機動戦士ガンダム 白と黒のエース<完結>   作:水冷山賊1250F

53 / 120
 赤い人と会います。あの格好って絶対おかしいですよね?イケメンだから許される??


第51話  迷える赤い彗星

 サイド6宇宙港ホワイトベースパイロット待機室

 キイチ・カシマ

 なんだかこの前から艦の中が浮かれている。気を引き締めるためシミュレーター訓練をすれば良い格好を見せ付けたいのか、いつも以上に身が入ってやがる。アムロなんか、質量の有る残像と見紛うばかりの変態機動を披露。サイド6へ入港からのこの頃は、俺の勝率はとうとう50%台に落ちてしまった。

 「隊長、もう手加減は止めて下さい。」

 な~んて言いやがって!お蔭でこちとら皆に隠れて訓練の毎日ですよ!とほほほほ。もうそろそろアムロに勝つのは無理かね~?いや!諦めん!まだだ、まだ終わらんよ!アムロの戦闘データの三割増しで殺ってやる。

 約1時間の訓練で勝率2割か。こりゃ、ア・バオア・クー戦辺りになれば俺勝てなくなるかもな?チートだよな~あの成長率。そりゃ連邦も軟禁したくもなるな、ハハハハハ。は~~。

 「お疲れ様です大尉。」

 「ん?セイラ軍曹か。珍しいな、シミュレータールームに来るなんて。クリス中尉か?」

 「い、いえ。シミュレータールームに電気が付いていたもので、気になってしまって。大尉だけなんですか?」

 「あぁ、ここにはな。待機室の方にはリュウ、ジョブ、ハヤトにクワトロ大尉が居るが、他は非番だ。ま、俺もなんだがな。やること無いから、シミュレーターで訓練三昧だよ。」

 「まぁ。なら、丁度良かったですわ。少し買い出しを頼まれましたの。付き合って頂けたら助かるんですが。」

 「ん?良いよ。じゃ、2番ゲート付近で待っていてくれ。直ぐにシャワーを浴びてくる。車は荷台付きが良いか?」

 「はい、食料品の買い忘れなので、そこまではないと思いますけど。」

 「じゃ、荷台付きの車の手続きをしててくれ。直ぐに行く。」

 「ありがとうございます。」

 さてと、シャワーでも浴びに行きますかね。手伝わないなんて言って、《軟弱者!!》なんて言われながら平手は喰らいたくない。くわばら、くわばらだ。さっさとシャワーを浴びて準備しますか、怒られたくないしな。なんか、時々顔を赤くして睨んで来るんだよな。なんかしたかな俺?まぁいいや。今回の荷物持ちで、少しは改善するでしょう。精々点数をかせがせて貰いますか。あ、後コロニーの天気表もチェックだな。

 

 サイド6市街地エリア

 セイラ・マス

 キイチ大尉と二人で買い出しが終わり、少しドライブをしていると、スタックした車が有った。あら、アムロ君みたい。直ぐ手前に停めて、キイチ大尉が話しかけた。

 「どうしたアムロ?スタックか?」

 「はい。すいません大尉、助かりました。買い物ですか?」

 「あぁ、忘れ物が有ったらしい。後輪か。少しタイヤの空気を抜いてみるか。」

 「え?なぜです?」

 「ん?タイヤの空気を抜くと、接地面積が広くなるだろ?スピードは空気を補充するまで出せないが、地面をタイヤが掴めるから抜けやすく成るぞ。試してみようか。あ、ワイヤーが載ってたな。引いた方が早いか。アムロ、そっちにワイヤーをかけてくれ。」

 「了解です。」

 「準備は良いか?」

 「はい。OKです。」

 さくさくと、二人で車をぬかるみから引き出しました。流石に男性が二人いるとさばけますね。なんだか楽しそうです。

 「よし、そんじゃ気をつけて行けよ?」

 「ありがとうございました~~!」

 どこかへエレカーを走らせながら手を振るアムロ准尉。

 「どちらに行かれるのでしょう?」

 「ん?クリス中尉と待ち合わせしてるとか言ってたな。なんか、白鳥のいる湖が有るとか・・・。」

 「デートですか?」

 「さあな。ただのお国自慢かもよ?彼女はここの出身らしいし。それじゃ、そろそろ」

 そう言った大尉が、突然私を抱き締めました。何があったの?こんな真っ昼間から!!ただただ硬直した私達、いえキイチ大尉に泥水の水飛沫が引っ掛かりました。

 そういう事・・・。ちょっと残念。

 「大丈夫か?」

 車から真っ赤な制服を着た、どこか見覚えの有る男が出てきました。

 

 サイド6市街地エリア

 シャア・アズナブル

 ララァの運転するエレカーでドライブしていたところ、若い男女に泥水がかかってしまった。車をゆっくり止めさせ、私は車から出て相手に問いかける。

 「大丈夫か?」

 「あぁ、俺に少し泥水がかかっただけだ。大したことじゃない。」

 フム、話せる御仁のようだ。

 「すまなかったね、なにぶん運転手が不慣れな者で。」

 「良いさ、お蔭で少しはレディのナイト役を出来たからな。」

 レディ?ん?アルテイシア?!?!?

 「そ、そうか。そちらのレディは。」

 「あぁ、大丈夫みたいだな。ジオン軍の将校さん。あんた、赤い彗星か?」

 「どうしてそれを。」

 「なに、ここで事を構える気はない。ここは中立コロニーだ。戦場では何度か会ったな。ここで会ったのも何かの縁だ。俺の名は、キイチ・カシマ。黒いガンダムのパイロットさ。」

 「き、君が。そうか、改めて名乗ろう。私はシャア・アズナブル。赤い彗星と呼ぶ者も居るらしいな、黒の悪鬼さん。」

 「そっちではそう呼ばれてんのか俺は。かーっ、こっぱずかしいな。ところでそっちはデートかい?」

 随分気安く話しかけて来るな。まあ、良いか。

 「あぁ、そんなとこだ。クリーニング代位払おうか?」

 「いや、これは貸しにしとくよ。それよりも一つ聞きたい事が有る。良いか?」

 「なんだね?この際だ。話せる事なら、話そう。」

 「じゃあ一人の男として聞くが、なぜジオン軍にいる?スペースノイドの独立を謳いながら、同じスペースノイドを毒ガスで虐殺し、その大地を地球に落とした奴等になぜ力を貸す?答えろ!シャア・アズナブル。」

 随分、真っ直ぐな眼で俺を見て、答えにくい質問をするのだな。

 「連邦の腐敗が原因なんて言葉を吐くんじゃ無いぜ?あんた自身に聞いてるんだ。なあ、俺達は殺し合わなければ成らない運命なのか?中立したコロニーでは、こうして話し合える。泥水が掛かった俺達を、あんたは心配し、声をかけてくれた。あんたは普通に好い人みたいだ。俺達はまだ分かりあえるんじゃあないのか?」

 「私にジオンを棄てろと?」

 「今のジオンの何処に正義が有るよ?虐殺者どもに手を貸し、その名を汚し、これ以上なんの得が有る?教えてくれ。」

 こいつ、私の正体を知っている?

 「君は、私の事が分かっているのか?」

 「ん?ジオンのエースだろ?それ以上知りはしないさ。だがな、本当はあんたにも分かっているはずだ。倒さなければ成らないのが誰かってことも!」

 奴の後ろに宇宙が見える??どうしたのだ、私は!

 「大佐!」

 ララァの回りにも宇宙が広がっている。アルテイシアも?これは??

 「ニュータイプ同士が共鳴したとでもいうのか?」

 「それを言うなら、あんたもだな。シャア・アズナブル。全てを時代のせいにするなんて、情けない真似はするんじゃ無いぜ??なあ、あんたもこの前まで地球にいたんだろ?じゃあ地球の人にも会ったはずだ。あんたが地球で会った人達の全てが、命を奪って良いような人達だったのかよ?」

 「それは、、、」

 答えられない。なぜ私は。迷っているのか?

 「まあ、良い。答えはいつか聞かせてくれ。それが戦場では無いことを祈るよ。」

 私の周りの宇宙が消えた。なんだったのだ、先程の経験は?

 「キイチ・カシマ。君は・・・。」

 カシマがアルテイシアを連れていく。アルテイシアが心配そうに此方を見てきた。

 「そうだな。いつか戦争が終わって、ゆっくり話せるようになったら良いな。でも、それまでは俺は戦う。特に今回の虐殺を容認したザビ家の信望者達は潰さなければならん。牙を剥くなら手加減はしない。じゃあな、赤い彗星。」

 「あぁ、漆黒の剣豪殿。」

 連邦での二つ名を、あいつにかけてやった。奴は手を振り、アルテイシアと消えていった。

 「大佐・・・。」

 「ララァ、アイツが私達の敵だ。しかし・・・。」

 「大佐。あの人に邪心や邪念は有りませんでした。ただ・・・。」

 「ただ、なんだね?」

 「未来を凄く憂いていました。このまま憎しみが広がるのを。」

 それは解る。いや、感じたと言うのが正解か。必死に何かを訴えていた。私に?いや、私達にか。

 「ララァ、私達も少し考えなくてはならんようだ。」

 「はい、大佐。私は大佐にどこまでも着いて行きますわ。それだけは、忘れないで下さい。」

 「ありがとう。助かる。」

 それ以外の言葉は出て来なかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




さあ、原作ブレイクに拍車がかかりました。セイラさん、サイド7以来の兄妹再会でした。

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。