未知との遭遇〜アルトリウムを添えて〜   作:ゴランド

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 夏イベの徐福ちゃん可愛いヤッター!ところで徐福ちゃんのピックアップは何時頃になりますかね?




11話 進展

 

「いやはや、よく翼さんが此処に居ると分かりましたね」

「えぇ、まぁ……霊的直感?」

「……? 占いや風水のようなものでしょうか」

「多分それでいいと思いますハイ(適当)」

 

何があったのか説明しなければならない。

奏さんによるポルターガイスト現象じみた立体起動により偶然にも翼さんのロケ撮影予定の飲食店に到着。そして現在、下見に来ていた緒川さんと対面しているワケです。

 

いやー、凄いね元装者の第六感。いや幽霊の身だから機能しているか分からないケド。

 

『褒めてくれていいんだぞ?』チラッ チラッ

「ハッ倒しますよ?」

『なんで⁉︎』

 

 ハハハ、街道を逆走した挙句に海外映画のカーチェイスじみた機動で無理矢理バイクを動かした貴女に褒める要素が何処にあると言うんですか?と言うか、サラッと俺の身体乗っ取らないでくれません?

 

……ビスケット・○リバみたいに全身に塩を擦り込めば憑依されずに済むのかなぁ。

 

「……ええと」

「あっ、失礼。撮影の邪魔をする程、俺は空気の読めない翼さんファンでは無いのでこれで失礼する」

『おい待てェ、失礼するんじゃねェ。翼目的でここまでバイクをかっとばして来たってのにそれは無いだろ!』

 

 うっせぇ、ぶっころす(成仏させる)ぞ(悟空風)

貴女をこのままにしておけばロクな事にならないって俺知ってるからな騙されんぞ。

 

『えー、ケチ!』

「お黙り……じゃ俺、このまま帰るんで失礼しまs───「なんだ、もう帰るのか?」──ファッ!?」

 

 こ、この大きく広がる青空の下で冴え渡る杜鵑(ホトトギス)の如き美しい声色は……ッ!!

 

「翼さんッ!?」

『翼ーーーッ!』

 

「おお、やはり君か。同じ防人ストである私達だからこそ、こうしてまた逢えたのだろう」

「(言ってる事よく分からないけど)そうですねッ!」

 

 まさかこんな所で翼さんと出会すとは……ッ!と言うかよくよく見ると此処って前にXと一緒に食べに来たラーメン屋じゃん。ラーメンと言うかほぼ麻婆だったけど。

 

「また会えたんだ、よければコレを受け取って欲しい」

 

 おっ、おおおおお俺に贈り物だとぉッ!?そんな恐れ多い事をして良いのか俺ッ!?

………いや、ここで翼さんの好意を無駄にする事こそ彼女への侮辱とも言えるッ!ならば此処はしっかりと受け取る事こそが翼さんに対する敬意だッ!

 

「ありがとうございますッ!有り難くいただきm……あの、なんですかこれ」

『ヒェッ!?何だコレ!一瞬、死を感じたぞ!?…いや、私は既に死んでるんだけどな』

 

 彼女から手渡された袋の中にはパック詰めにされた赤黒く仰々しく禍々しくネクロ的なサムシングの今にもダイスが振られ正気度が削れそうな()()だった。

 

……こ、これはまさかッ!?

 

「ご存知、激辛麻婆豆腐だ!」

 

 ゲェーーーーッ!?あの関西中心に進出している中華料理店『紅洲宴歳館・泰山』の激辛麻婆豆腐だとぉ!?俺は未だに中辛が限界だと言うのに!何を考えているんだこの人はッ!?

 

「緒川さんが久々に取って来てくれたグルメ系の仕事。巷で話題の麻婆豆腐……フフ、歌以外の仕事は久しぶりだから食べるのが楽しみだ」

「えっ、……あの、食べるの初めてなんですか?」

「ああ、緒川さんから『チャレンジする事が大切だ』と言われてな。実際に私が食べるのは後日になるが、これらは店主がサービスしてくれたものだ。良ければ立花達にも配って欲しい」

「何と言う事を……(戦慄)」

 

 舌が融解すると数多の客を(地獄が生温いレベルの苦しみで)唸らせたアレを食わせるなんて……!

 

「貴方は鬼か何かで?」

「僕は翼さんのマネージャー、それ以上でもそれ以下でもありませんよ」

 

 翼さんの知名度を広げる為には手段を選ぶ事を厭わないマネージャー……汚いな、流石忍者汚い。貴方の事だぞ緒川マネージャー。

…オイ、顔を背けるな。こっち向けや。

 

『しっかし、こんなトンデモ無いものを食わせようとするなんてな……って、お前はいいのか?』

「何がです?」

『いや翼のファンなら目の前の凶行を止めるべきなんじゃ無いのか?』

 

……ハァー(クソデカ溜息)

これだから共に戦った位で彼女面している口だけ達者なトーシロは。

 

「翼さんがその道を選んだのなら、ファンである俺はただ応援するだけ。どんな姿でも彼女自身が風鳴翼であるのは変えられない事実なのだから」

『……そっかー、そうだよな!(思考破棄)』

 

 分かればよろしい。

……しっかし、どうするかなこの大量のパック詰め激辛麻婆豆腐。二課の人達に差し入れ……はテロが起きそうだし。Xや雪音さんに渡しても食べないだろうしなぁ……。

 

……ヨシ、俺が食べるか!しばらくは口内と尻の穴が地獄極楽の境にダイブする事になるだろうけど、そこは翼さんへの愛でカバーすれば問題無いな!

 

『マジかこいつ』

「マジだよ……翼さんありがとうございます。これは誠意を込めて食べさせて頂きますね!」

 

「……ああ、喜んで貰えて何よりだ───でも」

 

 彼女は空を見上げて不意に呟く。

 

「……できれば奏と一緒に食べたかったな」

『えっ』

 

……そうか、翼さんは死んだ奏さんの事を未だに……ずっと側に居ると思っていた人がとある日を境に目の前から失せてしまう。

 

俺もその気持ちが理解出来る。

いや、俺だけじゃ無い。立花さんも雪音さんも奏さんだって肉親が消える気持ちを察する事が出来────いや、よく考えてみると親関係悲惨な人多くない?なんで?

 

……話は脱線したけど俺はこれ以上過去に首を突っ込む程、鬼では無いので無理矢理、話題を変える事にした。

 

「それなら御供え物として麻婆豆腐を置く事にしましょう。そうすれば天に居る奏さんだって喜んでくれる筈ですよ」

『いやいやいや、待って。流石にそれは遠慮したいんだけど』

 

「(考えてみれば私は装者、アーティストの活動を優先して御墓参りに一度も行ってなかった…)そうね、奏だって一緒に食べたいと思ってるわ……でしょ、奏」

『ハハハ、ごめんよ翼。それだけは勘弁して(懇願)』

 

 

 しばらくの静寂。そして……

 

 

「うん、奏も翼と一緒に食べたいって言ってるわ」

『あれぇ!?私の声届いてなかったのかなぁーッ!?』

 

 どうやら奏さんの声は翼さんに届かなかったようだ。

……でも、良かった。過去は己を縛り付ける鎖にもなるけど…時には人を前へ進ませる原動力にもなり得るんだ。

 

過去(後ろ)ばかりみるのでは無く未来()を見て歩こう、そうすればきっと貴女は────

 

『なぁーなぁーッ!御供え物って!大丈夫なのかそれ!?麻婆豆腐を御供え物ってどう考えても可笑しいだろッ!』

 

……貴女は更なる高みを目指す事が出来る。それは俺や奏さんが望む貴女の幸s

 

『あんなおどろおどろしいモノを供えられたら私呪われるぞ?怨霊になるぞ?頼むから止めてくれよ!なー!なー!』

 

……つ、翼さんの幸せを俺は願いまs

 

『スルーすんなって!思い切り無視するのはやめてくr「千代紙操法・壱式『ホーミング折鶴』ッ!」えっ、何その高度で高速な折り方…ぐあああああああああああああああああああああああああああああああああああああああッッ!?

 

 ヨシ!(現場猫)これで静かになったな!

 

「ど、どうしたんだッ!?突如として折鶴を何も無い所に投げ出して⁉︎」

「何かありましたかッ!?」

「えっ、あー……若さ故の誤ちのようなヤツです。要はそっとしておいて貰えると有り難いです」

 

 

「…はぁ、先程から変だぞ?何も無い所に話しかけたり、急に奇妙な言動を行ったりと。そんな事をしていれば周りから変質者を見るような目を向けられてしまうぞ!」

 

 

…………。

 

(((それはひょっとしてギャグで言ってるのかッ⁉︎)))

 

「?」

 

 う、うん。翼さんがとんでもないブーメラン発言をしているのを本人自身気が付いて無い事を指摘するのはアレなので今すぐに話題を転換する事にしよう!

 

「えーと……んじゃ、俺麻婆貰ったので帰らせてもらいm「少し良いでしょうか?」はい?」

 

 えっ、どうしたんですか緒川さん。色々と変な空気に耐え切れなくなって来た俺をこの場に留める理由なんてあるんですか?

 

「なんと言いましょうか……奏さんの事なんですけれども」

『私の事呼んだか?』

呼んだけど貴女の事じゃないです座ってろ…で、奏さんがどうかしたんですか?」

 

 

「いや、奏さんが死んでいる前提で話していますが……奏さんはご存命ですよね?」

 

………えっ?

 

「えっ?」

「えっ?」

『えっ?』

 

………えっ?

 

 

…………。

 

………………。

 

…………………い、

 

生きとったんかいワレ()ェ!?

 

『「ええええええええ〜〜〜〜ッッ!?生きてるのッッッ!?」』

 

 そして翼さんはともかくとして、なんで幽霊になった本人も驚いてるのッ!?奏さんアンタの事だよ驚くのはコッチの方だよッッ!!

 

『えっ、いやだってあの時(ライブの惨劇)"あっ、これ確実に死んだわ"と悟ったくらいに意識が朦朧としていたから…えっ?生きててて…生きてるるのかかか私!?』

 

 おおお落ち着けぇ!ととっとりあえず落ち着けェ!幽霊なのに死ぬ一歩手前の人みたいな痙攣起こしてるよ!

 

「うっ、狼狽るんじゃぁ無いッ!防人(サキモリ)ストは狼狽無いッ!!」

 

 おお!流石は如何なる時でも晴雲秋月の心を忘れない日本が誇るアーティストの風鳴翼さん!防人ストと言うのは何かは分からないけど大した自信だ!

 

「とにかくまずは落ち着いて戸羅江門(ド○えもん)を探すんだッ!」

「いや貴女が落ち着いて⁉︎此処は藤○・F・不二雄ワールドじゃないんですよ!」

「それならばドラゴンボールを探すまでッ!」

「鳥○明ワールドでも無いですからねッ!?」

 

 翼 さ ん 壊 れ た 。

 い、いやこればかりは仕方ない。完璧で無敵で素敵な翼さんだって人間なんだ戸惑う事はある。死んでた筈の相方が実は生きていたなんて、そりゃビックリ仰天の天地が引っ繰り返る位の衝撃だ。

 

逆にこれで冷静に居られる方がおかしいくらいだ。

 

「え、えっと…それって本当なんですか緒川さん。奏さんマジで生きてるんですか!?」

「……生きている…と言うのには語弊があるかもしれません」

 

 俺がそう緒川さんに問うと彼は口を開く。

 

「ライブの惨劇から早数年。現在も治療を施しているにも関わらず奏さんは一向に目を覚まさない状態が続いてます。了子さんの方も手を尽くしてくれたのですがそれでも原因究明には至らず……ただ、あの人が言うには"目を覚ます為のキッカケ"が必要かもしれないと言っていました」

『私が目覚める為のキッカケ……?』

 

 緒川さんの言葉に奏さんは少し茫然とした様子で己の胸に手を置く。彼女自身生きている実感と言うのが湧かないのだろう。未だ戸惑っているのが表情から窺う事が出来る。

 

「──ま、待ってくださいッ!」

 

 そう思っていると混乱状態から戻った翼さんが緒川さんに向かって詰め寄る。

 

「それならばどうして私に教えてくれなかったのですかッ!それとも私に言えない事情でも在ったと言うのですかッ!?」

「い、いえ翼さんには生きてると何度も伝えていたのですが……」

 

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

 

『ええ、奏は生きてます……そう、私の心の中でしっかりと生きて───』

 

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

 

「……と、返されてしまい何とも言えない雰囲気がズルズルと」

「それで2年も続いちゃったかー……」

『成る程2年も私死んだ事にされてたのかー…』

 

「……そっ、そんな目で私を見ないでくれないかッ!?」

 

 いやいやいや翼さん。これは軽蔑の眼差しじゃなくて温かい目ですから。慈悲深く見守るようなそんな感情を込めた眼差しですから。

 

「むぅ、何かとは言わないが少し納得出来ない……が、そんな事よりも!それならば今すぐにでも奏の元に向かうまでです!」

『私居るよ此処に居るよ』

「緒川さん!今奏は何処に居るのでしょうかッ!」

『あっ、駄目だ全く聞こえてねぇ』

 

 そりゃ幽霊だから是非も無いですよね、と言うかこの様子から察するに時折意思疎通出来てた事自体が奇跡だと思うんですけど(名推理)

 

「奏さんは現在リディアン地下…つまりは対策機動部二課本部の集中治療室で今も眠っています」

「……二課に?」

 

 病院じゃなくて二課本部?専門的な治療や処置なら医療関連の施設に任せなくて良いのだろうか?……いや櫻井さんが居るから敢えて本部で治療してるのかな?あの人って聖遺物だけじゃなくて医療にも精通している筈だったし。

 

「それなら今すぐにでも本部に向かって奏に会いに行きます!」

「あっ、この後モデルの仕事が入っていますから無理ですね」

「やーーーだーーーー!奏に会いに行きたいのーーーーーー!!」

 

 うわっ、なんだ急に駄々を捏ね始めたぞこの人!?クールな翼さんからは考えられない言動だ!それはそれとしてこの可愛らしいギャップが堪らないので脳内メモリーに保存しておこう。

 

 

……そんな時だ。翼さんの懐に仕舞ってある連絡用通信機に連絡が入って来た。

 

 

 

 

 

▼▼▼

 

 

 

 フィーネの潜伏先と思われたアジトにて、弦十郎達二課の職員は雪音クリスから一時的な協力を得る事に成功。さらに"カ・ディンギル"と言う建造物の名称を聞き出す事が出来た……が、しかし。

 

『了子さんが行方不明って、どう言う事ですか⁉︎』

「あぁ、朝から連絡不通な上に呼びかけに応じない状態が続いている」

 

 早朝から櫻井了子とのコンタクトが一切取れない。何かに巻き込まれているのか或いは全く別の何かの思惑が絡んでいるのか……そんな考えを吹き飛ばすように立花響が口を開く。

 

『でっ、でも!大丈夫ですよ!緒川さんや師匠みたいにきっと了子さんも何かしらの不思議パワーで乗り切っているに違いありません!』

『いや、彼女をコマンダーレッドやニンジャと同じ枠に納めてはいけませんよ。大人誰しも超人だと思わない事ですねヒビキ、二課の人間がおかしいだけですからね』

 

『1番頭のおかしい筆頭のエックスが言える立場じゃ無いと思うんだけどなー……そこら辺どうなんですかバイトさん』

『うーん、ごめんよ小日向さん。何も言い返せねぇ』

『おい、私について何か言いたい事があるなら最後まで聞こうじゃないか(半ギレ)』

 

 彼女等が通信機越しにいつも通りの日常を送る。それを見た弦十郎はフ、と口元が綻ぶ。我々が守るべき明日を生きる子供達の姿に彼は元気付けられた彼はその考えを一旦置くと彼女等に向けて口を開く。

 

「先程、クリス君の情報提供により『カ・ディンギル』と言う単語が解明された。ソレを意味するもの、些細な事でも何か知っていないだろうか?」

『カ・ディン…なんですかソレ?』

『ネットで調べてもゲームの攻略情報くらいしか載ってませんし…』

『聞いていると個人的に寒気がする嫌な響きですね』

『終わりの名を持つ者に関する事ならば絞れるかもしれませんが…何分相手の情報自体少ないので私にはさっぱり』

「そうか……」

 

 現状、聖遺物に関して頼りになるであろう櫻井了子が居ない中、前線で戦う事の多い装者である彼女達ならば耳に入れてもおかしく無いと考えたが簡単にはいかないらしい。そう考えた弦十郎の元にバイトと呼ばれる彼の声が届く。

 

『カ・ディンギル?でしたっけ、少しだけですけど知ってますよ』

「そうか───って、何ッ!?」

 

 思わず声を上げてしまう弦十郎。まさか彼の口からそのような言葉が出されるとは思ってもみなかった。

 

『でかしたバイト君!しかしよくご存知でしたね』

『ウチの両親の都合上ね…と、カ・ディンギルですけど……たしか古代メソポタミア(先史文明期)にて使われていたシュメール語で「高みの存在」を意味していた筈です』

 

 遥か昔、先史文明期にはノイズも存在しない代わりに空想上の産物である筈の神々、幻想種が居たとされている。

 

しかし、その神秘に等しいモノは聖遺物や建造物、文字そして歌と言う形で現代に伝えられ、その中で『カ・ディンギル』と言う単語もまた古代に生きた者達により楔形文字として今を生きる人間に伝わって来たのだ。

 

『他にもバベルの塔の起源にもなった…って言う話も聴いたことがありますね』

「塔か……」

「彼の証言を纏めるとカ・ディンギルとは高楼型の建造物体が最も有力になりそうですね」

「ではソレを中心に徹底的な調査を行います!」

 

 有力な情報を手に入れた直後、彼等の動きは素早かった。ネットの隅々を探し監視カメラ、SNS等のリアルタイムで入って来るモノに目を通す。

対策機動部二課の仕事は装者のサポート以外にも情報の操作、隠蔽工作にetc、etc。それらを生業としている為か職員達の動きは凄まじいモノだった。

 

……その時、ノイズの発生を知らせるアラームが本部に鳴り響いた。

 

「飛行型の超巨大ノイズが同時に3体……いえ、4体出現ッ!?」

「いよいよ攻めて来たと言う事か……翼にエックス、響君はノイズの迎撃に当たれ!恐らくこれが敵との最終決戦なる、気を引き締めてかかれ!」

 

『『『了解ッ!!』』』

 

 

 

▼▼▼

 

 

 

 街中で特異災害襲来を知らせるアナウンスが反響する。ここから視認こそし難いものの、人々の悲鳴や逃げ惑う姿から先程のは誤報では無いと理解出来る。

そんな中、通信機越しから立花さんの声が響いて来る。

 

『話を聞いての通り未来はリディアンで皆の避難指示を、バイトさんは翼さんの指示に従ってこの場からの退避をお願いします!』

 

 その一言は至極真っ当なモノではあるが、とても立花さんの口から出たとは思えないモノだった。

……君、本物なんだよね?敵が化けている訳じゃ無いんだよね?

 

「……えーと…今日の立花さんは随分と頭が冴えてるね(震え声)」

『えへへ〜、そうですか?まぁ、素敵な響さんはこれくらい余裕ですし?』

 

『いや、これってエックスの指示だから騙されないでくださいね?』

『ヒビキ……頭良いアピールしたいからってそう言うのは良く無いと思います』

「そっかぁ…(安堵)」

『えっ、なんで途端に安心したような声色になるんですかバイトさん⁉︎』

 

 だって立花さんだし……でも良かった、偽者だったらどうしようかと思ってた所だ。やっぱり知能指数の低い立花さんこそthe立花響って感じがするな〜〜。

 

『……バイト君』

「はい、バイトです。どうしたのX」

『その、なんと言いますか……気を付けてください。今回の敵は我々以外が知る筈の無いにも関わらず二課の内部事情を熟知していました』

 

 Xの一言に側に居た翼さんが相槌を打つ。

 

「……言われて見れば確かに。バイトの彼が誘拐された件についてはエックスと彼との関係性を知っていなければならない」

「そっか……そう言えば立花さんが狙われた理由も"融合症例"ってヤツだから狙われたんだっけ?」

 

 そう考えると敵はどうやってこっちの手の内を読んでいるのだろうか?それに雪音さんのギアとか聖遺物とかにも詳しいみたいだし……。

 

───駄目だ。これ以上考えても外部協力者に過ぎない俺に分かる事は何も無い。

 

「……とにかく忠告ありがとう。これが終わったら…うん、バーベキューでもしようか」

『いいですね!そうと決まれば早くさっさと黒幕をカリバーで滅する事にしましょう!』

「うん。いつも通り待っているよ」

 

 その一言と共に通信が切れると隣に居る緒川さんが声を掛けて来た。

 

「それでは僕の運転する車に「いえ、俺は1人で大丈夫です。緒川さんは早く本部の方へ」……分かりました。道中はお気を付けて」

 

 緒川さんが乗る黒塗りの自動車はそのまま俺を置いて駆けて行く。

これ以上皆の邪魔するのは良くない。俺だって多少の修羅場を潜り抜けて来た、ノイズ相手に逃げるくらいなら1人で何とか出来る。

 

「翼さんも気を付けてください」

「ああ、任せろ……それに奏にみっともない所を見せる訳にもいかないからな」

『……翼』

 

 彼女の言葉に奏さんは不安げな表情を見せるが、それに気付かない翼さんはバイクを走らせて行く。

……彼女が心配ですか?奏さん。

 

『いや、そうじゃないさ。翼の強いのは間近で見てきたから知っている……ただ、悔しいなって』

 

 悔いる。戦場に立つ事をやめた事を、見守るしかない自身の境遇を、何も出来ない己の不甲斐無さを……だとしても。

 

「なにを言ってるんですか、別に体の方も無事なんですから奏さんが元に戻れば生き返る可能性だってあるんじゃないんですか?」

『そうなのかッ!?』

「いや、知りませんけど」

 

 俺そう言うオカルト的な蘇生術に詳しくないですし。

まぁ…でも。

 

「生き返ったらX達と一緒にバーベキューしましょうよ。流れ星でも眺めながら」

『────そうか、でも無理な話だ』

 

 面食らったような表情を浮かべたが、それを誤魔化すように肩を竦める……奏さん。

 

『さっき悔しいとか言ったけどさ。今更生き返るなんて無粋な真似は辞めとくよ。私のやる事は翼を死ぬまで見守る事だ、まぁ幽霊が死ぬかどうかは分からないけどなッ!』

 

 何とも無さそうに、彼女は強がりを見せて来る。本当は会いたくて会いたくて堪らないだろうに……!

 

 

『それに、この幽体を捨てるだなんてとんでもない!もし元の体に戻ったら翼の無防備な姿を拝めなくなっちまうんだぞッ!!』

「ホーミング折鶴ッ!!」

『甘いわッ!』

 

 避けられたッ!?おのれオバケめ!遂にその本性を表したかッ!!返せ、貴女に少しでも感心を抱いた俺の純情を返せッ!

 

『ゲーゲッゲッゲッ!こうやって純粋無垢な奴を揶揄うのは楽しいなぁ!翼のように!翼のように!(2回目)』

 

 翼のように…だと…ッ!貴様ァーー!翼さんに何をしたァアア!!

そんなやり取りをしている中、幽霊である奏さんが「あっ」と声を漏らした。

 

『待て!ちょっと待ってくれ!』

「どうしたの奏さん。今から貴女を千代紙で折った百足(ムカデ)塗れにしようとしていたのに」

『容赦が無いッ!?い、いやそんな事よりもだ!』

 

 ファブリーズと千代紙を突き付けられた状態の奏さんはとある方向へ指を差すと俺に向かって疑問をぶつけて来る。

 

『お前のバイク何処行った?』

「えっ、俺のブラックフェンリルですか?それなら────」

 

 そこで俺は気が付いた。

先程翼さんにそこに停めてあったバイクに跨っていた事、なんか無理矢理鍵をこじ開けていた事。

そして、その見覚えのあるバイクを走らせて行ってしまった事に。

 

「………」

『………』

 

 

………お、

 

「俺のブラックフェンリルがぁぁあああああああああああああ!!」

 

 またしてもバイクを強奪されたぁぁああ!!いや、翼さんに貸すのは別に問題無いんですけど、大丈夫ですよね?壊れて戻って来ませんよね!?

 

『ははは、何言ってるんだ運転手はあの翼だぞ?そんな手荒い真似をする筈が……あ、悪い忘れてくれ』

「なんで?相棒に対してのフォローを途中で止めるのはなんで?」

 

 ……あぁ、分かったよ!行ってやるよ!こうなったら徒歩でもダッシュでもこの場から離れてやるよ!

 

『おう、頑張れ。私は浮いてるから別に疲れないけど』

キレそう

 

 とりあえず学校の皆に連絡、ふらわーのおばちゃんにも避難するように電話で伝えなきゃ───?

 

『おい、どうしたんだ急に止まって』

「……いや、なんか路地に動くモノが」

 

 俺と奏さんが路地を注意深く観察していると、そこには見知った顔の人物がフラフラと今にも倒れそうな状態でこちらに歩いて来たのだ。

 

 

「き、君……早く逃げなさい。此処はもうお終いよ……!」

 

『了子さん!?』

「櫻井さんナンデェ!?」

 

 全身からむせ返るような凄まじいアルコール臭を醸し出す櫻井さんが酷く窶れた様子で俺達の前に姿を現した。

 






〜〜用語紹介〜〜

『激辛麻婆豆腐』
紅洲宴歳館・泰山での人気(?)メニューの1つ。あまりの辛さにチャレンジ→撃沈する者が続出。
かつて立花響もこれにチャレンジした事があるが二口目でダウンした。次の被害者は風鳴翼である事は言うまでも無い。


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