機動戦士ガンダム 白と黒のエース<完結>   作:水冷山賊1250F

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 とうとう公国の最後が近くなりました。


第60話  ア・バオア・クー攻略戦

 ア・バオア・クー指令部

 ギレン・ザビ

 

 指令部のドアが開いた。キシリアが入って来たようだ。

 「兄上、グレートデギンは?」

 「拿捕されたよ、連邦にな。父上も老いた。タイミング外れの和平交渉などと。」

 「では、ソーラ・レイは?」

 「あぁ、ソーラ・レイは陥落したようだ。」

 「まさか。」

 「本当の事だ。キシリア、お前はこのまま真っ直ぐ本国に戻り終戦の準備をしろ。貴様の主力は置いて行って貰うがな。」

 「兄上はどうするので?」

 「私は勝つよ。しかし万が一だ。万が一敗れた場合、敗戦交渉は貴様にやってもらう事になるかもしれん。頼めるか?」

 「わかりました。今すぐ帰還の途につきます。」

 「あぁ、間違ってもソーラ・レイ宙域には近付くな。あそこには、連邦の特殊部隊が集まっている。」

 「わかりました。兄上もご武運を。」

 「あぁ、勝って見せるさ。」

 キシリアが出ていった。これで指揮は私一人と成った。指揮系統を増やして、余計な混乱を出さずに済む。その分私の負担が増えるがな。なあに、この戦いだけだ。やって見せるさ。

 

 連邦軍の主力艦隊が、姿を現した。ついに来たか。

 「総統、連邦のレビル将軍から通信です。」

 「モニターに映せ。」

 メインモニターに髭面の老人が現れた。

 「ギレン・ザビ総帥かな。私は地球連邦軍大将のレビルだ。早速だが、無条件降伏を勧告する。」

 「フフフフフ、これは異なことを。それとも何かね?父上を人質にとり、気が大きくなったのかね?」

 「ん?お父上かね?今はサイド3へ向かっていると思うがね。人質等取らぬよ、戦えば勝てる相手に。それほどの差がある。悪い事は言わん、諦めろ。余計な死者を増やすな。」

 「それは、此方の台詞だよ。余計な死者を出さぬために、戦争を終わらせてサイド3の自治独立を認めろ。そして、ここから兵を退け。貴様等連邦軍は、ただ戦乱を拡大させただけだ。」

 「それは違うな。我々は、大量虐殺者を政治の中心に置くような政治体制を信用出来ないだけだ。貴様の事だよギレン総帥。まぁ、それを許可した君のお父上も含めてね。この戦争で一体どれ程の非戦闘員を虐殺した?もう諦めろ。これ以上罪を重ねるな。」

 「何を!また我々スペースノイドにアースノイドの奴隷と成れと言うのか!参政権も与えず!重税を敷き!差別の対象とする!そのような立場は受け入れられん!連邦政府の改革が終らぬ限り、我々は戦い抜く。そして勝って自治独立を認めさせる!」

 「それはもう無理だ。直ぐには政治体制は変わらんよ。だが、根気よく行けば少しずつ改善はされていく。貴様は急ぎすぎたのだ。その業を償うのは今だ。素直に降伏を受け入れろ。

 それに、学生まで動員して本気で勝てると思ってるのか!彼等は何も出来ず、無駄に死ぬだけだぞ!貴様の野望に若い命を巻き込むな!!部下に死を強いる指導者の何処に大義が有る!もうそろそろ、目を覚ませ!!」

 「ふん、これ以上話すことは無いな。」

 「そうか。私の言葉は今の君には届かなかったか。後悔するぞ。もう我々は容赦せん。」

 「お互い切り札はもう切ったのだ。後は実力を示すのみ。」

 「そうか。此方は降伏は何時でも受け付ける。早目に決断することを勧めるよ。」

 通信が切れた。レビルめ、此方を揺さぶりに来たか。散々綺麗事を言いおって。通じんよその手は。貴様等の最大の切り札は今ソーラ・レイ宙域だ。空母ドロスとドロワがあれば、持ちこたえてくれる筈だ。

 

 連邦の主力艦隊をモニター越しに睨み、口角を吊り上げるギレンであった。この後、連邦軍を過小評価していたと思いしるのである。

 

 

 地球連邦軍主力艦隊旗艦 ペガサスブリッジ

 ヨハン・イブラヒム・レビル

 

 「諸君!この戦争は一部の者達の私利私欲から始まった。それにより多くの命が失われた。勿論その一部の者達の中に連邦政府の者も含まれているのは認めよう。

 しかし、奴等は同じスペースノイドを毒ガスにより虐殺し、その大地諸とも地球に落とした。この戦争はアースノイドとスペースノイドの戦争と勘違いしている者も居るが、断じて否である!奴等こそスペースノイドの裏切り者であり、ただの狂信者と言っても過言ではない。敢えて言おう、奴等には初めからスペースノイドとしての大義等無いのだ!

 その証拠に我等が連邦軍にも、数多くのコロニー出身者が参加している。彼等の中には、親、兄弟、友人、恋人、妻や子供等が毒ガス等により殺された者もいるだろう。このような悲劇は、今後繰り返す訳にはいかんのだ!

 奴等をここで叩かなければ、また勝手な思い込みで虐殺を始めかねない。繰り返すが、これはアースノイドとスペースノイドの戦いでは無い。人類と狂った虐殺者どもとの戦いなのだ!

 確かにこの戦争は辛い。奴等の中には、狂信者どもに家族を人質に取られ、仕方無く参戦している者も少なく無いだろう。その若さから、思想を洗脳された者や、学徒動員の兵もいるだろう。

 だが、躊躇ってはならんのだ。躊躇えばこの先、不必要な死者が増えることになる。未来の、人類の為にここは涙を飲んで戦って貰いたい。諸君等の罪はこのレビルが全て背負う!迷わずに戦って欲しい。この狂った戦争を終わらせるため、君らの力を私達に貸して貰いたい。諸君等の一層の健闘を期待する。以上だ。」

 これで果たして戦意は向上したのだろうか?自分で言っていて涙が出た。あのような悲劇を繰り返す訳にはいかない。ティターンズによる30バンチ事件等、以ての外だ!

 「将軍、その罪は私達にも背負わせてください。」

 「ティアンム君か。そうだな、私が彼に言ったのだったな。一人で背負い込むなと。」

 「はい。それに、彼等にバトンを渡すにはまだ早すぎます。まだまだ私達は多くの物を背負わなければなりません。年長者の意地ですかな?」

 「フフフ、そうだな。着いてきてくれるかね諸君?」

 「えぇ、お供しましょう。」

 コーウェン君やゴップさんも微笑んで頷いてくれた。そうだ。この宇宙世紀を戦いの世界から解放するためには、まだまだやらなければならないことは山積みだ。気が遠くなる作業だが、まだまだ降りられないな。

 

 新たな決意を胸に、戦いに挑むレビルであった。

 

 




 短めですが、一度ここで切ります。

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