機動戦士ガンダム 白と黒のエース<完結>   作:水冷山賊1250F

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 遂に討伐艦隊が合流します。


第82話  デラーズフリート包囲網

 グレートジオン会議室

 ブライト・ノア

 怱々たるメンバーの中、私は末席に座る。隣にはヘンケン艦長だ。彼の顔色も思わしくない。

 「ヘンケン艦長お久しぶりです。顔色が思わしくないですが、大丈夫ですか?」

 「ん?ブライト艦長。いやぁ、お久しぶりですな。いや、なに。暫く顔を見なかったうちの問題児達が帰って来たとたん、セクハラ騒ぎと暴力沙汰のオンパレードでな。」

 「そ、それは・・・大変ですね。」

 「本当だよ。君の所のMS隊は良いよな~。少なくとも彼等のような問題行動起こさないから。羨ましいよ。」

 確かに、うちのMS隊は問題行動は起こさないな。あれだけエースが揃ったら、一人や二人クセの強い奴が出てきても可笑しくない。アムロ達若い奴等が調子に乗ることもない。

 「やはり、カシマ少佐のお陰かな。」

 「やはりかぁ。良いなそっちは。他の隊もうちほどの曲者揃いじゃないし。」

 「バニング少佐は何も言わないんですか?」

 「懲りないんだよ、あの髭は。少佐が言うには、ガンダム貰って浮かれてるだけなんだと。良い迷惑だよこっちは。同じ隊のアデルは、あんなに模範生なのに。可哀想に、今では俺と一緒の胃薬仲間だよ。」

 「そ・・・それはなんとも。」

 「じゃあ、うちの隊と交換するか?」

 突然ココノエ大佐が入って来た。

 「ココノエ大佐の隊は、それはそれで胃薬が増えそうですから結構です。そう考えればうちの隊は、戦闘では真っ当な戦術を取るんですよね。性格と戦闘スタイルが全然違うんだよな、うちの隊は。」

 「まぁ、モンシア中尉は普段はモノスゴイチャレンジャーですからね。誉めるような事では有りませんが。」

 「そうなんだよぉ。」

 「まぁまぁ、もうそろそろ中将達が入って来られる。その話は後でな。」

 「「了解です。」」

 上手く諌められてしまった。今気付いたがジオン側にも見たことが有る顔が有った。確かドレン大尉だったかな?あちらが会釈したため、此方も会釈を返した。

 「知り合いか?」

 「えぇ、一年戦争の時大気圏離脱後、戦闘に成りましてね。その時拿捕した艦の艦長でした。」

 「あぁ、ブライト艦長達の活躍は派手だったからな。おっと、両中将のお出ましだ。」

 「全員起立!」

 ロンバート大佐が号令を掛ける。作戦会議の始まりだ。気を引き締めよう。

 

 同会議室

 コンスコン中将

 フム、一番末席の彼か、あの木馬の艦長は。確かに精悍な顔付きをしている。しかし、一年戦争中盤のあの頃は、まだ士官学校出たばかりの見習い士官で有ったと聞く。本来の艦長が負傷したため、臨時で艦を任され、そのまま現在まで任されるとは、いやはや我々はとんでもない麒麟児を目覚めさせてしまったのかもしれんな。議長、当時のシャア少佐が居なければ私は死んでいたのかもしれん。それがこうして轡を並べて戦うことになろうとは、運命とは不思議なものだな。

 「改めて、自己紹介させて頂く。地球連邦軍中将のジョン・コーウェンだ。早速本題に入ろう。モニターを見てくれ。」

 「現在、我々は月とサイド5残骸の中間地点に集結している。我々の目標、テロリストの拠点はサイド5の残骸に有ると判明している。このまま進めば、テロリスト共の本拠地に到着することが出来る。」

 何かスムーズに行きすぎている気がする。あのデラーズだ。何かを企んでいるのでは無いだろうか。

 「あちらには、此方の動きが掴めて無いのか?」

 「それは分からん。私の勘だが、恐らく気付いてるだろう。隠密行動をしている訳でも無いのに、ここまで襲撃を受けないのは些か都合が良すぎる。」

 「そうだな。では敵の狙いはなんだろうか。敵の首魁、エギーユ・デラーズは指揮能力もさることながら、作戦立案能力にも優れていた。それも、奴の提案する作戦はどれもこれも過激に過ぎる作戦では有ったがな。」

 「それはこちらでも把握してます。先ず、奴等が取りそうな作戦は大まかに3つであるとレビル将軍は読んでいます。」

 「3つ・・・。」

 あのレビル将軍の読みか。聞かせて貰おう。

 「先ず、一つの可能性は、コロニー公社により、再建されたコロニーの強奪だ。あのテロリスト達がやりそうな手だ。」

 フム、良い読みだな。流石はレビル将軍。

 「二つ目は、月のマスドライバーの制圧及びマスドライバーによる質量攻撃。実際にこれをやられると、今後マスドライバーの使用自体が出来なくなる。兵器転用が簡単すぎるからな。そうなれば、スペースノイドの経済活動に支障が出かねん。ここは必ず守らなければならん。」

 そうだな。しかし、良く読めるな奴の考えを。この読みのせいで、我々は負けたのかもしれん。

 「そして最後が、隕石や、デブリと成った宇宙戦艦による地上攻撃だ。先の大戦で数多くの戦艦が漂流している。戦艦の核融合炉が生きていれば、地上に大きなダメージを与えられる。しかし、レビル将軍はこの線は薄いと考えていらっしゃる。」

 何故だ?

 「何故にそう考えていらっしゃるか、お伺いしたいのだが。」

 「そうですね。前者二つに比べて、確かに確保は容易であることは事実ですが、輸送の時点で我々に確保されると見ておられるようです。」

 「なるほど。しかし、そうであればコロニーはどう考えていらっしゃるので?」

 「はい、コロニーについては、先ず月に向けてコロニーを向かわせます。」

 「そうか、月からのレーザー供給とスウィングバイを使うのか!」

 「はい。最悪、コロニー確保に向かう艦隊は置いて行かれることに成るかと。場当たり的な対応をすれば、大惨事に成ることは、間違いないですな。」

 ここまで先を読むのか!このような人物が敵の最高司令官であれば、そりゃ我々は負けるわな。とてもでは無いが勝てん。エギーユ・デラーズめ。自分がとんでもない奴に喧嘩を吹っ掛けたと気付いて無いのだろうな。

 私はもう無理だ。このような人物がいる軍に勝てる気がしない。この事は、共和国に帰り次第、議長や、首相に伝えなければ。無いとは思うが、少なくとも彼が生きている間に武力に訴える事は出来ん。もしそうなった場合、臆病者の謗りを受けようとも私は今の地位を投げ捨ててでも説得しよう。

 「月のマスドライバーですが、此方には守備隊を付けたいと思います。連邦軍側は、足が速い機動兵器を確保しているファントムスウィープ隊を有するブランリヴァルに任せる。」

 「了解です。」

 「それでは、我々共和国側からは、ガルバルディβを主力にしたレッドチームを向かわせよう。MS隊の責任者として、シン・マツナガ少佐を就ける。」

 「了解です。」

 高速機動兵器であれば、脇を固めるのは、柔軟な機動が可能な者が良いだろう。

 「次に、移送中のコロニー守備隊だが、連邦軍側はブルードラグーン隊を有するサラブレッドに任せる。コロニーの宇宙港に潜み、襲撃に備えてくれ。」

 「了解です。」

 ここであの有名な部隊を出してくるか。

 「では、共和国側からは、アルト・キュクロプス隊を就ける。コロニー防衛の任だ、彼等ならお手のものだろう。此方も同じく宇宙港に待機だ。」

 「了解です。」

 このあと、詳細な作戦の打合せを行った。もう奴等に未来はない。若い奴等を巻き込んだデラーズに怒りを覚えるのだった。

 

 

 




 包囲網完成です。
 8月19日修正しました。

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