機動戦士ガンダム 白と黒のエース<完結> 作:水冷山賊1250F
キャリフォルニアベース連邦軍臨時指令所
ブライト・ノア
北米攻略部隊の本隊が、ニューヤークに向けて昨日進撃を始めた。我々は、時を同じくしてキャリフォルニアベースに移動したが、着いて見ると無惨な状態だった。それを行った本人が言うことではないが。臨時指令所と言っても、たまたま破損が無かった施設に、通信用資材を詰め込んだような建物である。
「こんな所で悪いね。」
臨時基地司令が話しかけてくる。
「いえ、自分達にはこの基地の状態について、何かを言う権利は有りません。」
張本人だからな。
「あ~、そうだったな。すまんすまん、嫌味を言ったつもりは無かったんだ。」
「いえ、こちらもすいません。」
嫌味じゃ無かったのか。
「早速だが、これからのスケジュールの確認だ。今晩からホワイトベース及びMSの武器、弾薬及び燃料の補給を始める。明日の朝には終わってるだろうから、明日朝からは、ホワイトベース及びMSの最終メンテナンスを行う。アリゾナ州の集結場所で、ある程度のメンテナンスは、終わってるだろうから、そう時間はかからない。明日、日没後にホワイトベースはデトロイト攻略のため、キャリフォルニアベースから出撃となる。」
「了解です。」
「明日は昼まで、MSを使わないように言ってくれるか?君達のMS隊は、激しい訓練で有名だからな。いっそ、今晩は半舷休息にしたらどうかね?」
「ご配慮ありがとうございます。MS部隊長に提案してみます。」
「あぁ、そうしてくれ。ウチのPX内には、居酒屋もある。明日の日没には出撃だが、今晩位は良いだろう。」
「了解です。艦内の要員にも伝えておきます。」
「あぁ、そうしてくれ。君達には私も期待しているんだ。」
「ありがとうございます。」
敬礼して部屋を出ていく。期待されているのか。なら、応えなくてはな。半舷休息の要員決め荒れそうだな等と思いながら、ホワイトベースへ急ぐのだった。
ホワイトベースMSシミュレーター室
ジョブ・ジョン
「と言う訳で、半舷休息に成った。アサルトチームとブラボーチームとで別れて休息をとる。」
やったー!たまには羽根を伸ばさなきゃね。連邦軍の集結場所でも訓練、訓練。キャリフォルニアに移動中もシミュレーターで訓練、訓練。週休2日はどこ行ったの~って感じだったもんね。半日でも休めると思うと、嬉しくなっちゃうよ。どんだけブラックだよ、この職場!
「じゃあ、アムロとジョブ。お前らでどちらが先に休息するか決めろ。」
「えっ?自分とアムロでですか?」
「あぁ、正直俺はどちらでも良い。両チームとも、明日の昼まではシミュレーションも無しだ。残ったチームは待機室で待機だ。まぁするなとは言わんが、警戒だけにしといてくれ。休めるときに休まなければな。」
あ、あんた誰?な、何か変な物でも食ったんですか?パイロット全員が目が点になっている。
「なんだ?休みたく無いのか?このワーカーホリック共め。仕方ない・・・」
「「「「「違います、違います❗」」」」」
全員の心の声が一致した。そりゃアムロも休みたいよな。
「そ、そうか。なら、早めに決めちまえ。」
あぁ、この人も鬼じゃなかったのか。俺はリュウさんと相談し、明日の0700までを決めた。しかし、あちらも同じようだ。じゃんけんの結果、俺達は勝利した!居酒屋やっほい!
「オヤブン、居酒屋行きませんか?」
「あぁ、俺は少し事務仕事が残っててな。捌かしたらそのまま寝るよ。お前ら飲み過ぎるなよ?今度ジャブローに行ったら、全員旨い焼鳥食わせてやるよ。」
「了解!今日は軽めで済ませます。」
「おう、そうしとけ。」
手を振りながら、待機室を出ていくオヤブン。勤務時間外だったらオヤブン呼びもOKな、おおらかな人だ。それ以外は鬼だけど。
「リュウさん、早速シャワー浴びて行きましょうよ!」
「そうだな、行くか。」
二人でウキウキと基地のPXに向かうのだった。
ニューヤーク基地指令部 ガルマ・ザビ
本日日没後から北米大陸の連邦軍の動きが活発になっている。ニューメキシコ州、テキサス州にそれぞれ連邦軍が流れ込んできた。州境の軍事基地は即時撤退を指示し、それぞれの防衛拠点アルバカーキとヒューストンへ部隊を集結するよう厳命した。
「遂に連邦軍が攻勢をかけてきたか!」
忸怩たる思いでモニターを見る。隣でラル大尉は悠然と構えていた。
「何か言いたい事でもあるのかね?大尉。」
「いえ、戦略的な発言は控えさせて頂きます。私は、あくまで大佐の護衛です。」
「参考になることが有るかもしれない。良いから言ってみてくれ。」
「では、ゲリラ屋としての意見です。アルバカーキ基地及びヒューストン基地の半数から2/3をオクラホマ、アーカンソー、ルイジアナへ移動。残った部隊は基地から戦いながら撤退。敵の大部分が基地へ進入したところで、隠れていた戦闘員が予め仕込んでおいた有線式爆弾で、基地を爆破処理。残った1/3の部隊は、そのままアルバカーキ及びヒューストン近郊に潜伏。敵の補給部隊を叩き続ける。と言うのはどうですかな?時間的には、仕込みも込みでまだ間に合いますよ?」
「大尉、そう言うことは、早めに言ってくれないか?皆、聞いたな?作戦変更だ。先程大尉が具申した策に変更する。全員急げ!!」
指令部要員が慌ただしく、マイクに向かって作戦の変更を伝えていく。ランバ・ラル大尉・・。恐ろしい戦術を考える。
「まぁ、嫌がらせ程度の策ですけどね。今は、時間稼ぎの時間です。ニューヤーク及びデトロイトでドムの大量生産が間に合ってくれるまでのね。」
「そうだな、ドムの性能なら、連邦の量産型には勝てるだろう。そうすれば、二本角の指揮官機も易々と攻め込めない筈だ。各地域から、送られてきたデータはないか?二本角のMSの情報は、最優先でこちらに回せ。」
「「「了解です。」」」
「あと、木馬の情報もだ。」
「「「了解です。」」」
流石ランバ・ラル大尉。奴の高軌道からの攻撃も警戒している。兄上は優秀な人材を派遣してくれた。しかし、私を殴ってでも守り抜けとは、何を考えているのだろう?私は、そんなに信用されて無いのだろうか?いやいや、ドズル兄上の事だ。昔から私に甘かったものな。いつもの過保護だろう、兄上にも困ったものだ。
そのような事を考えていると数時間後、二本角の情報が入る。今回は蒼鬼を含めた4機。明らかに増えてる。木馬の2機が無いから実質2倍か・・・。連邦の工業力は健在か。木馬め。次はどこを狙う!?
結局、ラル大尉の作戦は、半分成功と言った所だった。基地に残ったMS隊の半数は撤退に成功し潜伏に成功したが、基地の建物は連邦のMSが銃火機で破壊。使用不能状態にしてしまった。
「警戒されているようですな。厳しい闘いになりますぞ。」
ラル大尉の呟くような言葉に頷くことしか出来なかった。
ジョブさん僅かな休息に喜ぶの巻でした。