機動戦士ガンダム 白と黒のエース<完結>   作:水冷山賊1250F

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 皆様おまちかねの、あの人達です。


第33話  アグレッサー部隊と

 マドラス基地MSドック

 チェイス・スカルガード

 地球連邦軍に亡命して、解った事がある。上層部のトップがマトモなら、組織として信用出来ると言うことだ。

 ジオンからの亡命者である俺とハイウェイ中尉を、そのままの待遇で受け入れてくれた。俺は、MS開発中からテストパイロットの教官となり、その後はアグレッサー部隊となり、東南アジア方面で戦う事になった。

 その時俺に与えられたMSは、RX-80PRレッドライダーだった。裏切り者の俺にだぞ?なんて待遇だ。ハイウェイ中尉には、最新鋭のジム・スナイパーカスタムだ。二人して唖然としたのを今でも覚えている。

 そんな俺達に、レッドライダーの運用試験担当のサノ少尉はこう言ったんだ。

 「レビル将軍は、同じスペースノイドの虐殺を良しとせず、ジオン軍を見限った彼等は人として信用できるとおっしゃってました。私も同意見です。」

 ってね。ジオンじゃあ考えられない。

 「どうしたんだ、チェイス?」

 「あぁ中尉、連邦に亡命してからの事をボンヤリ思い出してました。」

 「そうか、済まなかったな、巻き込んでしまって。」

 「いいえ、中尉に付いて来たことが正解だなと思っていたところですよ。外から見たら解る。今のジオンは狂ってます。同じスペースノイドを虐殺して、自分達はスペースノイドの代表者面。正気の沙汰じゃ有りません。それに比べて連邦はどうです?軍内で発生した非人道的な行為は、判明次第に即処罰。自分達が正気でいようとする努力を怠らない。それに、俺達の待遇。何もかもが、ジオンとは違う。」

 「そうだな。前々から思っていたが、俺達の祖国は奴(ギレン)のせいで確実に滅ぶだろうな。」

 「でも狂信者達は死ぬまで戦うんでしょうね。」

 「奴等の寿命も長くはないさ。連邦に殺られるか、部下や、他の部隊に殺られるだろう。投降しなけりゃあな。」

 「将軍は、甘いからね。投降すると助命しそうですね。」

 「あぁ、確実にするだろうな。ま、将校クラスは、軍事裁判にはかけられるだろうがな。」

 「おーい!ハイウェイ中尉~。お客さんだよ~。」

 ロッコがカークランド中尉を連れてきた。

 「やあ、ハイウェイ中尉。今良いかな?」

 「大丈夫です。何か有ったのですか?」

 「レビル将軍から直々の命令だそうだ。1330時にコジマ大隊長のオフィスに出頭だ。」

 「貴方もですか!?」

 「あぁ、俺もだ。タフな作戦への参加だろうな。頭が痛いぜ、全く。」

 「ははは、了解です。1330時にコジマ大隊長のオフィスに出頭します。」

 「ま、お互いに生き残ろうぜ。」

 「そうですね。」

 戦いの時は近いのか。次はどこへ行くのだろう。

 

 マドラス基地 コジマ大隊長オフィス

 トラヴィス・カークランド

 「オデッサ作戦ですか?」

 「あぁ、諸君等には、ペキン攻略からは外れて貰う。オデッサ作戦の後方攪乱任務だ。アグレッサー部隊は、一週間後の作戦開始と同時にテヘランに向かってくれ。その後、ホワイトベースと合流。共同で作戦に参加してくれ。第20機械化混成部隊も、テヘランへは一緒に行ってくれ。テヘラン解放後はテヘランの防衛を頼む。マドラスからの増援が着き次第、周辺のジオン軍基地を攻略してくれ。第20機械化混成部隊の最終目標はスエズ運河の確保だ。」

 こりゃ~ハードな作戦だな、お互いに。

 「「了解しました!」」

 「余計な事は言わん。生き残れ、良いな。」

 「「はっ!」」

 敬礼をして出ていった。廊下に出ると、廊下の先から嫌らしい目をした士官?が見ている。

 「何か用ですか?」

 「貴様等、ジオンの狗がこのままで済むと思うなよ!貴様等が俺の命令どおりに動いていたら、こんなことには!!」

 彼は何を言っているのだろう?連邦にもこんな士官が生き残っているんたな。

 「ダグラス・トランブル元大尉、誰に向かって言っているのだね?」

 コジマ大隊長がオフィスから出て来た。本当、大隊長のオフィスの前で騒ぐなんて、どうして今まで生き残れたんだろう?

 「コジマ中佐、貴方は間違っている!こんな薄汚いジオンの連中は、使い捨てにするべきだ!!私のような優秀な士官を、前線に配置するなど以ての外だ。なぜ分からん!!」

 凄い錯乱ぶりだな。仮にも上官に敬語も無しで。大丈夫なのか?連邦軍では?

 「やれやれ、君は疲れているんだな、戦争に。」

 ぞろぞろと保安要員が集まって来た。やっぱり連邦軍でもダメなのね。

 「現時点から君の軍籍を剥奪する。なお、相当参っているようだ。後方の精神病院に強制的に入院して貰う。なに、入院費用は軍が持ってやるよ。出られるかは分からんがな。連れていけ。」

 保安要員に連行されながらも汚い言葉を吐き続ける元大尉。

 「誇大妄想か。戦争と言うのは、本当に悲惨だな。あのような、無能な人間がどうして優秀だと思えるのか。君達も気を付けてくれ。部下に心が病んでる者が居たなら遠慮なく言ってくれ。手遅れにならん内にな。」

 ぼそぼそと話し、オフィスに戻る大隊長。ホントにな。

 「やはり、連邦軍は違いますね。」

 ハイウェイ中尉が話しかけてきた。

 「そうだな。平和な時は無能な奴等がのさばっていたんだろうが、戦争になってそういう奴は消えて行ったな。作戦の内容を吟味する部署が出来たみたいだ。本当、凄い将軍だよ。」

 「確かに。私達を使いこなしている時点でそれが分かります。」

 多分、そこまで分かって無いな。俺達は表に出せないような汚い作戦をやらされてきた。それがいきなり、正規の作戦にスレイブレイスの装備で参加することになった。俺達に命令していた黒幕を、あの将軍は捕らえ処罰したのだ。

 それだけじゃない。俺達に説明に来た士官が、レビル将軍からの謝罪の言葉まで持って来た。信じられない。この戦争後は軍を抜けても良く、連邦市民権も貰える事になった。

 俺達は事情を聴取されただけで、処罰なんか無かった。こんな人が軍のトップとは。連邦軍の人材の豊富さに、驚かされたものだ。

 「あぁ。その将軍からの直々のミッションだ。なんとしても成功させなきゃな。そう言えば、そちらはレビル将軍麾下のエース部隊と一緒に作戦に就くのか。大変そうだな。どんな無茶なオーダーが入るやら。」

 「まぁ、うちの少尉が元々筋が良かったとベタ褒めしてた奴が隊長張ってるみたいだけどね。どんな風に成長したのか。一手手合わせしてみたいと言ってましたよ。」

 「いや、鬼の様な強さだと思うぞ?聞いただけでも一隻の戦艦とMS隊が為した物とは思えん。プロパガンダかとも思ったが、それにしてはえげつない。舐めてかからない方が良いと伝えといてくれ。」

 「了解です。確かに伝えます。」

 ま、本当の所は分からんがな。精々テヘランで実力の一部でも見せて貰いますか。

 一週間後の作戦を、一昔前には考えられない気持ちで待つことになるのだった。

 

 

 




 グレイブ(ヴ)被害者の集合です。

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