機動戦士ガンダム 白と黒のエース<完結>   作:水冷山賊1250F

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 ジオン(被害者)目線です。


第18話  ジオンの苦悩

 キャリフォルニアベース近辺 地球方面軍司令官官舎

 ガルマ・ザビ

 凶報の始まりは、現地時間本日0200時であった。成層圏付近から突如ミサイル攻撃を受けたのだ。

 2日前から始まった、地球連邦軍MS隊による一斉反抗作戦。深夜に突然キャリフォルニア周辺の軍事基地数ヶ所が攻撃を受けたのだ。生き残った将兵が言うには、白兵戦用のゴーグルを着けたMSや、中距離支援用と思われる両肩に大砲を付けた機体の目撃情報が有った。はたまた、恐ろしく速い、二本角のMSの情報まである始末。目撃情報だけでは無く、画像データの提出を求めたところ、大量の画像データが提出されたため、大急ぎでデータを解析したのが一昨日のことであった。

 データを解析したところ、将兵の報告した全てのMSの存在が確認された。そう、全てである。

 白兵戦用のMSや、中距離支援用のMSも脅威だが、まだ理解の範疇だ。しかし、全身群青色で恐ろしく速い二本角のMSの存在まで確認された、いや確認してしまったのである。

 ザクや、グフなど歯牙にも掛けぬとはこの事か。情報解析班から報告を受けた作戦指令部は、大混乱になった。兎に角、次に攻撃を受けそうな軍事基地の防衛力強化のため、至急MS隊を増援として送ったのが昨日の午前中。

 その後、ジオン本国に緊急通信で報告をし、今後の対策を協議することになったのである。ドズル兄上から、連邦のV作戦の情報は伝わっていたが、こんなに早く量産するとは。やはり連邦の生産力は侮れない。案の定、二本角と、中距離支援用はV作戦のMSと同型機であった。あの二本角2機を相手にしたコンスコン准将には、同情を禁じ得ない。あの二本角に対抗するため、ギレン兄上の承認を得て、キャリフォルニアでイフリート及びドムの生産が決定したのは昨日の夕方。関係各所に連絡し、MSパイロット選定と、機種変換訓練の計画を指示し官舎に帰ったのは昨日の2300であった。

 シャワーを浴び、ベッドに入り意識を手放したのは日付が変更してからであろうか?熟睡している私室に、秘書官の一人が怒鳴り込んできたのである。

 

 「ガルマ大佐!至急官舎の地下シェルターに避難してください!!」

 有無を言わさず、パジャマのまま手を引いて連れて行かれた。地下シェルターは、簡易的な作戦指令部になっており、常時数人が詰めている。

 「何があった?」

 モニター前の上席者に、問い質したところ

 「連邦軍のミサイル攻撃です。後少しでキャリフォルニアベースに着弾します。」

 と報告された。

 「何処からだ!?」

 「恐らく成層圏と対流圏の中間辺りでしょう。」

 と言ったところで爆音が響き渡る。どうやら、ここには攻撃が来なかったらしい。

 「モニタリングを続けろ!周辺の基地を呼び出せ!対空防御及びMS隊出撃だ!ガウとドップはどうなった?生き残った機体を全部出せ!」

 矢継ぎ早に指示を出すが、次の言葉に絶望する。

 「周辺基地とはM粒子が濃いため、連絡できません。MS隊は先程の爆発前に、出撃を指示しましたが何人乗れたことか。哨戒任務に就いていた小隊以外に2個小隊が出れれば御の字です。ガウとドップは間に合いませんでした。現在可能な事は、モニタリングだけになります。」

 目の前が真っ暗になった。秘書官に

 「すまんが、制服を持ってきてくれ。この格好じゃ示しがつかん。後、全員に何かドリンクと軽く食べるものも頼む。」

 とお使いを頼んだ。その後、直ぐに

 「全員注目!今回の戦は、こちらが負けるだろう。だが、敵の戦力は、少しでも把握し本国に送りたい。全員全力で今回の戦いをモニタリングしてくれ!」

 「了解‼」

 全員が敬礼して返答してくれた。やはり私一人パジャマでは様にならん。

 直ぐに制服が来たので、そのままそこできがえる。悲壮な覚悟でモニタリングしていると、絶望的な映像が流れる。ドダイモドキに乗った敵MS3機が、対空陣地を正確に潰しながら突っ込んできた。

 基地上空で黒い二本角が、ドダイモドキから落ちた時はバカめと笑ったが驚きの行動に出た。背中のバーニアを噴かし降下しているのだ。そんなバカな‼MS降下可能高度より明らかに高いぞ?降下しながら、グフを1機ビーム兵器で撃墜し、何の問題もなく着地。着地と同時にブーストをかけ、ザクを2機瞬く間に切り伏せた。その後も基地内で暴れ、一分後位に現れたトリコローラルカラーの二本角と共に全MSを撃破した後、ドダイモドキに乗り悠々と帰って行った。

 暫く指令部の中で言葉を発せられる者は居なかった。

 「被害状況を調べろ‼」

 弾かれたように一変に動き出す。

 しかし凶報は続く。

 「MS製造工場半壊!復旧まで2ヶ月はかかる模様。なお、復旧までMS製造は1/3まで落ちるそうです!」

 「キャリフォルニア基地の1機を残し全MS稼働不能。稼働可能なMSはガルマ大佐専用ザクⅡです!」

 「ガウ全滅、ドップは12機のみ飛行可能です!しかし、パイロットが7名しか生き残って居ません!」

 「マゼラアタック全滅。しかし、マゼラベースとしてなら11台稼働可能です。パイロットの数は足りています。」

 「兵器製造工廟全壊。復旧の見通しは・・・・立たないそうです。」

 徐々に明らかになる、被害状況。日が明けた頃には私の目が、いや皆の目が死んでいた。これが1隻の戦艦と、MS2個小隊がわずか数分で果たした戦果だとは。

 「M粒子濃度は通信可能な濃度に落ちているか?」

 「は、はい。」

 「暗号通信を頼む。キャリフォルニアベース周辺の基地に連絡。現時刻を持って、キャリフォルニアベースを放棄する。周辺基地各員は、速やかにニューヤークに撤退せよ。以上だ。ここも撤退するぞ、全員急げ。」

 「ま、待ってください!その前にガルマ大佐だけでも先にニューヤークへ撤退してください。周辺基地にある、ザンジバルを至急呼び寄せます。まだ周辺基地のガウは多数生き残ってますので、全将兵撤退可能です。」

 「分かった。本基地のMSのみザンジバルに乗せる。残っている兵器及び文書は全部破棄しろ。生き残った者全員ザンジバルに乗艦した後、先程の命令を流せ。では急げ。」

 「了解!」

 黒い悪鬼と白い悪魔め!蒼鬼を囮に使い急襲するなど姑息な手を使いおって!見ていろ、ニューヤークから巻き返してやる!あぁ、イセリナに別れの言葉を伝えなければ・・・。

 沈鬱な気持ちで重い受話器を取るガルマだった。 

 

 

 

 

 

 

 

 




 ガルマは、坊っちゃんですが、別に無能では有りません。ただ身内に甘いだけです。って身内に甘い時点で有能な指揮官では有りませんね。
 あと、地下シェルターと基地は有線で繋がっている設定です。

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