機動戦士ガンダム 白と黒のエース<完結> 作:水冷山賊1250F
地球連邦軍ベルファスト基地近郊喫茶店
ユウ・カジマ
「やあ、待たせたね、カイ君。」
「お久しぶりです、ユウさん。相変わらずの活躍、よく聞いてますよ。」
いったいどんな噂やら。聞きたくもない。戦後暫くは色々とレビル将軍達に引き摺り回された。漸く一年後に、本来の任務に戻れた感じだ。暫くはブランクを取り戻すのに必死だった。俺はアイドルに成った覚えは無いんだが。
「ところで、こんなところに呼び出していったいどうしたんだ?まさか、取材じゃないだろうな?」
「へへへ、取材の件はこのネタが、役に立ったら考えてくださいよ。」
「ネタ?」
確かカイ君は、軍を抜けてフリーのジャーナリストに成った筈だ。
「えぇ、公国軍残党のネタです。ちょうど近くの基地に第13独立戦隊が来たって聞いたもんで、オヤブン達かなと思ったんですが、ユウさん達ブルードラグーン隊(略称BD部隊)だった訳ですが、ユウさん達だったら何度も顔を会わせた事が有ったから声をかけたんですよ。」
「そうか。で、残党軍がどうかしたのか?」
「えぇ。最近、ベルファスト基地周辺に残党軍と思われる奴等の怪しい動きが有るんですよ。PXで働いてる若い女性に声をかける輩も増えているそうで。しかも、この辺じゃ見かけない顔の男達だそうです。ソイツラは決まって基地関連の情報を探ってる節が有るそうです。」
「フム、その話は初耳だ。俺達は偶々補給の為にこの基地に立ち寄っただけなんだが、少し気になるな。分かった、基地司令に伝えておくよ。」
「ありがとうございます。気のせいだと良いんですけどね?何人か行方不明の娘もいるって噂です。」
「そうか。噂が本当なら、深刻だな。そう言えばカイ君は軍に戻らないのかい?」
「えぇ。軍から一歩離れた目線で、あの戦争の事や、この世界の事を見てみたくて。」
「そうか。取り合えずここは奢らせてくれ。情報ありがとう。また何か分かったら些細なことでも良い。連絡してくれ。」
伝票を持ってレジにいった。その後、基地に戻り、ロンバート艦長にこの件を伝えたところ、ロンバート艦長と一緒に基地司令に直接伝えに行くことに成った。
基地司令とは直ぐに面会を受けてもらえ、先程の件を伝えたところ、顔色が青くなっていた。
「どうしたんですか?」
「ここだけの話だ。二人とも内密に頼む。現在我が基地では、戦争犯罪者のキシリア・ザビを勾留している。彼女の次の移動は一週間後だ。もしかしたら、奴等に勘付かれてしまったのかも知れん。」
「それは!!」
ロンバート艦長が声を張り上げた。
「諸君らは、ここで補給を受けた後、ジャブローに帰還すると聞いた。その後の予定は有るのかね?」
「この後は休暇になる予定です。」
「すまないが、休暇は先に延ばして貰う。レビル将軍に今から連絡しよう。」
その後は早かった。トントン拍子に俺達の休暇が延び、仕事が入った。
これが一週間前の話である。奇しくも、マスター達がトリントン基地を襲撃された日であった。俺は今、蒼く塗装されたアレックスのコックピットにいる。元はアムロ少尉が使っていた機体だ。こいつは凄い。やっとこの頃使いこなせるように成ったと感じる。これがあの戦争でロールアウト出来ていたとは、いやはや我が軍の技術もたいしたものだ。
「隊長、本当に来るんですかね?」
「来るさリーバー少尉。必ずな。」
彼はフレッド・リーバー少尉。接近戦のスペシャリストだ。現在、俺が以前搭乗していた、ガンダムピクシー改に搭乗している。
「だがユウよぉ、例の話しも本当かよ?」
「あぁ。PXに勤めている若い女性が何人か死体で発見された。何者かが忍び込んだ形跡も有る。この3年で思い知っただろう?奴等の中では戦争は終わって無いんだ。」
「死体で見付かったのか・・・。非戦闘員を殺しやがって、あのクズ共が!全く、しつこい奴等だな。マサキもそう思うだろ?」
「えぇ、バカは死ななきゃ分からないんですかね?お望み通り殺してしまいましょう。クククク。」
「マサキ、お前怖えよ!ま、情状酌量の余地はないか。お前の新型の力見せ付けてやんな!」
アンドー中尉は新型の試作機、プロトタイプガンダムmarkⅡに搭乗している。あちらも中々ピーキーな機体だ。若いからか、もう乗りこなしている感じがする。
この厳重な警戒体制下に強襲を仕掛けるのだろうかとも思うが、嫌な予感がする。俺の予感は悪い時に限ってよく当たる。今回もそうらしい。突然基地内に警報が鳴り響いた。どうやら仕事の時間だ。
ベルファスト基地内 アクト・ザク コックピット
マレット・サンギーヌ
フフフフ、ここにキシリア様が捕らえられているのか。待っていてください、キシリア様。今このマレット・サンギーヌが貴女をお助けに参ります。愚劣な連邦の狗共に思い知らせてやりましょう!
「行くぞ、貴様等!グラナダ特戦隊突撃ーっ!」
デラーズの派遣した兵共を含めて12機のMSで強襲だ。ザコのジム共が出てきた。ビームライフルで一発だ。ヒャッハー!どんどん出てこい!お前ら殺し尽くしてやる!次のジムに狙いを定めるが、守りが堅い。時間稼ぎのつもりか!ブーストをかけ、一気に距離を詰めようとしたところ、アクト・ザクのビームライフルが爆散した。直ぐに距離を取り、先程の攻撃を仕掛けた奴を見付ける。蒼い二本角の機体。噂の蒼鬼か!?オープンチャンネルで怒鳴り付ける。
「ランバ・ラル程度のロートルを殺ったぐらいでいい気に成るな!死ね、蒼鬼!!」
クラッカーを投げつけ距離を詰める。
「ふん、他愛もない!」
これで終わり・・・?クラッカーをバルカンで打ち落とした?ビームサーベルを持ったままで?
ふん、武装ばかり有ったってなぁ!ヒートホークを振り下ろす。手応えがない?まずい!直ぐに距離を取る。右腕が無くなっている!?やるなコイツ!数が頼りの連邦の有象無象のくせしやがって!
「やるじゃないか貴様!その辺のザコとは違うな。」
「よく喋る奴だな。なら、あえて聞いてやる。何故非戦闘員の女性を殺した?」
「ふん、連邦に尻尾を振る狗にオスもメスもない。邪魔になるから殺しただけだ。何処に問題がある?」
「そうか。もう喋らなくて良い。お前はここで死んで逝け。」
「ぬかせ!この俗物が!!」
奴が此方に間合いを詰めてくる。ふん、カウンターがお前だけの技だと思うな!さあ振りかぶれ。・・・?振りかぶらない!突きか!慌てて後方に下がる。手首だけでビームサーベルを持ち上げた?そのまま腕を延ばし手首だけで振り下ろす。頭部を切り裂かれ、メインカメラが死んだ。
なんだあのモーションは!!左手のヒートホークを横に薙ぐ。当たらない!だけじゃない!?ヒートホークに合わせて、おそらくビームサーベルで勢いを付けられた!?反動が大きくなり、奴に背後を見せる形に成ってしまった!
「他愛もない。」
奴からの通信が聞こえた直後、ビームサーベルがアクト・ザクのコックピットを横に薙いだ。そこで俺の意識は永遠に無くなった・・・。
プロトタイプガンダムmarkⅡコックピット
マサキ・アンドー
う~ん、ユウ隊長はいつもエース機に当たるな。なんか憑いてるのか?いつも勝つから良いんだけど。これで隊長の伝説がまた増えたな。オープン回線だから、誰か録音してそうだしね。
「ほらほら、戦場でよそ見なんて死にたいのか!?」
隊長達の話を聞いていたから分かった。コイツ等は、手加減の必要の無い相手だ。逃げようとする奴がいた。甘いな。ビームライフルで背後からコックピットを撃ち抜く。あんた達が攻めて来たんだ。簡単には帰さないよ?っと思ったら全機投降しやがった。まぁ残りは3機だけだけどな。
非戦闘員を殺しておいて、自分達だけは助かりたいか。本当にクズだなコイツ等は。裁判なんかせずにここで殺してやりたい!
「よせ、アンドー中尉。」
「なんで分かったんですか?隊長。」
「いや、お前ゆっくりとドムモドキに向かってビームサーベル抜こうとしてただろ?無意識か?危ないなぁ。少し落ち着け。奴等と一緒になるぞ。」
「それは嫌ですね。気を付けます。それはそうと、隊長。また伝説が増えましたね。」
「伝説?」
「さっきの戦いですよ。オープン回線で煽ってきた敵を問い詰め、死の宣告。最後には奴が言った言葉をそのまま返して死刑執行!いや~、しびれますな!」
「いや~、本当!この隊に呼ばれて良かったぜ!俺はばっちり録音したぞ!」
「リーバー!?」
「ユウ、諦めな。お前はそう言う星の元に産まれたんだよ。蒼い稲妻の伝説。良いじゃねえか。今回はお前が情報を拾って来て解決まで導いた。また昇進するんじゃねえか?ハッハッハッハッハ!」
「この戦闘の会話、軍はいくらで買ってくれるかなぁ?」
「そりゃ宣伝に使うんだ。ボーナスぐらいにはなるだろうぜ?」
「残念でした。サラブレットでも録音されてます。記録はコーウェン中将経由でレビル将軍に送られますので悪しからず。」
「そりゃ無いぜモーリンちゃん。隊長も何とか言ってくださいよ。」
「もう勘弁してくれ・・・。」
アレックスが哀愁に満ちている。この人、素だもんなぁ。本当、面白い隊につけてくれてレビル将軍には感謝だな。
その後、この戦闘はオープンチャンネルの会話と共に全世界にニュースで流された。そして、蒼い稲妻の伝説は終わっていない事を全世界に見せつけたのだった。
ピクシー改はリーバーに渡りました。ユウ隊長の活躍はまだまだ続く。頑張れ我等がユウ隊長!