機動戦士ガンダム 白と黒のエース<完結> 作:水冷山賊1250F
シャングリラ宇宙港 ラー・カイラム会議室
ジュドー・アーシタ
どうなってんだ?呼んだだけで、無人のMSが来て、命令まで受け付ける?そんな話聞いたことが無い。パーツの隙間から緑色の光がチラホラ光り、背中に板を何枚も付けたガンダム。
なんだあれ?あんな派手なMS初めて見たよ。それに、アムロと名乗った人。生身でも強い。手榴弾を投げようとした奴の腕を撃ち抜くなんて。通路側の奴にあっては、見ないで撃ってたよな?何故当たるんだ?
結局そのまま、ラー・カイラムに連れて来られたけど、本当に大丈夫か?とんでもない所に来た気がする。俺達は3人椅子に並んで座っている。
「まぁ、そんな固くならなくて良いよ。先ずは自己紹介をしようか。さっきも言ったが俺はアムロ・レイ。さっき皆が乗ったガンダムのパイロットだ。君達は?」
「俺はジュドー・アーシタって言います。」
「私はリィナ・アーシタです。お兄ちゃん一人では心配だったんで付いてきました。」
「私はエルピー・プル。アクシズから逃げて来ました。」
おい!初っぱなからぶっちゃけ過ぎだろ。アムロさんも目を丸くしている。
「そ、そうか。君があのMSのパイロットだったんだな。よく生きてたね。ここに来る途中で見つけたんだけど、結構やられてたね。誰にやられたんだい?」
「もう一人の私。」
「もう一人の君?双子か何かかい?」
「いえ、たぶん私のクローンです。」
「クローン?どういう事?」
「はい。私はニュータイプの研究にアクシズで協力してたの。無理なことはされなかったけど、ちょくちょく血液検査と言って血を抜かれてたわ。」
「うん、それで?」
「今度、地球圏に強硬偵察に行くから付いてくるよう言われたの。遂に徴兵かと思った。私専用のMSも有ったし?そこで乗った艦に私と同じ存在を感じたの。だから調べてみたら、私が11人居たのよ。」
「「「11人!?」」」
3人で声が揃ってしまった。
「うん。みんな番号で呼ばれていたわ。プルツーとか、プルフォーとか。」
「何て事を・・・っ!」
アムロさんが、怒っている。部屋の空気がはっきりと変わった。
「私、あの娘達を助けたいの。何も知らずに戦争をさせられそうで。で、逃げてきたんだけど、途中で私に追い付かれて、あそこで戦ってしまったの。
でもね、あの娘は私を殺す気は無かったみたい。コックピットブロックを取り出して、わざわざコロニーに向けて投げ飛ばしてくれたし。戦って勝った痕跡が無いと自分も処理されるから手伝うって。ちょっと乱暴だったから、お陰で気を失っちゃったけど。」
「そうか。大変だったんだな。」
あ、アムロさんの怒りが少し治まった。
「で、君達は?」
「あぁ、俺はコロニー外壁付近でデブリ回収のバイト?をしてた時に、この娘が乗ったコックピットブロックを拾ったんだよ。この娘、ロンデニオンに連れて行ってくれって頼んでたからただ事じゃ無いって思ったんだ。だから、ラー・カイラムが来てるって知ったからここに来たんだよ。妹は、まぁカモフラージュかな?協力するって聞かなくってね。」
「そうか。君達も協力ありがとう。ところで宇宙港前の駐車場でウロウロしている少年は君の仲間かい?うちの保安員が身柄を確保しているみたいだが?」
「ああぁーーーっ!それダチです。イーノ・アッパーブですよね!?」
「ははは。そうか。確かめてみるよ。」
アムロさんは、電話を取って何処かに連絡を始めた。
「あぁ、イーノ君で間違いないんだな?分かった、そちらで確保していてくれ。くれぐれも丁重にな?彼等は協力者だ。」
「お兄ちゃん、良かったね。」
「あぁ、すっかり忘れてたけどな。」
ついつい、頭を掻いてしまう。悪い、イーノ。こっちも大変だったんだ。アムロさんが、懐から携帯電話を取り出した。
「隊長、アムロです。例のMSのパイロットを確保しました。パイロットは今のところ、怪我もなく無事です。地元の少年達が協力して連れてきてくれました。はい。あと、重要な情報も有ります。戻って来れますか?はい。了解です。お待ちしています。」
電話が切れた。
「ジュドー君、リィナさん。協力ありがとうね。でも、さっきの奴等がまだコロニーにいるかもしれない。暫くこの艦でゆっくりして行ってくれ。エルピーさん?」
「プルで良いよ。みんなそう呼ぶし。」
「じゃあプルさん、大変だったね。でももう大丈夫だ。俺達が君を絶対に守る。君のクローン達も全力で保護するよ。」
それを聞いたプルは、漸く安心したのか、涙を流しながら一言、お願いしますと言って頭を下げた。こんな小さな女の子に何て事をするんだあいつ等は。アクシズ。同じスペースノイドとして許せる相手じゃないな。沸々と怒りが沸いていたいた所、会議室のドアが開いた。
同場所
キイチ・カシマ
「隊長、早かったですね?」
アムロが話しかけて来た。会議室の話の内容はブリッジで聞いていた。アクシズめ!奴等、手を出してはいけない領域に手を伸ばしやがった!戦うためだけに、産み出される命だと!?許さん!
「あぁ、ブリッジに居たからな。アムロ、彼女か?」
「えぇ、彼らが彼女を守ってここまで連れてきてくれました。」
「そうか。辛い目に合ったな。アムロも言ってたと思うが、もう大丈夫だ。君のクローン達もなんとか助けるよう努力するよ。」
「お願いします。」
黙って頷いた。ジュドーの方を見ると、ジュドーと目が合った。
「あんたが隊長さんかい?」
「あぁ。ここのMS隊の隊長のキイチ・カシマだ。君達には感謝するよ。ありがとう。君達のお陰で奴等に利用されている女の子達を救えるかもしれない。絶対に助けると約束は出来ないが、全力を尽くすことは約束するよ。」
「隊長さん、いや、キイチさん。お願いが有るんだけど。」
「なんだい?」
「俺も協力させてくれないかな?何だってするよ。こんな小さい娘に殺し合いをさせようとするなんて、こんなの間違ってるよ。」
おぉっ!ジュドー君が自分から協力を申し出てくれるとは!これで次世代のエース候補も確保だな。自分から言い出したんだ、俺は申し込み離さないぜ?
「大丈夫なのかい?君の妹さんは、一人になるんだぞ?」
「私からもお願いします!お兄ちゃんは普段ちゃらんぽらんな人だけど、やるときはやる人です!私は戦うことは出来ないけど、掃除や洗濯、料理は出来ます。お兄ちゃん共々私も協力させてください!」
「リィナ!何を言ってるんだ!お前は家で自分の事をするんだよ!俺の事は良いんだ。なあに、死にゃしないって。家で俺の帰りを待っていてくれ。」
悩む。非常に悩む。しっかり者の妹さん、原作じゃ死にそうな目に合うしな。でも、ここで追い返す訳にもいかないか。目の前で兄妹ゲンカが繰り広げられている。
「ンッ!ンッンッ!少し良いかな?」
「はっ、はい!すいません!」
「良いよ、良いよ。ジュドー君、リィナさんは、今の時点で独り暮らしは危ない。アクシズの連中に君達の事がばれてないとは限らない。だから、ロンデニオンで保護すると言うのはどうかな?それと、君の提案だが、3日間時間を上げよう。シミュレーターで君の力を見せてくれ。」
「力を見せる?」
「あぁ。シミュレーターで使う機体は我が隊で運用している零零ガンダムだ。こいつは今機種変更で誰も乗ってなくてね。シミュレータールームに案内する。そのシミュレーターで3日以内に乗りこなしてくれ。教官にはアムロを付けるよ。」
「えっ!?僕ですか!?」
「アムロ、お前もそろそろ隊長として部下を率いなけりゃならん。人に教えることもな。いい機会だ、ジュドー君と一緒にお前も鍛え直せ。3日後を期待している。」
「了解です!」
まぁ、たぶん大丈夫だと思うけど。3日後が楽しみだ。
この世界のアムロさんは、パイロットに特化し過ぎていますww。