機動戦士ガンダム 白と黒のエース<完結>   作:水冷山賊1250F

48 / 120
 ジャブロー防衛戦後です。


第47話  夜明けのジャブロー

 地球連邦軍本部ジャブロー 捕虜収容所

 ランバ・ラル

 フム、外の騒ぎが収まったか・・・。どうやら負けたようだな、我が軍は。我々ジオン軍北米方面軍の殿軍は、ここジャブローで捕虜収容所と作業場との往復しかしない毎日を送っている。捕虜交換の話もあるのだが、上手くいかない。どうやら、私がネックとなっているようだ。

 ジオン本国は私の引き渡しを要求している。私を多くの将兵を救った英雄にでも祭り上げる気か?真っ平御免だ。もう、義理は果たした。後はお前らザビ家でどうにかしてくれ。ここまで悪化した戦局は、もうどうにもならん。宇宙市民の自治独立か。恐らく、この戦争が終わり、ジオンが滅んだ後にその夢は叶うのだろう。連邦も分かった筈だ。宇宙市民の収入を貪り、内から腐ったからこの戦争は起こった。その腐った性根をレビルを始めとした軍人が粛清し、連邦軍は立ち直ったのだろう。多くの宇宙市民を犠牲にし、始めた戦争ももう終わるだろう。意味はあったと思いたい。でなければ、救われないからな。おっと、歩哨が来たか。

 「全員起きてるな?昨夜はジオン軍がここを攻めて来たため、今日の作業は中止だ。君達も五月蝿くて寝れなかっただろう?そんな時に作業をしてもケガの元だ。今日はゆっくり休んでくれ。あぁ、飯は三食出るから心配するな。以上だ。」

 捕虜が沸き上がっている。この穴蔵の暮らしもそう悪くない。強制労働と言ってもそんなハードな労働ではない。アサ○や、キリ○と言ったビール工場の一部で働くだけだ。なお、夕食にはそこで出来たビールも一本付くという厚遇ぶり。もうジオンに帰りたくないって奴もいるぐらいだ。そうだな、命のやり取りなんかよりよっぽど建設的だ。自分達が作ったビールを飲ませて貰えるのだ。コロニーに帰ったら、皆でビール工場を建てようなんて言い出す奴もいる。そんな未来が来ると良いな。ま、早ければ年内に母国には帰れるだろう。

 「すまんね、考え事をしてたのかな?」

 収容所の看守が話しかけて来た。

 「いや、何でもない。何か用ですか?」

 「あぁ、お前さんに面会だよ。」

 「尋問ではなく?」

 「あぁ。別に軍事的な話がしたい訳じゃ無いらしい。ほんと、我等の英雄様は訳が分からんね。」

 「分かった、行こう。身体検査をしてくれ。」

 「了解。」

 身体検査は3人で行う。一人が金属探知機で調べ、残り二人が私と検査員に銃口を向け、監視している。もし私がこの検査員を倒そうとも、検査員諸共射殺する構えだ。ほんと、油断が無くなったよ組織として。

 「OKだ。付いてきてくれ。」

 看守に付いて行き、面会室の椅子に座る。暫くすると、レビル将軍がやって来た。

 「やあ、待たせたね。」

 「いや、今着いた所だ。それより暇なのか?上は大混乱だと思ったが?」

 「いや、それほどでも無かったよ。要塞の一部施設が破壊されたがたいしたことじゃない。あれほど、警戒せよと命令してたのにトランプなんてしてるから死ぬことになる。そんな奴も、MSで戦闘し死んだ兵士も一律に二階級特進だ。割に合わんよな?」

 「まぁ、命懸けでトランプしたんだ。ってなんでトランプしてたのが分かる?」

 「全ての防衛施設内には監視カメラが有ってな。そこが敵の手に墜ちてないか確認が必要だろう?」

 ごもっともだ。それで最後の映像がそれか。

 「なら、配置換えすりゃって一々見ないか。そんな映像。」

 「そう言う事だ。っと、余計な話をしてしまったな。なあ、ラル大尉。名前を変えて、地球連邦軍で働く気はないか?何、この戦争の間だけで良い。」

 「どういう事だ?貴方なら分かるだろう。私はスペースノイドを裏切ることは出来ぬ。」

 「そうだな。スペースノイドを裏切ることは出来んだろう。では、この写真を見てくれ。」

 レビルは一枚の写真を取り出した。連邦軍の女性士官が写っている。

 「この女性に見覚えはないか?」

 フム、連邦軍の女性士官に顔見知りはいない筈だ??!?!?

 「これは!!」

 「大声を出すな。周囲の者に気取られたらどうする。」

 声を殺して尋ねる。

 「いや、どういう積もりだ?なぜこの方が、連邦軍で働いている?」

 「偶然だよ。君達がサイド7を強襲しただろう?その時に避難民として、君らが言う木馬、ホワイトベースに乗艦したんだ。それでそのまま、正規のクルーに成ったと言うわけだ。本当だよ?」

 「それで私に何をさせる気だ?」

 「簡単な事だ。彼女を守って貰いたい。ザビ家からも、ダイクン派からもな。もちろん連邦軍内の過激主義からもだ。彼女は今まで様々な苦労をしてきたのだろう。もう、大人の都合で振り回したくは無いのだ。頼めないか?」

 「分かった。しかし、そう言う事なら、内勤にしてやれないのか?」

 「そうしたいのは山々だがな、何の理由もなく配置換えは出来んのだよ。彼女は優秀でな。別段、ホワイトベース内でも、人間関係は良好のようだ。此方が大々的に保護に乗り出すとどうなるか分からん。鼻の良い奴は何処にでも居るからな。得てしてそう言う奴に限って厄介な奴と繋がっている。ゲリラ屋として鳴らした君にしか頼めんのだよ。」

 「了解した。全力を尽くさせて頂く。」

 「ありがとう。成功しても表立って表彰できない依頼だ。私個人の貸しにしてくれて良い。」

 「そうか、そうさせて貰うか。では、私の名前はどうする?顔も全世界にバレてしまっているぞ?」

 「もちろん、整形手術を受けてもらう。ホワイトベースに着任は三日後だ。作戦が成功次第、元の顔に戻って頂く。仮の名は、何も無かったらクワトロ・バナージと名乗ってくれ。」

 「分かった。所でその名前の意味は?」

 「ザビ家、ダイクン派、連邦のどの勢力にも付かない、4つ目の目線と言うことでクワトロだ。姓の方は、まぁ適当だな。」

 「了解した。彼女をどの勢力からも守り抜こう。」

 フム、クワトロ・バナージか。悪くない。

 

 アフリカ大陸キリマンジャロ基地

 ノイエン・ビッター

 ロンメルからの通信が途絶えた。この基地はもう戦えるものはいない。彼が宇宙に上がる時に傷病兵も一緒に連れていって貰おう。なに、殿は私がすれば良い。一人でも多くの兵を、ザンジバルに乗せるんだ。

 「ビッター少将、マッドアングラーから暗号電文です。」

 「来たか。読み上げろ。」

 「天候悪化により、登山隊下山中。ニイタカヤマケワシ。以上です。」

 「よし、直ちに迎えを寄越すと解答。ザンジバルに宇宙戦可能なMSを乗せろ!後マッドアングラーは、殿軍撤退の援護をさせる。急げよ?」

 なんとか間に合いそうだ。ザンジバルの打ち上げ後に当基地は放棄だな。まぁ、ブービートラップの一つも作りたいのは山々だが、北米ではニューヤーク以外の基地施設は、奴等の手で爆破処理していたらしい。無駄だな。さっさと逃げるに限る。

 「良いのか?貴君らは私と残っても良いこと等一つもないぞ?」

 「少将一人に良い格好はさせられませんよ。」

 「なあに、やばくなれば投降すれば良いんです。悪いようには成りませんよ。」

 「すまない。これから、ザンジバルを打ち上げ次第、潜伏することになる。これからも協力を頼む。」

 「ジーク・ジオン!」

 「ジーク・ジオン。」

 この若者達を戦場に連れてきたのは、我等の罪だ。この戦争がどのような形で終わろうと、私はその責任を取ろうと心に決めた。

 

 

 

 

 

 

 




バジーナでは有りませんよ?

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。