機動戦士ガンダム 白と黒のエース<完結> 作:水冷山賊1250F
旧ルウム宙域 ホワイトベース ブリッジ
ブライト・ノア
どう考えてもおかしい。この宙域まで入り込んで、散発的な迎撃しかしてこない。
「カシマ少佐と通信を開け。」
「了解!」
直ぐにメインモニターにカシマ少佐が映った。
「カシマ少佐、どうやら我々は嵌められたのかも知れんな。」
「そうですね。おそらくこの先ではデラーズフリートの大艦隊が待ち構えているだろうが、それは足留めでしょうね。レビル将軍の3つ目の予想が当たったようだ。」
「では。」
「あぁ、中将に話を通して、今すぐに奴等の本隊を叩くべきだと思う。」
「そうか、ありがとう。」
「いや、当然の事だ。」
通信を切り、ペガサスと通信を繋ぐ。
「コーウェン中将、ホワイトベース艦長のブライト・ノアです。どうやら我々は嵌められたようです。」
「うむ、こちらでもヘンケン艦長と同じ事を話し合っていたところだ。今からコンスコン中将と話し合い、地球の衛星軌道に向けて急行する少数精鋭の部隊を編成する。連邦軍側はブライト艦長、ホワイトベースに頼みたい。行ってくれるか?」
「もちろんです。」
「足留め部隊には邪魔はさせない。我々が全力でフォローする。頼むぞ!」
「はっ!」
追い詰めたつもりが、思わぬ展開になってきた。流石はテロリスト、大部分の兵を足留めに使うとは。仲間の命をなんとも思って無い奴等だな。
ペガサスブリッジ
ジョン・コーウェン
「ヘンケン艦長、グレートジオンに通信を繋いでくれ。」
「了解です。」
艦長がオペレーターに指示し、グレートジオンと通信が繋がった。
「コンスコン中将、少し不味い事態になったようですな。」
「ええ。私共の方でも、その件を話し合っていたところです。」
「では、連邦軍と共和国軍の2隻の戦艦で、地球に向かったデラーズの追撃を行うと言うのはどうでしょう?」
「いや、それでは数の暴力で足留め部隊相手に全滅の憂き目に会うかもしれん。うちのMS部隊隊長を機体と共にそちらに送る。共和国軍2隻と連邦軍の2隻で足留め部隊を速やかに殲滅。その後、此方も追っかける形にしたい。」
「それでは、追撃部隊の火力が足らない可能性が有りませんか?」
「いや、そんなことは無いだろう。ただの1隻でキャリフォルニアとデトロイトを落とし、たった数隻でオデッサの後方撹乱をおこなった強襲揚陸艦部隊がいるでしょう?」
「ハハハハハ、コンスコン中将は彼らの事を言われてるんですな?」
「そうです。デラーズの本隊はおそらく目立たないように少数での艦隊行動でしょう。ならば、彼等1隻で勝てる可能性は大きい。それに、位置的に言えばコロニー防衛に行った艦隊も、敵の作戦に気付いて急行してくれれば、合流出来る可能性が高い。月の艦隊は無理っぽいけどな。」
「それに奴等を捕捉し戦闘が始まれば、衛星軌道上のティアンム艦隊が気付く可能性が高い。勝ち目が高い作戦ですな。」
「ええ。ただ一つの懸念は、奴等は大艦隊に対しては、躊躇無く核を使う可能性が有ることだ。それを使わせる前に、潰すことがベストだろうな。」
「なるほど、分かりました。では、早速彼等を向かわせましょう。」
「そうですな。その前に、此方のMS隊隊長を彼等に派遣します。そして貴方も彼等の指揮を取るため、彼等の艦に移乗して下さい。此方は、私が指揮を執り、なるべく早く合流します。」
「よろしいので?」
「任せて下さい。あなた方だけは無傷で送り出して見せます。」
「分かりました。それでは此方はお任せします。」
「了解しました。御武運を。」
「ええ。お互いに。」
ドズル中将の元懐刀と呼ばれたコンスコン中将。なるほど、出来る人物だ。
「聞いていたな、ヘンケン艦長。直ちに私はホワイトベースへ移乗する。ランチで送り出してくれ。」
「了解しました。やはり、あの赤いフルアーマーガンダムが来るのでしょうな。」
「だろうな。」
「ノーマルスーツを着用し、ランチにご搭乗下さい。ランチは、中将を送り届けた後此方に戻します。」
「了解した。」
「では、中将はロッカールームへお急ぎください。私はブライト艦長に今後の行動を説明します。ホワイトベースに通信を繋いでくれ。」
「了解!」
さて、私も急がなければな。ヘンケン艦長がホワイトベースに今後の行動を説明している。ここからは時間との勝負だな。
ホワイトベース左舷側MSデッキ上
キイチ・カシマ
動く砲台と化して、早一時間。どうやら旧サイド5宙域は抜けたみたいだ。
「キイチ、アムロ。MSデッキに戻ってくれ。」
「「了解!」」
此れから最大加速に入るんだな。
「アムロ、零零ガンダムに少し待機していてくれ。」
「了解です。何か有るんですか?」
「零零ガンダムには、簡易的なサイコミュが搭載されていると聞いた。ならば、地球に対してどす黒い悪意を向ける奴等が分かれば。」
「奴等の居場所を特定出来ると言うことですね?」
「そうだ。やれるか?」
「やった事は有りませんが、やってみます。」
「ぶっつけ本番だが頼む。」
もしかしたら、アムロならやれるかもしれない。頼むぜ、アムロ大明神!
「艦長、少し良いか?」
「あぁ、今の会話は聞いていた。ホワイトベースの最大加速は少し待つ。しかし、5分だけだ。5分を過ぎれば地球に向けて最大加速する。」
「了解だ。それで良い。地球に近付けば、アムロも奴等の位置がはっきりと分かるかも知れんしな。」
「そのような賭けのような物で奴等が捕捉出来るのかね?」
コーウェン中将が回線に入り疑問を投げ掛けてきた。普通はそうだよな。だが俺は知っている。核ミサイルに込められた悪意さえも感じる事が出来る人物の存在を。
「やらないよりはマシ程度の可能性では、有りますね。でも、当たればリターンはでかいですよ。衛星軌道上につく前に奴等を捕捉出来ます。」
「ウーム、5分だけだな?」
「ええ。」
「これか!」
アムロが突然叫んだ。
「分かったのか!?」
「ええ。おそらくですけど、進行方向を後左5度だけ調整してください。間に合います!」
「了解だ。良いですね中将?」
「やって見てくれたまえ。」
「了解。左舷に5度進路修正。修正後、ホワイトベース最大加速!奴等をこの戦いで徹底的に潰して、地球圏に平和を取り戻すぞ!」
「「「了解!」」」
この戦いでデラーズフリートを壊滅させてやる。俺達に手を出した落とし前をやっと取り立てられるな。最大加速を零式のコックピット内で感じながら、加速が納まるまでそんな事を考えていた。
次回コンスコン中将達の戦いです。