機動戦士ガンダム 白と黒のエース<完結>   作:水冷山賊1250F

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 レビルさん、とっておきの機体とうとう無くなるの巻


第56話  コンペイトウにて

 コンペイトウ指令室

 キャスバル・レム・ダイクン

 

 宇宙要塞ソロモンは、ものの数時間で落とされた。圧倒的な物量ではなく、その実力によって。主力艦隊を温存し、ティアンム中将率いる攻撃艦隊を中心とした部隊だけで落とされたのだ。名前もソロモンからコンペイトウと改められた。

 「キャスバル大佐、どうだったかね、後方から観戦して。我が軍の実力は?」

 名将レビル。この人物が造りあげた、いや、一から造り変えたのだな連邦軍を。

 「見事でした。ティアンム中将の指揮もさることながら、各部隊が己の為す役割を把握している。これでは、ジオン軍に勝ち目は薄いかと。」

 「ははははは、そう言って貰えると、私の気も休まるよ。それで、気は変わらないのかね?」

 「はい。やはり、私はパイロットです。最前線で戦う力が今は必要であると考えます。多くの犠牲を出さぬためにも。」

 「そうか、私としては君には最前線から引いて貰いたかったのだがな。君には多くの部下を率いる立場に立って貰いたいのだが。」

 「将軍、今更それは無理です。私は開戦からこっち、パイロットとしてしか功を揚げておりません。」

 「そうか、仕方ない。だが、無理はしないでくれよ?君には未来の地球圏を背負って貰わなければならないのだからな。」

 「将軍!それは余りにも荷が勝ちすぎます!」

 買い被られては困る。私は一人の人間だ。それを教えてくれたのは、貴方ではないか。

 「ん?ははははは、また勘違いしたのかね?何も君一人で背負えと言ってるんじゃない。君の後ろの彼も、これから君が出会うであろう同士も。皆で背負って行くのだよ。そして受け渡して行くんだ。次の代にね、我々がそうしてきたように。そして少しずつ、改善して行くんだよ、少しずつだ。焦ってはいかん。焦りは何も産み出さないよ。」

 この人は・・・。敵わないな。ティアンム中将等、周りの将官も無言で頷いている。

 

 「君の決心が変わらなかったのならば仕方ない。君にある物を渡そう。付いて来てくれたまえ。あぁ、レイ少佐、例の物は準備出来ているかね?」

 「えぇ、ご要望どおり、カラーリングもバッチリ終わってます。」

 「そうか、ご苦労だったな。君にとっては余り気の進まない機体だったろうに。」

 「いえ、将軍の先見の明には驚かされてばかりです。このような形で引き渡されるとは思いもしませんでした。」

 なんだ?ティアンム中将を中心に、他の将校も安堵の表情を浮かべている。

 「ははははは、おだてても何も出んよ?では行こう。レイ少佐、案内してくれ。」

 「はっ!」

 

 

 コンペイトウのMSドックへと連れて行かれた。私の後ろにはシャリア・ブルやララァ等投降した時から一緒にいる者も付いてきている。ドアが開くと、そこには赤い二本角のMSが有った。

 「ガンダム・・・。」

 暫し言葉を失う。さしものシャリア・ブルもこれには驚いている。

 「型式番号FA-78-1。フルアーマーガンダムです。重装甲、重武装により質量が増加したため、各部にバーニアを増設。ガンダム本来の戦い方は出来ませんが、スピードは上がっています。また、各装甲をパージすることにより、ガンダムとしても活用可能です。もちろん、マグネットコーティングは施工済みです。」

 「うむ、素晴らしい。将が搭乗するに相応しい機体だ。流石はレイ少佐だな!」

 「お誉めにあずかり光栄ですレビル将軍。内心、将軍がこの機体にお乗りになるのではないかと、ヒヤヒヤしておりました。」

 「ん?ははははは。私より適性の有るパイロットは幾らでもいるよ。連邦軍は人材が豊富だからな。」

 「御見逸れしました。」

 「で、どうかねこの機体。受け取ってくれんかね?」

 「この機体を、、、私に。」

 「あぁ。この戦争を早く終わらせようとする想い。それは立派だ。最前線に立ってでもそれを為そうと言うのはな。だが、想いだけでは敵わない事もある。また、力だけでも駄目なのだよ。今の君にならば分かる筈だ。」

 「想いだけでも・・・、力だけでも・・・。」

 「うむ。だから君にはこれを預けよう。必ず生き残ってくれ!」

 「了解しました。必ずや、生き残りご期待にそってみせます。」

 「うむ。頼んだよ。レイ少佐、キャスバル大佐にこの機体のレクチャーを頼む。私は指令室に戻り、今後の作戦を検討する。」

 「畏まりました。大佐、こちらへ」

 レイ少佐に促され、コックピットへ向かう。この機体を任された責任。今更になって両肩にのし掛かる。

 「大佐、貴方は一人では有りません。私や、ララァ少尉もおります。全員で生き抜くのです!」

 「そうだったな。やはり君のような部下が居てくれて助かるよ。今後も宜しく頼む。」

 「はっ!」

 そうだ。私は独りでは無いのだ。あの頃とは違う。何も出来なかったキャスバル坊やの頃とは。新たなる想いを胸に、ガンダムのコックピットへと歩をすすめるのだった。

 

 

 コンペイトウ内廊下

 ヨハン・イブラヒム・レビル

 

 あぁ。ワシのフルアーマーガンダム・・・。ムーア同胞団に必要が無くなったから今度こそと思ったのに。

 

 それにしても今更ゲルググて、そりゃ無理だよキャスバル君。あれで戦おうとしてたの?もう、周りの奴等も止めろよ。まぁ、あんなに感激してくれたんだ。もう隕石落とそうなんて考えんでしょう。精々スペースノイドとアースノイドのために頑張って貰おうじゃないか。

 あぁ。ワシのガンダム・・・。

 

 それにしてもギレンめ。ソロモンが墜ちたのに和平交渉すらしないとは。やはり、ソロモンは捨て石か。こちらがソロモンから出撃したところを、ソーラレイでも浴びせるつもりなのだろう。しかし、そうはいかんぞ!そちらの動きは既に掴んでいる。まだ目が覚めてないようならば、キツイ一撃を覚悟しておけ!

 この悲劇の元凶に対し、怒りに燃えるレビルであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 




 すいません、今回はかなり少なくなりました。
 将来サザビーや、ナイチンゲールなんて言う重MSに乗るから良いですよね?

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