機動戦士ガンダム 白と黒のエース<完結>   作:水冷山賊1250F

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 いつの間にか、20話まできました。まだ三部作の第一部も終わってないのに。
 これからも、楽しんで頂けたら幸いです。
 


第20話  ブライトとドズルの苦悩

 アリゾナ州連邦軍集結場所

 キイチ・カシマ

 ユウ少尉に連れて来られた場所で俺は固まった。なんだこれ?連邦とジオン製の蒼いMSがダルマにされて転がされている。もちろんグフではない。

 「その反応、やっぱり知ってるんですね?」

 「あぁ、確かイフリートとか言ってたかな?」

 知ってるも何も、両方《ブルー》じゃないか!どうしたの?

 「ジムは、ともかく何故こいつも生かしたまま捕獲したんだ?危ないだろう」

 本当に危ない。なんで自称EXAMに選ばれた騎士さんを生かしたんだよ!?脱獄してEXAM奪取されたらどうすんの、息の音止めてよ~っ。

 「それが・・・、中尉に教えられたイナシを使った時、半歩左前方に進むはずが1歩進んでしまいまして」

 「あぁ、間合いの内に入りすぎたんだな。ビームサーベルならではだな。普通は切れんし、逆にピンチになる。それで、パイロットは?」

 「はい、連邦のパイロットは、気絶していました。多発骨折で重症です。今は意識が回復し、臨時医療施設で安静を保ってます。ジオンのパイロットも気絶していましたが、外傷はありません。現在、留置施設で厳重に捕らえられてます」

 「そうか」

 どうすんだろこれ?2つのEXAMを破壊すれば、マリオン目覚めるのかな?でも、目覚めたらフラナガンの奴らに何処かへ連れていかれるんじゃ?

 一人の少女の人生か、多くの友軍パイロットの命か。俺には判断できない。難しい問題はレビル将軍に丸投げするか。

 「それにしても、ジオンのパイロットは痛い奴でしたよ」

 「痛い?」

 「自分の事をジオンの騎士とか言ってるんですよ」

 「なあにぃ?やっちまったな!」

 「えぇ、やっちゃってますよ。正気に戻った時、どうするんですかね?」

 「果たして正気に戻ることが有るのかな?素の人格はどうにも成らん」

 「確かに」

 「同じスペースノイドを毒ガスで虐殺した挙げ句、スペースコロニーを地球に落としておいて、自分達はスペースノイドの代表のような顔をしている。そんな指導者を是とする時点で、人として狂ってる。まぁ中には、食って行くため、家族を人質に取られてなんて奴等も居るだろうがな。だが、そう言う奴等は自分の事を間違っても騎士とは言わん。よっぽど頭の中がお花畑ではない限りな」

 だから俺はジオンが好かんのよね。赤い彗星も、赤い稲妻も直接ではないがコロニー落としの片棒を担いだんだ。デラーズやガトーなんか、立派な軍人に見えるだろうが、それを指示したザビ家の信奉者で、作戦の立案者だ。もう頭がおかしいよコイツらは。

 

 同場所 ビッグトレー作戦司令室 ブライト・ノア

 「我々だけでデトロイトをですか?」

 「あぁ、キャリフォルニアをただ1隻で実質陥落させた君達の手腕を買っているのだよ」

 「陥落ですか?」

 「あぁ、君達は急襲後直ちに離脱したから、戦果の確認が取れてなかったんだな」

 「はい、スピードが命の作戦であったため、攻撃完了後直ちに離脱しましたから」

 「そうだったな。キャリフォルニアベースは放棄されたよ。今現在、ジオンの北米大陸重要拠点はデトロイトを中心とした五大湖沿岸の工業地帯と、ニューヤークだ。我々は、ニューヤークに向けて進軍する。我々が進軍した二日後の日没後に大気圏を離脱し、目標に向けて再突入。目標はデトロイト周辺のMS製造工場と、デトロイトのジオン軍基地だ。敵MS生産能力にダメージを与えるだけでも此方に有利に働く」

 「それは、解ります」

 「君達にしか出来ない作戦だ。前回見事にやり遂げてくれた君達だ。作戦を成功してくれることを信じている。此方の進軍開始は5日後だ。それまでの間、シミュレーションで十分に訓練を重ねておいてくれ」

 「了解しました」

 私は敬礼して部屋を出た。部屋を出た後、血の気が引いていくのが分かる。またこんな重大な作戦を・・・、こんな若造に任せるなんて・・・。本当にどうしよう。

 一人途方に暮れ、重い足でホワイトベースに向かうのだった。

 

 ジオン軍宇宙要塞 ドズル・ザビ

 ガルマから緊急通信が入って来た。キャリフォルニアベースが陥落したとのことだ。俺は耳を疑った。しかし、映像データを見て考えが変わった。この新型戦艦とMSには見覚えがある。白と黒の白兵専用MSと木馬。赤い彗星の率いる特務隊を撃破し、コンスコン艦隊を殲滅寸前まで追い込み悠々とジャブローに降りて行った。

 しかも俺には分かる。このMSのパイロットは同一人物だ!この短期間でセンスだけの素人だった白のパイロットをここまで鍛え上げやがった!!ただのMSパイロットではない。

 「兄貴!コイツらは危険だ。直ちに地球方面軍にテコ入れが必要だ!!」

 「私もそう考えます兄上。このガンダムとか言う機体とパイロット、危険すぎます」

 「たかが新型のMSと戦艦だろう?何をそんなに恐れる?」

 「ただの新型戦艦じゃない!単独大気圏離脱再突入能力が有るんだ!コイツが有れば、地上のどの地域だろうと、突然成層圏付近からミサイル攻撃を受けるんだ。しかも新型MS。機体性能、パイロットの練度共に危険すぎる!」

 「たかだか2機のMSだろう」

 「いえ、増えてます。此方をご覧ください」

 キシリアが別の映像データを流す。

 「こちらは、キャリフォルニアベースが陥落する前日の周辺基地の画像データです」

 そこには、蒼い新型MSが基地所属のザクとグフを僚機の量産型MSと蹂躙している映像が流れていた。

 「更に此方の映像をご覧ください。此方は、キャリフォルニアベースが攻撃を受ける、数時間前の映像です。此方は、先程よりもキャリフォルニアベースよりの軍事拠点です」

 先程の映像の焼き直しのような映像だ。

 「ふん、ザクとグフを墜としただけではないか」

 ギレン兄貴が鼻を鳴らす。

 「いいえ、ここからです」

 MS隊が蹂躙される中、友軍のMSが撤退を始めた。勝てぬ相手だ。情報を持ち帰るため撤退するのは間違いじゃない。いいぞと思っていたところ、友軍のはずのイフリートに切り裂かれてしまった。

 「コイツ!何を考えている!いや、奪われたのか!?」

 「いえ、私の指示のもと作戦行動中でした。恐らく、機密性が高いため、友軍と言えど目撃者を消したのでしょう。それよりもここからです」

 くそっ!まあいい。見たところイフリートの改良型らしい。イフリートは割高だが、ドムよりも格闘戦能力が高い。これで行けるはず・・・。

 「「なっっ!!」」

 一瞬だった。しかも撃破ではなく、ダルマにされ捕縛されている。

 「このMSのパイロットはニムバス・シュターゼン大尉です。彼は性格に問題は有りますが、腕は確かです。地上では、ザクⅡS型より性能は上でしょう。つまり、イフリート程度ではこの新型には手が出ないのです」

 俺は戦慄した。

 「つまり、たかだか1週間で新型MSを製造し、エース級のパイロットを育て上げたと言うのか。私も士官学校の校長を経験した身だ。そのような事は不可能だ」

 「えぇ、恐らく連邦のエースに与えられているのでしょうね。しかし、敵の集結場所に侵入成功したスパイからの情報です。黒の悪鬼のパイロットはキイチ・カシマ中尉。彼はジャブローにいた間、カシマ道場と称してパイロット達を鍛え上げていたそうです。その中には蒼鬼、白い悪魔も入っており、あと数名直接彼に鍛えられたとのことです」

 「なんてことだ。あれがまだ増えるのか・・。キシリア!ガルマにランバ・ラルを送る!ガルマの護衛だ、いいな!?」

 「はい、そうして頂けたら助かります。此方も人手が足りないのです」

 「よし!今すぐ送る!ガルマには、くれぐれも奴の言うことを聞くよう言い聞かせてくれ‼」

 「ありがとうございます。分かりました」

 地球方面軍は今が最大の正念場だ。しかし此処を持ちこたえれば。

 コロニー落としでヘソを曲げた彼奴に頭を下げるのは癪だが、背に腹は変えられん。覚悟を決め部下にランバ・ラルを呼び出すよう指示するのだった。

 

 

 

 

 




読んで頂きありがとうございます。また、誤字の報告等々皆様のご指摘ご声援ありがとうございます。
最後まで完結できるように頑張ります。

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