機動戦士ガンダム 白と黒のエース<完結>   作:水冷山賊1250F

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 ハゲゴリ眼鏡の終焉です。


第108話  過激派アースノイドの終焉

 私はアースノイドの為に戦ってきた。母なる地球にコロニーを落とし、大量虐殺をしたスペースノイド等、一人残らず殺して仕舞いたかった。

 

 しかし、一年戦争終結後、私は視力の衰えを理由に予備役へと転じられ、しかもサイド6へ行くように指示された。いくら、退職金+土地家屋と言えども、何故コロニーへ!?周りは皆スペースノイドばかり。とても近所付き合いが出来るような者達では無い。スペースノイドと言うだけで、虫酸が走る。俺は必要最低限だけの外出で済まし、普段は家で連邦軍への復帰願いを書く毎日であった。

 

 しかし、数年経っても私の願いは聞き届けられる事は無かった。ジャミトフ閣下は、いつの間にかレビル派として現役に復帰してるのに、何故私だけ?一年戦争の時、捕虜を虐待したり、人質に使ってバカなスペースノイドを誘き寄せて殺したりはしていたが、この程度で問題になる訳がない。

 

 そもそも、スペースノイド等、地球で暮らせなくなった敗北者の集団だ。決して宇宙開拓のパイオニアではない。奴等は永遠に、アースノイドに対して頭を下げて生きていくべきである。にもかかわらずレビルの奴めは、スペースノイドの待遇を改善したり、宇宙移民を推し進めたりと、アースノイドの地位を落とすような行為に走っている。許される行いでは無い。

 

 見てみろ、アクシズの奴等を。クローンの失敗作を生体兵器と呼び、此方に押し付けて来おった。奴等らしい醜い兵器だが、性能は良い。レビルが禁止している、非人道的な研究の成果だ。我々アースノイドも奴等に遅れを取る訳にはいかぬ。しかし、地球側の科学者は良い返事をしない。兵器と共に付いてきた科学者連中を、特別にアースノイド側に取り入れなければ。

 

 バシッ!突然頬を叩かれた。

 

 「何を呆けている?貴様、誰から核ミサイル等の提供を受けた!全て話せ!」

 

 「黙れ、レビルとティアンムの狗共。私は今如何にしてアースノイドを守れるかを考えている。裏切り者と話す時間など無い。」

 

 「アースノイドを守るだと?アクシズ奴等と共謀し、地球にダメージを与えようとしていた癖に、何を言ってるんだ!」

 

 「黙れ、下っ端!私の崇高な考えなど、貴様等に分かるものか!貴様も地球連邦軍の端くれだろう。私に力を貸せ!今ならまだ間に合う!地球を真のアースノイドの手に戻すのだ!世界を正すのは今しかない!」

 

 こやつ、私を哀れむような目で見おった。ダメだな、こやつも。真に地球市民を憂いているのは、どうやら私だけらしい。まぁ良い。どうせ私は死罪となろうだが、私は最期まで訴え続けて見せる。後の歴史家は、私の正しさを証明するだろう。今日この日が、アースノイドの敗北の日としても、私の志を継ぐ者は現れる筈だ!

 

 地球連邦軍に栄光あれぇぇぇっ!

 

 

 後の歴史家は、彼の事を、狂った過激主義者としてしか評価する者は居なかった。また、腐敗した連邦政府議員の手により現場に復帰したものの、己の価値観を押し付けることしか出来ず、状況把握も出来ていない愚物としか記されていない。

 

 また、近年の歴史ドラマで彼が出演する時は、小柄な肥満体型の役者が演じる事が多いが、それはサイド7艦隊司令メッチャー・ムチャ氏と混同されたものと思われる。実際の彼は、マッチョ体型であり、厳めしい顔をした将校であったし、尋問で何も話さなかったと言われている。

 

 尋問で命乞いをし、聞かれていないことまでもペラペラと話したのはそのムチャ氏の方である。彼は後に、司法取引で終身刑となった。彼は、宇宙世紀100年に持病の糖尿病が原因の一つと言われている、急性心筋梗塞で命を落とすこととなるが、晩年は連邦刑務所内で健康的な生活が出来ていたようだ。

 

 エキセントリックな人物像の割りには、彼の資料が少ないのは、一年戦争時から大して功績を上げておらず、卑怯と呼ばれる手段を多用していた問題漢で有ることが原因であるようだ。しかも、繰り返す事になるが大した成果は上がっていない。汚れ仕事を喜んでするが、決して有能ではなく、言わば使い捨てにされるような人物であったと思われる。もしかしたら、彼を重用しようとした、有志議員連盟も人材不足で頭を悩ませていたのかもしれない。

 

 しかし、そのような人材しか集められなかったにもかかわらず、このような杜撰な作戦を決定した時点で彼等の運命は決まっていた。これを機に、レビル派議員が腐敗した議員を一掃することが可能となり、宇宙世紀は平和な時代へと舵を切ることが出来る事になる。

 

 

 ラー・カイラム ブリッジ

 キイチ・カシマ

 

 臨検隊からの報告で、バーミンガムの他にも数隻核ミサイルを搭載している艦が有った。しかし、艦長まで奴等の息が掛かってはおらず、ミサイル発射要員と、砲雷長がグルで有ることが判明した。

 

 その殆どがムチャ元艦隊司令の自白によってもたらされた情報で有ることに、一抹の不安は残るが。

 

 「なあ、キイチ。6機程此方に銃を向けたジェガンが居たそうじゃないか。彼等から話は聞けないのか?」

 

 「それは無理だよ、ブライト。奴等は瞬殺しちまったからなぁ。うちの連中も奴等に味方する奴等は滅殺だと殺す気満々で出撃したし。恐らく他の隊も似たような物だろう。生き残りが居たと言う報告も受けてないし、恐らく無理だな。それよりも、ゼロワンからワンゼロとルファを管理していた科学者連中の話を聞いた方が良いかもな。」

 

 「正直、奴等の話は胸糞が悪く成るから聴きたくないんだがな。奴等は一人も残すこと無く銃殺するべきだと思うのは、私だけでは無い筈だ。同じ人間だとは思いたくもない。」

 

 「その意見には激しく同意だ。まさしく科学の闇の一面に特化した連中だからな。奴等の洗脳技術がもう少し発達していれば、彼等を助けられたか自信がない。激しく抵抗するエースを生かして確保なんてミッション、考えただけでもゾッとする。」

 

 「そこだけは、奴等に感謝だな。まぁ、感謝する気にはなれんが。」

 

 「違いない。それにしても、余計な手間を掛けさせられたな。さっさとアクシズを落としたいのに。過激派の連中は何を考えているのやら。」

 

 「あぁ、戦乱の拡大と、戦時特需でも狙ってたのかもな。だが、まぁ奴等もおしまいだ。」

 

 「そうだな。ムチャなんて愚物まで使って、内乱誘発に外患誘致、国家反逆罪のトリプル役満だ。そりゃもう、厳しい沙汰が言い渡されるだろう。これで連邦政府、軍から腐った膿も吐き出されただろう。この戦いが終われば、暫く戦火は落ち着くだろうな。平和な世界まで後もう一息だ。最期まで気は抜けないな、艦長。」

 

 「お互いにな。」

 

 ブリッジからアクシズの方を二人で見詰めた。考えてみると、一年戦争からこっち、ブライトさんには世話になったなぁ。平和な世界で、お互いゆっくりとしたいものだ。

 

 




 次回から、アクシズ攻略艦隊と合流します。

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