機動戦士ガンダム 白と黒のエース<完結> 作:水冷山賊1250F
ジオン軍オデッサ基地 基地司令執務室
マ・クベ
ついに、連邦のオデッサ攻略が始まろうとしていた。欧州方面の総司令官ユーリ・ケラーネ少将も厳しい内心を隠せないで居るようだ。
「大佐、これはもういかんな。勝ち筋が見えん。テヘランに送った黒い三連星とも連絡が途絶えた。ドムを渡したエースでも殺られたと見た方がいい。」
「そうですな。もう、地上での戦いは限界でしょう。しかし、宇宙に戦場を移したとして、この状況が好転するとは思えません。」
「いや、そうとは言えん。開発の中止を決定されていたのだがな。ここに来て、その有用性が増してきた。」
「何の事です?」
「現在、ギニアス・サハリン技術少将が開発を進めている、新型MAアプサラスだ。メガ粒子砲を装備し、ミノフスキークラフトで単独で成層圏迄上昇可能。現在のジオン軍の状況を打開する鍵となり得る。」
「その技術少将は、今どこに?」
「ラサの秘密地下工房で実験と試験を繰り返している。こちらに呼びつけ、宇宙で早期完成をして貰いたいのだが。」
「いけないのですか?」
「本人が変に頑固でな。直ぐにでも完成させると言って地下から出てこん。あちらも状況は悪化して危ないんだがな。今さらこちらに来るのも危険が伴う。そこでこれだ。」
少将はデータチップを取り出した。
「開発継続を餌に提出させたアプサラスの設計図及び今までの実験データだ。私が送り込んだ部下にも確認させたが、データの改竄等はないとの事であった。」
「よくそのような物を提出しましたな、技術少将は。」
「たとえこちらが建造しても、開発者はギニアス・サハリンである事を発表すると誓ったからな。あいつは、サハリン家の再興が大願であったからな。」
「なるほど。ここで死んで、開発者の名が残らない可能性を嫌ったのですな。」
「あぁ、そう言うことだ。そこでここからが問題だ。誰がこれを本国もしくはソロモンへ届けるかだ。」
「そのような重要度の高い案件は、少将がお願いします。私は、オデッサ基地の司令官です。この基地を離れる訳には行かない。少将は欧州全域の総司令ですが、それも残るは恐らく当基地のみ。脱出することをお薦めします。いえ、言い方が悪かったですな。是非とも次回の資源輸送HLVで脱出してください。ジオン軍の興廃はそのデータにあるかも知れんのです。上層部の説得は少将にお頼りする他ありません。ジオン公国の独立を勝ちとるためにも、ここは恥辱を飲んで頂きたい。」
「そうか、しかし貴官は。」
「大丈夫です。今まで送った物資でジオンは、あと十年近く戦えます。折を見て投降するか、水爆を起動させて爆発させますよ。」
「そうか、だが水爆は止めておけ。連邦は今理性的に戦っている。憎きジオン軍を相手にな。だがな、箍が外れたら、奴等何をするか分からんぞ?俺は未来の同胞に恨まれたくはない。」
「了解です。ではいざとなったら・・」
「あぁ、投降のタイミングは貴官に一任する。ジオンの名に泥を塗るような真似はせんでくれよ?」
「了解です。」
何がジオンの名に泥を塗るだ。もう私達は虐殺者だ。変に格好付ける上官等いない方が良い。私達はもう勝つしか道が無いのだ。それが分からんとはな。ティアンムのあの放送のお蔭で我が軍の士気はガタガタだ。少将の地位に在る者でさえこのザマか。
数多くのスペースノイド(同胞)の血で勝ち取った優勢な戦況も、一年と経たずに覆されそうになっている。ここで何としても巻き返さなくては取り返しがつかない。せめて、水爆で奴等を消滅させなければな。私は、どのような汚名も被る覚悟がある!あの軟弱なランバ・ラルとは違うのだ。たとえ地獄の業火に焼かれても、一人でも多くのアースノイドを道連れにして見せる。
オデッサ近郊 サラブレッドブリッジ
ヨハン・イブラヒム・レビル
ティアンムさんにお願いして、ニューヤークで美談を作って貰った。そしたら、ジオン軍の士気はガタ落ち。ヨーロッパ方面軍は快進撃を繰り返してます。いやあ、ユウ中尉が出撃したら雑魚は逃げる逃げる。一部のエースが突っかかるけどピクシー改とG-3のコンビネーションで瞬殺デス。フィリップさんも、ジムドミナンスで手堅い戦いを繰り広げてるし、あの部隊ホワイトベース並みのエース部隊になってね?そりゃユーリ・ケラーネ少将もオデッサに逃げる訳だよ。
ユーグさんも7号機を中心に息の合った連携で、ジオン軍のMSを次々に墜としている。
サラブレッド隊の2機のガンダムも想像以上に戦っている。ガンキャノン部隊との連携も良好なようだ。ユーグさんにやられて眼が覚めたそうだ。良いよ~。訓練に参加させた甲斐が有ったよホント。近接戦能力も上がったようだし、言うこと無いね。
かつてこんなに戦力が充実したオデッサ作戦が有っただろうか。いや無い。思わず反語的表現も出ちゃったよ。
「ロンバート艦長、部隊の集結状況はどうか?」
「はっ。ほぼ全艦がほぼ無傷で集結出来てます。ビッグトレー等の足が遅い地上戦艦が遅れておりますが、恐らく明日の朝には到着予定です。」
そうです。ワシビッグトレーに乗ってません。強襲揚陸艦に乗ってます。だって遅いんだもん、あれ。しかも今回は、カシマ道場でレベルアップしたガンダムが2機居るんだから、こっちの方が安全じゃね?ガンダムに乗れないなら、せめてガンダムの近くで。って最前線ですけどね。
「そうか、後方攪乱部隊の配置はどうか?」
「既に予定ポイントに到着しているそうです。ゴーサインが出次第、攻撃可能との連絡が入ってます。」
「了解だ。艦長、大変ではあるが監視を厳重にしてくれ。MSパイロットはホワイトベース隊方式で仮眠は交代で取ってくれ。」
「えぇ、ベルファスト基地での対応は見事でしたからね。流石はあの修羅場を生き抜いたパイロット達です。参考になります。」
「そうだな。彼らの大半はまだ未成年だ。そんな彼らが頑張ってるんだ。大人も負けてはいられんよ。では頼んだ艦長。私は、少し休んでくる。」
「了解です。何かあれば端末に連絡します。」
「あぁ、それで頼む。」
ブリッジを出て個室に向かう。明日はタフな1日に成りそうだ。寄る年月には勝てんね。ワシは一足先に仮眠させて貰います。
集結したガンダム
2号機・・・バニング中尉(不死身の第4小隊)
ピクシー改・・・ユウ・カジマ大尉(第11独立機械化混成部隊)
3号機・・・マサキ・アンドー少尉(同上)
4号機・・・ルース・カッセル中尉(サラブレッド隊)
5号機・・・フォルド・ロムフェロー中尉(同上)
7号機・・・ユーグ・クーロ中尉(第41MS小隊)
8号機・・・キイチ・カシマ大尉(第13独立戦隊)
NT-1・・・アムロ・レイ曹長(同上)
1号機と6号機はジャブローでお留守番です。