機動戦士ガンダム 白と黒のエース<完結> 作:水冷山賊1250F
サイド1外縁宙域 ネェル・アーガマ ブリッジ
オットー・ミタス
「僅かながら、ミノフスキー粒子濃度を検出しました。」
「よし。周辺の警戒、及び痕跡の捜索だ。MS隊を出せ!」
ユニコーン隊から連絡が有って3日。おそらく、なんの痕跡も出ないだろう。我々の庭先でウロチョロするとは、腹立たしいが逃げられた可能性が高い。
「艦長、アンドー少佐が不審な物を見つけたそうです!」
「何!?少佐に繋げ!」
メインスクリーンにアンドー少佐が映った。
「艦長、ビットに似た兵器を確保した。どうやら爆発物は仕掛けられて無いようだ。資料で見たものより凄く小さいな。小型化に成功したものと思われる。」
「分かった。一度戻ってくれ。メカニックに見て貰おう。」
「了解だ。」
「どう思う、カジマ大佐?」
「簡単に見付けられ過ぎるな。気にくわない。マサキが何も感じないと言うことは、罠では無いようだが。なにかしらメッセージが入っているかもしれん。」
「成る程。メカニックに、その辺りを最優先で調べさせよう。」
「そうですね。なにか解ったら御の字ですが。」
アンドー少佐とカジマ大佐は鋭い所がある。二人ともニュータイプと言われても驚きはしない。まあ、アンドー少佐はサイコミュが搭載されたマシンに乗ってるから間違いは無いと思うが。
アンドー少佐が戻り、暫くしたところ、メカニックから連絡が入った。
「艦長!ビンゴです。ビットの発射口の奥にデータチップが入ってました。」
「ウィルスチェックは?」
「問題有りません。今からそちらに持っていきます。」
「了解だ。」
カジマ大佐の言った通りだな。はてさて、どんな映像が入っているやら。
「艦長、これです。」
1㎝四方のデータチップのようだ。
「サマーン、中身は確認できるか?」
「ちょっと待ってください。大丈夫です、確認できます。映像データが入っているようです。映しますか?」
「あぁ、メインスクリーンに映してくれ。」
「了解です。」
映像がメインスクリーンに映った。ん?パイロットスーツを着た女の子?
『このデータチップに気付いてくれてありがとう。私は、プルツー。アクシズの強化人間であり、プルシリーズと呼ばれるクローンの最初の成功例だ。』
何!?強化人間で、クローンだと!?
『強行偵察艦隊として、我々はこの艦隊に配属されたが、我々のオリジナルであるエルピー・プルが、あなた方に助けを求めるため脱走した。オリジナルの処分の命令を受けた私が、オリジナルのMSを撃破したが、コックピットブロックを直近のコロニーに投げ飛ばした為、もしかしたらオリジナルは生きているかもしれない。貴方達に保護をお願いしたい。
さて、我々クローンはツーからトゥエルブまでの11人居るが、全員こんな馬鹿げた戦いに参加したくない。正直に言おう、助けて欲しいのだ。クローンの中には、臆病で、甘ったれな奴や、お人好しな奴。色んな奴が居る。全員が全員、戦いに向いた性格をしていない。それに、彼女等はみんな私の家族なんだ。お願いだ、助けてくれ。今後、我々の艦隊はルナツー周辺を偵察後、アクシズに戻る事になっている。アクシズは現在おそらく移動を開始した筈だ。大きな戦いが起きるかもしれない。すがれるものが無い私達だが、一縷の希望をこのデータチップに託す。』
あんな小さな娘が、最後には涙を流しながらお願いしている。なんとか助けてあげたい。それにしてもアクシズの連中はなんと非道な真似を・・・。
ん?アンドー少佐とカジマ大佐が揉めてる!?
「待てっ!マサキ、何処に行くつもりだっ!!」
「決まってるだろう!ルナツー方面だよ!奴等を見付け次第、あの子達を助けて殲滅だっ!!一人も生かしては帰さん!あの野郎共、舐め腐りやがってっ!」
「落ち着け!今奴等を逃がしたら、彼女等を救えなくなるぞっ!」
「じゃあ、どうすればっ!」
「先ずはルナツー及びロンデニオンに連絡だ。今回のデータと共にな。シャングリラにいるラー・カイラムにも連絡しよう。
奴等は隠密行動を取っているため、そんなに距離は離れていない筈だ。なるべく多くの部隊を集め、奴等を包囲するんだ。彼女等が出てきた所で、データチップを確認したと知らせて保護しよう。おそらく彼女等は最前線で戦わせるつもりだろう。チャンスは一回しかない。奴等がアクシズに逃げ込んだら、接触も儘ならなくなる。奴等は許されないことをした。逃がすわけにはいかない!分かるな?」
「すみません、少し熱く成りすぎました。」
「いいさ。誰でもあんな映像見せられたら正気でいられなくなる。だが、ここからは冷静に行こう。彼女等の命がかかっている、万に一つの失敗も許されない。分かったな?」
「了解っ!」
「艦長、早速各方面に連絡を。ロンデニオンにはファントムスウィープ隊がいますし、シャングリラにはユニコーン隊がいます。急げばルナツー周辺で奴等を押さえられる筈です。」
「分かった。全員ここからは時間との勝負だ!アクシズの外道共から、少女達を救い出すぞ!」
「「「了解っ!」」」
それからはルナツー、ロンデニオン、シャングリラと一遍に連絡し、ルナツーに向かう事に成った。
しかし、普段は落ち着いて、カジマ大佐をからかっているアンドー少佐があんなに取り乱すとは思わなかった。しかし、カジマ大佐は流石だな。冷静に対処していた。彼等の前で啖呵を切ったのだ。私も無様な真似は見せられんな。
一人気を引き締め直すオットーであった。
ラー・カイラム ブリッジ
キイチ・カシマ
「オリジナルと呼ばれている少女は、こちらで保護している。」
「流石ですな、ブライト大佐。では?」
「あぁ、こちらも直ぐに艦を出す。ポイントデルタで合流しよう。奴等は許すわけにはいかん。人としても、人の親としてもな!」
「了解だ。先に合流ポイントで待機する。」
「了解。」
メインスクリーンが切れた。オットー艦長もどうやらご立腹のようだ。それにしても、プルツーが助けを求めるか。洗脳技術とか、その辺りが発達しなかったのが幸いしたのかな?レビルさんや、ガルマさん達が双方の陣営で禁止したからな~。それにしても、アクシズの連中は狂っている。子供に戦わせて、何が精鋭なんだか。奴等はもうマトモな考えが出来ていないのかもしれない。
デラーズの騒乱で、どさくさ紛れにアクシズの主導権を取ったが、その後はアクシズに籠るだけしか出来ていなかった。その籠っている間に、精神的に追い詰められたか?
「キイチ、何を考えているんだ?」
「あぁ、ブライト。アクシズの奴等の動きがどうも解せん。」
「どういう事だ?」
「地球連邦軍とジオン共和国軍を同時に敵に回して、奴等に勝算は有るのか?しかし、奴等は動き出した。アクシズも地球圏の近くまで来ているらしい。奴等何が狙いだ?」
「まさか・・・。」
「最悪のシナリオはそれだ。アクシズを地球に落とす。しかし、それをやった所で、スペースノイドは奴等を許さんぞ?現連邦政府は、宇宙移民を再開し、スペースノイドにも各コロニーの代表に、連邦議会への参加を許可する動きに変わっている。今、スペースノイドとアースノイドは、歴史上稀に見る蜜月状態だ。まだ偏見は残っているが、決定的な破綻へとはなり得ない。」
「だからじゃ無いのか?」
「え?」
「このまま和平が進めば、ザビ家の再興とか、スペースノイドの真の独立とはなり得ない。であるならば、スペースノイドとアースノイドの仲を切り裂き、今一度対立構造を作り出し、ついでに地球にしがみついている奴等を殺してしまおうと考えたのでは?」
「それが本当なら、奴等は狂っている・・・。そうか、奴等はとっくに狂っていたんだな。プル達がその証拠だ。だとすれば、この戦い厳しいものに成るな。」
「あぁ、基地外相手は堪らないな。しかし、踏ん張らなければならん。私達の背後には平和を享受している人々がいる。」
「そうだな。」
漆黒の虚空を見つめ、決意を改めるのだった。
次回、エルさんオコの巻。