機動戦士ガンダム 白と黒のエース<完結>   作:水冷山賊1250F

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作戦の開始です。


第58話   オペレーションメテオ

 ホワイトベースMSデッキ

 ジム・ストライカー+ ジョブ・ジョン

 

 これが恐らく最後の作戦か。サイド7からこっち、常に最前線に放り出されていたような気がする。そして、極めつけがこれか。

 まぁ、オヤブン達の考えた作戦だ。間違いは無いだろう。逆にこの作戦が失敗すると言うことは、誰が考えても失敗するって事だ。それぐらい俺達の中ではオヤブンの評価は高い。

 「全員よく聞け。今から、目の前のデカブツ。ソーラ・レイと言うらしいが、そいつをぶっ壊しに行く。恐らく、この戦いが俺達の最後の戦いになるだろう。しかし、ここで俺達が失敗すれば、多くの連邦軍の将兵が死ぬことになる。失敗は許されない厳しい戦いになる。全員油断すること無く、目の前の敵を打ち倒せ。今まで通りやって行けば、今の俺達ならやれる筈だ。交戦規定は唯一つ!」

 「「「「「生き残れ!!」」」」」

 「そうだ。全員で帰還するぞ!」

 「「「「「おう!」」」」」

 これで何度目となるだろう。オヤブンからの作戦前の訓辞が終わった。そうだ。生き残るんだ。こんなイカれた奴が始めた戦争で死んでたまるか!

 

 

 ホワイトベース ジム・ドミナンスコックピット

 クワトロ・バナージ

 

 いつ聞いても愉快だな。交戦規定は唯一つ、生き残れか。こうやって彼等はサイド7からの戦いを生き残って来たのだろう。

 唯の少年兵や、パイロット候補生の生き残りをかき集めて、戦力に仕立てあげる。それだけでも大変なのに、全員一流と言って良い程に成長させた。ま、多少尖った一点豪華主義は否めないが、それを隊全体としてカバー出来ている。一兵卒とするには惜しい人材だな。

 「クワトロ大尉、ホワイトベースの事を頼みます。」

 「あぁ、任せてくれ。君達も死ぬんじゃないぞ?」

 「えぇ、生き残りますよ。なんとしても。」

 「それで良い。若い奴等が死んで行くのは見たくない。全員でジャブローのヤキトリを食べれないからな。」

 「そうですね。死ねない理由がまた一つ出来ました。」

 「そうか。そう言う理由は幾らでも作っておけ。キイチ大尉の事だ。若いウェーブにお守りの一つでも貰ったか?」

 「え?えぇ、まぁ。一つ貰ってはいます・・ね。」

 なんだ?歯切れの悪い。ん?大尉の表情・・・。まさか!

 「ブワッハッハッハ!流石大尉だ!これは何としても生き残って貰わねばな。」

 「えぇ、そのつもりです。」

 本当におもしろい男だ。ダイクン家の行く末、この目で見守らねばな。連邦にハモンを呼ぶとするか。新しい戸籍を貰わなければな。

 

 

 グレイファントム MSデッキ

 G-3コックピット マサキ・アンドー

 

 もうすぐ作戦開始時間か。まさか、僕がこんな大切な作戦に参加出来るとは。人工的なニュータイプとして、実験台になり死んでいくものだとばかり思っていた。

 ジオンのニュータイプ研究所襲撃とか、色々な戦いに参加したな。ジオンでも俺と同じような人が存在した。レイラ・レイモンド。彼女を救出出来ただけでもこの戦いに参加した価値が有る。その戦いももうすぐ終わる。連邦軍には、これだけ《力》を持った人が参加するんだ。でもジオン側は・・・。研究者っぽい気配と、小者臭がする軍人ばかりだ。最後の仕上げとしては、呆気ない戦いになりそうだ。

 グレイファントムの主砲が発射される。続いてミサイルだ。

 「ブルー1、ガンダムピクシー改、ユウ・カジマ出る。」

 ユウ隊長がカタパルトから射出された。続いては、《俺》だ。

 「ブルー4、G-3、マサキ・アンドー出る。」

 今日も蒼い稲妻さんのフォローに回りますか!

 

 

 ソーラ・レイコントロール艦

 グワジン改ブリッジ アサクラ大佐

 

 「襲撃!?どこからだ!!」

 「11時の方向!木馬と思われる戦艦が4隻!凄いスピードでこちらに迫っています!!」

 木馬だと!?それも4隻!!レビルめ、ソーラ・レイの存在に気付いていたか!!

 「MS隊を出せ!相手はたかが4隻の船だ!」

 あの阿婆擦れがこのタイミングで合流したのは、正直助かった。生まれは兎も角、腕だけは立つからな。

 「海兵隊のMSを前面に出させろ!!」

 「了解!」

 これでなんとか成るか。ギレン総統のご慧眼には頭が下がる。

 「海兵隊と連絡が取れました。モニターに映します。」

 「おや、アサクラ大佐。慌ててどうしたんだね?」

 「連邦の艦が攻めてきた。海兵隊で奴等を蹴散らして来い。お前らなら簡単な仕事だ。」

 「何を言ってるんだね?もうこっちは始めてるよ?」

 「後方の海兵隊、友軍を攻撃中!被害が広がってます!」

 「何をしている!!敵はあっちだ!そんな事も分からんのか!」

 「間違っちゃないさね。今までろくに補給も寄越さず、汚れ仕事の命令だけ寄越す。そんな私達があんたらを助けるとでも思ったか?使い潰そうとしていた癖に!」

 「誤解だ!あれらは命令だったのだ!マハルの乞食のメスガキを使ってやった恩も忘れたのか!」

 「耳を貸す気はないね。待ってな、今から貴様をぶっ殺しに行ってやる。精々頸を洗って待ってるんだね!」

 通信が切れた。やはりマハル生まれの阿婆擦れか。早々に使い潰しておくべきだった。

 

 

 ガンダム1号機 コックピット

 ヤザン・ゲーブル

 「ちっ!雑魚どもが。数だけは多いな!沈めってんだよ!」

 「ヤザン、落ち着け。このままやれば俺達は勝てる。」

 ブランめ、何を落ち着いていやがる!このガンダムがジムに遅れを取ってるんだぞ?

 「そう言う問題じゃ無いんだ!チンタラやってたら、アイツに置いてかれちまう!」

 「中尉さんかい?あの人は特別だよ。カスタマイズされたとは言え、ジムであんなに動けるなんてねぇ。」

 ライラめ、知った風に言いやがって。

 「うるせえ、ライラ!俺達とアイツとどう違うってんだよ!」

 「そりゃ場数かね?それより良いのかい?また先に行かれちまったよ?」

 「チクショウー!!」

 始めの内は、エイガー少尉を笑っていた。ジムの後ろに隠れるガンダムなんてな。だが今は笑えねえ。なんなんだよアイツ!

 「ほら、中尉にじゃれつくのもいい加減にしな!次行くよ次。」

 チクショウ!今に見ていろ。

 次の目標を定め、ガンダムで襲いかかる。二匹の獣が、戦場を蹂躙していく。端から見れば息が合っているように見えるのだった。

 

 

 ガンダム7号機コックピット

 ユーグ・クーロ

 

 フム、ユウ・カジマ大尉とマサキ・アンドー少尉か。ユウ大尉は昔聞いたことが有る。確か、連邦宇宙軍所属のエースだったような。

 しかし、マサキ・アンドーなんてパイロットは聞いたことが無い。俺が知らないだけで、あんなパイロットもいたんだな。おっとそこか!ムサイの陰からゲルググがこちらを狙っていた。回避行動を取り、反撃。ビームライフル2射で沈める。

 「よし、このポイントは抑えた。サラブレッド隊が来るまでここを確保する!全員気を抜くな!」

 「「「おう!」」」

 一方的に進んでいる。もう、こんな悲劇を繰り返す訳にはいかん!あの兵器は徹底的に破壊させて貰う!

 こちらに襲いかかる敵MSを排除しながら、決意を固めるのだった。

 

 

 ジムスナイパーカスタム コックピット

 ハインツ・ハイウェイ

 

 作戦宙域まで俺達が来れるかが、この作戦の成否だったようだな。ジオンはMSは多いが、腕は一人前に成ったってレベルの奴ばかりだ。上手い奴もいるが、そう言う奴は真っ先に墜とされる。

 「チェイス、手前の奴を狙え!後ろの奴は任せろ。ロッコ、そこはもう移動しろ。六時の方向にムサイの残骸が出来た。そこに移動後、ポイントタンゴの奴を狙撃だ。」

 「「了解!」」

 ソーラ・レイか。自分達のコロニーを兵器に転用するとは、今に始まった事では無いが、狂ってるな。これを連邦軍が接収したらどうするつもりだったのだ?全てのスペースノイドが、これで狙われる事になる。アースノイド至上主義者がこれを手に入れたらと思うと背筋が凍る。

 レビル将軍が破壊を厳命したのは、そう言う意味も有ったんだろうな。つくづく素晴らしい人物だ。人類史に残るリーダーだな。この宙域を占拠し、確実にソーラ・レイの破壊か。一仕事だなこれは。星一号作戦には恐らく間に合わないだろう。だが、これが無ければ連邦軍は必ず勝つな。

 結局俺の予想通り、ギレンはジオンを潰す事に成ったか。祖国の悲しい現実に思うところは有ったが、これでマトモな政治に戻れるなら。有る意味悲しい思いで、トリガーを引いた。

 

 

 ガンダム4号機 コックピット

 ルース・カッセル

 

 よし、絶好の狙撃ポイントを確保した。グレイファントムのレッドチームには感謝だな!

 「よし、フォルド!メガ・ビームランチャーを使う。こっちには誰も近付けるなよ!」

 「了解だ!ルースも外すんじゃねえぞ!」

 誰に言ってるんだか。こいつも変わったな、良い意味で。昔は戦争をゲームのように思ってるような時期も有ったが、今ではすっかり一人前の戦士だ。目を覚まさせてくれたユーグ大尉とキイチ大尉に感謝だな。

 それにしてもユーグ大尉は巧い。長年MSに乗っていたかのような安定感だ。ま、この作戦に参加している時点でスーパーエースであることは確定か。

 「目標、敵中央のグワジン級。恐らくこいつがコントロール艦だ。エネルギー充填100%。射線に友軍無し。発射。」

 メガ・ビームランチャーから、凄まじい威力のビームが発射された。ビームはグワジンを貫き、ソーラ・レイに直撃する。直ぐ様、メガ・ビームランチャーをパージして、離れる。フム、暴走して爆発はしていないが暫く放置だな。こちらの状態もチェックする。エネルギー系統に異常無し。メガ・ビームランチャーとの接続部は若干の過熱状態では有るが、危険域にまでは達していない。パージした試作メガ・ビームランチャーは・・・所々スパークしてやがる。完成はまだまだだな。って言うか、こんな危ない試作兵器使わせるんじゃ無いっての!

 「目標の沈黙を確認。そちらでも確認出来るか?」

 「ザザッ、、、こちらでも確認しました。本作戦は次のフェイズに移行します。」

 「了解だ。」

 ふう、やれやれ。これで俺達の戦いは終わりかね。

 「フォルド、ビームライフルを寄越してくれ。」

 「了解。これでお守りは終わりだな、ルース。」

 「言ってろ!」

 軽口を叩いたところ、メガ・ビームランチャーが突然爆発。冷や汗が流れる。

 まったく、やれやれだ。

 

 グレイファントムブリッジ

 エイパー・シナプス

 

 「よし、全回線で降伏を呼び掛ける!チャンネル合わせ!」

 「準備よし!どうぞ!」

 「この宙域にいるジオン公国軍に告ぐ。速やかに武装解除し、降伏せよ。こちらは南極条約に基づく対応を約束する。繰り返す。降伏せよ。」

 徐々に戦闘が収束していく。奴等も分かったのだろう。此方の戦力が、只者では無いことを。

 「降伏を確認後、ブルーチームとレッドチームにコロニーの破壊作業のため、コロニーの主要構造部分に爆薬をセットさせろ。全艦隊の被害は?」

 「ホワイトベース、ブランリヴァル、サラブレッド及び本艦に被弾有りません。MS隊も全機生存!」

 「凄まじいな・・・。」

 「はっ?」

 操舵士のパサロフ中尉が、私の独り言に反応した。他のブリッジクルーも興味は有るみたいだ。

 「カシマ大尉だよ。うちだけじゃない、ほぼ全てのエース級のMS乗りが彼の師事を受けている。そして今回も、誰一人失う事無く勝利して見せた。まさに戦神に相応しい活躍だ。」

 「そうですね。」

 「そしてホワイトベースの活躍。この戦争は、余りにも多くのものを失ったが、連邦軍は数多くの英雄が産まれた。まあ、英雄が生まれること自体、喜ばしい事では無いのだがな。」

 「それは、一体?」

 「ん?それだけ世が乱れているからだよ。平和な時代には、英雄等生まれぬからな。スポーツ選手以外は。」

 「そうですね。でも英雄と言えばこの作戦を成功させた艦長も。」

 「ん?ははは、私は英雄等では無いよ。この戦場の主役はMSだ。まあ、うちのMS隊の隊長は紛れもなく英雄だがね。」

 ユウ・カジマ大尉。彼も英雄だな。しかも飛び切りの。彼は戦後レビル将軍の切り札の一つとなるのだろう。時代は変わったな。もう私達老人の役目も終わりそうだ。後は、ブライト君達に頑張って貰うか。

 後を託せる人間の有り難さを染々感じるシナプスだった。

 

 

 




 一年戦争編もう少し続きます。

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