機動戦士ガンダム 白と黒のエース<完結> 作:水冷山賊1250F
アクシズ 司令室
エンツォ・ベルニーニ
私は自分で言うのも何だか、優秀な人物ではない。分かっているのだ、私が元々技術屋で有ると言う事ぐらい。
ギレン・ザビのような、頭脳も扇動力も無く、ガルマ・ザビ程の、政治的バランス感覚も無い。ドズル・ザビのような、猛々しく兵の先頭に立ち鼓舞できる訳でもなく、キシリア・ザビのような権謀術数に長けている訳でもない。連邦のレビル大統領のようなバケモノと比べると、カスのような才能しかない。
しかし、私には彼等よりも強い想いが有る。それは、スペースノイドの自治独立だ。
一年戦争で、連邦の巨大さを思い知り、膝を折った者達も多いだろう。しかし、私の膝は折れない!例え、敵が巨大であっても、負けるわけにはいかんのだ。
私のその真っ直ぐにブレない姿勢を見た者たちが、私に賛同してくれ、私は今の地位に居る。私は全てを自分一人で出来ないと知っている。だから、部下の手を借りることを恥とは思わない。
皆、私の大切な同志だ。軟弱な穏健派がアクシズから一掃されたのは、私を支持してくれた者が多かったからと自負している。
確かに私は、クローンや強化人間の開発を、マハラジャ・カーンに知らせずに指示を出し、挙げ句には彼の暗殺を指示した。それがどうした?圧倒的に数に劣る我が軍が、連邦から独立を勝ち取るためには、質の向上を果たさねばならぬ。私を支持してくれた者達のためにもこの戦争は勝たねばならぬ。
「大佐。連邦軍艦隊がこちらに移動を開始しました。予想到着時間は5時間後です。ア・バオア・クー戦よりも艦隊数が多いもようです。」
「分かった。」
「諸君、ここが正念場だ。数に物を言わせ、スペースノイド自立の道を不当に弾圧してきた連邦軍と雌雄を決する時が来た。これまでも、我々の同志はその数の暴力に屈しざるを得なかった。ギレン・ザビしかり、エギーユ・デラーズ然りである。しかし!彼等の志が、赤心が報われない訳が無い。いや、散って行った全ての戦士の想いに応えなければ成らないのである!
ギレン総帥が決起してくれたから、連邦軍の真の恐ろしさが把握できた。
デラーズフリートが決起してくれたお陰で、奴等の目は彼等に集中した。お陰で、その間に我々はアクシズの占領と、自治を勝ち取ることが出来たのだ。しかも、その後我々に研究開発の時間まで与えられた!この機を逃さず、我々は数々の研究を成功させる事が出来た!
現在、我が軍の科学技術は、連邦に決して退けを取っていない!我が軍の最新鋭MSは、奴等のMSよりも性能面では優っていると断言できる!それに人工ニュータイプ兵の育成にも成功している!兵数のみは、連邦軍艦隊に譲るが、兵の質及びMSの質にあっては、圧倒的に我が軍が有利なのだっっ!!
畏れるな、親愛なる我が精鋭達よ!我が軍のニュータイプ部隊が、奴等の陣形を確実に切り裂くだろう。我々が考えた作戦を実行すれば、必ず勝てる!諸君、この一戦に今後のスペースノイドの運命が掛かっている。連邦軍と共和国軍等、烏合の衆に過ぎない!
今こそ、あの烏合の衆共をメギドの火で焼き滅ぼし、地球圏に真の自由をもたらすのだ。
それを為すのは、ザビ家の血では無い。我々一人一人の力で巨大組織、地球連邦軍に打ち勝つのだ。」
そう。ザビ家の血など最早不要なのだ。ギレン・ザビの血を引くと言われた、グレミー・トト。我々が手をかけて育てたにも拘わらず、ただの愚物に成長しおった。強行偵察も満足に出来ず、プルシリーズを渡したにも拘わらず、艦隊を全滅させおった。
一丁前に、ザビ家の血を自慢しておったが、自分自身は何も成せぬまま、艦隊と共に消息不明。まったく、兵達を無駄に死なせてしまった。それにクローン強化人間11人か。実験体の稼働試験とはいえ、今思えば痛い出費であった。せめて、連邦軍相手の戦闘データでも送ってくれればよかったのだが、その前に全滅したのだろう。内輪の粛清した時の戦闘データしか送られることは無かった。一体奴等は、どれだけの艦隊に殺られたのか。それだけが気になるが・・・・。
この時エンツォは予想もしていなかった。自分達がリードしているのは、クローン技術と、強化人間の技術だけだと言う事を。MS技術は予想もできない程に差を広げられていたのだ。
しかも、頼みの綱のクローン強化人間達は、その環境の劣悪さから彼等に忠誠を誓うはずも無く、洗脳技術が拙かった為、事が起こると反逆する気満々であったのだ。
もし彼等が、クローン達を尊重し、愛を持って育てていたなら、そのような事には成らなかっただろう。しかし、彼等はクローン達をMSの部品や、実験動物のように扱い、中には性の捌け口とするような愚か者までいる始末。本当に頼らなければならない者に対して、向けるような態度では無かったのだ。
いや、そもそも彼等はクローン達を人として認めて居なかったのかも知れない。彼らの中にはこういう思いも有ったのだ。
所詮は‘ヒトモドキ’と。
そして彼等は知る事になる。ヒトモドキと蔑ろにしていた者達の力さえも借りられず、狩られる者でしか無かった自らの非力さを。自分達が築き上げたものが、ただの幻でしかないという事も。
時既に遅く、数時間後に彼等は自らの行いの代償を支払うことになる。
短めですいません。次回から戦闘が始まると思います。