機動戦士ガンダム 白と黒のエース<完結>   作:水冷山賊1250F

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 アルビオンの到着です。


第67話  物語の始まり

 トリントン基地上空

 エイパー・シナプス

 アナハイムから受け取った2機のガンダムを載せて、目的地上空にたどり着いた。士官学校の校長に就任し、現場を離れる気で居たと言うのに。しかし、何故アナハイムが受注されてもいないガンダムを開発するのか、さっぱり解らん。連邦の許可を取ったとは言え、自腹で作ってどうするつもりなのか?しかも2号機は核兵器運用を、前提とした兵器。奴等の狙いはなんだ?本当に連邦政府はこの兵器の製造を許可したのか?

 「艦長、二番滑走路から進入するよう指示が出ました。」

 「分かった。進路を二番滑走路に合わせろ。管制官にエスコート感謝すると伝えろ。」

 「「了解!」」

 アナハイム製の新型ガンダムを運用するために新造されたペガサス級の戦艦だが、ブリッジスタッフも若い奴ばかりだ。まったく頼りない。護衛のMS隊だけは、不死身の第4小隊と豪華だが、中身は問題児ばかりだからな。この老骨にまだ働けと言うことか。やれやれだ。試験運用する部隊はどうなっているかな?カシマ少佐が鍛えたと言うし、興味はある。どれ程の腕に成長したか、見せて貰おうか。

 「艦長、ホワイトベースのブライト中佐から通信です。メインモニターに映します。」

 「頼む。」

 メインモニターにブライト中佐が映った。此方に敬礼している。此方も敬礼を返し、直ぐに手を下げた。

 「お久しぶりです、シナプス大佐。お待ちしておりました。」

 「ありがとう。で、この6ヶ月で彼等は成長出来たかね?」

 「えぇ、流石にアムロ少尉並みとは言えませんが、ジョブ少尉やハヤト准尉には、同スペックの機体同士であれば、撃墜判定を取れる位には成長してます。」

 「本当かね!?彼等は君のところでも中々の腕利きだったはずだが?」

 「えぇ、よほど悔しかったんでしょう。滅多にしなかった自主訓練を毎日してますよ。まぁウラキ少尉も一緒にしてるんですけどね。お蔭で此方の戦力も上がっています。人間関係も良好ですし、仕込みは上々です。」

 「流石だなカシマ少佐は。此方は、2種類程機体にサフリィ製のセキュリティーを掛けた。アナハイムの連中が五月蝿かったが、それをさせなければ運用試験は行わないと言ってやった。そしたら居たよ3人程。セキュリティーを解除しようと企んでる奴等がね。今保安員にマークさせている。詳しい話は到着後基地内でしよう。」

 「了解です。此方からも保安員を送ります。」

 「了解だ。」

 さて、今の会話でどれだけの工作員が釣れるかな。ブリッジ内にはそのような者がいないことを願うばかりだ。

 「艦長、今の話は?」

 「あぁ、アナハイムの人間はセキュリティーに甘い者が多くて困るな。アイツ等は軍事機密になり得るものを取り扱ってるという自覚が無さすぎる。良くも悪くも民間企業って奴かな?効率を重視し過ぎる。もしもが有ってはならん。副長も目を光らせておいてくれ。」

 「了解しました。」

 この艦は第13独立戦隊の所属ではない。新型MSの運用試験部隊と言う位置付けだ。艦の建造にもアナハイムの者が関わったと聞く。どのような抜け穴が有るか分かった物ではない。このような艦の艦長に任されるとは、貧乏籤にも程がある。最後の仕事に成ると思うが、気が抜けない仕事だ。

 シナプスは、今後起こるであろう騒乱の予感に顔をしかめる事しか出来なかった。

 

 トリントン基地MS格納庫

 コウ・ウラキ

 新型のペガサス級に載せられていたMSが、基地の格納庫に納められた。カシマ少佐に見学を申し込んだら、二つ返事で許可を貰えた。やった。早速キースを連れて見学だ!

 最近は俺がジムカスタムでキースがジムキャノンⅡに乗ることが多くなった。アレン中尉がジム・パワードで、カークス少尉はジム改だ。

 この6ヶ月間は色々な事が有った。オヤブンに連れられ、ジオン公国軍の残党とも何度となく戦った。MS試験小隊なら、実戦のデータも必要だと言って、基地指令の許可を取ったらしい。まぁ、言われてみれば、実戦データは必要かな?でも、士官学校出たばかりの俺達も駆り出されるとは思わなかった。

 ザクは今誰も使っていない。まぁ今更ザクの運用データなんか要らないからな。ザクは今格納庫の奥でお寝んねだ。

 「キース、急いでくれよ~。」

 「慌てるなコウ、慌てる乞食は貰いが少ないってね。」

 髪を櫛で整えながら、キースが歩いてくる。MS見るのに髪なんて関係ないだろう?もう。

 「さあ、行こうかコウ。アルビオンには女性士官やメカニックが多いって聞くぜ?楽しみだな。」

 「そんなことどうでも良いよ。俺達が乗るかも知れない機体だぜ?」

 「ヘイヘイ。真面目な事で。」

 もう、真面目にやってくれよ~。この頃は、支援攻撃や、狙撃が上手くなって見直してたのにさ。

 車を借りて、格納庫へ急いだ。格納庫の中に屹立する2機のガンダム。凄い、本当にガンダムだ。サフリィ以外でも、ガンダムが作れるんだな・・・。

 「ガンダムだ・・・。」

 つい声が出てしまった。

 「あら?あなた達、ここの基地のパイロット?」

 アナハイムの制服を着た女性が話しかけて来た。

 「あぁ、そうだよ。君はアナハイムの技術者?メカニックには見えないが?」

 「この2機のガンダムの設計を担当した者よ。ニナ・パープルトンです。」

 「へ~、ジムの生産しか出来なかったのに、よく作れたね?スペックはRX-78の何割増しなの?」

 「このガンダムはGP-01ガンダム試作1号機よ。カタログスペック上はRX-78-2の出力推力共に1.5倍~2倍よ。宇宙戦用のフルバーニアンに成るとRX-78-2の3倍って所ね。で、あっちの機体が、」

 「核武装型かい?」

 「そのとおり。試作2号機は核武装型よ。スペックはパワーウェイトレシオの関係で試作1号機に敵わないけどね。」

 胸を張って答える女性設計者。

 「ふーん、試作1号機は零式とほぼ同スペックか~。凄いね。」

 「零式!?あなた達見たこと有るの?」

 「あぁ、この前もオヤブン達と一緒にジオン公国軍残党と戦ったしな。」

 「オヤブン?君達、もしかして、第13独立戦隊のパイロット?」

 「違うよ?トリントン基地所属のMS試験小隊さ。」

 「へー、凄いのね。もう実戦経験があるなんて。あ、メカニックが呼んでるから行くわね。勝手に触っちゃダメよ?」

 「了解だ。」

 ニナさんか。あの人も一種の天才なのだろうな。ジムの製造技術とガンダム2号機のカタログデータだけで、あのガンダムを作り上げるなんて。でも、流石にムーバブルフレームは使って無いんだな。やっぱり技術はサフリィが上か。

 「これがガンダムか。」

 後ろから声がした。振り返って見ると、大尉の階級章を付けた男性士官が立っていた。

 「はっ!アナハイムで建造されたそうです。失礼ながら、大尉はどちらの所属でしょうか?」

 「あぁ、此方とは別口でな。バウアー大尉だ、ヨロシクな。基地指令に、今着任の挨拶をしてきた所だ。そしたらペガサス級が2隻も停まっているじゃないか。興味が湧いてな。君達もか?」

 「はっ!そうで有ります。」

 「そうか。ん?あちらは核武装型か?」

 そう言いながら、タラップを登ろうとする大尉。何故か核武装型のガンダムに核弾頭が装備されようとしていた。明らかにおかしい!

 「止まれ!それ以上動いたら撃つ!」

 ピストルを構え、大尉に照準を付ける。

 「貴様!ヒヨッコが誰に物を言っている!」

 大尉が振り返り様、ピストルを取り出した!

 「キース!!」

 離れた所で銃を構えていたキースと同時に撃つ!ちっ、避けられた。キースは邪魔するように大尉を撃つが、上手く避けられる。お互い生身での射撃訓練を疎かにしていたからな。大尉が急いで核武装型ガンダムに乗り込む。俺はガンダム試作1号機に乗り込んだ。奴を止めるんだ!

 基地のあちこちで爆発が発生していた。敵襲か!?これは狙われていた?いや、何者かの手引きが有ったのか。だが、今は奪われた核武装型ガンダムだ。メインは活きている。こいつは直ぐにでも動くぞ!操縦桿を握りしめ、核武装型ガンダムをモニター越しに睨み付けた。

 




 いよいよバトルが始まります。

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