お久しぶりです。
お楽しみいただければ幸いです。
突然の魔物襲撃というトラブルを、必殺のサウナ拳によって撃退してみせた三銃士&賢者。
建築場所や内観も概ね決定し、いよいよ建築へと駒は進む。
そして遂に、時は訪れる……。
久方ぶりに語られる、三銃士&八賢者のサウナ施設建築物語。
どうぞ、お楽しみくださいませ。
最強AIバッファローズ(独断と偏見に基づく命名)の襲撃からしばらくの時が経ち。遂にサウナ施設…もといエトワリア初のスーパー銭湯建築は開始された。
無論、簡単に進むことはなく。
資材確保や宣伝のためエトワリア各地を飛び回り、駆け回った。
しかし神殿や里の人々を中心とした多くの人々の協力を経て、ついに本日……
「シグレ兄ちゃーん!ローリエさーん!大丈夫ー?」
「助けられるとは言え、高いんだから気をつけろよ!」
「大丈夫!スーパー任せとけ!!」
「後はこの看板だけ……これさえ完成すれば、僕たちの悲願その1が叶う……!
よし…と!」
シグレとローリエはともに地上に降り立ち。
出来上がったそれを、三銃士と賢者は見上げる。
「おお、これが……僕たちのスーパー銭湯……」
「ああ、エトワリア初の超革新的温浴施設……その名も───
───
……四人は目を閉じる。
瞼の裏に浮かぶのは、これまでの苦労。
木材を中心とした資材確保のため、各地の職人の協力を仰ぐため駆け回った。
エトワリアに存在しない設備を稼働させ続けるシステムを完成させるため、幾多のトライ・アンド・エラーを繰り返した。
『あれが欲しい、これもしたい』と沸き上がるアイディアとは裏腹に、現実という壁が幾度となく立ちはだかった。
そんな、数多の苦難を乗り越え……ついに四人の夢は、ここに形を成したのだ。
───四人の目から、一筋の涙が流れ頬を伝う。
まっすぐ上を向いた親指。
その右手を、真っ直ぐに天へと掲げた───
「いや、なに最終回みたいな雰囲気になってるんだローリエ。まだ終わってないぞ」
「というよりここからがスタート地点だろう。さあ試験運用の時間だ」
「スポンサー各位への仮公開もありますよ!感動に浸ってないで早く動いてください!」
………
◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇
はい。シグレです。
ついに完成した僕たちの
施設はクリエメイトのみならず、エトワリアの現地民からも多くの注目を集め人気を獲得し、一大有名施設へと成り上がった。
前世からの夢が一つ叶った喜びは、もはや言葉にすることすら勿体ない程だ。強いて不満を挙げるなら自分たちが利用する機会があまりないということか。
「兄さん何してるんだ!受付の交代の時間だぞ」
「ああゴメン…今行く!」
苦労は実を結び、こうして形になった。
文句のつけようのない、ハッピーエンドがここに………
『緊急警報!緊急警報!』
『男性浴場サウナにて異常発生!! 施設関係者は至急第一サウナへと向かってください!』
「───」
「───兄さん、行くぞ」
「───ハッピーエンドだと思ったのにぃ!!」
僕の悲鳴は虚しく施設内にこだまするのでした。泣きたい。
・ ・ ・ ・ ・ ・
「シグレ到着しました!いったい何がアッツゥ゛!?」
「なんだこの温度は……!?メーターが振り切れてるぞ!?」
「制御室に確認…ヤナギは念の為お客様を避難させろ!」
「了解した……お客様、申し訳ありませんが一度浴場の外に避難を……!」
ヤナギを含めた従業員たちが避難に動いたのを確認し、シグレは懐から通信端末を取り出す。
『制御室』と書かれたボタンを押せば、5秒と経たずに通信がつながった。
「こちらシグレ!異常発生したサウナに到着!
温度が異常に高い、室内が調査不可能なためそちらで確認をお願いしたい!」
『シグレか!? こちらローリエ、異常は確認してる!
サウナヒーターが異常に高温化してる、さっきから操作を試みてるんだが……!』
通信機の向こうからは、腹立たしげなローリエの声が。
何かを操作するような音の後、エラー音が鳴り響く。
『クソっ、こっちからの操作を受け付けないだと!?何が起きてんだよ……!
もう強制シャットダウンしか……ん?』
「ローリエさん?」
『………おいおいおいおい…!どうなってんだ、別のサウナでも異常発生だ!
───いや違う、まるで狙いすましたみたいに
「……ん? なんだ、サウナの蒸気が……!」
サウナ室内に満たされていた蒸気が、不自然に揺らめく。
室内から漏れ、上昇して消えるだけだった蒸気が……シグレに向かって
「なッ!!」
・ ・ ・ ・ ・ ・
『ぐあああッ!! 熱ッ!!』
「シグレ!? 何があった、大丈夫か!!」
『じ、蒸気が……!
サウナの、ロウリュの蒸気が、まるで魔物みたいに襲いかかってきて……!!』
「───クソ、やむを得ないか!
館内総員に通達!浴場内にて異常発生、原因究明のため従業員含め一時全館からの避難願う!繰り返す、浴場内にて───」
ローリエのアナウンスにより、施設内にて戸惑っていた人々も外に向かい始める。そうして人々が居なくなったその時……
『……ローリエさん! また、蒸気が勢いづいて…!』
「ああ、こっちからも見えてる……やむを得ないか。
シグレ、お前も脱出しろ!」
『く……了解!』
指示に従い、出口へと走るシグレ。
それを追うようにその背を追う形ある蒸気。それはまるで、獲物を追い立てる肉食獣のようで。
「……俺も、外に出るか…!」
ローリエもまた、制御室を飛び出し外を目指す。
念の為とロッカーに預けておいた、拳銃をはじめとした武装も持って行くのも忘れない。
……エトワリアに来てから約二十年という月日が経った今、ローリエには妙な確信があった。
この後、確実にこれらが必要になる厄介なことが起こる、と。
・ ・ ・ ・ ・ ・
「だああアーーーっ!!」
「兄さん!」
「シグレ兄ちゃん!」
シグレが外に飛び出せば、
三人もそれを理解したのか、建物から飛び出してきた蒸気に注目を移す。
「……蒸気が、集まっていく…!?」
「脱出成功!
お前ら、なにがどうなって……!?」
後から飛び出してきたローリエもまた、その異様な光景に言葉を失う。蒸気は一塊に集まっていき、やがて人のような形を成し始め……。
「ウオオオオオオ────ッ!!!」
それは、咆哮を響かせた。
「我が名はサウナ魔人!
愚かなる人間どもに復讐せんと顕現した、サウナの化身である!」
蒸気の塊……もとい、サウナ魔人はそう語りだした。
「ちょっと待った!復讐ってなんだ復讐って!
何か僕たちが気に障るようなことしたのか!?」
「この世界でサウナが疎まれるような事なんてまだ無いはずだぞ!」
「そーだよ!寧ろ人気も人気で皆から求められっぱなしじゃん!」
「………その通りだ。だが…それは
「「「!」」」
「………」
サウナを愛する三銃士は……そして、ローリエですら感づいた。
サウナ魔人が何を言いたいのか、そして、『サウナの復讐』とは何なのかを。
「クリエメイトと呼ばれる者たちや、お前たちから感じ取った記憶……別の世界のサウナたちの嘆きが、我には届いた!
人はかつて『サウナブーム』とやらを巻き起こし、サウナを素晴らしい物だと祀り上げ囃し立てた!
──
それから暫くの時が経ち……人々はサウナの危険性や短所ばかりに着目するようになり、手のひらを返してサウナを批判し始めた!
人とは何と身勝手なものか……貴様らに分かるか!?
好まれ、求められ……そんな中からあっけなく突き放され身勝手に蔑まれたサウナの悲しみが!」
「「「………」」」
「故に……我は、我が蒸気で世界を満たす!
この世界の全てをロウリュの蒸気で覆い尽くし、サウナの怒りと悲しみを人間どもに思い知らせてくれようぞ!!」
「それは違うぞ!!」
反 論
「!?」
「確かにサウナは万人から求められるものじゃないかもしれない!そんな事は僕らだって分かってる!」
「だが、それなら尚更サウナを愛している奴らを大事にするべきだろうが!
お前がやろうとしていることは、サウナもそれを愛する人々の価値も貶めるような行為だ!」
「その湯だった頭を私たちが冷やして目を覚まさせてやるよ!
さながらかる◯のサンダー◯ルネードのようにね!!!」
「「!?」」
「あッ!懐かしいソレ!
「俺もあるな。
高温のサウナから飛び出した後の10℃にも満たないほどの低温の衝撃は未だに脳裏に焼き付いてるぞ」
「オマケにバイブラもガンガンで、きっちり汗を流せば潜水もOKだもんねアレ。懐が広いなんてもんじゃあないぜッ」
〜三銃士雑談中〜
「……とまあ、やっぱり日本全国どころか世界を見ても単体の『水風呂』としてここまでの低温になっているのはサン◯ートルネードぐらいのものな訳だよ」
「なるほど、そんな◯ンダートルネードに入った後のように僕たちの手でサウナ魔人の頭を冷やして目を覚まさせるわけだな」
「そういう事だね」
「おいちょっと待て貴様ら」
「「「ん?」」」
「なぜ貴様らは急にサウナの話を始めたのだ?」
「え? いやだから言ったじゃん。
サンダートルネー◯に入った後みたいにお前の目を覚まさせて頭を冷やしてやるって」
「私たちはサウナーとしてこれ以上なく的確な例えを出したってだけだよ?」
「まあ冷やすって名目ならウェル◯ー栄のアイスサウナとかもあるんだが、アレを水風呂と称するかどうかという疑問もあるからな」
「……………う、うむ。
とりあえず、貴様らのサウナに対する愛は本物だと認めてやるとするか」
唐突な三銃士サウナトークに、サウナ魔人もさすがにちょっと引いていた。
三人の人となりを散々見てきた八賢者の一人は言うまでもないだろう。
「……とにかく! 今言った通りだ、サウナ魔人!」
「か◯まるの
「熊◯は湯らっ◯すの水深171cm水風呂+MADMAXの滝水のように!」
「「「キサマの悪の魂を洗い流してやるぜ!!!」」」
……と、とある少年雑誌世界のハジケリストのように宣戦布告してみせた三銃士であった。 ローリエはため息をこぼした。
「フン!やれるものならば……」
右手を振り上げるサウナ魔人。
蒸気の塊とはいえ、その
「やってみるがいいわッ!!」
振り下ろされた拳は、容易に三銃士を包み込んだ。
離れて見ていた民衆から、悲鳴や不安の声があがる。
しかしそれを見ていたローリエは…ニヤリと笑みを浮かべた。
「『青龍弓』!」
三銃士が居る場所から、水の龍が真上に向かって飛び出し……弾けて雨のごとく振り注ぐ。
更に、どこからともなく吹いた風がサウナ魔人の蒸気を押しのけ……
そこから、先程より若干マッシブになった三銃士が現れた。
「「「「「何アレ!?」」」」」
「うん、まあ…そうなるよな」
これこそ三銃士の秘技、『サウナ拳』。
温度、湿度を完璧に調整したサウナに最低10分間入り、純度の高い水風呂に浸かり、外気浴で『ととのう』をする。
これらによって整えられた肉体と、研ぎ澄まされた精神によって無敵の如き力を得る……というものらしい。
ただ、なぜサウナに入ると力が増すのか、なぜ急にマッシブになるのか、それらについては依然として謎である。
温泉開発の妨害となる魔物やギャングなどをぶっ飛ばす際にたびたび使用されてきたが、それを近くで見てきたはずのローリエをして『なにもわからない』と判定を下された。
そして何故、このサウナ拳が発動したのか。
三銃士はまず、蒸気によって形成されたサウナ魔人の拳を利用した。
サウナ魔人は蒸気の拳による熱と高多湿で三銃士の音を上げさせようとしたが、エトワリアでも指折りのサウナー(そもそもエトワリアにサウナーという概念自体珍しいが)である三銃士にとってはその程度慣れたものである。
次にシグレが放った『青龍弓』。
これを空中で弾けさせ、雨のごとく振り注がせたことにより水風呂の代用として機能。
最後にヤナギの風魔法によって外気浴を簡易的に行い、見事『サウナ拳』の条件は整ったのである。
……ただし、急ごしらえの簡素版ということもあり、強化は『多少』レベルに留まっている。若干マッシブになっているのはそういう事。
「ソレが……噂に聞く『サウナ拳』とやらか。
だがそんな付け焼き刃で、我をどうこうできるとでも?」
「オイオイ、僕たちをなめてもらっちゃ困るな……足りない強化は、気持ちで補うんだよ!」
「そもそもサウナ拳による強化は、お前らみたいな性根の曲がったやつを完膚なきまでに叩き直すための『上乗せ』だ」
「アンタを倒すだけなら本来の実力だけでも十分なワケ。
ドゥーユーアンダスタン?」
「ほう…言うではないか。ならば……」
サウナ魔人は両の手を広げる。
「やってみるがいい。
その大層な自信が、果たしてこの現実を前に揺らがずにいられるか見ものだな!」
「その言葉、そっくりそのまんま返してやるよ!!
行くぞ、三銃士出撃!!」
「「応!!」」
三銃士は地面を蹴り、飛び上がって真っ直ぐにサウナ魔人に突っ込み───
───その拳は全て空を切った。
「「「は?」」」
「………ククッ」
サウナ魔人はその有り様を見て、口角を吊り上げる。
そして、自身の肉体を通り抜けた三銃士を……
「フンッ!!」
「うわぁァ!!」
両手の蒸気で覆い尽くした。
「ぐあ……サウナ拳が、解けた……!」
「当然だ。
貴様らの
「……問題はそんなことじゃあないだろ」
「察しがいいな、
我が肉体は蒸気!! 物理は当然、魔力による攻撃も意味をなさぬ。水面を刃で斬りつけるのと同じだ!」
「三銃士よ。
サウナ拳……大した力だ。だが、その力は我には通じぬ。
皮肉なものだな、貴様らに力を与えたのも、貴様らが敵わぬ相手を生み出したのもサウナだとは!!
せいぜい嘆くがいい。
貴様らはサウナある故に力を得、サウナある故に敵わぬ敵を生み出したのだ!!
全ては、貴様らの身から出た錆だ!!」
サウナ魔人の高笑いが、響き渡る───
『サウナの復讐者』として現れた最後の敵、サウナ魔人。
必殺のサウナ拳は、この敵の前には全く通じない!
強大な敵を前に絶望する三銃士!
そんな彼らにローリエは……
次回、三銃士&黒一点の八賢者、最終回。
どうか最後まで、お付き合いくださいませ。
次回へ続く───。
あとがき
お久しぶりです。山崎五郎でございます。
まずはコラボしてくださっている三毛猫先生、そしてお待たせしてしまった読者の皆様に謝罪いたします。
実に三年もの月日が空いてしまい、本当に申し訳ありませんでした。
私の作品を見てくださっている方々はご存知かと思われますが、新たに『きららファンタジア』で作品を書き始めました。
しかし、この作品及びコラボ編が中途半端な状態で止まってしまっており、そんな状態で本作を放置して新たに新作を続けるのは三毛猫先生に失礼ではないかと考え、せめてコラボ編は完結させようとこの度執筆させていただきました。
相変わらず拙い作品ではありますが、それでもせめて最後まで書き切ることが私にできるせめてもの償いでありケジメであると考えています。
繰り返しになりますが、どうかせめて最後まで読んでいただければ幸いです。
本当に申し訳ありませんでした。