機動戦士ガンダム 白と黒のエース<完結>   作:水冷山賊1250F

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テムおじさんが久々の登場です。


第27話  北極基地へ

 カリフォルニアベース 連邦軍臨時指令所

 ブライト・ノア

 「北極基地へですか?」

 てっきり、ニューヤーク攻略作戦に参加するものと思っていた、ICBMSで。そうだよな、もう2回も使ってるんだ。そろそろ、対抗策の一つや二つ作ってるだろうと考えても、おかしくない。

 「そうだ。君達が先日強襲したデトロイトだが、北米のMS製造の一大拠点であったらしく、ジオン軍の動きが明らかに悪くなっている。北米攻略は、このまま押し込めば勝てる算段が付いた。諸君らは、北極基地へ向かい、新型ガンダムのテストをしてもらう。その後、新型ガンダムを受け取り、ベルファストへ向かってくれ。詳細は北極基地で伝えられるはずだ。」

 「「了解。」」

 カシマ中尉と敬礼して退出しようとしたところ、

 「あぁ、今回の功績でベルファスト基地到着後、君達の部隊は一律昇任される予定だ。これくらいしか出来ないが、今後とも励んでくれ。」

 「ありがとうございます。」

 この基地の司令官は、良い人だったな。俺達の様な実験部隊にも気をかけてくれる。連邦軍でこんな人は、あと何人いるだろうか?将兵に、労いの言葉一つも掛けれない将校が多すぎる。特権階級に胡座をかいてばかり居るから、こんな戦争が起こったのだろう。

 まぁ、大量虐殺したジオンは許せないがな。戦後はジオンを除いたスペースノイドと友好的な関係を作らなければな。そんなことを考えながら、ホワイトベースへ向かった。

 

 ホワイトベースパイロット待機室

 キイチ・カシマ

 「と、言うわけで、俺達は今から北極基地へ向かう事となった。暫くは実戦から離れるため、シミュレーション訓練を増やす予定だ。全員集中して励んでくれ。」

 「「「「了解。」」」」

 うん、良い返事だ。

 「出航は本日1900時だ。出航前に忘れ物がないか、各自確認しておけ。まぁ、無いとは思うがな。俺からは以上だ。」

 「隊長、新型ガンダムの試験は誰がするんですか?」

 アムロ君は頑なに俺をオヤブンとは言わない。良いんやで?

 「おそらく、俺かアムロ軍曹だな。」

 「了解です。さっそく自分と、シミュレーター訓練をして頂けないでしょうか。」

 「おう。出航まで少し時間が有るからな。他に居ないか?」

 アムロ君たら、お父さんが造った新型ガンダムに興味深々だな。結局、全員でシミュレーター訓練をすることになった。

 

 ホワイトベースブリッジ ブライト・ノア

 新型ガンダムの試験と運用をホワイトベースで行う事になった。新型の試験と運用に縁の有る艦だな、ホワイトベースは。それだけ我々が信頼されているという証かもしれない。ますます責任がのしかかる。まぁ、半分以上はカシマ中尉にだが。

 あの人は、顔に似合わず料理も趣味らしい。どれだけ多才なのだろうか。ビーチで頂いたヤキソバなる料理は確かに旨かった。あの人、独身を拗らせて一生独身になるんじゃないだろうか?

 「ブライトどうしたの?ボーッとして。あと一時間で出航よ?」

 「あぁ、昨日の昼食で食べたヤキソバが旨かったなと、思い出していてな。あの人多才だなと思ってな。悪いな、少し気が抜けていたようだ。」

 「いえ、まだ時間は有るし、良いんじゃない?」

 「すまんな、久々の休暇で楽しみすぎたようだ。」

 「二人で魚釣りしたんですって?カシマ中尉は、そちらの才能も有るの?」

 「いや、釣りは趣味の域をでないな。」

 「でも、二人で凄い量の魚を釣り上げたって、タムラさんが驚いてたわよ?」

 「あ、それほぼ俺だ。カシマさんは、3匹程度だったな。でも楽しそうだったよ。」

 「そう。MS隊の隊長と艦長の仲が良くて良かったわ。仲違いでもされると、勝てるものも勝てなくなるから。」

 「確かにな。あの実力で、上から目線で他の隊と軋轢を生まない。逆に他の隊の生存率を上げるために、合同訓練も組む。なかなかで出来ることではないな。もちろん、ブリッジクルーを下に見ることもない。出来た兵士だよ。さすがは、レビル将軍お抱えのMS隊隊長だな。」

 「それを言うなら私たちもよ。連邦で唯一ICBMS 作戦実行のクルーよ。自信もっていきましょう。」

 「そうだな。」

 ミライに激励されてしまった。まぁ、悪い気分じゃ無い。あと一時間で出航か。最終チェックを始めるか。

 

 北極基地MS格納庫 テム・レイ

 「もうすぐ彼らが来るんですな。」

 RX-78 NT-1を見上げ、モスク・ハン博士が呟いた。

 「えぇ、私の息子とその上司がね。」

 僅かな誇らしさと、大半を占める罪悪感。サイド7入港前に少し話した幹部候補生の青年。彼に、息子の様な若い者が戦わなくて済むと話したのは、遠い昔の事の様に思われる。そのガンダムに息子が乗ることになるとは。運命とはなんたる皮肉か・・・。

 そして、息子の輝かしい戦果に、誇らしく思う自分もまた存在する。

 自分自身なんたる業の深さか。何と言葉で言い繕おうとも、所詮人殺しの兵器を造った人間だ。

 しかし、だからこそ、この戦争は勝たねばならん。自分が間接的に、また息子が直接に、その手を血に染めたのだ。あのような虐殺者どもに正義を騙らせる訳には行かない。せめて息子だけでも生き残れるよう、全力を尽くすだけだ。

 「今頃は、カリフォルニアベースを出た所だろう。息子達が来てからが、このMS開発の佳境だ。博士、私に力を貸してくれ。」

 「もちろん。その為の私。その為のマグネットコーティング理論だ。すでにG-3で成果を出している。大船に乗ったつもりで安心したまえ。」

 鼻息の荒い隣の男と共に、新型ガンダムを見上げるのだった。

 

 ホワイトベースパイロット待機室

 カイ・シデン

 「リュウさん、俺は新型ガンダムに乗ることはないかなと思うんだけど、もう少しマシな機体になる予定とか無いの?」

 「ん?たとえば、ガンキャノンに試作型のブースターを取り付けて、両肩にパージ可能なスプレーミサイルランチャー付けて、腰にはビームサーベル取り付けて、近接用にブルバップマシンガン持たせて、左前腕にスパイクシールド取り付けた様な、変態マシンに乗りたいのか?」

 「リュウさん、増えてますよ。スパイクシールドは付いてませんよ。それに変態て・・・。」

 「いや、あれはもうガンキャノンじゃ無いだろ?中距離支援MSの影も形も無いじゃないか。ジャブロー帰還までの苦肉の策だと思ってたが、なんで今も使ってるんだ?ジャブローでちょっと見たガンダム6号機の方がよっぽど中距離支援MSだったぞ?ガンダムって白兵専用のMSだろう?開発陣はどんだけ迷走してるんだって話だ。まぁ、お前の場合あれで戦果上げてるから何も言えんが。」

 「いや、リュウさん、ジョブさんの機体ネタは良いですから、俺達の機体ですよ。ガンキャノンって所詮支援MSでしょ?」

 「いやいや、その支援MSも奥が深いぞ?ICBMSでどんだけ活躍したよ?俺は、ガンキャノン良いと思うね。支援用だからか、センサーは充実してるぞ?」

 「まぁ、確かに。後ろから狙い撃つのは、ある種の快感がありますね。」

 「だろ?後はポジショニングが出来れば良いから、そこまでの機動性は必要ない。もう少し火力が有ればとも思うが、俺やカイクラスの腕なら、ガンキャノンがベストだよ。」

 「じゃあ僕はどうですかね?」

 「ハヤトはな~、悩むんだよな。近接が上手いのに、性格的に中距離支援なんだよな。だからオヤブンも追加武装の多い陸戦型ジムにしたんじゃないのか?どっちにしても筋は良いんだ。もしかしたら、陸戦型ガンダムへの乗り換え有るかもな」

 「僕、頑張ります!」

 「おう、けど死に急ぐなよ?ジョブみたいに。」

 「さっきからちょくちょくネタにするの止めて貰えません?」

 パイロット待機室では、和気あいあいとしながらホワイトベースは一路北極基地へ向かうのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




次回は親子の再会です。

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