機動戦士ガンダム 白と黒のエース<完結>   作:水冷山賊1250F

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 コンスコン中将頑張る。


第87話  釣野伏せり

 グレートジオンブリッジ

 コンスコン中将

 「よし、彼等は行ったか。各艦の艦長に繋いでくれ。」

 「了解です!」

 さあて、ここからが勝負だな。メインモニターに各艦の艦長が映った。

 「コンスコン中将、連邦軍ペガサス艦長ヘンケン・ベッケナー中佐です。どうされたんですか?」

 「あぁ、ヘンケン艦長、それとシナプス大佐。此れからの作戦の意思統一をしようと思ってね。」

 「意思の統一ですか?今から我々は、足留めに残った部隊を叩くのでは?」

 「それは間違いじゃない。しかし100点の回答ではないよ。」

 「つまり、一刻も早く敵を無力化し、ホワイトベースを追いかけると言うことですかな?」

 「正解だ、シナプス大佐。ここで長時間足留めを食らう訳には行かない。」

 「しかし、敵はどっしり待ち構えている。下手に全艦で後を見せようものなら、敵はこれ幸いと襲いかかりますぞ?突撃しても蜂の巣に成るのが関の山です。我々はここで、奴等がホワイトベースを追いかけないように睨みを効かせることがベストだと思いますが?」

 「なるほど、その手は手堅いなシナプス大佐。だが、一つ忘れている事がある。奴等の作戦が成功すれば、地球に多大な被害を与えることになる。戦争が終わったこの時代に、そんな事が起これば、息を潜めていたギレンの信俸者が息を吹き返すかも知れん。それに、これ以上死なずに済む命を散らすのは忍びない。一年戦争でジオン軍として戦った私が言う言葉では無いのだがな。」

 「それは。」

 「良いのだよ、事実だからな。おそらく、人類史にも残るほどの虐殺だ。だがな、もうあの戦争は終わったのだ。どのような形であれ、もうあのような事を繰り返す訳にはいかん。それもジオン軍に所属していた者の手によってな。奴等の作戦成功率を少しでも落としたい。どうか、力を貸してくれないだろうか?」

 「分かりました。では、どのように攻めますか?」

 「先ず、全艦一斉に回頭後、MSを射出しMS隊は全機デブリに隠します。その後、我々はこの宙域を抜ける進路を進む。奴等が追いかけて来た所でMS隊が一斉に攻撃を開始。その後全艦一斉回頭し、追撃部隊を殲滅。」

 「なるほど、母艦を餌に、シマヅの釣り野伏せりですな。奴等は此方を追って来なければ成らない。仮に追いかけて来なければ我々は、全艦でデラーズの本艦を叩きに行ける。良い作戦ですな!」

 「ご理解頂けたようですね。では、MS隊の隠れる場所は」

 「お待ち頂きたい。回頭後、直ぐに動き出さなければ、奴等に勘付かれてしまう畏れが有ります。回頭後、直ぐに引けるよう、今からMS隊に待ち伏せポイントに移動してもらうというのはどうでしょうか?」

 「良いですね。では、それで行きましょう。MS隊の伏せる場所は、後方約100㎞のコロニー残骸が比較的に固まっている地点としましょう。後30分も有れば待ち伏せポイントにMS隊は隠れられますかね?」

 「大丈夫でしょう。デブリを模したダミーバルーンに隠れながら移動すればブースターを使えますし。」

 「では、この通信が切れ次第作戦をスタートします。よろしく頼みます。」

 「「「了解!」」」

 良かった、作戦案が通った。それにしてもシマヅって誰だろう。釣り野伏せりって名前でだいたいの意味は分かったけど。後で調べてみよう。

 「艦長、直ちにMS隊を射出し、ダミーバルーンを利用しこのポイントまで移動させてくれ。」

 「了解。と言うか、先程の件は既に伝えています。あとは、射出するのみです。」

 「ありがとう艦長。では、作戦開始だ。」

 「了解!MS隊射出開始!」

 作戦が始まった。後は、彼方がどう出るかだな。

 

 同宙域 ペガサスブリッジ

 ヘンケン・ベッケナー

 おぅおぅ、此方が回頭し、サイド5宙域から離脱しようと動き出した瞬間に奴等、食い付いて来やがった。初めにホワイトベースを離脱させたのが大きいのだろう。1隻は逃しても、後の4隻は逃がさないつもりなのだろう。奴等好き放題に撃ちやがって!

 「進路そのまま、速度を少し上げるぞ。此方が必死に逃げているように見せ掛けるんだ!」

 「了解!」

 他の艦も此方に合わせて速度を上げる。流石皆さん、分かってらっしゃる。もうすぐMS隊の待ち伏せポイントだ。

 「よし、待ち伏せポイントを過ぎた!対艦機雷をばら蒔け!奴等の足をここで止める。艦の速度は落とすなよ!」

 「了解!」

 機雷を落として直ぐに左後方から強い振動が襲いかかった。

 「被害状況を報告しろ!」

 「左後方のエンジンブロックに被弾。左1番から3番までのエンジンから応答が有りません!」

 「左エンジンブロックを切り離せ!此方に誘爆するぞ!」

 「了解!」

 エンジンを切り離した途端、左エンジンが爆散した。

 「速度は今までの半分程度までしか出せません!」

 「大丈夫だ、落ち着け。ポイントを過ぎ次第、艦首を回頭し反撃に移るぞ!」

 「了解!」

 予定ポイントに着き、艦首回頭がやけにゆっくりと感じる。自分の気持ちが逸っているのを感じた。

 

 同宙域 試作1号機フルバーニアン

 コウ・ウラキ

 追撃してきた艦隊に対艦機雷が襲いかかった。

 「ウラキ、行くぞ!」

 「了解!!」

 アレン中尉の合図で敵艦隊に対し、一斉に攻撃を開始する。此方を少し通りすぎた場所での立ち往生。此方は背後から撃ち放題。なんとも楽な仕事だ。最初にエンジンを潰してと。あぁ成ったらもう終わりだな。お次はMS格納庫付近を重点的に攻撃。ハッチが開いた場所はもう地獄だろう。そこに回頭を終えた艦隊からの砲撃が加わった。

 あ、ムサイが1隻爆散した。あの集中砲火の中は地獄だろうな。早く降伏すれば良いのに。ザンジバルも爆散していく。残されたムサイから、ランチが発進していく。

 「攻撃止めえええっ!」

 グレートジオンから通信が入ったため、攻撃を中止する。たちまち戦闘宙域に静けさが戻った。

 さて、次の標的は?茨の園は攻めないの?

 「全機帰投せよ。繰り返す。全機帰投せよ。」

 え?これで終わり?フルバーニアンの性能全然活かせてないよ?どちらかと言えば、キースや、アデルさん達の方が活躍してたんですけど・・・。まあ、今回は作戦勝ちかな。一年戦争では、あのような人が敵にいたのか。敵の良い所を出させずに勝つか。俺も良い所を出せなかったけど、彼方はそれ以上に何も出来なかった感じだな。

 「オーイ、コウ。帰投するぞぉ。」

 「了解。今回の戦闘はキースとアデルさんの独壇場だったな。」

 「いや、あれは作戦立案者の一人勝ちでしょ?さっさと帰ろうぜ、コウ。」

 「あぁ、そうだったな。」

 キースもそう思うのか。やっぱり凄い切れ者なんだろうな。茨の園はどうやら後回しみたいだな。アルビオンに向かいながらそんな事を考えていた。

 

 グレートジオン艦内

 コンスコン中将

 ペガサスが被弾してスピードがでないため、戦線を離脱することに成った。待ち伏せ部隊には艦船が残っていない事は分かっている。奴等はあの宙域からもう出られない筈だ。

 運良く、近くを連邦軍のパトロール艦隊がいたため、コンペイトウまで護衛してもらえることに成った。ペガサスの艦載MSは全機アルビオンに移乗。我々は3隻でホワイトベースを追いかけることに成る。

 私は現在、この艦に有るデータベース室にいる。確か、シマヅと釣野伏せりだったかな。キーボードを弾いて検索していく。なんだこの民族は?まさしく修羅だ。古代ジャパンの戦国時代か。

 良い物を教えて貰った。MSが戦場の主役に成った現在では少しアレンジすれば、使える戦法がまだまだ有るだろう。連邦軍の艦長連中は直ぐに反応し理解を示したのは、彼等はこういう物を教材にしているからだろうな。それが偶々私の考えた作戦と同じような物であった。なるほど、彼等が手強い訳だ。私もまだまだ学ばなければな。

 机の上の情報端末をそっと閉じ、彼等の強さの原点が分かったような気がした。

 




 コンスコン中将、ネタの宝庫に出会うの巻でしたww。

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