機動戦士ガンダム 白と黒のエース<完結> 作:水冷山賊1250F
アクシズ 戦闘指揮所
エンツォ・ベルニーニ
何故だ?物心付いた頃から、地球連邦軍の非道を教え込み、戦う術を詰め込んで来たというのに、クローン達は簡単に我等を裏切った。
お陰で前線は大混乱。忌々しいガンダム部隊に戦線は掻き乱され、主力量産機が次々と食いついてきた。裏切り者の共和国軍も一緒になっている。
「核ミサイル用意!」
「友軍がまだ戦闘中です!」
「うるさい!今が絶好の機会だ!奴等をここで殲滅する!核ミサイル一斉発射。目標、アクシズ前方の戦闘エリア!」
「りょ、了解。核ミサイル一斉発射用意。目標入力、アクシズ前方の戦闘エリア。起爆位置入力完了。」
「撃てぇぇっ!」
核ミサイルが一斉にアクシズから飛立つ。これで忌々しい連邦の主力も潰せる。口の端を吊り上げほくそ笑んだ途端、核ミサイルが全て起爆し、いくつもの火球が生まれた。しかも、その火球に友軍の艦隊の一部が巻き込まれた。
連邦め!ニュータイプを戦争の道具に使う事を忌避している癖に、自分達は使うというのか!
しかし、不味い。友軍が混乱している隙きに、奴等のガンダム部隊と共和国軍の一部が合流し、こちらに進撃して来た。共和国軍側の2機の赤いMSは、ジョニー・ライデンとシャア・アズナブルか。
少し早いが、奴等を出すか。C―5は、薬漬けで我等の思うままだし、マフティーは我々が手厚く英才教育を施した。あのクローン共のように裏切る心配は無い筈だ。
「C―5とマフティーを出せ!我が軍最高戦力を、奴等にぶつける!」
「しかし、あの兵器は!」
「今奴等を抑えなければ、どうにもならん。アースノイド至上主義者達の兵器であろうが、今はあの力が必要だ!機動試験では、問題無かった。核ミサイルも搭載済みだ。いける!」
「わ、分かりました。巨大MA『ハティ』出撃準備!スコル、Rジャジャ、ガズエル並びにガズアルは、直掩に付け。」
フフフ。Cー5を生体コアとしたハティの力、思い知るがいい。それにマフティーが駆るスコルに奴等は付いていけるかな?
アクシズMA格納庫 ガンダム・スコル
マフティー・ナビーユ・エリン
「やっと出番かい!体が疼いて仕方がないよ〜!良いから早く、私を出しとくれ!坊や、さっさと出るよ!」
相変わらず、キャラさんは訳の分からない事を言っている。一体なんの病気だろうか?普段は少し派手だが普通の人なのに。ニーさんとランスさんが必死に抑えているが、なんでこんな人がパイロットをしているのだろうか?
それにしても、我が軍は大分劣勢に追い込まれているみたいだ。
僕は物心ついた頃には、エンツォおじさんに育てられていた。僕の父や母は、前の一年戦争で連邦軍に殺されたらしい。
父はア・バオア・クー防衛戦で、味方を守る為最後まで戦ったという。母は、僕を産んで直ぐに、サイド3へ侵攻してきた連邦軍に捕まり、拷問を受けて死んだという。
僕は母の友人に託され、アクシズまで逃れたそうだ。その母の友人が、エンツォおじさんの側近だそうだ。
父と母を奪った連邦。直接会った事は無いけど、正直嫌悪感しかない。数に物を言わせ、スペースノイドの独立を阻み、力で押さえつけようとしている。ジオン独立戦争は、スペースノイドの独立戦争でもあったそうだ。
一度敗れはしたものの、自由を求める魂は何者にも囚われることは無い。エンツォおじさんは、僕に色んな事を教えてくれた。スペースノイドとアースノイドの歴史も。
そして、戦う術も。
その上、戦う力さえも与えてくれたのだ。今こそ、おじさんに恩返しをしなくては。この機体は最高だ。僕の思う通りに動いてくれる。どうやら、MAハティの近くでなくては、性能を十分に発揮出来ないようだが、ハティも十分前線で戦える。
それにしても、ハティは何か気になる。なんだろうこの感じは?なんとなく懐かしいような、腹立たしいような。複雑な感情を感じる。不思議だな。
「マフティー、敵のガンダム部隊が接近中だ。奴等を抑えるんだ。出来るな?」
「任せて下さいエンツォ大佐。僕達に適う奴なんか居ませんよ。全て撃破してみせます。」
「フフ、おじさんでも良いんだぞ?」
「いえ、作戦中なので。では行きます!」
「あぁ。お前は将来、アクシズを背負って立つ男だ。こんな所で死ぬなよ?」
「了解!」
おじさんの期待は重いが、それを成し遂げなければ。来い、地球連邦軍とスペースノイドの裏切り者共!一匹残らずスペースデブリにしてやる!
アクシズ周辺中域 νガンダム
アムロ・レイ
アクシズからやけにプレッシャーを感じさせる艦が出てきた。航宙イージス艦か?ん?あのデザインは、連邦軍特有の物に感じる。
「隊長、11時の方向。新手と思われます。」
「何?あ、あれは、ハティか!?」
ハティ?聞いたことが無いな。3機のMSを伴い現れたその艦は、突然変形しだした。一年戦争の資料に有った、確かブラウ・ブロ?ってあんな形じゃなかったっけ?
「やはりハティか!ならば、ガンダムが出るぞ!サイコミュビットミサイルもだ!弾数は最大で800発は有る!全機警戒!ガンダムは俺が抑える。全機、ハティを戦闘不能状態にしてくれ!」
「了解!」
隊長は、1機で敵のガンダムを抑えるつもりだ。まぁ、隊長なら出来るだろう。それにしても、よく知ってるな〜。元々連邦の兵器だったんだろうが、こんなトンデモ兵器、開発計画止まりだと思うんだけど。実際、俺も知らなかったし。
「隊長、何か知ってるんですか?」
「あぁ。あの兵器は、ニュータイプ専用MAだ。アースノイド至上主義者が造ったのだろう。そして、あのMAは専用直掩機のニュータイプ能力を増幅させる機能が有った筈だ。恐らく、あのMAにCー5が搭乗しているだろう。」
「ティターンズか?」
「そうだ。」
ティターンズ?ユーグさんと隊長は、時々アースノイド至上主義者達の事をこう呼ぶが、何か関係が有るのだろうか?
「ファントムスウィープ隊は、先ずMAに付いてきた3機のMSを。ブルードラグーン隊とユニコーン隊は、ハティを封じ込めてくれ。共和国軍の2機もな。全機行動開始!」
「了解!!」
一斉に動き出す各機。マサキさんのユニコーンが、淡い緑色の光を放っている。話に聞いたあれをやる気か。ならば、俺も!
「マサキさん!」
「アムロか!あれをやるぞ。力を貸してくれ!」
「任せて下さい。」
ユニコーンガンダムと光の線が繋がった。このまま、この力を広げる感じで!
νガンダムとユニコーンガンダムを中心に、緑色の光と共に、俺の意識が広がっていく。
「シーファ!君は、シーファなんだろ!?止まれ!それ以上、その機体に乗るのは止めるんだ。君を待っている人がいる!」
「ナ、ナゼ、、オレノ、、モウ、ソンナ人ハ・・・。」
「ルファが待ってるんだよ!聞こえないのか?あそこだ!?」
マサキさんが、ネェル・アーガマの方を指差す。
「彼女は俺達が救出し、保護している!」
「ホゴ?保護!?イ、イキテルのか!!」
「聞こえないのか?彼女の声が?よく耳をすませ。ほら。」
突然ハティの動きが止まった。
「おい!敵に惑わされるな!ハティーッ!」
敵のガンダムから、戦う意志が膨れ上がる。駄目だ、こんな戦いで君達は死ぬべきじゃない!俺は、隊長に襲いかかろうとする、敵のガンダムに向けて語りかける。
「君も、もうそのMSに乗るのを止めろ。本当は気づいてるんだろ?」
「な、何をっ!」
「君が今まで騙されていた事にだ。君は、今まで気付かないふりをしてきたんだろう?都合の良い現実ばかりを見て、真実には目を逸して。」
「仕方ないじゃないか!あの人しか、僕を育ててくれなかったんだ!それに、僕の父さんと母さんは、連邦軍に殺されたって、おじさんに聞いてたしっ!」
「でも気付いていた筈だ。こんなに近くに彼が、君のお父さんが居るのに。」
「あの人は、何時も心を閉ざしてたんだ。僕に何も語りかけてはくれなかった!」
「そんな事、「いや、事実です。」っ!?」
ん?共和国の議長に、似た若い人物の声がした。
「君は?」
「Cー5、シーファと名乗っていた者です。今、妻の、ラフィーの声で目を覚ましました。すまない、絶望に囚われて、君の声にも耳を閉ざしていたようだ。」
「それじゃあ、、」
「すまない。俺は、君達を守れなかった無力感でこの世界に絶望していたんだ。愛する者を守れなかった無念と、理不尽な世界に対する怒り。何故、私達は虐げられなければならなかったのか。」
「全部、連邦軍のせいじゃ無いの?お父さんは、ア・バオア・クーで戦死したって・・・。」
「それは嘘だっ。私は個体名シャア・アズナブルのクローンだ。だから名前はCー5と呼ばれていた。君は私と、ラフィーの子供。クローン同士の子供だ。」
「嘘だ!僕はっ・・・・。じゃあ、僕のお母さんも・・・「私よ。可愛い坊や。もう、武器を捨てて。」・・・おかあさん?」
「そうよ。私があなたのお母さん。守ってあげられなくてゴメンね。私達はモルモットとして育てられた存在なの。でもね、あなたのお父さんとは、本当に愛し合っていたわ。でもね、私があなたを妊娠したことがバレた途端、私達は引き離されたの。貴方も私の中から強制的に取り出されて、貴方を取り返すことも出来なかった。私も貴方のお父さんと同罪ね。何もかもに絶望してしまったの。ごめんなさい。」
「そ、そんな・・・。それじゃあ・・・今まで、エンツォおじさんに教わった事は・・・。」
「嘘よ。貴方を戦わせる為のね。貴方なら感じた筈よ。私達と同じように、戦いを強制されていた人達の悲鳴が。」
「そ、そうだ。僕はあんなふうには成りたくないと心の何処かで・・・。僕は違うって・・・。何も変わらなかったんだね。僕は偶々、エンツォおじさん達の求める力を持っていただけ・・・。」
「そう。だからお願い。武器を捨てて。この人達は貴方達を助けてくれる。今まで貴方に何もしてあげられなかったお母さんだけど、私を信じて。」
「おかあさん。だけど、そしたら、お父さんとお母さんを苦しめていたアクシズはどうなるの?」
「君が気にする必要はないよ。それは俺達、大人の、いや、軍人の仕事だ。今までお父さんやお母さんに会えなかったんだろう?もうそんな兵器に関わらなくても良いんだ。」
「そうだ。君は、その機体を捨てて、お母さんと一緒に行くんだ。」
「お、お父さんはどうするの?」
「私は無理だ。この機体のコックピットに繋がれて出れない。しかも、核ミサイルの一部に自爆装置が仕込まれているみたいだ。俺はこのまま、アクシズに方向転換する。私達家族を弄んだ悪魔共を道連れにする!」
「そ、そんなっ。やっと会えたのに!」
「諦めるのはまだ早い!」
「た、隊長!?」
隊長が突然話に加わって来た。
「アムロ、マサキ、力を貸せ!」
「ど、どうするんですか!?」
「ニュータイプは、決して殺し合いの道具じゃ無い!お前たちのお陰で、彼等と意思を通じ合わせ、戦いを回避することが出来た。ならば、出来る筈だ。ここには、フルサイコフレーム機が3機も集まっている。あの機体を無力化する意思を乗せて、サイコウェーブをあの機体に送るんだ!」
「そ、そんな事で、無力化が?」
「信じろ!お前達の力と、このガンダムの力を!理不尽な暴力の前には、何時だってこの機体で立ち向かってきたじゃないか。アクシズの連中に気付かれていないし、受ける方も協力的な、今がチャンスなんだ!」
隊長は、この機体の隠された能力を把握してるのか?本当に俺達の機体にそんな力が?
いや、何時だって隊長は俺達を導いてくれていた。
「マサキさん、隊長を信じましょう!」
「やるしかないか。良いぜ、乗ってやる!どうせイチバチだ!」
「良し。俺とマサキがアムロに無力化の意思を送る。アムロは、その意思をあの機体に送るんだ!」
「「了解!」」
殺そうとする意思では無く、あくまでも無力化しようとする優しい意思がνガンダムに集まってくる。この意思を、あのMAに!
緑色の光がハティとガンダム・スコルを包み込む。両機のスラスターの火が消え、慣性だけで宇宙空間を漂い出した。僚機のMS3機が慌て出す。
その隙を見逃すほどファントムスウィープ隊は甘く無かった。一塊になっている3機にクラスターミサイルが襲いかかる。今更慌てだしても、もう遅い。キョウスケさんの、赤に塗装されたガンダムmarkⅣが先頭のRジャジャに襲いかかる。あの距離まであの人を近づけたら、もう終わりだ。Rジャジャは瞬く間にスクラップに変わる。後の2機は、ヤザンさんのmarkⅤとユーグさんのリ・ガズィカスタムにそれぞれ撃破されていた。
容赦無く仕事が早いな、あの人達は。本当に戦争のプロって感じだ。後は丸裸のアクシズを落とすだけだな。
「ハヤト、リュウ!あの二人を頼む。ネェル・アーガマに連れて行ってくれ!後は全機、アクシズに突っ込むぞ!上陸地点の確保だ。」
「「「了解!!」」」
ジオン軍残党過激派との長い戦いは、これで終わりになるのだろうか。最後まで彼等とは分かり合えなかったなと心の中で呟いた。
あと数話で終わる予定です。最後までお付き合い頂ければ幸いです。