機動戦士ガンダム 白と黒のエース<完結> 作:水冷山賊1250F
第91話 デブリ拾いの少年
サイド1コロニー シャングリラ
ジュドー・アーシタ
一年戦争からこっち、5年位前まではちょくちょく戦いが有ったらしいが、最近はとんと話を聞かない。お蔭で、流れて来るデブリはろくなものが無い。仲間内でレンタルしているプチモビで宇宙に出てきて、今日もせっせとゴミ拾いだ。これが結構金に成るのよね。
「イーノ、ビーチャ達はまだ来ないのか?」
「あぁ、今日はパスだってさ。モンドと二人でナンパに行くんだって張り切ってたよ。」
「最近はそればっかだな。共同出資で借りてるから、拾った物は山分けだけど、な~んかしっくり来ないんだよな。まぁ、MS操縦する俺達がその分多く貰ってるけどさ。」
「仕方ないよ。まぁビーチャ達は株主に成った積もりで居るんじゃないの?僕達は作業員ってところさ。」
「それで良いのかよ、イーノ。」
「良くは無いけど、僕等もいつまでもこんな事出来ないからね。いつか、他の道を探すにしろ、先立つ物は多い方が良いし。ま、バイト感覚だね。」
「そうか、そうだな。俺は両親が共働きでコロニーに居ないからさ、今の内に色んなスキルを手にしたいんだ。将来何をするにしても、手に職を持ってた方が潰しが効くしね。」
「ま、お互い頑張ろう。」
「そうだな。ん?なんだあれ?」
「どうしたのさ、ジュドー。」
「2時の方向、なんか丸い物が流れて来る。」
「え?えーと、あれか。ああぁぁっ!あれ、MSのコックピットブロックじゃないか!?」
「マジか!?大物じゃないか!」
「そんなこと言ってる場合じゃないよ!中の人に早く酸素を与えなきゃ死んじゃうよ!」
「そりゃあ、大変だ!早くコロニーに入れよう!軍の方にも通報した方が良いかな?」
「デブリ管理事務所に通報すれば、軍の方にも連絡が行くんじゃないかな?」
「よし。回収後、コロニーに戻りながら、無線で管理事務所に連絡だ。イーノは俺のフォローと無線を頼むよ。俺はコックピットブロックを確保して移動する。両手が塞がるから、ナビゲートよろしく。」
「分かったよ。」
こうして俺達は、久しぶりの大物と格闘しながらコロニーに戻った。大物の情報はビーチャ達にも連絡した。後から知ったりすると五月蝿いのよ。独り占めするつもりだろうとか、本当がめついんだよな、あいつら。そのくせプチモビに飽きたんだろう、最近は顔も出しゃしない。ま、良いけどさ。
とにかく急いで与圧エリアに入った。いつもの駐機エリアに到着し、コックピットハッチを開く。プシューという排気音の後に、コックピットが開いた。中には黒いノーマルスーツを着た女性が、ぐったりしていた。
「おい!あんた!大丈夫か!?」
ヘルメットのバイザーをペシペシと叩いたところ、身動ぎした。
「バイザーを開けるぞ!外は大丈夫だ!」
ヘルメットのバイザーを開けたところ、妹のリイナと変わらない年の女の子の顔が有った。何でこんな娘がMSのコックピットブロックに?とにかく起きてもらおう。
「おい!分かるか!?ここはもうコロニーの中だぞ。」
「・・・誰?」
「俺はジュドー。ジュドー・アーシタだ。コロニーの外壁でデブリ拾いをしていたら、君の乗っていたMSのコックピットブロックを拾ったんだよ。」
「私・・・、生きてるの?」
「そうだ。君は生きてるよ。」
答えた途端、激しく泣き出した。いったい何が有ったんだ??
コロニー管理事務所の人が15分後に現れた。女の子は、自分の事をエルピー・プルと名乗り、俺達に匿ってくれと頼み込んで来たため、トレーラーの荷台に隠れて貰った。
「君達かね。このコックピットブロックを拾ったのは?」
「そうです。二人掛かりで大変だったんですよ。でも、中に人は居ませんでした。お騒がせしてすいません。」
「あぁ、構わんよ。このコックピットブロックの所有権は拾った君達に有る。お手柄だったな、結構な額になるぞ。このまま、俺達が持って帰って査定に入ろうか?入金はいつもの口座なんだろう?」
「ええ。お願いします。中の状態は良いようです。」
イーノが主に、コロニー管理事務所の人と交渉をしている。コロニー管理事務所は、デブリの買い取りもしてくれるんだ。町のジャンク屋よりもよっぽど良い値で買ってくれるため、俺達は重宝していた。何でもコロニーの維持管理に関わる事なんで、デブリ屋を助成し活性化させるのが目的らしい。デブリ屋は、金の為に一生懸命働く。コロニーは、デブリで破損すること無く、正常に運転される。ウィンウィンの関係だってさ。
「ジュドー、終わったよ~。帰ろうか。」
「お~。」
管理事務所の人達と別れて、イーノが歩いてくる。助手席に乗り込んで来たので、直ぐに移動を始めた。
「それじゃ、ヨロシクお願いしま~す!」
俺達は管理事務所の人達に声をかけ、住宅街へ向かった。
「ジュドー、あの子どうするつもりさ?」
「一度、うちに連れていくよ。そこで話を聞こう。」
「分かった。でも、なんか面倒な事に巻き込まれそうなんだよな~。」
「確かにな。でも、あんな小さい娘が助けを求めてるんだ。なんとかしてやんなくちゃな。」
「そうだけどさ。ん?ありゃあエルか?」
「お~い、ジュドー、イーノ~。」
前から同じデブリ拾いの仲間のエル・ビアンノがスクーターに乗ってUターンして止まった。こちらも道路の端に寄せて停める。
「大変だよ~。」
「どうしたんだよ、エル?そんなに慌てて?」
「ラー・カイラムだよ、ラー・カイラムが入港して来たんだよ。」
「なんだって?それじゃ、ようやくこのコロニーにも監査が入ったのか。やったな!」
「あぁ、コロニー管理局と自治政府の専横もここまでだな。下の事務所の人達のタレコミかな?」
「まぁ、あの人達は真面目にやってたからな。おそらく、デブリ回収の予算を減らされそうだって言ってたから、行動を起こしたんだろうな。コロニーが破損すれば、修理代の方が高く付くって分かんないのかな、あの人達は。」
「それも俺達から取ろうと考えていたんだろうぜ?本当、立場が上に行くほど役立たずが多くなるよな。何でだろ?」
「どうでも良いじゃん、そんなこと。たぶん、これで少しはマシになるよ。それよりさ、見に行かない?もしかしたら、あの人達に会えるかもよ?」
「あの人達?」
「キイチ・カシマや、アムロ・レイさ。」
「エルもミーハーだな。」
「悪い?」
「ま、良いか。明日で良いか?今日は疲れてさ。」
「明日だね?良いよ。じゃ、明日で~。」
エルがスクーターで離れていく。
「じゃ、俺達も帰るか。」
「そうだね。」
動き出そうとした時、後の荷台から隠れていた女の子が動き出した。
「ねえ、今の話ほんとう?」
「何が?」
「ラー・カイラムよ。サイド1のロンデニオンに行かなくても、あの人達に会えるの?」
「まぁ、今なら会えるかもな。」
「私をそこに連れて行って。お願い!」
ジオン系のパイロットスーツを着た女の子が、あの部隊に助けを求める?何かキナ臭い予感がして、イーノと顔を合わせた。
ジュドーさんから始まりました。