機動戦士ガンダム 白と黒のエース<完結>   作:水冷山賊1250F

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 ティアンムさん久々の登場


第97話  エルとイーノ

 地球連邦軍ジャブロー 将軍執務室

 マクファティ・ティアンム

 ルナツーから緊急の通信が入った。どうやらアクシズが動き出したらしい。しかも、外道な真似をして、現在ルナツーに強行偵察をするつもりのようだ。

 「これが我々に渡されたデータチップの内容です。大統領、コロニーの守備艦隊をはじめとした宇宙軍を集結させます。」

 「うむ、なんとしてもアクシズを止めてくれ。あの悪魔共め、いくらニュータイプの能力が有ろうとも、幼い命を矢面に立たせようとするとは!なんとしても彼女等を助けて貰いたい。厳しい戦いになるかもしれんが頼むぞ、将軍!」

 「はっ!」

 「ジオン共和国の方には、私からホットラインで連絡しよう。あちらからの協力の申し出が有った場合は君に繋げよう。」

 「了解です。」

 通信が切れた。あれは相当怒ってるな、大統領。地球圏の平和に尽力していた方だ。いつも他人のために働いていた。アクシズも、戦いを挑んで来なければと、静観されていたが、ここに来てその非道な行為が発覚。到底許せるものでは有るまい。

 それにしてもアクシズの奴等は、何を考えてクローン計画等進めたのだろう?そのような外道に手を染めてまで、現在の地球圏に戦いを挑むメリットは無い筈だ。戦力差も把握出来ていないのだろうか?理解に苦しむ。

 「連邦宇宙軍に通達。何時でも出撃出来る体制をとれ。ルナツーは警戒レベルを一段階上げて対応!」

 「了解!」

 将校達が慌てて動き出した。アクシズ、いや、エンツォ大佐め。貴様等には、漏れなく引導を渡してやる!

 

 

 ラー・カイラム シミュレータールーム

 ジュドー・アーシタ

 3日目の午後に隊長さんが来て、試験を受けることになった。

 「エル!それにイーノまで。何でこんな所に!?」

 「約束したでしょうが!一緒にラー・カイラム見に行くって!それでジュドーん家の周りうろついてたらさ、黒服着た奴等に連れて行かれそうになって・・・。」

 「なっ!大丈夫なのか!?何もされて無いのか!?」

 「あ~、平気、平気。ここの保安部の人達が直ぐに助けてくれたから。何あの変態共。それに、その娘誰?」

 う~ん、変態か~。横目でアムロさんを見たら、無言で頷いてくれた。ガンダムの件だけ誤魔化して、今までの事を説明したところ、エルが憤慨した。

 「何アイツ等!マジもんの変態な上に、卑怯者のマッドサイエンティストじゃない!!こんな娘に戦わせようっての!?プライドも何も有ったもんじゃないわね!!ジュドーもジュドーよ!私にも協力させなさいよ!」

 「いや、巻き込んで危険な目に会わせたく無かったんだよ。」

 「リィナちゃんはしっかり巻き込んでるじゃない!」

 「悪かったよ。」

 「じゃあ、あたしも協力させて貰うわ。」

 「な、何を!」

 「あんた達だけに任せてはおけないわよ。」

 「そんな事言ったって、アムロさ~ん。何とか言ってくださいよ~。」

 「う~ん、エル君。何も戦う事だけが協力じゃないよ?プル君は、リィナ君と一緒に保護することになる。そんな二人を守ることもとても大事な協力になる。そちらを頼まれてくれないかな?」

 「え~~っ!私もプチモビに何度か乗ったこと有るんですけど?ね?イーノ。」

 「そりゃあ有るけど、僕らほどじゃないでしょ。それに、MSに乗るなんて危ないよ。僕はメカニックとして協力させてくれませんかね?ある程度の整備は一通り出来るつもりです。」

 「そうだな。イーノの整備は丁寧で、レンタル屋も舌を巻いてたもんな。」

 「言い過ぎだよジュドー。」

 「じゃあ、イーノ君はこの後、整備責任者を紹介するよ。」

 「え~っ!私は~?」

 「君みたいなかわいい娘には、MSは無理だよ。言っとくけど、実戦では急旋回や、急制動ばっかりかけるから、顔が腫れ上がって他人には見せられない顔になるよ?それでもいいの?」

 「え?本当??」

 「これ、俺の数年前の写真。次はこの前のジュドーの写真。」

 2枚の写真を取り出す。あ、あれ、この前、アムロさんが笑いながら撮影してたやつだ。酷い人だな~。でも、効果はテキメンだった見たいで、エルの顔が引き吊っている。

 「でも、この前はアムロさん、腫れ上がらなかったんでしょ?」

 「そりゃあ、新米パイロット相手にそこまでの機動はしないからね。俺の写真は、うちの隊長と訓練した時の奴だよ。今でもそんな顔になるよ、隊長とやったら。」

 へぇ、やっぱり凄いんだな。エルはガックリと頭を下げ、

 「リィナ達を守ることにします。」

 分かってくれて良かった。

 「分かって貰えて良かったよ。あぁ、君達は早速ロンデニオンに行って貰うよ。彼方では隊長の奥さんがお世話して貰える。高速挺を用意している。早速移動してくれ。エル君と、イーノ君のご両親には連絡してあるし、警護も付けてある。もちろん、ジュドー君達の両親にもだ。」

 「え?うちのお父さんとお母さんにもですか?」

 「あぁ、二人ともリィナ君を案じていたよ。何故かジュドー君は、信頼されてたな。アイツは大丈夫と。」

 え?逆じゃ無いの?こういう時だけ信頼されてるの俺って?

 「ジュドー。お前は理不尽に対して、迷わずに戦うことを選んだ。おそらくお前のその感性は正しい。お前は見ず知らずの少女の危機に対して、お前の全力で手を貸すことが出来る人間だ。そこは誇って良い。だが、実力はまだそれに追い付いていない。うちの隊長は、それに気付いたんだろう。そして、お前のそのセンスにもな。あの人は、何故か戦う者のセンスを見極める事が出来る。こういう俺も、隊長に引き抜かれたようなもんだ。」

 「え?アムロさんは、初めて乗るMSでザクを撃破したんですよね?」

 「半分は正解で、半分は違うな。避難中に偶然マニュアルを拾ったんだよ。ある程度の操縦方法は分かっていた。初めて会ったジュドーと同じ位だよ。ザクに勝てたのは、ただ単にガンダムの性能のお陰だよ。多分同じ条件なら、カイさんやハヤトも同じことが出来たんじゃないかな。だけどあの人は、俺に目をつけた。その後は君達も聞いたことが有るだろう?最前線を渡り歩く結果になったのさ。そうなれば、嫌でも実力は付く。俺がエースなのは偶々だよ。」

 違う気がするけどな。でも、見る目があるのは本当の事かも。一丁信じてみますか。

 「それにジュドー。君は俺と似ている気がする。性格とか、そんな事じゃなくて、何となくなんだが。」

 あ、アムロさんと、初めて握手した時に感じたシンパシーのようなあれかな?確かに同類のような気はした。

 「分かったよアムロさん。それにアイツ等を止めないといけないってことは分かってる。このままここでお世話になるよ。リィナ、お前はロンデニオンで俺の帰りを待っていてくれ。エル、リィナの事は頼んだ。こいつを守ってやってくれ。」

 「分かったわ、お兄ちゃん。だけど死なないでね?約束よ?」

 「あぁ、約束だ。」

 「絶対だよジュドー。リィナと待ってるからね?」

 「あぁ、任せとけ。」

 エルに自信たっぷりに答えてやった。正直自信なんてそんなに無いけど、何とかなるような気がするんだよな~。ラー・カイラムに残るのは俺とイーノで充分だ。エルとリィナを見送りながら、この諸悪の根元に対して殺されてたまるかと闘志を燃やした。




 エルさんは、最前線に行きません。少しは話が出るかも?

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