヤナギ「…ッ!!ガァアアア!!!」
クラウス「なっ!?」
ザンッ
クラウス「ガフっ…!?(バカな…!?あの爆発をマトモに喰らってもまだ…!!?)」
ヤナギ「グ、ウ…オオオオオオオ!!!」
クラウス「(くそ…ふざけるな…そんな事が…そんな事が)あるはずが無い!!あってたまるか!!!」
ヤナギ「うおあああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!!!」
クラウス「くたばれくたばれくたばれくたばれくたばれくたばれくたばれくたばれくたばれくたばれくたばれくたばれくたばれくたばれくたばれくたばれくたばれくたばれくたばれくたばれくたばれくたばれくたばれくたばれくたばれくたばれくたばれくたばれくたばれくたばれくたばれくたばれくたばれエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエ」
〜〜〜〜
ヤナギ「ハァー、ハァー、ハァー…」
クラウス「フーッ、フーッ、フーッ…」
方や爆炎に耐え続け、何度も敵を斬りつけた。
方やその斬撃に耐え、何度も敵に爆炎を浴びせ続けた。
もはやどちらも満身創痍。どちらが倒れてもおかしくはなかった。
ヤナギ「…」
ドスッ
クラウス「は、ハハハハハ…!やった。やったぞ。ついに…やった!!!ハハハハハハハハハハハハハハハ…!!!何が三銃士!何が賢者と同等の力を持つ者よ!!所詮はただ肩書きを背負っただけの子供に過ぎなかった!ハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハ!!!」
「勝ったのは私の方だアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハ」
ヤナギ「…!」
クラウス「は」
ヤナギ「くたばるのはお前の方だ」
そしてヤナギの光の剣がクラウスに向けて振り下ろされ…
バリインッ…
と、クラウスの手で砕かれた。
ヤナギ「…な」
クラウス「フフフフフハハハハハハハ…ようやく理解しましたか?貴方は私に勝てなかった…ということを!!」
勝ち誇ったクラウスはヤナギに…魔法も使わず正拳突きを打ち吹き飛ばす。
ヤナギ「…ああ…
…お前が…“自分の今までの状況を全然…理解していない”と言う事を…“理解した”よ…」
クラウス「?」
ドゴオッ
クラウス「ガフアッ!?」
突然背後から強い衝撃を受け、クラウスは吹き飛んだ。
ソルト「…」
ヤナギ「…ナイスタイミングだ。ソルト」
ソルト「…これで良いんですよね、ヤナギ」
クラウス「…ふっ、何かと思えば…今の不意打ちごときで、私を倒したとでも?見なさい!私のこの身体を!!今の不意打ちですら、私にほんのちょいとばかしの傷しかつけられていない!!」
ヤナギ「…なぁクラウス…その今つけられたほんのちょいとばかしの傷って、一体何が原因だろうな?」
クラウス「?」
ヤナギ「ソルトの武器は
クラウス「…なら、この傷の正体はなんだと?少なくとも、私は先程あなたから背中に傷など受けていない…!!」
ヤナギ「お前…俺の“光剣”を砕いたよな?そして…俺はまだ、その魔力を解除してない。
…ああそれと。お前さっき、電撃魔力を爆発させてたっけな」
クラウス「やめッ…!!!」
ヤナギ「こんな風に」
パチン
クラウスは倒された。
体内に押し込まれた魔力の欠片が放電や爆発を起こし、その大きな負荷はもはや意識を手放すには十分過ぎるものだった。
ヤナギ「…どれだけ自分を改造しても…“体内”はどうにもならなかった…か」
ソルト「…はぁ、はぁ…ヤナギ…私は…倒したんですよね…ヤツを…皆の…仇を…」
ヤナギ「ああ…」
ソルト「…なら…私は、笑顔で喜べばいいんですか?…それとも、嬉し泣きをすればいいんですか…?」
「私…こういう時、どうしたらいいのか分かりません…」
そう、声を震わせながらソルトは言った。
いずれにせよ。この渓谷の森での戦いに決着が着いたのだった。
次回『その