機動戦士ガンダム 白と黒のエース<完結>   作:水冷山賊1250F

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 アクシズの脅威でも、使い物に成らないネタキャラクターです。話のネタにさせて頂きます。
 ついでに、メッチャーさんは、狂ってます。本当はもっと小者です。


第104話  ある男の犠牲

 アクシズ周辺宙域 合流ポイントまで2時間

 サイド7派遣艦隊旗艦バーミンガムブリッジ

 メッチャー・ムチャ

 ワシは、連邦軍という組織が嫌いだ。アナハイム出身というだけで《優秀な人材》であるワシを冷遇しおったからだ。

 アナハイムもアナハイムだ。私のような人材を軍に派遣するから、あのような事に成る。私だったら、あのような暴挙はしない。あの会社には、優秀な技術者がいたのだ。技術者なんてものは、寝る間も与えず、働かせてやれば勝手に成果を挙げるものだ。後は、その成果を自分の物にすれば良い。そう言う環境を整えたのは上司だからな。

 たまに部下の功績なんて宣う阿呆がいるが、部下の功績は、基本上司の物である。ワシの事を、部下任せの能無し等と言う輩もおるが、それは勘違いだ。ワシは上司の顔色を窺い、オベッカを使い、賄賂という実弾を使い、部下、同僚、上司の醜聞をかき集め、威し、手懐け、蹴落とし、地位を上げてきたのだ。何処に後ろ指指されることがある?

 それを、あのメラニー・ヒュー・カーバインめ!連邦軍に入り、現場との橋渡し役として活動してくれたまえだと?あの時点で、実質ジムしかライセンス生産を許されて無かったのに、大きな事をほざきやがって。結局、スキャンダルで会社を潰しやがった。お陰でワシは微妙な立ち位置に成ってしまった。他の会社に行こうにも、既に手に入れた技術者が、ワシの事を有ること無いこと言い触らしたお陰で、何処にも行けなかった。ワシの恩を忘れおって!

 サフリィなどは、ワシの事を門前払いしおった!あの女狐共め!

 結局ワシは窓際の部所で椅子を暖める事しか出来なかった。部下の成果を吸い取ることも出来ず、無為な毎日を送ることになった。

 

 しかし、ワシにも転機が訪れる。アデナウアー・パラヤ。連邦議員である彼がワシに接触をしてきおった。

 なんでも、レビル一派は戦争を権力掌握の道具として使っていると彼等は考えているようだ。

 実際その通りだろう。一年戦争から続くこの戦乱で、一番得をしているのは、間違いなくレビルだ。奴には、我々が裁きの鉄槌を振り下ろさねばなるまい。私をあのような待遇に陥れた事を、後悔させてやる。

 私は、彼等の力を借り、連邦軍内でのし上がることに成功した。

 フフフ、これからだ。これから私は・・・。

 

 「司令、合流ポイント方面から3隻の友軍艦が接近中です。3隻ともロンド・ベル所属。照合出ました。ラー・カイラム、ネェル・アーガマ、アーガマの3隻です。」

 ブリッジに居る若い将兵共が喜んでいる。

 「ロンド・ベルがわざわざ迎えに来てくれたのか。」

 とか、

 「ラー・カイラム級一番艦か。これからの主力艦は、やはりMS搭載能力は必須だよな~。」

 とか私語を始める。この馬鹿共め!アースノイドとしての矜持は無いのか貴様等は。スペースノイドに参政権を与えようと画策し、アースノイドを宇宙に上げようとする、アースノイドの裏切り者の手先だぞ奴等は!わざとらしく咳払いをし、ブリッジを引き締める。

 奴等は本作戦の殲滅対象だ。精々短い命を謳歌するのだな。

 「艦長、ラー・カイラムから通信です。メインモニターに映します。」

 「ふん、戦争の狗共が、わざわざお出迎えか。」

 流石に分かっているな艦長は。彼は最近、サイド6に居た所をアデナウアー達が所属する、有志議員連盟の手によりサイド7に移住し、軍に入った人材だ。名は確かバスク・オムと言ったか。彼のような人材を手放すとは、なんと愚かな組織だ。

 「此方は第13独立機動艦隊。ラー・カイラム艦長のブライト・ノアです。サイド7からの派遣艦隊で間違い有りませんか?」

 「如何にも。我々はサイド7派遣艦隊だ。出迎えかね?ご苦労な事だな。そんな事に貴官等を使うとは。それとも、暇なのかね?」

 皮肉を込めて言ってやった。何が連邦軍最強部隊だ。使いっぱしりじゃないか。

 「いいえ、臨検に来ました。そちらにアクシズと繋がっている疑いの者が居るようです。当艦隊は、そちらの臨検の任を受けております。」

 「何を!?無礼な!我が艦隊は、スペースノイド共と繋がってなどおらん!貴官等の臨検は不要だ!そんな心配をする暇があれば、直ちに引き返しティアンムにでも尻尾を振っていろ!!」

 おう、バスク艦長は頼りに成るな。

 「ムチャ司令、貴方も同意見ですか?」

 「そうだ。我々の進路を妨害するようで有れば、直ちに利敵行為と見なし、そちらを駆逐する。たった3隻で10隻からなる艦隊を相手に出来るかな?」

 「言質は取りましたよ?此方の臨検を受け入れない場合は、強制執行させて頂きます。」

 ブリッジがざわめき出す。

 「鎮まれ!奴等は地球市民をスペースノイドに売り渡す、謂わば売国奴の手先だ!奴等はたったの3隻だ。ここで討伐すれば、証拠も残らん。奴等を叩き、レビルを潰し、地球市民の権利を取り戻すのだ!」

 「「「おーっ!!」」」

 ベテラン兵士数人はバスク艦長の檄に応えるが、若手のクルーは戸惑っている。顔を張り倒そうかと思ったが、先にバスクがその内の一人の、眼鏡の男を張り倒した。

 「何をボサッとしている!貴様等は、連邦軍人ではないのか!?さっさと配置に着け!!MS各機発進。攻撃目標ロンド・ベル艦隊!」

 「そんな馬鹿な!勝てる訳有りませんよ!考え直して・・・」

 バスク艦長の拳銃が、抗議をしてきたオペレーターに向けられる。

 「上官の命令に叛けば、軍規違反の罪でその場で射殺する。」

 「そんな無茶な。」

 「無茶でもやれ。死にたくなかったらな。実験体ゼロワンから、ワンゼロまでをコックピットに乗せろ!奴等を前面に押し出し、MS部隊は後方から援護射撃をしていれば良い。」

 「そんな甘い見通しで、戦えるか!」

 言った途端に銃口から火が吹く。殴られたように吹き飛び、右肩から血を流すオペレーター。

 「オスカァッ!逃げろおぉぉっ!」

 負傷しながらも、叫ぶオペレーター。若手のクルーが次々とブリッジから逃げていく。

 「貴様、生粋の敗北主義者だな。一年戦争からの古参組だと聞いていたが、どうやら前線に行かず、逃げ回ってただけの腰抜けか!」

 「腰抜け?ククク。笑わせないでくださいよ。肩が痛いんですから。俺達の部隊が腰抜けなら、早々に退役された貴方はなんですか?役立たずの刻印付きじゃないか。俺はマーカー。マーカー・クラン少尉!常に最前線にいた、元ホワイトベースのオペレーターだ!」

 「オペレーター風情が何を!」

 オペレーターの腹に蹴りが入れられた。

 「ゴフッ!」

 マーカー少尉が腹を抱えて蹲っている。

 「ま、まさか、連邦軍にいて、オヤブンさん達と、敵対するとは、思わなか、ったな。あんた、達、終わりだよ。」

 「何を!」

 またもや、彼に蹴りを入れようとするバスク艦長。

 「まぁ待ちたまえ。君もあそこに居たなら知っているだろう?マサキ・アンドーを。此方のゼロワンからゼロファイブは、彼のクローンだよ。この作戦が成功すれば、連邦軍にMSパイロットは不要になる。安価で、クローンを作り、コキ使えるからな。軍は我々のような上級将校だけしか必要無くなる。君もどちらに着いた方が特か考えて見たまえ。」

 「フフフ、ハハハハハハ。あんた達終わってるよ。あの人達の凄さがまるで分かって無い。あの人達を人工的に作る?馬鹿じゃないの?さっさと降参するんだ!あんた達の自爆にクルーを巻き込むな!」

 「巻き込むな?違うね。私と言う上官を受け入れたのだ。お前達は、私の駒だよ。駒が自分勝手に動いたらダメじゃないか。」

 奴の右肩を踏みつける。

 「ぎゃあああああっ!」

 悲鳴を上げるマーカー少尉。コヤツがそんな部隊に居たとはな。バスク艦長がマーカー少尉の顔に近付き、優しく話しかける。

 「一つ教えろ。そしたら楽にしてやる。お前と同じ部隊の出身者は、この艦隊にいるのか?」

 マーカー少尉はニコリと笑い、バスク艦長の顔に唾を吐いた。

 「地獄に落ちろ。」

 彼はゆっくりとハンカチで顔を拭いた後、マーカーの太股に鉛玉を撃ち込んだ。

 「ガァァアッ!」

 声に成らない悲鳴がブリッジに木霊する。

 「お前はそこで見ていろ!奴等が食い潰されるのをな!」

 聞いていないようだ。負け犬め。

 

 バーミンガム通信室

 オスカ・ダブリン

 マーカーが捕まった。僕達を逃がすために、わざとやったのだろう。

 「おい、オスカ!どうするんだ、これから!外にランチで出ても、MSに殺られるぞ。この艦にMSは載ってないが、僚艦には載せれるだけ載せてるんだ!ジェガンが50機は有るぞ?」

 「なんとか5分だけでも良い。ここで通信をジャック出来ないか?」

 「あぁ、それならなんとか。」

 「ブライト艦長なら分かってくれる筈だ。後は、ここを占拠して守り抜こう。大丈夫。この戦いは直ぐに終わる。ブリッジ要員も掌握出来てないんだ。パイロットが掌握されている訳がない。保安要員とパイロットの数名が飼い慣らされてるだけだろう。」

 「分かった。マーカー、無事だと良いな。」

 「今は考えるのは止めよう。全員で生き残るんだ。」

 「あぁ。そうだな。」

 

 事実、彼の推測は正しかった。所詮、軍を知らない政治家や、サラリーマン、スペースノイド憎しで頭が凝り固まった二流軍人だけで考えた作戦だったのだ。

 喩えこの作戦が成功しても、アクシズに潰される予定で有った。彼らには、初めから輝かしい勝利など無かったのである。

 そして、拙い洗脳でコントロールしていた筈のクローンもまた、彼等に反旗を翻す。

 宇宙世紀最後と言われた大規模戦闘の前哨戦の幕は、こうして切って落とされたのだった。

 




 オスカ、マーカーさん達は、流れ流れて、サイド7艦隊に就任してました。
 忘れてませんよ(汗)。

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