機動戦士ガンダム 白と黒のエース<完結> 作:水冷山賊1250F
サイド3 ズムシティー 首相官邸
キャスバル・レム・ダイクン
「どうしたガルマ首相、急に私を呼び出して。何か緊急事態か?」
突然の呼び出しに、急いで首相官邸に到着。何か有ったのか?
「来たか、シャ、キャスバル。」
今、シャアって言おうとしたな?まぁスルーするが。
「レビル大統領からホットラインが有った。アクシズが地球圏に接近しているらしい。」
「なに!アイツ等が!とうとう、暴発したか。これで心置無く潰せるな。」
ん?何を渋い顔をしてるんだ?
「それだけじゃないんだ。奴等、ニュータイプの少女のクローンを造り、強化人間に仕立て上げていたようだ。クローン少女の一人が、連邦に助けを求めて来たようだ。モニターを見てくれ。」
モニターに、助けを求める悲愴な少女の映像が映った。
頭に血が登った後、逆に血の気が引いてしまい、少しよろけてしまった。なんと、非道な。なんと、残酷な。戦う意志を持たぬ者に、戦いを強要するとは。
「何が精鋭だ、何が正当なるジオンの後継者だ!屑共め!」
「しかし、これが彼女等だけでは無い可能性が出てきた。他にもクローン兵士が居るかもしれない。クローン兵士達が戦線に投入される前に、奴等を潰さなくてはならん。また、発見したクローン兵士達は、まだ少年少女が予想される。なんとしても、彼等を保護しなくては。これ以上悲劇を拡大させるわけにはいかない!」
「分かっている。ガルマ、」
「君が戦線に行くのは許可できないな。君には、私と共にサイド3を纏めて貰わなくてはならん。君の替えはきかないんだ。」
くっ。先に釘を刺されてしまった。私にも分かっているんだ。政治家となったからには、この手を血で染めるわけにはいかないと言うことを。しかし、私にも許せない事は有る。
「君の怒りは分かる。それは正しい怒りだ。おそらく、全てのスペースノイドが感じている怒りだろう。しかしな、君以上に彼等を許せなく思っている者達もいる。」
「ハマーン達か?」
「いや、共和国軍人だよ。腰抜けや臆病者の謗りを受けても、我慢してくれた彼等だ。レビル大統領は、共和国軍にも出動要請を打診してきた。そして、派遣される者の一部には、この映像を見せる許可を貰った。さしあたり、ライデン大佐とマツナガ中佐には見せようと思う。ネズミが入り込んでる畏れが有るから、全員には見せられんがな。彼女等が危なくなるリスクは下げたい。」
「分かった。彼等には私から見せることにする。他数名にも見せて良いか?」
「君が信頼している人物であれば、大丈夫だよ。」
「有り難う、助かる。」
「あぁ、派遣部隊の編成は、君に任せるよ。」
「了解した。」
この時私は、自分の無力感に打ちのめされそうな心を無理矢理奮い立たせていた。自分にも何か出来ることは無いのか?私にも、何か!!
ジオン共和国軍本部会議室
ジョニー・ライデン
「こ、これは・・・。なんと言う悪魔の如き所業を!あのような幼子に、戦いをしいるとは!!」
コンスコン大将も、御冠だ。この御仁は、独身で有るからかは知らないが、給料の殆んどをサイド3の孤児院に寄付している奇特な人だ。本人曰く、ろくに趣味も無い上に、下戸で酒も嗜まないから、金の使い道が無いとの事だが、ただ人が良いだけなのだろう。本人はあまり知られたく無いようだが、軍内では有名な話だ。
そんな御仁がこのような話を聞いて、冷静で居られる筈がない。コメカミの血管が切れるのではないかと、心配になるほど浮き上がっている。
「我々は、地球連邦軍と合同でアクシズに対し攻撃をすることに成っている。その指揮をコンスコン大将、貴方に任せたいのだが、大丈夫か?いささか冷静さに欠ける事に成りそうなのだが?」
「何を仰る。私は冷静ですぞ。」
「そうか?あなた達に頭に入れて欲しいのは、彼女等のような存在が、まだアクシズに居るかもしれないという可能性だ。」
「「「なっ!!」」」
「考えてみれば分かる筈だ。連中が一度成功しただけで、他の被験者がいない筈がない。」
あ。大将の顔色が危険な域に達している。本当、他人の痛みが分かりすぎる位、分かってしまう御仁なのだろう。顔色が真っ赤を通り越して、真っ青に成っている。
「大将!!」
遅かったか。椅子に座ったまま、後に倒れていく。議長も目を見開いてビックリだ。
「コンスコン大将!大丈夫か!」
焦る議長。気持ちは分かる。悪人面してる癖に、心は繊細なんだよな大将は。
「す、すみませんな議長。あまりの事に、怒りを通り越してしまいました。しかし、我々人類は何時までこのような悲劇を繰り返すのでしょうな。ザビ家に踊らされたとは言え、最初の引き金を引いた我々が言えた義理では無いのですが。理想の為とは言え、余りに多くの血を流しすぎたからでしょうか?いまだに目を覚まさない人間が多すぎる。何時に為ったら我々は戦争を止められるのでしょうな。」
「分からんよ、大将。かつて、私もスペースノイドのため、またはザビ家に対する復讐の為に名を変えて独立戦争に参加した。しかし、過激な事ばかりで、同じスペースノイド同士でも理解し合えない事が分かっただけだった。」
そりゃそうだ。コロニーに毒ガス撒き散らして、老いも若いも虐殺し、地球に落としたのだ。理解しろと言う方がどだい無理な話だ。あの時は、連邦に勝つにはそれしか無いと思っていた。必要な犠牲だと。スペースノイドの癖に、サイド3の話に乗らず連邦に味方する裏切り者という側面も有った。
しかし冷静に考えてみると、非道この上ない作戦であった。しかも、それを一部隊の暴走として責任を押し付けようとしていた。我ら元ジオン公国軍人は、一人残らず手を同胞の血で汚している。
「しかしな、我々はたとえ間違ったとしても、次の世代では、それがダメでもそのまた次の世代ではと希望を繋げねばならん。失敗した我々の世代の間違いを教訓に、非道を許さず、人道を尊重し、お互いを理解し合える、いや、理解する努力を惜しまない世界を作らなければならん。その為には、奴等は邪魔だ。お互いを憎しみ合わせ、戦乱の渦を作り出し、また、戦うためだけの命を作り出そうとする組織など人類には必要ない。奴等はこれを機に徹底的に潰さなければ成らない。もちろん、洗脳されていないクローンや、強化人間達を助けなければ成らない。難しい任務となる。やれるか?」
「もちろん!微力ながら、全力を尽くさせて貰います。あの痴れ者共から、被害者を救い出し、奴等を殲滅して御覧に入れましょう。」
大将も覚悟を決めた顔だ。この大将のこんな顔は滅多に見ない。
「それで、派遣隊はどうする?MS隊はこちらで決めさせて貰っても?」
「あぁ、1名だけ此方から派遣させて貰うが、その1名以外は、そちらで決めてもらって構わない。」
「1名?」
「あぁ、後日派遣させて貰う。機体も此方で用意する。」
「分かった。腕は確かか?」
「それなりにやれるつもりの筈だ。期待してくれて良い。」
「議長お墨付きの秘蔵っ子か。期待させて貰うぜ?」
その後、簡単な打ち合わせだけを行い、俺達は解散した。
サイド3某所 ????
遂にこのMSを使う時が来たか。レビル大統領が態々私宛に送り届けた機体だ。全身赤に塗装され、サイコフレームを装備した機体。
「あなた、やはり行かれるのですか?」
「ララァか。やはり気づいていたか。だが行かせてくれ。この馬鹿げた戦いを終わらせるためには、私はもしかしたら必要ないのかもしれない。しかし、戦う力が有り、助けを求める人がいる。私とこの機体ならば、なんとか出来るかもしれないのだ。」
「分かりました。ならば私は止めません。その代わり、私もお連れ下さい。」
「それは出来ん。君には元気な子供を生んで貰わなくては。」
「あなた・・・。」
「待っていてくれ。私はこのような戦いでは死なんよ。少しは私を信じて欲しいな。」
「分かりました。御武運を。」
「ありがとう。」
私はこの赤い機体を見上げる。おそらく、私が最後に乗ることに成るだろう機体だ。サザビー。アクシズの痴れ者を血祭りに上げる機体の名だ。
「私は今から再度名を変える。フル・フロンタル、それが私の名だ!そして、貴様等を殲滅する者の名だっ!」
アクシズの狂乱と後に言われる事に成るこの戦いは、こうして反逆者達にとって最悪のルートをとることに成るので有った。
すいません、難産でした。物語は佳境に入って行きました。宇宙世紀の戦いは、今回の戦いが最後に成る予定です。最後までお付きあい頂ければ幸いです。