機動戦士ガンダム 白と黒のエース<完結> 作:水冷山賊1250F
サイド3 ズムシティー近郊
BAR エデン
キャスバル・レム・ダイクン
「じゃあ、議長。あんたが譲り受けた例の機体、俺が使わせて貰うぜ。」
「あぁ、存分に使ってくれ。あの狂信者共は全てのスペースノイドにとって癌以外の何者でもない。あれでスペースノイドの為と言われてもな。正直奴等の正気を疑うレベルだ。」
「そうは言うがな、やはりあの男の煽動は凄かったとしか言いようが無い。もはや洗脳だよ。いまだその洗脳が取れて無い奴等も多い。彼等にしてみれば、俺達は連邦に尻尾を振る裏切り者だろうぜ?」
「最初にスペースノイドを裏切ったのは公国なのにな。出来の悪いコメディーみたいだ。どんどん破滅に向かって行く。」
「せめて俺達が引導を渡してやるさ。同じジオン出身者としてな。」
「あぁ頼む。俺は人々の導き手になると決めた。もうMSに乗ることは無いだろう。」
「そうだな。もうあんたは、その手を血で染める訳にはいかない。アースノイドとスペースノイドの融和の為には特にな。」
「あぁ、分かってる。融和といえば彼はどうなった?確かサハリン家に婿養子に入ったらしいが。」
「あぁ、シロー少尉か。パイロットとしては、一人前って所だが、部隊としては上手くやれている。コミュニケーション能力と行動力が高いなアイツは。流石ジオン本国まで女を追っかけて来ただけは有るぜ。アイツはサイド2の生き残りらしい。良くジオンの女に惚れられたな。色んな意味で凄い奴だ。」
「そうだな。だが、彼等は我々にとっては希望だよ。あれを経験した男が、ジオンの女と恋に落ちる。そして恨みを棄てて女と添い遂げようとしている。色々な葛藤は有っただろう。だが、ネガティブな感情では、決して成し遂げられない事だ。人はネガティブな感情に支配されないと言うことを、彼は証明しているようなものだ。」
「そうだな。まぁ、サハリン家の嬢ちゃんも、飛び抜けたお人好しの上に、べっぴんさんだ。そりゃぁ惚れるなと言う方が無理かもな。あの陰気な兄貴と違って、基地ではちょっとしたアイドル扱いみたいだったそうだぜ?」
「ハハハッ、それでもだよ。ジョニー、お前に出来るか?毒ガスを使い、家族や友を皆殺しにされた身の上で、敵国の女と添い遂げることが。」
「無理だな。そう考えればアイツは大物だな。認めたくはないが。」
「そう言うことさ。ジョニー、彼の事を頼むぞ。身を呈して守る必要はない。絞りに絞ってエース並みには育ててやってくれ。パッカード大佐の話によれば、筋は良いようだしな。」
「あぁ、ここ一発の爆発力は有るな。だが、他はまだまだだ。まぁ、コッテリ絞ってやるさ。アイツに死なれちゃサハリンの嬢ちゃんに恨まれる。美人に恨まれる趣味は無いんでね。それより議長さんよ、うちのMS開発、もうちょっとなんとか成らんのか?サフリィにおんぶに抱っこじゃあ、何か有った時自衛もままならんぜ?」
「それは分かってる。だが、今は復興が最優先だ。俺達がメチャクチャにしたスペースコロニーの再建もようやく目処が付いたんだ。それに共同出資のお蔭で開発費用は安く済んでいる。まぁ、此方からも新素材の提供等していると言うのも有るんだがな。アクシズには感謝だよ。」
「そのアクシズだがな。過激派がとうとう蜂起したらしい。トラヴィス大尉達が動きをキャッチしたようだ。デラーズにMAやMSを送ったらしい。」
「穏健派は無事なのか!?」
「あぁ、ハイウェイ中尉達が安全を確保した。」
「やはり、ミネバ達をガルマに預けたのは正解か。しかし、穏健派も無事では無いのだろう?」
「あぁ、結構殺られたらしい。と言うか、過激派が多すぎる。仕込まれていたのかも知れん。あの老人、厭らしい手を使う。」
「どこまで我々の足を引っ張れば気が済むのか。そこまでして血を流したいのか、あの狂信者め!過激派の首領は誰か把握出来てるか?」
「エンツォ・ベルニーニ大佐らしい。なんか、アクシズは独立するとか叫んでいるらしい。」
目の前が真っ暗になった。何を考えているんだ。いや、何も考えていないのか。
「マハラジャ・カーンは病死という名の暗殺だろうな。だが、家族は無事だ。アンディーや、リカルドに守られてハイウェイ中尉達と一緒にサイド3に向かってるとの事だ。もうそろそろ奴等の独立宣言が有るだろうな。」
嘗め腐りやがって!そんなことを俺達が許すとでも思っているのだろうか。
「ジョニー!」
「あれは、俺が受け取ったと言質を取った筈だぜ。今さっきな。あんたは手を汚さないと誓った筈だが?」
「くっ。知ってて話の順を変えたな?汚いぞ。」
「そうかもな。だが、お前さんは慣れなきゃならない。自分ではなく、他人に戦場を任せることを。それが政治家というもんだ。普通政治家は戦場に出てこないもんだぜ?まぁ、俺達に任せな。きっちり方を付けてやる。」
「あぁ、頼んだぞジョニー。」
口惜しい。奴等に直接鉄槌を下せないのがかえすがえすも口惜しい。
「まだまだ私も若いと言うことか。」
つい、口に出てしまった。
「ハハハハッ分かってるじゃないか。あのじいさんにも言われたんだろう?焦るなと。ホント、大したじいさんだよ、全く。ただ、あんたはあのじいさんと、政治家として向き合わなきゃならないんだ。手強い相手だ。同情するぜ。」
「なんなら代わって見るか?」
「バカ言え。俺は何処まで行ったってパイロットだよ。政治の世界なんて無理だね。あんたは覚悟を決めたんだ。俺は見極めさせて貰うぜ?」
「分かってるさ。」
グラスに残ったウィスキーを飲み干す。何時もより苦い味がした。
この日、デラーズフリートに対してジオン共和国の討伐艦隊が決定した。
コンスコン中将率いる、グレートジオン(旧グレートデギン)を旗艦とした機動艦隊。
MS隊は、ジョニー・ライデン中佐を隊長として、副官にシン・マツナガ少佐。
他の主要な隊員は以下の通りである。
防衛部隊所属レッドチーム(ガルバルディβ)
ケン・ビーダーシュタット大尉
ガースキー・ジノビエフ中尉
ジェイク・ガンズ少尉
マルコシアス隊(ゲルググM)
ダグ・シュナイド大尉(任務中)
ヴィンセント・グライスナー少尉(任務中)
リベリオ・リンケ軍曹(任務中)
アンネローゼ・ローゼンハイン曹長(任務中)
アルバート・ベル軍曹(任務中)
アグレッサー小隊
トラヴィス・カークランド大尉(任務中)スレイヴレイス(宇宙戦仕様)
ハインツ・ハイウェイ中尉(任務中)ジム・スナイパーカスタム
チェイス・スカルガード少尉(任務中)レッドライダー宇宙戦仕様
アルト・キュクロプス隊
カート・ラズウェル中尉 ザク高機動型
ロビン・ブラッドショー中尉 ザク高機動型
バーナード・ワイズマン曹長 ザクⅡ改
任務中の者は討伐艦隊と合流次第、討伐艦隊に組み込まれることと成る。
シロー・サハリン少尉は、防衛MS隊として居残りになった事をここに記す。
政治的な思惑も絡み、シロー君は居残りです。ノリスさんにコッテリ絞られてますww。
8月14日バーニィの階級を挿入しました。忘れてた分、サービスでアップですww。