機動戦士ガンダム 白と黒のエース<完結>   作:水冷山賊1250F

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 レビルさん、肝を冷やすの巻


第41話  オデッサのその後

 オデッサ基地指令部 

 ヨハン・イブラヒム・レビル

 ちょっと~、絆創膏男~、どういう事~?ミサイルに水爆装填されてたんですけど!?え?何?起爆装置は作動しないようになってたって?そんなんアムロ君がゾーリに乗せたアレックスでぶった斬りましたよ。え?失敗しても爆発は無かった?そうなの?なんかアムロ君、凄まじい殺気を感じたって言ってたけど?そりゃ核兵器だから凄まじい殺気はあるだろうって?分かった、そう言うことで納得しとくよ、今回は。

 ところで、各サイドで全住民の疎開とか発生してない?今はない。そうですか。もし、有ったらそのサイドの監視をよろしく。絶対に見失うことの無いように!

 ふう、肝を冷やしたレビルです。

 ジオン軍の生き残っていた全将兵が、素直に投降してくれて良かったよ。どうやら、オデッサから退避してゲリラ化している部隊も無いようだ。どうやら将兵も、ザビ家やマ・クベ大佐に愛想が尽きたようだ。そりゃ、自分達を餌にされた様な物だからな。

 どうやら今回の水爆騒ぎはマ・クベ大佐の独断であったようだ。奴の副官によると、ユーリ・ケラーネ少将は、マ・クベに核の使用を固く禁じており、防衛が無理となれば投降するよう伝えていたらしい。そんな事を言っても、実際に後を任された男はあんなことやっちゃう男だった訳で。そんなことは言い訳にはなりません。サラブレッドブリッジの映像を世界に流しちゃいました。ジオン軍卑怯成りってね。戦争に卑怯ってあったり前じゃんって?ま、そうなんだけどね?でも、それは勝った時だけ許される開き直りですよ。戦争にもちゃんとルールは有るんだ。それを破れば、然るべき処置を受ける事に成る。勝てば受けなくても良いかもしれないよ?勝てば。

 でも、負けた上に汚い真似をやりましたでは最悪となる。やはり、決められた事は守らないとダメだ。

 世論は連邦軍に、有利に働いている。さて、この後は、ジャブローに帰ってティアンムさんと合流だな。あと、アムロ君を昇任だ。あれが無ければヤバかったかもしれなかったからだ。全将兵いや、敵味方の民間人を含む全世界に、第13独立戦隊が知れ渡ったはずだ。発射された核ミサイルの、起爆装置だけを破壊するスーパーエースがいることを。これからは、彼を含むニュータイプと言われる人を守らなければな。そう言えばワシもニュータイプだっけ?全然なにも感じないんだけど。

 

 オデッサ上空 ホワイトベースパイロット待機室

 ジョブ・ジョン

 イヤッホイ、オデッサ作戦完了だ~。そのまま北米経由でジャブロー行きが決定した。やっと休める~。オヤブンも上機嫌で、ヤキトリの約束を覚えてくれていた。生き残って良かった~。アグレッサー部隊の皆さんとはオデッサで別れた。別口でジャブローに帰還するんだってさ。まぁホワイトベースにこれ以上MS乗らないからねえ、ドムが2機入ってるから。あれ、何に使うんだか。まぁ、またどこかの戦場で会えるでしょ、あの人達とは。気の良い人達だったな~。オデッサが陥落して降伏して来た兵を涙を流しながら見ていたっけ。やはり、何か思うところがあったんですかと聞いたら、

 「南極条約を違反したにもかかわらず、きちんと将兵の降伏を受け入れ、必要の無い暴力を振るってもいない。元ジオン軍として感謝に絶えない。最低な事をしたけど、マ・クベ大佐が最後にレビル将軍に言った言葉は胸を突いた。レビル将軍のような人達が、もっと早く連邦軍を・・・。」

 後は、言葉に成らなかった。チェイスさんも、色々苦労したんだろうな。ヤキトリ屋さんの場所をオヤブンが教えていたから、一緒に呑めないかな~。戦争は本当に嫌だけど、戦争が無ければあの人達に会うことも無かったんだな。と言うか、ギレンが虐殺なんかしなければ、この人達ジオン軍に居たのか~。考えただけでゾッとする。絶対墜とされてたわ俺。運命ってホント分かんないもんなんだな。

 

 オデッサ基地取り調べ室

 マ・クベ

 フム、誰が来るかと思えばレビルか。今更、私に何の用だ。下の連中に任せれば良いものを。

 「やあ、大将殿。連邦軍は、取り調べも出来ないボンクラ揃いかね?大将ともなれば仕事も多いだろうに大変だな。どうだね?ジオン軍で働かないか?もっと楽をさせてあげられるよ?私の下でね。」

 「折角のお誘い痛み入るが、私は少し聞きたいことが有ったから来ただけだよ。司令官殿。」

 フム、聞きたいことか。

 「私が、機密を話すとでも思っているのかね?見くびられたモノだな。」

 「そんなことは聞かんよ。ただ知りたかっただけだよ。君は文化芸術に造詣が深い。そんな君がなぜ戦争に荷担した?文化芸術を知っているなら判る筈だ。戦争は文化芸術を破壊する害悪である事を。」

 「そのような事か。簡単だよ。それだけでは食って行けなかったからだ。芸術には何時の時代も貧困が付きまとう。それにな、今のスペースノイドに芸術に金を出せる人間は極一部だよ、地球と違ってね。私は軍人に成るしかなかった。」

 「そうか。しかし、ならばなぜ核ミサイル等と言う暴挙に出たのだ?君なら判るだろう。失われた命が戻ることが無いように、失われた芸術もまた戻ることがないということを。」

 「ははは、レビル。私はギレン・ザビから、オデッサ失陥の折りには地球上の全ての主要都市に核ミサイルを発射するよう密命を帯びていたのだよ。ギレンの言う優性人類生存説など便所紙にも劣る屑だな。だけどな、レビルよ。あれだけのスペースノイドを虐殺してしまったのだ、我々は。せめて、自治独立位は勝ち取らねば、殺された彼らに顔向けも出来んよ。」

 「何を勝手な事を。スペースノイドの自治独立を勝ち取ったとして、彼等にどのような顔をして会えると言うのだ。あそこには、赤子や、子供達。ただの恋人達や夫婦もいたんだぞ!?それを情け容赦なく殺しておいて、どのような言葉をかけられるのだ!?目を覚ませ!何時までも己の不幸や境遇に酔い痴れるんじゃない!何度も言うぞ、他人に死を強いる指導者のどこに真実があるのだ。それが分かっていて、なぜ奴に力を貸す。貴様ほどの男が情けない。暫く頭を冷やせ。貴様らがどこで間違ったのか思い返すんだな。」

 レビルが言いたい事を言って出ていった。どこで間違ったのかだと?決まっている。武力を用い、戦争を始めた時点で我々は終わっていたのだ。そうだな、私は銃殺にでも成るのだろう。これで楽に成れるのかもな。目の前に出された冷えた紅茶を飲み、瞑目する。かえすがえすも、奴がもう少し早く連邦軍を掌握していればな。

 有る筈の無い未来を想像し、静かに自嘲した。

 

 




 糞のような現実を知りながらも、命令されればやり抜く人物。って感じのマ・クベさんって感じになりました。

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