少女は歌い、血を流す。
騎士は闘い、その身を犠牲にする。
嗚呼、此処は戦場。無事に生きて帰る保証は無い。
帰りを待つ者はその姿を見て泣き、嘆き、苦しむ。
夢を見るときがある。
剣を抜いた少女は困難を乗り越えて王となった。酷く無機質で民の事を第一に考え、頼りになる騎士達に囲まれた優しい王様。
そんな王に自分がなった夢だ。
しかもその夢を見るのは一度や二度では無い。かなりの頻度でその内容の夢を見る。
……時折、分からなくなる事がある。
現実が夢なのか、夢の方が現実なのか。
どちらが本物でどちらが偽物か分からなくなる────。
これが俗に言う胡蝶の夢と言うものであろうか?
……いや、違う
そんな事は分かりきっている。この記憶も、この夢も、この
「王よ」
違う。
「殿下」
違う…!
「王よ!」「騎士王!」「王様」「アーサー王!」「ペンドラゴン殿下!」「王!」「見て、王様だよ!」「王の凱旋である!」「我らが王を讃えよ!」「白亜の王が今、此処に!」
「「「「「アーサー王!」」」」」
「「「「「アーサー・ペンドラゴン!」」」」」
「「「「「我らが騎士王!」」」」」
違う、違う違う違う違う違う違う違う!!
その名前で呼ぶな!私はそんな名前じゃない!
私はッ!私は
私の名前は────
………ああ、そうだった。
そもそも私自身、名前なんてものが無いんだ。
「エックスちゃん?」
ふと、意識が戻される。
どうやらしばらくの間、意識が散漫になっていたようだ。声を掛けてくれた立花響に対しヒロインXは沈黙を破る。
「……っ!あぁ、ヒビキですか驚かさないでください。私には暗殺者が背後から迫っても大丈夫なように咄嗟にカリバーをぶっ放せるようにプログラミングされてるので」
「えっ、どこぞの13のスナイパー…?」
「お前も暗殺者じみてるじゃねーか」
「失敬な。アサシンじゃなくてセイバーですよ私は」
そんな話をしている内に彼女達4人は目的の場所であるリディアン音楽院へと辿り着く。
「……これはッ!?」
しかし、そこは己が知っているリディアンとは似ても似つかない廃墟同然の様相へと成り果てていた。
「未来ーー!皆ーーーッ!」
「誰か居るなら返事を…ッ!」
何度も何度も声を上げるが返事をする者はこの場に1人も居ない。彼女達に返ってくるのは不気味に感じる程の静寂のみであった。
「リディアンが……あっ!」
廃墟の上、そこに見覚えのある人物が白衣を纏って立っていた。
彼女は櫻井了子。特異災害対策機動部二課の研究者にして────
「櫻井女史!?」
「お前の仕業かフィーネッ!」
───この騒動の黒幕である。
「フィーネ…?何を言ってるのクリスちゃん。あそこに居るのは了子さんで……きっと、私達を迎えに来てくれたんだよ!そうですよね了子さん!」
「フフフフ…ハハハハッ!!」
「ほ、ほら!それっぽい含みで笑ってるしきっと……!」
「ヒビキ、ギアを纏う用意を」
「……エックスちゃん?」
エックスの言葉に戸惑う響。高笑いする彼女に向かって風鳴翼は声を上げ、疑問を投げ掛ける。
「その笑いが答えなのか!? 櫻井女史!」
「そうだ。あいつこそ…私達が決着を着けなきゃいけないクソッタレ!フィーネだ!」
「嘘……」
響の口からそんな言葉が漏れ出す。仲間であり、いつも自分と翼をサポートしてくれた研究者の彼女は頼りになる大人の1人であり憧れの女性であった。
「う、嘘ですよね……だって今まで私の為に色々と検査とか聖遺物の説明とか…!私達を守って来てくれたじゃないですか!」
「ええ、その通りよ」
「や、やっぱり…!もー、皆して変な事言って!」
「何せ融合症例と言う貴重なデータサンプルだったもの。良いモルモットとして貴女は動いてくれたわ」
「……え」
櫻井了子…否、フィーネは嘲笑の表情を浮かべながらそう答える。
そんな彼女に雪音クリスは噛み付くように声を荒げた。
「モルモットだとッ!今、コイツをモルモットと呼んだかッ!」
「その通りだとも。なんだ?何か違いでもあるのか?リディアンの生徒達全員も、シンフォギアに組み込まれた聖遺物に適合する可能性を持つ者を集めた実験場であろう」
「そ、それなら!貴女が自分の事をフィーネと言うのならばッ!本当の了子さんはッ!?」
「櫻井了子の肉体は先立って食い尽くされた。超先史文明期の巫女フィーネは、遺伝子に己が意識を刻印し、自身の血を引く者がアウフヴァッヘン波形に接触した際にその身にフィーネとしての記憶、能力が再起動する機能を施していたのだ」
12年前、風鳴翼が偶然引き起こした天羽々斬の覚醒。その際に実験に立ち会った櫻井了子の内に眠るフィーネの意識を目覚めさせたのである。
「そんな、それじゃあ了子さんはもう……」
「然り。記憶、人格は全て私と言う存在に統合されたのだ……そうさなぁ、もしかしたら意識の方は指先を動かせる程度でなら残っているかもしれんぞ?」
万分の一に満たない可能性だがなと愉快そうに付け加えるフィーネ。目の前に居るのは櫻井了子の名を借りた全く別の存在。
そんな相手を前にしてシンフォギア装者達は…ペンダントを握りしめた。
「ほう?随分と冷酷な選択をする。かつての仲間に手をだすか?」
「テメェを仲間だと認識した覚えは無いッ!」
「仲間だったのはかつての話……今の貴女は我々の敵だッ!」
雪音クリスと風鳴翼は敵意を示す。が、しかし立花響だけは未だ答えられずにいた。
そんな彼女はフィーネを目の前にしてポツリと呟く。
「了子さん……」
「今の私はフィーネだ」
「なら、フィー子さん…!」
「名前を合体させるのはやめろ(真顔)」
立花響は言葉を続ける。
「本当に戦わなきゃいけないんですか?」
「……」
「こんな事しなくても私達はきっと…「死ねぇッ!(直球)」エックスちゃん!?」
しかし、それを遮るかのようにヒロインXが突如としてフィーネの背後から奇襲を仕掛ける。
彼女の持つ黒の剣がフィーネの首を跳ね飛ばす……かと、思いきや刃が当たる直前にネフシュタンの鞭がエックスの足を先に捉える。
「何ッ!?」
「甘いな、その程度で倒せるとでも思ったかッ!」
そのまま放り投げられるエックスだが、持ち前の身体能力によって易々と着地を行う。
「エックスちゃん!急に何をして……!」
「あの亡霊を野放しにしていれば…バイト君や他の皆にも被害が及ぶッ!」
「っ!」
他の皆に被害が及ぶ。その言葉を聞いた彼女の頭の中に小日向未来やクラスメイト達の顔が浮かんだ。
このまま彼女の好きにすれば一体どうなる?
「ヒビキ、私達の戦う理由は既に分かり切っている筈でしょう」
「……皆を守る為に……だよね」
己に言い聞かせるように呟くと、立花響は覚悟を決め胸に手を当てフィーネに対して視線を真っ直ぐ向ける。
「フン、たかだか為政者からコストを捻出するための福受品で私に歯向かうか」
「福受品だと……ッ!?」
「私を拾ったり、アメリカの奴等とつるんでいたのはそう言う理由か…ッ!」
「お前の戯れで奏は命を散らしたと言うのかッ!?」
「ああ、その通りだとも」
当たり前のようにそう応えるフィーネに対し唇を噛み締めながら翼は再び問い掛けた。
「まさか…奏の親族を亡き者にしたのもッ!?」
「バイト君を拐おうとしたのもお前のッ!」
「全ては私の手の平の上だ」
全ては彼女の思うまま。その場の全員はフィーネによって踊らされていたと言う事実にショックを受けてしまう。
直後、立花響も翼やエックスに続き問い掛けた。
「それじゃあ翼さんが偶に虚空に向かって呟いているのも!?」
「えっ……あ、うん。結果的には」
「それなら私がアサシンと呼ばれるのも!」
「未来が時折、私に邪な念の篭った視線を送ってくるのもッ!」
「アーチャーの食事がクソ汚いのもッ!」
「私が女子力/ZEROとネットで囁かれているのも…お前の仕業だと言うのかッ!」
「いや、それは知らない」
「全部自業自得だからな───って、悪かったなクソ汚くてッ!」
クリスのその一言が終わった後、己のペースを乱されたフィーネは我を取り戻すと手を天に向けて掲げると次のように叫ぶ。
「ええい、これも全てカ・ディンギルの為ッ!今こそ、その姿を見せる時だッ!」
瞬間、地響きと共に学校が建っていた場所が競り上がり、隆起する。
それはまるで天高く聳えるオベリスクの如く。金を基調とし、凡ゆる色が濁り混ざった塔がその姿を露わにした。
「これこそが、地より屹立し天にも届く一撃を放つ『荷電粒子砲カ・ディンギル』ッ!」
「なっ!?この色合い…まさか、二課のエレベーターシャフト!」
「灯台下暗し…施設に偽造させるとは、この私の目を持ってしても見抜けなかった!」
「
「ああ、今宵の月を穿つ事によってな!」
その一言に装者達は驚愕の意を示す。空に浮かぶ血のような色をした
彼女は確かにそう宣言したのだ。
「つき……月をッ!?」
「穿つと言ったのかッ!?」
「なんでさッ!?」
「発想のスケールで負けた……ッ!?」
「そして二課の者共は既に対処済みッ!もう私を止められる者は居ない!」
「対処だと……!?皆をどうしたッ!」
「そうだよ!未来はッ!?学校の皆はどうしたの!?」
フィーネの発した言葉に反応した翼。それに続いて響がそう言うと「あぁ」と思い出したように応える。
「そうだ、確かそんな小娘も居たなぁ…それで思い出したぞ」
響達に向かって何かを放り投げるフィーネ。ガシャンと甲高い音を立てながら目の前に落ちたソレを見て響達は驚いたように目を見開いた。
「これって義脚……っ!?」
「テメェッ!バイトのヤツをどうしたッ!」
クリスの問答に不適な笑みを浮かべ、先史文明の巫女は愉快そうに口を開く。
「さぁ、どうしたと思う?」
「ふざけるのもっ!「二度は言わん。答えろフィーネ」…お前」
今までとは違う気迫を見せるエックスの姿にクリスは言葉を止める。帽子の陰で目元が窺えない……しかし、その声色で彼女の感情を感じ取る事が出来る。
「まさか、怒っているのか?この戦いに小僧を巻き込んだ貴様が、私に怒りを露わしているのか?滑稽な姿だな」
「答えろと言った筈だ」
酷く冷酷な声で呟くエックスを目の当たりにするフィーネはクスクスと笑いながら答えた。
「そうだな……腕を砕いてやったよ」
「「「っ!?」」」
「目が抉れたり脚が捥げたりもしたが……さて、その後はどうなったんだろうなぁ?」
「もう、いい死ね」
フィーネの返答に対してエックスは至近距離からの全力の攻撃を行った。
気配は悟らせなかった。ほぼ瞬間移動と同等な光量の噴出によってロケットと見間違えるかのような突撃。
しかし、それを見越したようにフィーネは難無く躱して見せたのだ。
「クク、ハハハ!!そうだ!そう来なくてはなぁ騎士王よ!」
「っ!」
エックスが何かを呟くと、聖剣の周りに風を纏り空間が荒れ狂うように膨大な、圧縮された空気が後方へと放たられる。
直後、再びジェット噴射のように彼女はフィーネへ突撃を行う。
「風王・鉄槌ッ!」
【STRIKE・AIR】
「風の推進によって威力を底上げするか……さりとて!」
【ASGARD】
何重にも貼られたバリアフィールドが発生。聖剣による攻撃が火花を散らしながらも防いでみせた。
「見え見えの攻撃ではなぁ!」
「ぐ、おおおおおおおおおおッ」
無理矢理でも押し通そうとするが、それでも目の前のバリアを破る事は出来ない。
その様を愉快そうに眺めているフィーネだったが、横から迫り来る攻撃に対して注意が散漫になっていた。
「っ!」
咄嗟に顔を逸らすと、エネルギー状の弾丸が頬を掠める。
それが飛んで来た方向にはボウガン型のアームドギアを構えた雪音クリスがギアを纏い立っていた。
「私達を前にして…視野が狭くなってるぜ」
「フン…ギア程度相手に私が本気になるとでも?」
「放せッ!
「落ち着け、1人で何かを成そうとするのには限度がある!」
「そうだよエックスちゃん。私達だっている。1人じゃない!」
ギアを展開した翼と響に取り鎮められたエックスは深呼吸を行うと改めて剣を構え直す。
「申し訳ありません。あのフィーネの声は妙に癪に触ったので」
「お前らしくない……いや、よく考えたらいつも通りだったな」
「どうしたアーサー。貴様の底力はその程度なのか?」
「その名で呼ぶな……っ!」
「落ち着け、挑発に乗るな(アーサー?…ブリテンの君主の名が何故、此処で?)」
フィーネのエックスに向ける言葉に疑問を抱く翼。しかし、今はそんな事を気にしている暇は無い。
「3人共、コンビネーションアタックだ。実力はあちらの方が上だが数ではこちらが勝る」
「しかし、あのカ・ディンギルはどうするよ」
「見た所チャージ中って感じだよね…」
「月を穿つと言っていましたが……もしもそれが本当ならばセイバーどうのこうのと言っている場合の騒ぎではありませんね」
月の破壊。眉唾物に聴こえるソレは地球と言う名の幾億の生命へ甚大な被害を及ぼすものだ。
彼女の目的は分からないが、あの聳え立つ巨砲は何としてもでも食い止め無ければならないと四人は理解している。
「行くぞッ!立花を筆頭に私達で援護する!行けるかエックス」
「無論!一番槍は任せましたッ!」
「任されたッ!」
脚部のパワージャッキにより、あっという間にフィーネとの間合いを詰める響は格闘戦を仕掛ける。
そんな最中、彼女は相手に問い掛ける。
「何故こんな事をするんですかッ!何故、皆を傷つけようとするんですかッ!」
「あの小娘と同じ事を言うかッ!私はただ、あの御方と並びたかった!その為にあの御方へと届く塔を心あるものに建てようとしたッ!」
ラッシュ、蹴り、正拳。どれもが必殺級の一撃になり得る威力だが完全聖遺物であるネフシュタンの鎧はソレすらも防ぐ強固さを兼ね備える為有効打にならない。
「しかしして人の身が同じ高みに至ることを許しはしなかったあの方の怒りの雷霆により塔は砕かれ、人類は同族と交わす言葉さえも奪われたッ!」
「奪われる……もしかして!?」
「バラルの呪詛かッ!」
フィーネの言葉にハッとする響。その後方より来る双刃の翼とXの追撃。しかしそれすらも予測していたのかアッサリと躱されてしまう。
「然り!何故、古来より月が不和の象徴と伝えられて来たか分かるか?月こそがバラルの呪詛の源だからだッ!」
「馬鹿なッ!?既に月面着陸された月にそんなモノがッ!?そんなトンデモ御伽話があり得るのかよッ!」
「いいや、あり得るのだッ!だからこそ月を破壊する事で呪詛を解き、世界を一つに束ねるッ!」
グングンとカ・ディンギルより感じるエネルギーの増幅。それを頭では無く、身体で感じられる程にエネルギーの質量は凄まじいモノであった。
あれ程のパワー、月を破壊するのも嘘では無いと確かに感じられる。だからこそ今この場で止めなければならない!
「風鳴弦十郎と比べれば、児童の遊戯に等しいわッ!」
「ぐうっ!」
この中で最も対人の戦闘経験が少ない立花響はフィーネの攻撃に対応し切れず蹴り飛ばされてしまう。
そこにすかさず、翼が響をキャッチする事でダメージを最小限に済ませる。
「はぁあああああああああああああああッッ!!」
そして敵の背後よりエックスが剣を地面に引き摺らせ、火花を散らしながら接近する。
「そんな大振りの攻撃で……ッ!?」
振り返り鞭で迎撃を行おうとした瞬間。目の前の視界がが砂と土で覆われた。
「砂埃での目潰しかッ!?ちょこざいなぁッ!」
周囲一帯を吹き飛ばそうと鞭先に球状のエネルギーを形成。一気に解き放そうとした瞬間。
「ぶっ壊す程の
得物が爆ぜた。雪音クリスのスナイパーライフルによって溜め込んだエネルギーは撃ち抜かれ、フィーネの武器である鞭はバラバラに弾け飛んだ。
ちょっとやそっとでは壊せないのならば。相手側の力を応用し壊すまでだ。
「我が得物を破壊するだとッ!?これが本命かッ!」
「いいや!」
「
脚部のブースターにより加速。そして九字の呪文と九種類の印を組む事により防人の剣に炎が纏う。
これぞ緒川家の術と風鳴家の代々から伝わる技が融合せし一撃。
その名も────!
【風輪火斬】
「が───あっ!?」
「奏の分、受けて貰ったぞ」
ネフシュタンの鎧は使用者に治癒の効果を齎す。それならば傷を作る瞬間に傷口すらも焼いてしまえば、回復を遅らす事は出来るを判断したのだろう。
フィーネは苦痛の声を漏らしながら、その場で膝をついた。
「雪音ッ!」
「既に準備完了だッ!」
そこにスナイパーライフルの
「スナイプ&……ッ!」
砲身に潜む口径数百ミリはくだらない大きさの弾丸。今まさに引金が引かれ、ハンマーが振り下ろされ推進剤に点火。
「デストローーーーイッッッ!!」
【RED HOT BLAZE】
ズドンと全身に轟くような鳴動。焦げる匂いと宙に舞う薬莢。それらが全てを終わらす弾丸が放たれたと言う証拠となり、カ・ディンギルに向かって行き──────
バァンッッッ!!
その高く屹立せし金色の砲身を貫いたのである。
「やった───「何処を見ているッ!」きゃあっ!?」
戦いは終わり、先史文明の巫女の幾千にも及ぶ野望は潰えた。だと言うのにフィーネは止まらない。戦いの手を止めようともしない。
「や…やめてくださいフィー子さん!もう戦いは終わったんです!」
「終わった?何が終わったと言うのだ。今、私はこうも健在しているッ!」
「馬鹿が!お前の大事なカ・ディンギルは土手っ腹に穴が空いてスパーク全開中になって……なっ…て……!?」
バチバチと放電し、空いた穴からデュランダルのエネルギーが溢れる。次第にそのエネルギーは灼き抉れ貫かれた弾丸の跡を泥が埋め、侵食、汚染するように雪音クリスによって空けられた筈の穴が塞がって行った。
「馬鹿なっ!アーチャーが与えた一撃を回復しただと!」
「ククク、愚鈍が。カ・ディンギルには自動修復能力を兼ね備えている。たかだか、数
「そんな物質の自動修復なんて…ッ!」
「あのような芸当、余程のエネルギー源が無ければ……まさか!?」
「そのまさかだ、カ・ディンギルのエネルギー源は不朽不滅の刃『デュランダル』だッ!!」
二課本部最下層"アビス"に納められた完全聖遺物『
「だとしても、櫻井女史の実力だけでそのような芸当が出来ると言うのかッ!?」
「ああ、無理であろうな。櫻井了子の経験だけならば…な」
「何っ!?」
「フィーネとして覚醒したのは私一人では無い。歴史に記される偉人、英雄。世界中に散った私達はパラダイムシフトと呼ばれる技術の大きな転換期にいつも立ち会って来た」
「その記憶、経験、知識。それらがフィーネと言う存在に還元・統合される!もはやフィーネは先史文明期の巫女に非らず!人類の頂点…否、それすらも超える
「人間を辞めているのか……ッ!」
「ハハハ、つれない事を言う」
「
「───ッ!」
「人じゃ無いだと?一体全体何を言っているんだ!」
「さっきからゴチャゴチャと喋りやがって。そうやって時間稼ぎしたって今すぐにでも修復し切る前にカ・ディンギルをぶっ壊してやる!」
2つのミサイルを形成。両方一気に放ち、荷電粒子砲を破壊しようとする……が、しかし。
「そう何度もやらせると思ったかッ!」
「何っ!?」
ミサイルの1つを鞭で捕らえ、もう片方に向けてぶつける事で塔の破壊は失敗に終わってしまう。
「なら短期決戦でフィーネを倒すッ!その後にカ・ディンギルの破壊を試みるぞッ!」
「あっちは1人、そしてこっちは4人!」
「集中して攻撃すれば勝ち目はある!」
フィーネを包囲し、それぞれの得物を構える装者達。そのような窮地に立たされた鎧を纏うフィーネだったが。
「ククク、ハーーッ ハハハッ!」
「何がおかしいッ!」
突如として高笑いを上げ、余裕の意を見せる彼女にエックスが噛み付く。すると心底愉快そうにフィーネは口を開く。
「ああ、急に笑って失礼だったわね。なに、ただ───単純な計算も出来ない程、貴女達が愚かだと言う事に笑壺に入ってしまっただけの事よ」
「は?」
「貴女達4人?……2人の間違いだろう」
「2人?何を言って───え?」
疑問に思った響だったが、その異変は突如として現れた。雪音クリスと風鳴翼。彼女等が唐突に膝から崩れ落ちたのである。
「翼さん!クリスちゃん!」
「しっかりしてください、急にどうしたんですかッ!」
「クソ なんだ…これ……っ!」
「ぐ、すまない。剣を握る事すら出来ないまでに脱力感と疲労感が…」
直後、2人のシンフォギアは解除され無力な人の身へと戻ってしまう。その光景に響とエックスは
「これは…お前の仕業かフィーネッ!」
「心地良かろう、アンチ・
「アンチ・リンカー…だとぉ!?」
「米国政府に横流ししたシンフォギアシステムの情報を元に製作された適合係数を低減させるモノだ。当初は全く使えない物だと思っていたが……」
「私達のギアにそれを仕込んだって事か!?」
「策と言うのはそう言うものだろう?」
それに、と付け加えて口を開く。
「敵が作ったものを馬鹿正直に使う阿呆の末路としては相応しかろう」
「「っ!」」
「逆に考えてもみなかったのか?敵がシンフォギアのシステムに何かを施しているのではないか?と」
「「だとしてもッ!!」」
「まだ私達が居る!」
「まだ戦えるッ!」
翼とクリスの前に出る響とエックス。そんな2人を前にしてフィーネは苦虫を噛み潰したような顔を見せる。
「融合症例と人形風情が。未だ私に歯向かうか」
「融合症例じゃないッ!人形風情でもないッ!私達は人間だ!立花響とその友達のエックスちゃんだッ!」
「……ヒビキ」
面を食らったような表情を露わにした後、すぐにエックスは微笑むと聖剣、黒の剣を両手に持ち構える。
「終わらせましょう。この戦いを」
「うんッ!」
ガングニールとエクスカリバー。この場に槍と剣を携えた少女達は世界の命運を背負う。
しかしそれはあまりにも大きく、重く、彼女2人では抱えきれない物でもあった。
▼▼▼
〜〜私立リディアン音楽院 〜〜
『地下シェルター第○○区画』
そこには簡易テーブルの下で膝を抱える安藤、寺島、板場の3人の姿があった。
「……地震収まったかな?」
安藤がテーブルの下から出ると散乱した備品や壊れた箇所が無いかどうか壁、床を見渡す。
「先程から謎の地響きに爆音がしていましたからね。外で何が起きているんでしょうか」
「もう。アニメどうのこうのじゃない…!もうこのまま私達死んじゃうのよ…ッ!」
「落ち着いてください板場さん。落ち着くまで此処で大人しくしていれば───」
ガシャン!!
「「「!?」」」
「な、何?さっき変な音が」
「扉の方から聞こえたけど……」
視線を移した先。鋼鉄製の重厚な扉が何度も何度も叩かれる音が響く。普通の人では鳴らす事が不可能な殴打音。
無機質な部屋にそれが響く中、板場は1人部屋の隅で縮こまる。
「もう駄目よ!私達、このまま怪物に食べられちゃうのよッ!知ってるのよ、こう言うシチュエーションじゃブルーベリー色の巨頭部した怪物が無理矢理壊した扉からねじ込んで入って来るって!」
恐怖の色に染まる彼女。一刻一刻迫り来る"死"に怯える友人の姿を見た安藤と寺島の2人は意を決したように口を開く。
「ユミはそこに隠れていて」
「えっ?」
「こう言う時、友達は守るものだからね」
「安藤さんの言う通りですよ。私だってやる時はやるんですから。ん゛んっ……おっらァ゛!何処のモンじゃワレェッ!何してくっぞコラァッ!!」
※寺島です。
「2人共……!」
扉の前に立つ2人を目にした板場弓美は、心打たれる。一体自分はアニメで何を学んだ?それなら自分ら何をするべきか?
部屋の隅で怯えていた彼女は立ち上がり、友人達と肩を並べる。
「アニメなら……ッ!友達に任せっきりは恥ずかしいじゃない!バリケードを作るわッ!」
「ユミ!」「板場さん!」
鋼鉄製の扉の前に椅子、簡易テーブル、棚等を設置。これによって彼女達製作の要塞が今まさに完成したのである。
「さぁ、友情パワーで組み上げられたこの篭城ッ!破れるものなら破ってみなさ───」
ゴシャァッ!!(扉が破壊される音)
要塞陥落。享年、僅か十数秒。
「ひぃっ!すみませんすみませんでしたナマ言ってごめんなさい!優しく殺してキリリングソフトリーッ!」
「扉壊すなんてリアルに実在するの怪物!?」
「舐めンじゃねぇぞゴルルラァッッ!いてこましたるぞワレェッ!!」
※寺島です。
「皆ッ!」
「「「……あれ?」」」
3人は気付く、破壊された扉の外側からやって来たのは自分達と同じクラスの小日向未来だった事に。
呆気に取られていると彼女に続いて色々な人物が部屋に入って来る。
「ねぇヒナこの人達は……?」
「あれ、バイトさん!?どうしたの片脚と片目が無いし腕に包帯巻いたりと重症じゃん!」
「一体何がどうなって……!」
「俺達は特異災害対策機動部の者だ。悪いがこの部屋を使わせて欲しい」
「司令、僕は他の部屋を!」
「ここの区画の電源は生きてるみたいだ」
「モニターの復旧急いで!」
自分達の認識外で動く事態に混乱する3人。そんな彼女達の前に重症のバイトである彼に肩を貸している未来が口を開く。
「皆、聞いて欲しい事があるの……バイトさん」
「うん。もう機密どうのこうの言ってる場合じゃないからね。端的に言おう───人類は滅亡の危機に立たされているッ!」
「「「本当に端的だッ!?」」」
「モニター回復!映像を出します……これは!?」
困惑する二課のオペレーターの藤尭の声。それに釣られて復旧されたモニターにその場の全員が視線を向けると……。
「あ、ああ……っ!」
「そんな……!?」
「嘘だ、こんなの……」
「何か、悪い夢なんだよね?そうなんだよね…!?」
「………
そこには
〜〜シリアスに耐え切れない人用の没ネタ〜〜
弓美「ところで着替えのスボンが欲しいんだけど持ってたりする?」
未来「いや無いけど……えっ?板場さん……まさかッ!?」
次回、「墜ち逝く王の人形」