機動戦士ガンダム 白と黒のエース<完結> 作:水冷山賊1250F
と、思ってたんですが、テレビ版では宇宙葬してました。ご指摘ありがとうございます。今後ともよろしくお願いいたします。
ホワイトベースMSデッキ キイチ・カシマ
MSを駐機状態にして、コックピットから降りる。パイロット控室ではレイ大尉が今か今かと先程の戦闘のデータを待っているだろう。すれ違う整備主任に
「メンテをお願いします。」
と頭を下げると
「任せてください。」
と返事が返ってきた。頼もしく思いながらレイ大尉と合流し、ブリッジに向かう。先程の戦闘で気付いた点を、各パイロットに伝えながら移動する。例えば、ジョブ・ジョンに
「今の突撃は良かった!あれをタイミングを見計らい自分で出来るようになればパーフェクトだ。操縦技術も大分ついてきたことだし訓練メニューのレベルを上げるか。」
と笑顔で伝えると、
「かんべんしてくださいよ、オヤブン~。」
オヤブンか~。うん。悪くない。でもかんべんはしません。君はまだ魔改造中です。良い笑顔で、
「かんべんしません。頑張れ。」
と答えたところ、ジョブの笑顔が固まったような気がしたが気のせいだろう。目指せエースパイロット。エースの道は険しいぞ。お互いに精進有るのみだ。
「パイロット組は、スパルタだな。アムロやハヤト君達は大丈夫か?」
「ありがとう。でも大丈夫だよ父さん。ここで鍛えたことは無駄にはならないでしょ?それに隊長は、無茶な訓練はさせないし、疲れてきたら休憩を入れてくれるんだ。それに色々教えてくれるから、実戦的でためになるよ。」
「そうか。頑張れよ?」
「はい。」
親子で微笑ましい会話をしている横でリュウとジョブが微妙な顔をしている。いや、君達プロの軍人だかんね?そりゃ少し位は追い込むよ?まあ、全部のシミュレーションに俺は参加してるし、訓練は皆の倍はしてるはずだから勘弁してくれ。
ブリッジに着くと、ブライトが迎えてくれた。
「作戦お疲れ様でした。こちらでも確認していました。シャアとムサイは惜しかったですね。こちらがもう少し間に合えば砲撃支援出来たんですが。」
「いや、今の状況ではあれで精一杯だろう。MS隊もコンビネーションを重点的に鍛えてきたし、母艦との連係訓練は出来ていなかった。フレンドリーファイアを喰らうより、安全策を取ったのは妥当な所だろう。今後の課題だな。」
「そうですね。今度ブリッジ要員を交えて訓練をお願いします。」
「そうだな、今度シチュエーションを2~3見繕っておくよ。」
ブライトは原作とは違い、高圧的な態度は取っておらずヒステリーっぽい所もない。ブリッジ要員との人間関係も良好のようだ。そりゃ原作はこれでもかという程追い込まれてたからな。
この人も後の名指揮官になるんだ、大切に鍛えて行こう‼今後の訓練メニューを考えつつ、先程の戦闘データを検証する。
「ジョブ専用機の運用は、これで良さそうですね大尉。あとは、武装の強化がどこまで出来るかと、パイロットの腕を上げる方向で良さそうです。」
「スプレーミサイルランチャーは、全彈射出後パージ出来るようになりませんかね。デッドウェイトを下ろした分だけ離脱時のブーストで加速力が上がる分、安全性が上がると思うんです。」
「なるほど。」
等と中々実の有るミーティングが続いていた。するとオペレーターのセイラさんが、
「ルナツーから通信が入ってます。」
と報告してきた。
「了解だ。メインモニターに映してくれ。」
「分かりました。どうぞ。」
メインモニターに固そうな軍人さんが、映った。
「ルナツー基地司令ワッケインだ。ホワイトベース指揮官はどちらだ?」
「パオロ艦長は、サイド7での戦闘で重症を負い現在医務室で療養中です。とても指揮を執れる状態ではありません。現在最上位者は、レイ大尉ですが艦の運用法をご存知では無いため、私が艦の指揮を執っております。ブライト・ノア少尉です。」
「分かった。パオロ艦長は無事か?」
「バイタルは安定されているようですが、出血が多く艦内ではこれ以上の治療は不可能とのことです。艦内には、他に多数の負傷者及びサイド7の避難民を収容しております。」
「了解した。こちらからサラミスを送る。サラミスの誘導に従い入港してくれ。ジャブローとはこちらから連絡を取っておく。」
「ありがとうございます。了解です。」
「では後ほど会おう。通信は以上だ。」
こちらが全員敬礼した後、ワッケイン司令が答礼し通信が切れる。ブリッジ内は安堵した空気が広がる。
しかし俺は知っている。ジャブローからの指示で俺達は負傷者だけを下ろし、避難民を乗せたままジャブローへ向かわせられるのを。まぁ、この雰囲気を壊すのも野暮と言うものだろう。
「よし、ブリッジは今から忙しくなる。パイロットは30分後にシミュレーションルームに集合だ。今回のデータを利用しシミュレーターで訓練だ。カイ君とハヤト君も呼び出しておけ。解散。」
と指示を出し、シミュレーションルームに向かう。まだ気は抜けない。少しでも生存確率を上げるため、パイロットの練度を上げるよう努めるだけだ。
ルナツー宇宙戦艦ドック キイチ・カシマ
「負傷者は、全員こちらで預かる。君達には、独力でジャブローを目指してもらう。」
やっぱりね。ワッケイン司令の苦渋を飲み込んだ無表情を見ながら聞いていると、ブライトが食い下がる。
「何故です?こちらには避難民もいるのですよ?せめて避難民の収容だけでも。」
「許可できない。ジャブローからは、そういう指示は出ていない。」
「しかし、」
ブライトがなおも食い下がろうとしているので、止めることにした。
「やめろブライト少尉。これ以上は無理だ。司令も好き好んでこのような命令を出した訳じゃない。」
「理解が早くて助かるカシマ少尉。護衛にサラミスを1隻付ける。」
「了解しました。」
敬礼しホワイトベースに向かう。
「カシマ少尉、良かったのですか?」
ブライトが俺に問いかける。
「さっきも言ったが、これ以上は無理だよ。しかもここにはMSすらないんだ。下手したらホワイトベースの方が安全かもな?それよりも艦長、ここからが大変だぞ。」
「それはまぁ。」
「違う、そうじゃない。おそらく、奴らは大気圏突入のタイミングで仕掛けてくるぞ。MS隊は、ルナツー到着の間に数回そのシチュエーションをシミュレーターで訓練したが、今から大急ぎで訓練を実施後、各パイロットはコックピットで待機させる。」
「まさか・・・。」
「最悪を想定するんだ。場合によってはサラミスを盾にして突入することもありえる。こちらは避難民の命も預かってるんだ。覚悟を決めよう。」
ブライトは絶句する。今回正式に艦長に成ったブライトの苦悩はまだまだ始まったばかりだ。
以上で今日の更新は終了です。おやすみなさい。