機動戦士ガンダム 白と黒のエース<完結>   作:水冷山賊1250F

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 若い子等が死ぬ描写は苦手です。書けませんでした。


第61話  ア・バオア・クーの激戦

 地球連邦軍旗艦ペガサスMSデッキ

 ガンダム2号機コックピット サウス・バニング

 

 もうそろそろ作戦開始時間か。この時間はいつも嫌なもんだな。

 「隊長~。最後ぐらい俺にガンダムで出撃させてくれても良いじゃないですか~。」

 「なんだモンシア?出撃前に腕立てしたいのか?余裕だな~。俺には真似出来ないぜ。なあ、アデル?」

 「そうですね。流石はモンシアさんだ。私にも真似出来そうにありません。」

 「なっ!お前ら。」

 「ん?やっとくかモンシア?」

 「嫌だな~、隊長。可愛い部下の冗談じゃないですか~。勘弁してくださいよ、腕立てなんて~。」

 「ハハハハッ。そんなにガンダムに乗りたければ実力を示すんだな。せめて、隊長をシミュレーターで墜とすぐらいして貰わなんと。」

 「うるせえよ、このマイナーリーガー野郎!」

 「言いやがったな!このピン芸人野郎!チャップリンでも意識してんのかその髭!」

 「な~!?」

 「じゃれあうのはその辺にしとけ。もう少し集中しろ!」

 全くコイツらは。この局面で良くフザケられるもんだ。

 「相変わらず、そちらは賑やかですなバニング大尉。」

 「カークランド大尉か。済まない、騒がせたな。」

 「いや、肩の力が抜けて丁度良い。あなた達と同じ艦に乗れて楽しいよ、ホント。」

 嫌みじゃ無いみたいだ。

 「今回の作戦はタフな物になると思う。お互い生き残ろう。ジャブローに帰ったら、俺達の隊は例の店で打ち上げだ。どうだい、ご一緒に?」

 「そうだな。暫くは帰れんかもしれんがな。ご一緒させて頂こう。」

 「ヤキトリですかい?ありがてえ、飲むぜベイト!」

 「お前は飲みすぎるんだよな~。まあ勝利の美酒だ、盛大にいこう。」

 「ハハハハ、盛り上がってくれて何よりだ。そのためにも、全員で生き残ろう。な?」

 「「「「おう!!」」」」

 カークランド大尉が話の解る人物で助かった。士気も上がったし、結果オーライだな。

 「あ~、MS隊の仲が良いのは良くわかったが、そろそろ作戦開始一分前だ。集中してくれるかな?」

 「艦長か、済まなかったな。了解だ。こっから先は冗談は無しだ。全員気合い入れていけ。腕立てしたくなかったらな。」

 「「「「了解!!」」」」

 さあて、仕事の時間だ。これが今時戦争の最後の作戦になってくれることを願うか!

 

 

 戦闘宙域 フルアーマーガンダム

 キャスバル・レム・ダイクン

 

 「武器を捨てて投降しろ!」

 ガンダムで敵中を突破しながら呼び掛ける。ララァのエルメスと、シャリアのジムカスタムが援護についている。最初の内は反撃していた敵も、今は姿を見た途端逃げるようになった。投降する者はまだいない。

 「貴様か、そこの赤いMS!投降を呼び掛けながら、突っ込んで来てる馬鹿は!何者だ!?」

 紅いゲルググ・・・。噂のジョニー・ライデンか!話して見るか。

 「私はキャスバル・レム・ダイクン。嘗てシャア・アズナブルと名乗っていた者だよ。ジョニー・ライデン少佐。」

 奴がビームライフルを撃ちかけて来た。

 「赤い彗星?その貴様がなぜ連邦軍の機体に乗り、ダイクンの名を名乗る?何をしているんだ、あんた!」

 ビームライフルを避けながら此方も反撃。避けられる。やるな!紅い稲妻!!

 「なに、目が覚めただけだよ。スペースノイドの自治独立の為に、ザビ家に手を貸したが、奴等がやった事はなんだ?同じスペースノイドの虐殺ではないか!

 それすらも目を瞑っていたんだがね。そんな私の目を覚ましてくれた奴がいるのさ。ならば私は、これ以上の暴虐を、父ジオンの名の元に行わせる訳にはいかない。本当は貴様にも解っている筈だ、ジョニー・ライデン!」

 奴の動きが止まった。

 「本気なんだな?本気でその名を継ぐ覚悟が有るんだな?」

 私も動きを止める。周囲の警戒はララァ達に任せよう。

 「あぁ、本気だ。冗談でこの名は名乗れんよ。どうするジョニー・ライデン。まだ私と戦うか?」

 「分かった。しかし今は武器を棄てられん。貴様がスペースノイドを裏切ったかどうか解らんからな。今の所は貴様を守ってやる。

しかし、これからの貴様を俺は監視する。貴様の行動が私欲に駆られた物ならば、俺は躊躇なく貴様を撃つ。肝に銘じておけ!」

 「分かった。ならば私と来るが良い。此れからのスペースノイドとアースノイドの未来の為、君の力を貸してくれ。」

 「分かった。その言葉は忘れん!」

 思わぬ拾い物をしてしまった。

 だがこの後、ジョニーの進言で、キャスバルの名を名乗りながら投降を呼び掛けると、投降する者が増えた。ついでに、白狼も援護に回るようになった。

 ジョニー・ライデン・・・、コヤツ中々知恵も人望も有る。侮れん。

 

 

 

 地球連邦軍旗艦ペガサスブリッジ

 ヘンケン・ベッケナー

 

 ア・バオア・クー攻略戦が始まった。星一号作戦は大詰めと言った所だ。Nフィールドに攻撃を集中させ、2隻の超大型空母には手を出さないよう指示されている。ソーラ・システムで焼き払う積もりらしい。

 「艦長!ティアンム中将から通信です。」

 「よし、メインモニターに映せ。レビル将軍。」

 レビル将軍は頷いて、メインモニターを見る。メインモニターにはティアンム中将が映し出された。

 「将軍、ソーラ・システム、スタンバイ完了です。何時でも行けます。」

 「よし、戦闘宙域にいる全将兵に連絡!3分後にソーラ・システムを使う。予定の宙域から退避せよ。」

 「了解!」

 遂に発動するのか、連邦の秘密兵器が!前線のMS隊が、上下に割れていく。上手くいってくれよ?射線に友軍がいなくなった。

 「照射10秒前です!」

 「総員対閃光防御!!」

 「5,4,3,2,1,照射!!」

 先ずは空母ドロスが閃光に包まれる。その閃光がゆっくりと水平移動し、ドロワも飲み込まれた。光の通り過ぎた後は、超大型空母の残骸しか残っていなかった。MS等は形すら残っていない。ア・バオア・クーの一部も損害を受けているようだ。

 「よし、再度投降を呼び掛ける。マイクをくれ。」

 「はっ!」

 レビル将軍にマイクを渡す。この状態では、投降に応じない訳にはいかないだろう。この戦争も終わりが近くなってきたな。

 レビル将軍の降伏勧告を聞きながら、この戦いの終わりを感じていた。

 

 

 ア・バオア・クー指令室

 ギレン・ザビ

 ドロスが敵の新兵器の攻撃を受けた瞬間、敗北を悟った。連邦軍もソーラ・レイのような兵器を開発していたのだな。やはり、私は敵を過小評価していたのか。

 「デラーズを呼び出せ!」

 「はっ!」

 直ぐにデラーズと通信が開いた。

 「総統閣下、この攻撃はっ。」

 「連邦版ソーラ・レイのようだ。この戦、我々の敗けのようだ。」

 「何を弱気な!」

 「良いから聞け。貴様は直ちに纏められるだけの軍勢を率い、撤退せよ。ジオンの再起を図るのだ!行け!!」

 「はっ!して、総統は!?」

 「私は、殿軍を勤める。急げよ!!」

 これで良い。まだビグザムは有った筈だ。せめてレビル、貴様だけでも道連れにさせて貰う!

 「全軍撤退命令を出せ!貴様等も撤退命令発令後、直ちに撤退せよ!ビグザムを出す、準備をさせておけ!」

 フフフ、ドズルもビグザムを使ったそうだが、私も同じことをすることになるとはな。運命とは分からんものだ。しかし、このビグザム。簡単に落とせると思うなよ!?

 

 

 ギレンは知らなかった。少しばかり、火力と機動力を改善しようとも、既にビグザムの攻略法は確立されていたのだ。

 そして、この宙域にはフルアーマー装備のガンダムが投降を呼び掛けながら、暴れ回っている。それは運命で有ったのだろうか?かくしてギレン・ザビは、シャアの名を捨てた赤い彗星と出会う事になる。

 「まさか赤い彗星がジオンの忘れ形見だったとはな・・・。復讐か!?それともそれ以上の物を求めるのか!?」

 「復讐等ではない。私はただ、貴様の野望の暴走から、これ以上死ななくても良い命を守りたいだけだ!」

 「綺麗事を!レビルに唆されたか!愚民政治が如何に醜悪であるか、貴様にも解る筈だ!人類は優れた指導者に管理運営されねば為らぬ!私をここで殺せば後悔するぞ!!」

 「その優れた指導者様は、人類に死と恐怖しかもたらさなかった!貴様はその罪を償う気も無いのだろう?ならばここで死んでいけ!」

 かくして、ギレン・ザビの駆るビグザムに、キャスバル・レム・ダイクンのフルアーマーガンダムが襲いかかる。ビグザムはその性能も発揮出来ぬまま、フルアーマーガンダムに墜とされる事となる。

 エースとして、最前線で戦ってきた男と、指令室の椅子を暖めていた男の差は明らかで有り、当然の帰結と言えた。

 ギレン・ザビが討たれて暫く経った後、一部の艦隊の離脱は許したものの、大多数のジオン軍将兵は降伏勧告を受諾する。

 宇宙世紀0079、12月28日。ア・バオア・クー陥落の翌日、サイド3のジオン公国は無条件降伏を受諾する。

 公国制は廃止され、新たに共和国として戦後を歩む事になる。

 こうしておよそ1年間続いた後の世で一年戦争と呼ばれたこの戦いは、終止符を打たれたのである。

 




 一年戦争編終了です。

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