機動戦士ガンダム 白と黒のエース<完結> 作:水冷山賊1250F
テヘラン基地 ホワイトベースMSデッキ
キイチ・カシマ
「カシマ大尉、本当に腕を上げたんだな~。見違えましたよ。」
「チェイス・スカルガード少尉、いや、教官殿。教官の教育の賜物ですよ。お蔭で生き残る事が出来ました。」
「教官は止してください。もうあなたの方が階級は上です。チェイスで結構です。」
「じゃあチェイス少尉、その敬語は止めてくれ。少なくともこの作戦の間は。正直気持ち悪い。」
「分かった。これで良いか大尉?」
「あぁ、それで良い。ハイウェイ中尉にも伝えといてくれ。」
「了解した。ところで大尉、今じゃそちらの方が完全にパイロットとして上だ。実機で訓練とは行かないが、シミュレーションで一手手合わせ願えないかな?」
「もちろん、OKだ。今すぐやるか?」
「もちろん。時間の許す限りお願いする。」
「了解、シミュレータールームに行こう。」
シミュレータールームへの道すがら、うちの若い連中にチェイス少尉を紹介した。
「じゃあ、俺はレッドライダーで行く。そっちはスプリガンか?」
「あぁ、手加減はしない。」
「望む所だ!」
2~3回程シミュレーター訓練をすると、チェイス少尉が声を掛けてきた。
「どうなってんだ?そっちの格闘モーション。完全に後出しでこっちが手玉に取られっぱなしだ。」
「気付いたか。これは旧世紀に廃れたジャパンで行われていた剣道の動きだ。隙が少なく、最短の軌道で剣を振るう事が出来る。」
「なるほど、接近戦にはかなり有効だな。俺に教えてくれないか?」
「あぁ。但し条件がある。」
「条件?」
「うちの若い奴二人が中距離支援MSなんだが、俺は狙撃の素人でな。ハイウェイ中尉にご指導願えないかな?ギブアンドテイクでどうだ?」
「分かった、早速中尉に聞いてくる。少し待っててくれ。」
慌ててシミュレーターから飛び出し、電話に飛び付く。
「ここは、内線202か。放送ボタンと。」
《ピンポンパンポーン連絡します。ハイウェイ中尉、内線202まで連絡ください。ピンポンパンポーン。》
行動が早いな。直ぐに内線が入り、チェイス少尉が受話器を取り話し出す。どうやら良い返事を貰えたようだ。
「OKが出た。直ぐにこちらに来てくれるそうだ。」
「そんじゃ、少し待つか。そうだ、チェイス少尉もうちのジョブとハヤトの相手をしてくれないか?いつも同じメンバーだと、経験がな。」
「お安い御用だ。そんじゃ、早速やるか?」
「「お願いします!」」
さあて、初見殺しのジョブはどこまでやれるかな?楽しみだ。
ジョブは、始めは様子見しながら攻めていたが、チェイス少尉がリロードしようとした隙を見逃さず突っ込んだ。もちろん、チェイス少尉はフリをしていただけで直ぐに攻撃してきたが、左腕のシールドで重要な部位を隠しながら構わず突っ込む。良いぞ、逃がすなよ~。何かおかしいと感じたのか、全速で離れていくレッドライダー。バカ、早いよ。焦ったのかジョブの奴スプレーミサイルランチャーを両方とも一斉射した。うん?左肩にダメージ判定?運が良いな。よし、攻め込め!・・・
しかし、地力の差でやはりやられてしまった。
「何だあのMSは?俺がザクだったら殺られてたぞ!ガンキャノンの要素どこ行った!?」
「やっぱりビビりました?俺が鍛えたんですよ。MSはガンダムの製造責任者が魔改造してくれましてね。」
「あぁ、ビビったよ!ガンキャノンだからさ、しぶとい戦いするのかと思ったら、超接近からの広範囲殲滅の強襲用MSかよ。」
「この戦法なかなか良いと思うんですけど、なんか強化に良い案有ります?」
「うーん、」
「なんか楽しそうな話をしてるなチェイス。」
「あ、中尉。お疲れ様です。」
「お久し振りです。うちの部下2名のご指導よろしくお願いします。」
「いやカシマ大尉、敬語は止めてください。」
「じゃあ、そちらも止めてくれ。少なくとも、この作戦の間はな。」
「了解した。これで良いか?」
「あぁ、大丈夫だ。おーい、カイ、リュウこっちに来い。紹介する。」
「「はい。」」
二人とも直ぐ近くに寄る。
「二人とも、此方がハインツ・ハイウェイ中尉だ。中尉は、作戦立案及び狙撃技術に優れた方だ。二人には中尉から狙撃技術を学んで貰う。ハイウェイ中尉、リュウ・ホセイ准尉とカイ・シデン軍曹だ。二人とも狙撃については素人と思ってくれて良い。厳しく頼む。」
「了解した。よろしくな二人とも。早速あちらのシミュレーターで二人の腕を見せて貰うよ。」
「了解です。」
二人はハイウェイ中尉に付いていく。一つでも多くの事を学べれば良いな。
「よし、そんじゃシミュレーターに俺の近接戦用モーションパターンを入れたレッドライダーを使ってみようか。ジョブとハヤト相手にシミュレーション訓練を続けてくれ。アムロ、俺達はあっちで訓練だ。」
「了解です。」
新しい人材と合流し、色々と技術交流が始まった。うちの連中もスキルアップしてくれることだろう。俺も頑張らなきゃな。
「総員に告ぐ。近くにモニターが有るものはモニターを見てくれ!カシマ大尉及びハイウェイ中尉は、至急ブリッジに来てくれ。以上だ。」
ブライトが慌てているようだ。何か有ったのか?俺達は訓練を中断し、パイロット連中は待機室へ、俺とハイウェイ中尉はブリッジに急いだ。
ホワイトベースブリッジ
ブライト・ノア
「「「い、一騎討ち~!?」」」
俺とカシマ大尉とハイウェイ中尉が一緒に叫んでいた。な、何の冗談だ?
「そ、その手が有ったか・・・。」
「ん?どういう事だ中尉?説明してくれないか。」
この一騎討ちに意味が有るのか?
「え~っと、本当に合っているか分かりませんよ?」
「構わん。君の意見で良い。正直、俺には一騎討ちをするメリットが全然解らん。」
「そうですね。一つは、あなた方が原因です。」
「私達が?」
「えぇ、カリフォルニアベース及びデトロイト。この二つの都市及び防衛拠点は、基地機能だけでは無くMSの生産をも受け持ってました。」
うん、そうだな。それは分かる。
「しかし、あなた方の苛烈極まる強襲で基地機能はおろか、生産能力もほぼ失いました。」
え??
「特にデトロイトは一からMS製造工場を作らなければならない程の被害を受けたそうです。このままニューヤークに北米攻略軍が突入すれば、まず間違いなく勝てるでしょう。ですが、MS生産能力を失い、基地機能すらも失うおそれが高い。どちらも現在の連邦軍は欲しいはずです。そのためには、降伏を受け入れてくれれば良いがおそらくそれは無理。」
「まぁ、それはそうだろう。」
「しかし、殿軍の将が理性的な指揮官で、元ガルマ・ザビの指揮下の者であれば話は変わる。」
「なぜだ?」
「ガルマ・ザビは侵略軍の将であるにも関わらず、民からの信を得ていた。決して不正を許さず、民に寄り添った治世を行ったらしい。わずか数ヵ月だがな。それに、北米の上流階級の者を集めよくパーティーを開いていたらしい。そこで意見交換し不満が起きないように治めていたらしい。生半可な政治家には出来ない事だ。将としてはともかく、政治家としては一流と言って良い。その彼の部下が、北米で拠点としていた地域を道連れにメチャクチャに出来るだろうか?ただでさえ悪名高いジオンだ。ガルマも苦労したはずだ。」
なるほど。
「だが、指揮官が理性的とはどうやって知ったんだ?」
「この一週間の戦闘で捕虜は出るだろう?誰がガルマの副官で、殿軍を指揮しそうかなど直ぐに分かったはずだ。」
「なるほど。」
「そこで知ったはずだ。相手はブリティッシュ作戦に反対し、一度は軍を逐われた青い巨星。高潔な武人として有名だ。その彼に、勝てば全員の撤退を見逃すと約したんだ。ニューヤーク市民の前で。市民のほぼ全員が証人となるこの状況で、提案を無視すればやはりジオンは市民の事など考えない輩だと思われるだろう。なに、勝てば良いのだと思ったに違いない。彼にもMS乗りとして自信があるはずだ。実際に凄腕だ。」
なるほどな。しかし負ければ問題だぞ?
「負ければ問題になるんじゃないか?」
「いや、負けても良いんだ連邦は。」
「なぜだ?」
「負けても、基地機能が丸々残っている基地と、MS生産工場が手に入る。奴等は撤退してくれるからな。」
「なるほど。」
「そして、この映像は連邦軍のプロパガンダになる。こちらは正々堂々戦い、市民及び敵兵士の命さえも考慮した戦いを続けていると。失うものがなく、どちらに転んでも美味しいんだ、連邦軍は。」
なんという慧眼だろう。この人がジオンに居たらと思うとぞっとする。
「ありがとう中尉、よく分かった。なるほどな。」
カシマ大尉以上の頭脳かもしれん。一度ご教授願えないだろうか?
そんな事を考えていると、一騎討ちが始まった。結果はユウ・カジマ中尉の圧勝だった。
「蒼い稲妻か、良い得て妙だな。連邦軍は人材が豊富だな。ん?カシマ大尉どうしたんですか?」
カシマ大尉が小刻みに震え、ブリッジ内は沈黙が支配していた。あのシャイなパイロットが二つ名を嫌がっているのを知っているからだ。仕方ない、教えてあげるか。
「あ~中尉、カジマ中尉にはその二つ名は言わないであげてくれよ。彼はその手の呼ばれ方を嫌がっている。」
ハイウェイ中尉はきょとんとした顔をして
「あぁ、了解です。分かりました。」
カシマ大尉を見て、彼はため息をこぼしていた。
宇宙世紀始まって最初で最後になるだろうMS同士の一騎討ち。しかしこの戦いで勢いは連邦軍に大きく傾いた気がした。
ジョブさん魔改造計画継続中です。リュウ、カイコンビのスナイパー化計画始まりました。