機動戦士ガンダム 白と黒のエース<完結> 作:水冷山賊1250F
オーストラリア大陸上空 ホワイトベース
パイロット待機室 キイチ・カシマ
あ~、オーストラリアか~。前世を通して初めてだな~。これがバカンスならよかったのに。
もう本当何なの?ガトー殺したし、結構平和になると思ったんだがな?ゴタゴタと小競り合いが続いている。
ジオン共和国軍と合同で呼び掛けたりもしてるんだが、狂信者が多くて困る。もう奴等の矯正は無理なんだろうな。
恐らく今回の敵は、狂信者の大物。デラーズフリートになる。見てろよ、あのハゲめ!お前らのせいで、新婚なのに全然家に帰れて無いんだ。この恨み全力で晴らしてみせる。
「ジャック、アダム。この隊には慣れたか?」
「ええ、ぼちぼちですね。」
「この隊に居ると、実戦が頻繁に有りますからね。終戦って何なのかと思いますよ。」
「ヘンケン艦長達も、同じ事考えてるんだろうな~。」
「元気にしてるんですかね?」
「この前、トーマスに会った時、女性士官にフラれたって言ってたな。」
「あの人は・・・、懲りないですね~。まぁ、ほっときましょ。」
ヘンケン艦長・・・。
この会話でも分かる通り、ジャック・ベアード中尉、アダム・スティングレイ准尉の2名が、去年から新たにペガサス隊に配属された。任務は主にホワイトベースの直掩だ。現在、ホワイトベースのオフェンスチームは俺、ジョブ、ハヤト、そしてリュウの四人だ。後2名は欲しいところである。まぁ、もうすぐアムロと合流できるので、少し安心ではある。
「隊長、アムロはいつ頃トリントンにつくんですか?」
「あ~、2、3日後になるんじゃないかな?試作MSを持って来るそうだし、色々とスタッフも居るしな。」
「後は、カイさんが合流したらな~。」
「それは言うな、ハヤト。あいつは、一年戦争が何故起こり、何故あそこまでの死者を出してしまったのか軍を離れて考えて見ると言った。その姿勢は立派だよ。戦うことしか出来ない俺よりもな。」
「でも、この頃はベルファストに入り浸っているそうですよ?」
「まぁ、軍を抜けたんだ。息抜きぐらいさせてやれ。」
ミハルちゃんの尻でも追っかけてるのかな?原作とは違い、生き残ったんだ。チャンスは幾らでも有るさ。頑張ってくれとしか言えないな。
「さて、息抜きも終わったし、またシミュレーター訓練の再開だ。俺達は軍に残った。生き残るためにも強くならなきゃな。」
「「「「了~解。」」」」
さて、楽しい訓練の再開だ。やっぱり良いよな~。戦場の絆をタダで出来るようなもんだ。ウキウキ気分でシミュレータールームに向かう。隊員達の足取りは重い。どうしたどうした?元気出して行こう!リュウの肩を叩き、さっさと訓練に向かうのだった。
ホワイトベース シミュレータールーム
ジョブ・ジョン
今日もオヤブンは元気だ。朝からシミュレータールームに入り浸ってる僕達です。
最近気付いたが、オヤブンのあれはシミュレーター中毒だ。休みの日にまでホワイトベースに来て動かしているらしい。セイラさんも大変だな。
「ジョブ~!突っ込めーっ!!」
「了解!!」
リュウさんの指示で、ホワイトベースに突っ込む。ジャックさん達を相手に、敵戦艦への強襲を行い、そのまま離脱。
「どうだ!」
残念、中破判定。
「そこまで!状況終了!」
「「「「了解!!」」」」
シミュレータールームを出て、ミーティングルームに移動する。先程のシミュレーター訓練の反省会だ。
オヤブンは訓練はハードだが、ミーティングであまりダメ出しはしない。個人個人の良かった所を誉めあげ、ミスを丁寧に説明する形だ。どちらかと言えば、長所を伸ばすタイプだな。
と言うことは、俺は突撃タイプのパイロットだった!?考えるのを止めよう。そうじゃない筈だ。俺はファントムスウィープのあの人とは違う人種の筈だ!そうだよね?そうだと言ってよ誰かーっ!!
「何を悶えてるんだ?」
「リュウさん!俺、オヤブンにこの戦闘スタイルに矯正されただけですよね?」
「いや、俺も初めの内はそう思ってたが、お前にはそのスタイルが合ってたんじゃないのか?オヤブンの教育方法的に、無理にそのスタイルには持って行かない筈だ。」
「いや!聞きたく無い!」
「まぁ、気持ちは分かるがな。性格的に俺の方がそのスタイルには合ってると思うんだが、俺は長距離支援特化スタイルだからな。恐らく、性格と戦闘スタイルは別物だ。お前もそろそろ認めちまえ。」
そんな馬鹿な!ジャックさんと、アダムさんを見る。そっぽを向かれてしまった。
「オーイ、皆さーん。オヤブンが待ってますよ~。」
「ほら、ハヤトも呼んでる。急ぐぞ。」
リュウさんに肩を叩かれ、ミーティングルームに急ぐ。気付きたくは無かった事実に打ちのめされ、重い足取りでミーティングルームに向かう。
「どうしたんだ、ジョブは?」
オヤブンに心配されてしまう。
「いやー、自分のMSパイロットとしての突撃特化スタイルに納得が行って無いようなんですよ。」
「あ~。俺もジョブがこんな成長するとは思わなかったもんな。強襲するために、一時的にガンキャノンを改造してもらったが、いい動きするように成るしな。俺が言うセリフじゃないが、これはこれで貴重な戦力だからな。俺が知ってる限り、後はファントムスウィープのキョウスケ中尉ぐらいだし。ま、あそこまで行けば、もう基地外の域に達しているが。本格的に目指してみるか!」
「隊長、さっき基地外って!」
「偉いぞ、ジョブ。ちゃんと漢字を変えて発音できたな。まぁ、あそこまでの実力は難しいかも知れんが、訓練には付き合ってやるよ。命が幾つ有っても足りないようなスタイルだ。お前のMS操縦特性は、何故かあのスタイルに合ってる。そろそろ覚悟を決めろ。中途半端は死を招くぞ。タダでさえ実戦の多い部隊だ。生き残る手札は多いに越した事はない。さあミーティング始めるぞ。」
俺の目の前で、納得の行かない教育方針が決まってしまった。俺の中の何かが崩れ落ちた音を聞いた気がした。
ジョブさんの教育方針が決まるの回でした。