機動戦士ガンダム 白と黒のエース<完結> 作:水冷山賊1250F
ホワイトベースブリッジ
ブライト・ノア
慌ただしすぎる夜が明けた。MS隊による戦果は確定しているが、ミサイル攻撃等の戦果は不明である。
何故なら戦果の確認もすること無く、攻撃後直ちに撤収すると言う電撃作戦だったからだ。ただ、手応えはあった。暫く基地機能は麻痺することだろう。この内に北米西部を制圧するべく、北米進攻部隊の集結場所へ移動中だ。厳重な対空監視を行いながら、集結場所に向かうのだった。
「ブライト、さっきの戦闘上手く行ったわね」
「あぁ、ミライ。上手く行きすぎているように思う」
「行きすぎ?」
「あぁ。考えすぎな気もするがな。カシマ中尉から以前、常に最悪を想定しろと言われてね、結局ブリッジから離れられないんだ」
「ブライト、貴方休んで無かったのね。何かあれば連絡するから休むべきよ。合流してからだと、作戦会議があるのでしょう?今は少しでも休みなさい」
「そうだな。オスカー、私は今から四時間ほど休んでくる。何かあったら艦長室に連絡してくれ」
「了解です」
連絡を頼みブリッジを出て行く。食堂で軽く食べるものを貰い自室への道すがら、腹に入れていく。うん、塩が効いて旨い。タムラさん、腕をあげたな~。兵士の食料はこうでなくてはならんな。
自室でシャワーを浴び、ベッドに倒れ込む。エアコンが効いて快適だ。先程のブリッジを出る前の会話を反芻し、顔がほころぶ。心配して貰えてるんだなと思うと、何故か安心し意識が遠退いて行った。
地球連邦軍本部ジャブロー作戦指令部
ティアンム中将
ただただ圧倒的だった。レビル将軍が作戦立案した一連の一大反抗作戦の事である。正式に量産されることになったジムを中心としたMSによる、キャリフォルニア周辺の軍事基地夜襲から、最後のレビル将軍お抱えのエース部隊による強襲までパーフェクトな戦果だった。あの短時間でキャリフォルニアベースに壊滅的打撃を与えるとは。いや、この作戦を立案したレビル将軍は天才だ。この作戦は、今後MSを用いた戦争の標準ドクトリンになりうるかもしれない。
周辺基地を多数の部隊で同時攻撃。中央の軍事拠点は応援を出さざるを得ない。そこへ、エースを用いた高性能MS部隊を載せた、単独大気圏突入及び離脱能力のある強襲揚陸艦による、敵中央軍事拠点の強襲作戦。この作戦は研究する価値がある!早速軍史研究部に連絡を入れなければ。
ふと、対面を見るとコリニー中将が苦虫を噛み締めたような顔をしている。ライバルと思っていた相手が、想像以上に大きかったからだろう。
本作戦は、当初成功するとは、思われていなかった。私もお止めしたが頑として聞かなかった。ジーン中将も、内心ほくそ笑んでいたことだろう。失敗すれば、レビル将軍の経歴に傷がつくし、戦力も墜ちる。一度で二度おいしかったわけだ。しかし、蓋を開けて見れば、予想を遥かに上回る大勝利だったのだ。
取りあえず、レビル将軍に戦勝の祝いを言わなければな。
「レビル将軍、大戦果おめでとうございます」
「ありがとう。この勝利は我々全将兵の勝利だ。私は作戦を立案したに過ぎんよ。頑張ったのは、現場の将兵だ」
「はい、彼らのためにも報いてあげませんと」
「そうだな。だが、この戦いで光は見えた」
「はい」
ティアンムは、歴史に名を残す英雄と共に戦える栄誉に身を震わせていた。
同場所 ヨハン・イブラヒム・レビル
うおーっ!やってくれたぜ、ホワイトベース隊。いや~っ、ギレンの野望戦法がバッチリ決まったな。
これでワシの発言力も上がった筈だ。フルアーマーガンダムをキープしても怒られない筈だ!言い訳は、
「いざという時は、一軍の将が兵の前に出て鼓舞する必要が有る」
だ。ワシ冴えてる。フルアーマーガンダムなら、防御も厚く、将に相応しき機体と言えるんじゃなかろうか?
ガンダム6号機は、エイガー少尉にあげたしね。カシマ君が鍛えたし、アムロのおとんが完成させたから、まぁ負けんでしょ。ジャブロー防衛MS隊もレベルアップしてると願いたい。ワシがキープしてるあれ、誰にやろうかの?
それにしてもジーン中将、嫌な目で此方を見てるな~。確か、ジャミトフを後援したり、コーウェイン中将を蹴落として、シナプス艦長共々極刑にしたりと、ろくなことしてなかったよな?もしかして、GP-02の情報をデラーズに流したんじゃ無かろうな?そこら辺は、詳しく覚えてないから分からん。でも警戒する必要は有る。戦後の課題だな。
連邦内で足の引っ張りあいなんかしてるから、ジオン残党に引っ掻き回されるんだよホント。ジオンを叩かなきゃならん時に、面倒な人だな。勘弁してよ。
旧アリゾナ州連邦軍集結場所
ユウ・カジマ
ガンダムピクシー改、こいつは凄い機体だ。こうも、思い通りに動くMSを我が軍が開発に成功しているとはな。このMSのお陰で、俺は生き残れたと言っても過言じゃない。ただ、パイロットの事を無視した機体だ。ノーマルスーツを着用しなければ、乗れたもんじゃないがな。
まず、1日目。作戦終了後、集結場所へ戻って来た時にそれは起こった。友軍の青いジムが、集結している連邦軍MSに襲い掛かったのだ。しかも、
「なぜ殺す!なぜ殺した!」
等と叫びながら恐るべき速さで襲いかかる。なぜ殺す?それはこっちの台詞だ。兎に角、被害が大きく成っては堪らん。集結場所に到着したばかりの俺達は、直ぐに制圧するべく動いた。
フィリップ達が牽制し、俺が突っ込む。ヤツはビームサーベルで此方に切りかかる。速いが、大振りだ。なるほど、筋は良いがルーキーだな?戦場で初めて人を殺してパニックになっているのか。マスター・キイチの道場生ではないのが不幸中の幸いだ。これなら、俺にもやれる!
大振りの攻撃を、半歩左斜め前に移動しいなす。そのまま下段に下がったビームサーベルを奴目掛けて振り抜き、奴の両下肢を切断した。慣性の法則に従い、前方に倒れ込んだ奴のバックパックを踏みつけ破壊。ついでに右上肢を切り裂き強制的に武装を解除させた。暫くバタバタ足下で暴れていたが、力尽きたのか動きを止めた。やれやれだ。
「ヒュ~ッ、やるねえユウ!」
「流石です、ユウさん!」
「いや、このMSとカシマ道場のおかげだ。どちらかが欠けていたら危なかった。」
こうして1日目の作戦は終わった。
次の夜、またもや別のジオン軍基地を夜襲。順調に敵MSを殲滅していた俺達の前に、ジオン製の蒼い機体が現れた。グフではない。新型だ。
なんと、その機体は逃げる友軍のMSを敵前逃亡となじり、切り裂いて現れたのだ。
二本のヒートサーベルを持ち、下腿部にロケットランチャーを付けた全身蒼で肩を赤に染めた機体。その動きは間違いなくエースだ。しかし、友軍を撃破するなど何を考えているのか?ジオン軍特有の、己の正義に酔っているのだろう。こいつは、生かして置いては危険だ。此処で始末する。
ロケットランチャーを射出しながら突っ込んでくる。俺は、躱しながらブルバップマシンガンからビームサーベルに換装しながら奴に向かって行く。奴が右上肢のヒートサーベルでこちらを袈裟斬りに振ってきた。俺は、左前方に1歩進み奴の攻撃をいなす。下段に下がったビームサーベルを、今度は逆袈裟に切り上げる。上下真っ二つになった敵新型は爆散すること無く上半身が前方に投げ出されて転がった。ちっ、ジェネレーターに当たらなかったのか。
そのまま動かなかったが、直ぐさま奴のバックパックを踏みつけ破壊し、両上肢を切り裂き武装解除。
「おいおいユウ、マジかよ!ソイツ間違いなくエースだぜ!?」
「凄すぎですユウさん!」
「ありがとう。フィリップ、こいつでここのMSは最後だと思うが、周辺の監視を頼む。サマナ、ミデアに連絡。敵新型を捕獲。パイロットもコックピットに居るため、陸戦隊と一緒に来るよう言ってくれ。」
「「了解。」」
こうして二日目の作戦も終了し、俺達は次の集結場所に移動した。
もう暫くしたら、ホワイトベースが此方に到着するだろう。このMSとケンドーの技が有れば敵のエース級とも互角以上に戦える。時間が有ればマスターにシミュレーション訓練をつけて貰えないだろうか?そのような事を考えホワイトベースの到着を待つのだった。
ユウ・カジマ
地球連邦宇宙軍のエースパイロット。宇宙戦闘機乗りであったが、開戦前のパトロール中にザクと遭遇。MSの必要性を訴えたため、MSのテストパイロットと成った人物。
当初から優秀なパイロットであり、元戦闘機パイロットらしく、射撃戦を得手としていた。
ジャブローで、後に《剣豪》と呼ばれるキイチ・カシマの師事を受け、MS格闘技術も開眼。以後、目覚ましい活躍を遂げる事になる。
その活躍は、友軍からは《蒼い稲妻》と呼ばれ、敵軍からは《蒼鬼》と呼ばれ恐れられた。
機体色を青くしたきっかけは、当初渡されたRX-78ガンダムピクシーが試験機のため、トリコロールカラーであったからである。このような派手な色では、戦場で目立つため、どうするかキイチ・カシマに相談したところ、今後は夜戦も多いため、ダークブルーに塗装する案を出され、直ぐさま採用する。
その後、戦果を上げて行ったため、験担ぎでそのまま使用している。
一年戦争中のスコアは、キイチ・カシマ、アムロ・レイ、テネス・A・ユングにつぎ第4位。
カジマ道場の第1期生としても有名。
カイ・シデン著 宇宙世紀100年史より抜粋
今回はかなり長く成ってしまいました。戦慄のブルー終了?作者にも今後が分かりません。
集結場所を、コロラドからアリゾナに訂正しました。
すいません、エイガー少尉に渡ったのは5号機ではなく、6号機です。本日修正しました。