機動戦士ガンダム 白と黒のエース<完結>   作:水冷山賊1250F

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 ラビアンローズにユーグ達が向かいます。


第78話  ラビアンローズ

 ラビアンローズ周辺宙域

 ブランリヴァルブリッジ ヤクモ・ココノエ

 「ラビアンローズ応答有りません。」

 目の前の自航ドック船からの通信が途絶している。破損したような形跡はない。

 「最初の呼び掛けから音声映像は記録しているな?」

 「はい、バッチリ撮れてます。」

 「良し、5分後に再度呼び掛ける。それに応答がなかった場合、テロリスト共に占領されたと判断。MS隊を射出する。」

 「了解です。」

 「総員第一種戦闘体制を継続。何時でも出撃出来る体制を維持。周辺のミノフスキー粒子濃度はどうか?」

 「通常の域を出ません。」

 なるほど、奴等ミサイルでも使う気か?そうは問屋が卸さんよ。

 「ミノフスキー粒子戦闘濃度散布。あちらに此方が本気を出したと見せてやれ。」

 

 同宙域 ブランリヴァルMSデッキ

 ガンダム7号機コックピット ユーグ・クーロ

 試作ガンダム3号機を受け取るため、宇宙戦艦用移動ドック、ラビアンローズに向かった。今頃はキイチ達も宇宙に上がる頃だろうか。予定より、ラビアンローズのポイントが月の方にずれている。嫌な予感がする。

 「ユーグ隊長。もしかしたら俺達は、おびき寄せられたのかも知れん。」

 「どういう事だ?キョウスケ大尉?」

 「アナハイムは、どうやら戦争を起こしたいらしい。テロリスト共にMSを渡していることからも明白だ。ラビアンローズの責任者がテロリストと繋がっていて、連邦軍の部隊がラビアンローズに寄港すると情報を流したら?」

 「それなら、ドックとドッキングした状態を襲う筈だが?」

 「此方がその意思も無いと把握していた場合は違います。実際、3号機を受け取って直ぐに動くつもりでしたから。」

 「成る程。だが、既に此方に警戒されているが?」

 「メガ粒子砲・・・。若しくはあれに準じた物をラビアンローズに装備させていたとする。突貫工事だから、大まかな射線軸の変更が出来ないだろう、元々付いていなかったのだから。

 だから此方が射線に入るのを待ってメガ粒子砲を発射。一撃で仕留められない場合、ラビアンローズ及び周辺宙域のデブリに隠れたMS隊が一斉に襲いかかる。」

 「・・・!!ブリッジ、聞こえるか!!一時停船してくれ。周辺のデブリにMSが隠れている可能性が有る。」

 「どういう事だ?」

 先程のキョウスケ大尉の推察を話す。

 「成る程、此方でも探してみよう。オペレーター、周辺の赤外線量を測定!同時進行で、渡された資料のラビアンローズと、現在のラビアンローズの外観に変化は無いか調べてくれ。」

 「「了解!!」」

 2分後に最悪の結果が報告される。

 周辺のデブリにスリープモード状態のMSと思われる物が複数発見されたと同時に、宇宙船固定用のサブアームの一部に不自然な物が取り付けられていた。映像を解析したところ、MSで運用可能なメガ粒子砲であった事を艦長が伝えてきた。

 「嘗められてるのか?奴等本気で連邦軍と事を構える積もりか?」

 「恐らく、ラビアンローズ内部にMS隊の本隊が隠れているんでしょう。テロリストに占拠されて仕方なかったとでも言うつもりかもしれません。」

 「サブアームとラビアンローズの動きに注意しつつ、本艦はこの位置を固定。直掩MS隊を残しMS隊でラビアンローズに攻撃を仕掛ける。第1目標はサブアームに取り付けられたメガ粒子砲。出てきた敵MSは殲滅せよ!」

 「「「「了解!」」」」

 カタパルトデッキが開いていく。さあ、戦闘開始だ。

 

 同宙域 

 アルト・ガンダム キョウスケ・ブローニング

 サマ師共がテロリストと組んだ証拠には薄いな。この取って付けたような武装。まだ言い逃れが出来ない範囲を越えていない。まだ何かを隠している?有ったとしても、その罠ごと食い破るのみ!

 「キョウスケ大尉!待ちやがれ!」

 「ヤザン中尉か。」

 「あぁなんか臭いぜ、この宙域。」

 「あぁ、分かっている。まだ仕掛けが有りそうだ。だが、今はそれを気にしている時じゃない。やっこさんも出てきたようだ。先に行かせて貰う!」

 「汚ねぇ!待ちやがれ!」

 フム、ラビアンローズからドムモドキ15機デブリ帯から6機か、悪くない、普通であればな。ブースト全開、突っ込む!ビームホーン出力全開、体ごと当たりに行く。回避行動等とらせん。先頭のドムモドキの横っ腹にビームホーンが突き刺さる。そのまま縦に切り裂き、更に突き進む。

 5連チェーンガンをばら蒔き牽制。この隙に背面のウェポンラックからマイクロ・ミサイルポッドをセット。全弾射出!敵陣中央でミサイルをばら蒔いた。

 「ヤザン、行け!メガ粒子砲を無力化だ!」

 「分かってんよ!邪魔させるんじゃねえぞ!」

 「了解だ。」

 ガンダム1号機に取り付こうとするドムモドキをチェーンガンとビームサーベルで切り裂く。隊長とエイガーも上手く奴等を墜としていく。ヤザンがメガ粒子砲をビームライフルで破壊に成功、流石だ。

 「そこまでだ!!」

 オープンチャンネルでテロリストが怒鳴る。そんなこと知った事じゃない。動きが止まったドムモドキをビームサーベルで切り裂く。戦場で止まるとは。なっちゃいないな、この阿呆が。

 「止まれといっている!聞こえないのか!?」

 「聞こえないんじゃない。聞かないんだ。此方は貴様等テロリストと交渉するつもりは無い。」

 回答しながら更に切り裂く。こうなれば、残りの奴等も流石に動き出す。

 しかしもう遅い。ヤザンも隊長も敵殲滅に動いている。全く、敵の話を聞こうとするなんて、お人好しな人達だ。

 「おめえがメチャクチャなんだよ!」

 ヤザンが叫びながら、ビームライフルで敵機を墜とす。隊長も何かしら言いたそうな顔だ、解せん。敵を無力化してから聞いても良い筈だが?取り合えず話を聞くために、ドムモドキを殲滅した。

 

 同宙域 ラビアンローズMSドック 高機動型ゲルググ

 ジーベル・ミステル少佐

 奴等は狂っているのか?何度呼び掛けても反応しない。部下が次々に墜とされていく。ほぼ全ての部下が墜とされて漸くオープンチャンネルに奴等が問い掛けてきた。

 「で?何か言いたそうだったんだが、何の用だ?」

 「貴様!ふざけおって!このボンベが見えないのか!」

 「それは・・・G3ガスか」

 ふん、流石は隊長機の奴は察しが良いな。

 「そうだ。このバルブを捻れば、この宇宙戦艦用移動ドックにいる民間人はどうなるかな?」

 「望みはなんだ?」

 「ククククク、貴様等のMSを全部置いていけ。さもなくば、このバルブを開く。貴様等が、武装解除せねば、ドックの中の民間人は毒ガスで全員死ぬことになるぞ?連邦軍の、いや、レビルの小飼の部隊が、人質の民間人を見捨てるのかな?私は、デラーズフリート一の策士と言われた、ジーベル・ミステル少佐だ。私と出会った不幸を呪うのだな!」

 奴等ぐうの音も出ないようだな。ククククク。

 「ふーっ、やれやれ。何を言い出すかと思えば、そんな馬鹿な事か。」

 「何を!?」

 先程一瞬戦闘が止まったと思ったら、1機だけ戦闘を継続して、なし崩しに戦闘を再開させた強襲型のガンダムに乗っている奴か!

 「それは切り札にはなりえん、この阿呆が。それをやったら最後、貴様等は只のテロリストと成り下がる。貴様等が掲げる大義とやらも地に落ちるだろうよ。」

 「連邦軍が私の言うことを聞かなかったから起きる悲劇だ!」

 「違うな。そのバルブを開くのは貴様だ。一年戦争の時と違い、毒ガスと知った上でな。やってみるが良い。貴様はデラーズの所にも帰れないだろうよ。逆に首を刎ねられるかもな。まぁ、その前に俺達が貴様を逃がさん。簡単に死ねると思うな。貴様がやろうとしてることは、此方で記録されている。軍事裁判にかけられ、その罪を全世界に周知させた上で犯罪者として死刑だな。サマ師にも成れない分際で策士とは聞いて呆れる。」

 「き、貴様ー!」

 頭に血が昇った。

 「私には出来ないだと?やって見せようじゃないか!こうなったのも貴様等のせいだ!」

 次の瞬間、私の機体の右腕が消し飛んだ。

 「キョウスケさん、あんまり煽らないでくれよ。」

 あのジムモドキか!余計な事を!

 「まだよそ見する暇があったんだな?だが、その隙は逃がさん!」

 空気を読まない強襲型のガンダムが目の前に!?

 「逃がさんと言った筈だ!貫け!アルト!!」

 頭のアンテナの間にビームサーベル??

 「止めろおおおお!」

 コックピットの中で叫んだが奴は止まらない。体ごと私のゲルググにぶち当たり、私のコックピットは光に満たされた。

 ここで私の意識は永遠に無くなった。

 

 同宙域 ガンダム7号機

 ユーグ・クーロ

 終わったか。それにしても、アイツは頭が切れるな。状況判断も早い。あの戦い方じゃ無ければ、部隊を任せてみたいんだが。

 「隊長~、もうあの二人どうにかしてくださいよ。」

 「お?エイガーか。さっきは見事だったな。どうした?」

 「突っ込み過ぎですよ。あれじゃ近い内に死にますよ?」

 「おい!エイガー!俺をアイツと一緒にするんじゃねえ!」

 どの口が言っているのやら。

 「つれないじゃないか、兄弟。」

 「俺にお前みたいな兄弟なんて居ねえよ!」

 「隊長、それよりも、ラビアンローズの安全確保のため、保安要員の派遣を艦長に進言して下さい。まだ残ってるかも知れません。」

 「あぁ、既に連絡済みだ。俺達は周辺宙域の警戒だ。さっきの始末を見ていたら、此方に突っ掛かろうとは思わんとは思うがな。」

 「了解。」

 やはり、隊を率いるに足る力は有るな。エイガーも、もう少し頭が柔らかくなれば。ヤザンはどうだろうか?エイガーよりも向いているかもしれん。下の者に対する面倒見は良いからなアイツ。しかし、アイツは阿呆な上司には鉄拳で突っ込みを入れる癖があるからな。まだまだ無理か。

 「隊長~。」

 「エイガー、お前はもう少し頭を柔らかくして味方を見てみろ。キョウスケはしっかりとした技術の元、あれをやっている。ヤザンも同様だ。アイツ等の技術を盗んでみろ。自分の技術の向上になること請け合いだ。」

 「自分があの特攻野郎共をですか!?」

 「まぁ、まずは今回の戦闘映像を解析してみな。位置取りと言い、役に立つぞ。」

 「そうですかねぇ。」

 アイツに取っては俺も突撃野郎の親玉なんだろうな。だがキョウスケの動きは勉強になる筈だ。襲う前に一度敵の視界から消えようと勤めている。エイガー、色々試してみれば良い。それがお前の血肉になる。

 部下の成長を頼もしく思いながら、警戒につくユーグだった。

 

 この映像もレビルの元に届けられた。この映像により、ジオン残党を名乗るテロリストの凶悪さが世に知らしめられる結果となったが、アナハイムは被害者と言う立場を前面に出し、裏で共謀している事実は明かされることが無かった。




 キョウスケの主役回でした。此方の世界のキョウスケは若干ヤバイ人です。

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