未知との遭遇〜アルトリウムを添えて〜   作:ゴランド

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G編に入るのは少し時間が掛かるかも……それまで短編集?的なしないフォギア編をお楽しみください。



閑話 戦姫絶唱しないシンフォギア

 

【新しい義脚】

 

 拝啓、多分死んでいる父さん母さん。

今俺は────入院中です。

 

「いやー参った参った」

 

 上腕骨折、頸動脈軽度損傷に加えてその他諸々。ふらわーのおばちゃんや学校の友人である金時君に風魔君。加えておっきーさん、きよひーさんにはノイズからの避難中にすっ転んで大怪我を負ったと伝えてあるので機密事項については大丈夫だと思う。

 

「あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛……」

 

……それにしても病院ではやる事が無い。

あーあ、せめてサウンドプレイヤーがあれば翼さんの曲をヘビロテして暇潰せるのになぁ……別にスマホを使って聞くのもいいけど聞くなら質の良い音響で聴きたいし。

 

「あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛……」

 

 散歩したいけど、義脚が今無いから歩くのも困難だし、本読むかネット見てるかくらいしか暇潰せないなぁ……。

 

「あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛ッ!」

「…ヨシ、もう一眠りするか」

「無視しないでくださいよバイトさんッ!」

 

 うるせぇ!ここ何処だと思ってるんだッ!そんな怨霊の断末魔みたいな声出しやがって!と言うか小日向さんどうして毎回毎回、此処に来るんだよッ!

唸るなら家でやれッ!

 

「……だって、帰っても響居ませんし。かれこれ数日経って連絡沙汰無し……あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛…ひびきぃぃぃぃいい……」

「うん。分かった、分かったから」

 

 と言うかこれで通算3回目だからね?3日前からも毎日こんな感じで同じやり取りしてるよね小日向さん。え、なに?もしかして友達居ないの?居ないからこうして俺の所に来てるの?板場さん達が居るじゃん。寂しいならそっちの家で愚痴零せばいいじゃん。

 

「いえ、クラスメイトに迷惑掛けるのはちょっと」

「つまり俺には迷惑掛けて良いと?」

「はいそうですね」

「ハッ倒すよ?」

 

 全く……まぁ確かに連絡が一切無い事に関しては俺も心配だ。

…と言うか大丈夫だよねエックス達?実は宇宙空間で窒息死してましたってオチはじゃないよね?

 

「まぁでもエックス達なら自力で帰りそうだから心配無いよ」

「……そう…ですか…」

「数日も音沙汰無しだからと言って死んでる訳じゃないよ。ま、俺の両親なんて数年も音沙汰無しだから死んでる可能性は高いけどね、ハハッ!」

「すみませんバイトさん。貴方のジョークは本当に面白く無いのでやめてください」

「はい」

 

 うーん、不味いな。このままだと小日向さん、立花さんと再会して時に何かやらかしてしまうのでは?と思う。具体的に言うと立花さんの貞操の危機が危ない的な感じ。

 

そんな事を考えていると俺のスマホからメールの着信音が……って

 

「立花さんからメール?「響からッ!?」ぐえっ!?」

 

 俺がそう呟いた途端にベッドの上に覆い被さる小日向さん。おい、人の腹部に圧を掛けるのやめろ。ただでさえ味の薄いドロドロな病院食が更にドロドロして状態で出て来る事になるぞ(震え声)

 

「ひ、び、きぃい〜〜〜ッ!」

「ちょ、やめ…引っ付くのやめ……ッ!コレ俺のスマホだから〜〜〜ッ!」

 

 くそっ!立花さん成分。通称ヒビキリウムが枯渇した小日向さんがこうなると厄介だッ!どうしよう……殴って落ち着かせようか?

 

そんな事を考えながら握り拳を作っていると、病室の外から聞き覚えのある声が耳に入る。

 

「ようバイトッ!元気してるか!…と、未来君も一緒か」

「あ、弦十郎さんどうしたんですかいきなり。見ての通り落ち着かせるのでちょっと待って貰えません?」

「お前の場合は落ち着かせると言うより、無理矢理気絶させようとしてないか?流石にグーパンは駄目だろ。せめて絞め技で意識を落とすくらいに加減してだな」

「すみません、本人を目の前にして抹殺計画を企てるのをやめて貰えますか?」

 

 あ、元に戻った。流石の小日向さんも弦十郎さんから技を喰らうのは嫌だったか。まぁ俺がその立場だったら全速力で逃げるけど。

 

「まぁ、いい。本題に入るとしよう、お前に素敵なお客様がお見えだッ!」

「えっ、お客さん?」

「誰?」

「どうぞお入りください」

 

 おおッ!病室に入って来たこの人は─────え、何だこのおじさん!?(驚愕)

 

「……バイトさん知ってますか?」

「…いや知らない。え、誰!?」

「知らないんですかッ!?」

 

 いやマジで知らない。小日向さんも知らないとなると…いやホント誰なんだよこの人ッ!

しかも無表情でこっちに歩み寄って来るし!いや怖い怖い怖い怖いッ!?

 

「ね、ねぇ…誰なのこの人!?」

「バ、バイトさん、私怖いんですけどッ!」

 

 俺と小日向さん。互いに身体を引き寄せ、目の前の無言の何プレッシャーによって俺達は打ち震える。

 

そんな俺達だったが、突如として弦十郎さんが前に出て来る。

 

「誰だお前!あっち行け!」

 

 そう言って司令はその人を押し除けて行った……いや、結局誰だったのあのおじさん!?そんな事を思っていると、また病室の外より別の誰かがやって来た。

 

「やぁ!君がバイト君だね!」

「わああああッ 誰?」

「また知らない人が来ました」

 

 今度は変な仮面を着けた人だった。いやマジで誰?と言うかさっきの知らないおじさんと比べて益々怪しいんだけど!?

 

「ロボット工学専門の研究員にして二課協力者のアヴィケブロン先生だッ!」

「この仮面に関してはあまり聞かないでくれたまえ」

「アッハイ」

「えーと…そのロボット工学に詳しい人がバイトさんにどんな用件が?」

 

 あぁ、そう言えばそうだった。と言うか何でロボット工学の人が俺に尋ねて来るの?もしかして俺、改造される?改造されちゃったりするの?

 

「バイト君、君に贈り物を渡しに来たよ」

「贈り物?なんですかそれ」

 

 アヴィケブロン先生 略してアヴィ先生が包みを取り出すと、俺に見えやすいように配慮してかベットの上でその梱包を開く。

 

これは……!

 

「気に入ってくれると嬉しいんだが、君の新しい義脚(あし)だよぉ!」

「…なんだ、ただの義脚(あし)かぁ…」

 

 あ、うん。失礼なのは承知。いやね、嬉しいよ?脚を貰えて嬉しいよ。これで歩けるんだし。

……ただ、櫻井さんが製作した超高性能義脚が凄過ぎた所為か霞んで見えちゃって……。

そう思っているとアヴィ先生が義脚を手に取り、弄り始める。

 

「否、ただの脚では無いッ!」

 

 そう言うと、ガチャンと音が鳴り響いた後に踵から推進機(ブースター)が出現して……えっ?

 

「失礼致します。バイトさんの病室で合っていますよね?」

「あ、バイちゃーん?実は夏コミに出すヤツの最終チェックなんだけど、どうせ入院中は暇なんだろうからちょいと手伝っt───ぐげぇぇええええええええええッ!?

 

「おっきーさぁぁぁあああああんッ!?」

「何事ですかぁぁぁあああッ!?」

 

 ブースターによって飛んで行った義脚が入室して来たおっきーさんに命中したんだけどッ!?

驚いたきよひーさんが吹っ飛んだおっきーさん回収しに行ったけど何アレ!?

 

「今後、君を狙う者が居ないとは限らない。そう考えて義脚に仕込んだブースターだッ!」

「接近戦に持ち込めばエンジンによって加速した蹴りによって大ダメージを狙う事も出来るが、本来はノイズに遭遇した時にジェットスキーの如く戦線離脱を目的としているので耐久性は低い。しかしその分、重量は軽いから日常生活に支障をきたす事は無いだろう!」

「わぁ!ありがとうございます、知らない仮面のおじさん!」

「いや僕の名前はアヴィケブロンなんだが」

 

…えぇ、無駄に高性能な機能ブチ込まれてある意味困るんだけど。あと小日向さんはアヴィ先生の名前覚えてあげて。それと何故に君がお礼を言うの?

 

「ちょっとぉぉおお!?病院で何をしているんですかッ!?しかも、さっきのは何です!?」

 

「「「あははははははははははっ!」」」

 

 何笑とんねん。

 

 

『素敵な脚を貰えて良かったね、バイト君/さん!』

 

「「いや、良くはないでしょぉッ!?」」

 

 

 ちなみに、立花さんからのメールには月の欠片を破壊した後、地球に戻って来た事と書いてあった。

 

 

【打ち上げ】

 

 

「と、言う事で月の破壊やその他諸々お疲れ様だっ!今宵は無礼講!しっかり楽しんで行くぞーーーッ!」

『おおおおおおおおおおッ!』

 

 弦十郎の声と共にテンションが異様に高くなった職員達の声が上がる。

 

「此処俺の家だからッ!何でアンタ等、人の家で打ち上げしてんのッ!?」

 

しかしして、ここはバイト君宅。退院早々何故か自宅でパーティが行われている事に困惑を隠せない彼はエックスにこの経緯を訊ねた。

 

「いやバイト君。これには蒼輝銀河の海よりも深い事情がありまして……ホワンホワンエックス〜〜」

 

 

〜〜〜〜〜回想〜〜〜〜〜〜

 

 

「と、言う事でクリス君の歓迎会を兼ねた打ち上げを始めるッ!」

『おおおおおおおおおおッ!』

 

「肉の用意出来ましたッ!」

「でかしたッ!」

「ちょっと高めの酒も出して来ましたよッ!」

「おう、いいぞ!ジャンジャン開けろ!」

「ご飯炊けましたッ!」

「白米は燃料ッ!」

「弦十郎の旦那ッ!本格的なBBQをする為に大きめの七輪用意しといたぜ!」

「食べ過ぎには気を付けろよッ!藤尭、調理は任せたッ!」

「ええ、任されましたッ!」

「よーし、エックス!派手な着火を頼むぞッ!」

「了解ですッ!カリバー(着火)ッ!」

 

 直後、室内のスプリンクラーが稼動した。

 

 

〜〜〜〜〜回想終了〜〜〜〜〜

 

 

「と、まぁこのような感じで順調に肉を焼いていたのですが仕方なく庭が広めのバイト君宅に……」

「馬鹿じゃねぇの!?馬鹿じゃねぇのッ!?」

 

 

 

【打ち上げその2】

 

 

「今日も元気だご飯が美味しいッ!お肉が超絶にマッチしてますッ!」

「むむ、アーティストとして食べ過ぎるのは注意しなければ…」

「おいおい、今そんな事考えるのは邪推だぜ翼。ほら、もっと食え食え。私も味の薄い病院食には飽き飽きしてた所だ…!さーて、食べるぞーッ!」

「こう言う時の為に溜め込んだお酒だ!ドンドン開けちまえ!」

 

 自宅に広がるやや広い庭内にて徹夜明けの二課職員達がおかしなテンションで肉と野菜の串焼きをツマミに酒を飲んでいる光景を前にバイトは大人って大変なんだなぁ…と思っていた。

 

「なんだよ、あまり食べてねぇじゃんか」

 

 そんな彼の元にクリスが歩み寄って来る。

 

「つーか意外だな、こんな大量の七輪があるなんて。使う機会なんて滅多に無いだろ?」

「いや?結構前までは使ってたよ」

「そうなのか?……いつも広い庭で肉を焼いてたりとか?」

「ほら。前の俺ってちょっと生への執着が無かったからさ。こう、練炭的な自殺法を「はい!この話もう終わりッ!肉食うぞ肉ッ!

 

 クリスは地雷原からの緊急離脱に成功した。

 

 

【打ち上げその3】

 

 

「と言う訳で改めての紹介だ。雪音クリス君、第二号聖遺物イチイバルの装者にして心強い仲間だ!」

「な、なんで私が前に出なきゃ…」

 

 バイト君宅、"ゆきねくりすくん二課へようこそ"と書かれた横断幕の前に立つ雪音クリス。

そんな彼女に弦十郎は言葉を掛ける。

 

「そうそうクリス君の住いも手配済みだぞ、そこで暮らすといい」

「で、でも…前に断った手前、そう簡単に受け入れるなんて……それに、今はバイトの家で世話になってるし……」

 

 前まで二課の大人達を信用して無かった上に、そんな素っ気無い自分に色々としてくれた相手にクリスは申し訳ない気持ちで一杯だ。

だが、そんな彼女に気を遣ったバイトが口を開く。

 

「雪音さん、大人って言うのは子供の前で格好付けたい生き物なんだよ。それにわざわざ用意したものを断る方が失礼じゃないのかな?俺の事なんて気にしなくてイイよ」

「お、お前……」

 

 クリスの目頭が熱くなって行き、涙を浮かべる。それは此処に来て出来た友人に対する感謝の思いで作られた喜びの涙。

しかし、そんな彼の前で泣く訳にも行かずゴシゴシと涙を拭う。

 

「っ!?」

 

 そんな涙する彼女を見た風鳴翼は、クリスの涙を寂しさによるものだと勘違いしたのか歩み寄り声を掛けた。

 

「案ずるな雪音ッ!合鍵は持っている、いつでも遊びに行けるぞッ!」

「はぁ!?」

 

 翼を筆頭に続々と装者達+αが鍵を手にクリスの元へと詰め寄って行く。

 

「勿論、私ばかりか……未来の分までッ!」

「これで寂しくないよねクリス」

「そーゆー事だ。ちなみに、この私も持ってるんだよなぁ〜合鍵!」

「ええ、やはり困った時の合鍵。小腹が空いた時にお邪魔させて貰いますね」

 

「わ、私の自由とプライバシーは何処へ行ったんだよッ!……はっ!?」

「……?」

 

 次の瞬間、クリスはバイトの方を見ると突如として詰め寄り両肩を掴みグラグラと揺らし始めた。

 

「お、お前もかッ!お前も私のプライベート空間へ侵入しようってのかーーーーッ!」

「な、なに?何の話!?」

「決まってんだろッ!お前もアレなんだろ!持ってるんだろ合鍵ッ!テ、テメェッ!ゆ、友人だからってそんなの許されると思うなよッ!?」

 

 バイトに対する胸の想いを吐露して行くクリス。しかし、そんな彼自身は何も理解してない様子で口を開いた。

 

「えっ、いや、なにそれ知らない。と言うか合鍵なんてフツー持たないでしょ?」

 

 しばしの沈黙。そしてクリスはサムズアップをしながら彼に語り掛ける。

 

「へっ、お前の事は信じてたぜ」

何がッ?

 

 雪音クリスの自由とプライバシーは守られる事となった…1/6くらいだが。

 

 

 

【君の名は】

 

 

 その疑問は天羽奏の口から出された。

 

「ところでさ、バイトの本名って何なんだ?」

「「「………」」」

「誰も知らないのかッ!?」

 

 バイト君、通称バイト君。謎のヒロインXの居候先の家主でありその身体能力はOTONAまでとは行かないが空中歩行はある程度出来るレベルに達している。

そんな彼だが、奏は「あ、そういやアイツの名前聞いてなかった」と思い出し装者達に本名を聞き出す事となったのだが……。

 

「い、言われて見ればバイトさんの本名知らなかった!」

「何年もの付き合いで名前知らないとか馬鹿なのかお前ッ!」

 

 立花響の言葉にクリスは思わず叫んでしまう。逆に良くこれまでバイトさん呼びで乗り切って来たなと尊敬してしまうレベルだった彼女は側に居た親友に助けを求める。

 

「ねぇ未来!」

「もう、響ったら。いい?バイトさんの本名は………」

 

 すると小日向未来の動きが静止する。

 

「未来?」

「……バイトさんの本名ってなんだっけ?」

「未来!?」

「お前もかよッ!」

「た、確かに…今まで"バイト"と言う情報しか出てない上に聞くタイミングを逃していた……いや、本当に分からないぞ名前なんてッ!」

「まぁ落ち着けよ皆。知ってるヤツならすぐ目の前に居るだろ」

 

 奏がそう言うと皆は1人の人物へと視線を注ぐ。そうだ、居るじゃないか。バイトとの何年もの付き合いで本名を知っているであろう人物が今目の前にッ!

 

「えっ!?バイト君って、『バイト君』が名前じゃないんですかッ!?」

「エックス!?」

「な訳ねーだろッ!どう考えてもあだ名とかそう言う類のものだろソレッ!」

 

 おお、なんと言う事だろうかエックスに至ってはそれ以前の問題だった。このトンデモ生命体、今の今までバイト君の本名=バイト君と認識していたのである。

 

「あー、くそ。こうなりゃ本人に聞くしかないか」

「待てッ!」

 

 モヤモヤする気持ちを晴らす為にも彼自身に名前を聴きに行こうとした雪音クリス。しかしそれを止める者が居た。そう、我らがSAKIMORIの風鳴翼である。

 

「な、なんだよ…?」

「本当に聞きに行くのか?聞きに行って大丈夫なのか…!?」

「いやいや、たかが名前だぞ?大丈夫だろ」

「たかが名前ッ!今更になって名前を尋ねてみろッ!そうなれば─────

 

〜〜〜〜〜〜〜翼の予想〜〜〜〜〜〜〜〜

 

「は?(威圧) 人の名前覚えてないなんて無いわ。防人の面汚しめ。失望しました翼さんのファンやめます」

 

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

 

 

───などと言われたらどうするつもりだッ!」

「いやいや流石に考え過ぎですよ翼さん!」

 

 風鳴翼は1人の防人であると同時に1人のアーティストであった。しかしアーティスト活動においてファンと言うのは1人1人が大切な存在。

もし、近くにいるファンが急に興味を失ったら精神的に辛いのだ。いやマジで。

 

「そうですよ、相手はあの仏のような寛大な心を持っているバイトさんです。もし聞いたとしてもすんなりと許してくれる筈───

 

 

〜〜〜〜〜〜〜未来の予想〜〜〜〜〜〜〜〜

 

「名前?別にいいよ。あっ、ところで───麻婆豆腐は如何かな?(ブチギレ)」

 

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

 

 

───すみません、さっきのは忘れてください」

「未来!?」

 

 フィーネに向かって麻婆をスパーキングした時の断末魔が耳に残っている小日向未来だからこそ、彼を刺激するのはヤバイと直感した。

 

 

 こうして数分が経過した頃、誰が聞きに行くかジャンケンで決めようとなった。

そして勝負の結果、最終的に彼に本名を聞き出すのは……。

 

「クリスちゃん頑張って!」

「お前が最後の希望だ雪音ッ!」

「クリスの骨は拾ってあげるからねーッ!」

「大丈夫だ、お前を信じる私達を信じろッ!」

 

「そこまで言う事じゃねーだろ」

 

 不承不承ながらも雪音クリスが聴きに行く事となった。

そしてご飯の上に肉と何か変なモノをザバーッとかけて食べているバイトの元へ向かうと咳払いした後に質問を投げかける。

 

「んんッ、なぁ…ちょっといいか?」

「んむ?どうかした雪音さん」

 

「いや、その…あー、大した事じゃ無いんだけどな。お前の名前、今思えばちゃんと聞いて無くてな。忘れない内にちゃんと聞いておこうと思って」

「それならバイトだよ」

「いや違う。そっちじゃなくて名前を」

「バイトだよ」

「だから、そうじゃなくて本名の方をな?」

「うん、バイトだよ」

「よーし、これで最後だからな。次ふざけたらこの場でお前をドザエモンにしてやるからな。テメーの本名はなんだ鉛弾ブチ込むぞコラ」

 

「いやだから──────

 

 

 

 

 

 

さっきから言ってるじゃん。バイトだよ、東間(あずま) 媒人(ばいと)だって」

 

「「「「「…………」」」」」

「?」

 

「「「「「それ本名だったのッ!?」」」」」

「今更ぁッ!?」

 

 

 

【れんきんじゅつしの憂鬱】

 

 

「今……なんと仰ったのですか……ッ!?」

「おや、届かなかったかな? 君の耳に 僕の言葉が」

 

 欧州、某所の一室にて2人の男女がそこに存在()た。1人は白を基調とした服と帽子で身を包んだ美丈夫と、その顔を驚愕の一色に染める男装の麗人だ。

 

「ならば君にまた云おうじゃないか。復活するんだよ、残り数年の内に 災禍の獣がね」

「『災厄獣(ディザスター)』ッ! その姿を現す瞬間(とき)、星に禍厄(わざわい)を齎す獣災ッ!未曾有とされて来た存在がその姿を現すと言いたいのですかッ!?」

 

 あり得ないと付け加える女性。

当たり前だ。それは今の今まで存在を否定され、幾千もの年代において姿を確認する事がなかった獣。例えそれが本当に存在したとしても、神秘が薄れたこの時代に発生する事など不可能な筈だ。

 

「……まさか、生贄による顕現召喚ッ!?いえ、それは不可能な筈ですッ!それに、災厄獣の召喚を目論んでいた終末論教団も謎の失踪を遂げた後、計画は凍結されましたッ!それなのに何故ッ!?」

 

「……『恐怖の魔王』『焔の魔神』『百魔獣の王』『世界蛇』…伝承にその名を刻み付け生命を滅する力を宿す文字通り"災厄"の存在。しかし存在しないと言うならば何故、その存在が現在に至るまで語り継がれて来たのか……煙は立たないんだよ、火種の無い場所にはね」

「仮に……仮に存在したとして、対応策はあるのですか?」

 

 本当に、本当に実在するのならば己が悲願である呪いの解放。それよりも先にこの惑星が滅ぶ事となるだろう。女性は男に尋ねると、悠々とした様で応える。

 

「その為の『神造兵装(ガーディアンブレード)』とソレの使い手となり得る『ホムンクルス』さ、引き続き監視を行いたまえ」

「……はい、分かりました。しかし局長最悪の事態も視野に入れるべきです」

「……と、言うと?」

 

「ホムンクルス個体No.[A-X]。彼女が私達に歯向かう可能性を考慮すべきです」

「それに関しては問題無いよ。いずれ尽きる定めなのさ、その身体を衝き動かす炎は、近い将来……ね」

「…そう…ですか」

「くれぐれも間違えない事だよ 己が責務をね。さて、計画通りF.I.S.に番外個体(オルタナティブ)の[O-X]を送り届けたまえ」

「──承知致しました」

 

 女性は部屋から退出した後、男はフ、と笑う。

 

「『霊長の殺人者』『ガイアの怪物』『第四の獣』…人類によって生み出された人類を滅ぼす為の機構(システム)。それを人から生まれしモノを拭うのもまた同じ人……どんな時代になっても愚かなものだよ、人間と言う種は」

 

 

 幾多もの人間を飽きる程観て来た。しかしそれでも人は同じ選択肢を取り続ける。同じ光景を繰り返し、何度も、何度も何度も何度も何度も何度も。

 

不完全であるが故の業に苛立つ。

 

やはりそうだ。己は正しい。正しく完璧である自分で無ければこの世界は同じ誤ちを選び続けるだろう。

 

「正さねばなるまい、この僕がね」

 

 男は、パヴァリア光明結社統制局長である『アダム・ヴァイスハウプト』は動く。己が障害であったフィーネが死に絶え、再びこの世に姿を現すその前に駒を進めようと。

 

そんな彼の元に再び幹部の1人である女性『サンジェルマン』が扉を開け再び姿を現した。

 

「局長、報告したい事が」

「どうかしたのかな?個体[O-X]についてなら一任した筈だよ 君にね」

「いえ、そうではなく日本在住中カリオストロからの連絡でプレラーティが入院していると…」

「おや、困ったものだね シッカリとしてくれなくては。取り敢えず聞こうじゃないか、状況の方を」

 

「その……プレラーティの痔が悪化したらしく、こちらへの帰還にはしばらく時間が掛かる…と」

「……痔?」

「はい、原因は劇物の摂取だそうで……」

 

「……やはり愚かなものだよ、人間と言う種は」

 

 錬金術師の局長は空を仰いだ。

 

 

 

 

【ありがとうを君に】

 

 

「……月が変わっても日常は変わらない…か」

 

 破壊された月の欠片が衛星の周りをグルリと輪のように形成された事により、これまでの日常とは少し違ったモノとなるのを感じた。

 

『天羽奏』

 奇跡に等しい蘇生を果たした奏さんは病院の検査を受けた後、回復の兆しを見せて行ったので再び翼さんとのユニットを見れる日は遠くない。

しかし、そんな彼女の胸の内には未だフィーネさんに対する復讐心や誰かを救い未来を繋げる事が出来たと言う安堵の気持ちが鬩ぎ合っているに違いない。

 

『立花響』

 シンフォギア装者となり、その身をただの女子高生から特異災害と相対する運命を背負う事となった少女。

しかし、彼女の心臓に存在するガングニールは未だ健在。それが近い未来どうなって行くのか…そして、そんな彼女の影に存在する忌まわしい過去にどう向き合うのかはまだ分からない。

 

『雪音クリス』

 フィーネの配下としてその手を汚して来た少女。俺と同じく世界を見て回ったからこそ理解出来るのだろう。人と人とは互いを比較し競争し合う種だと言う事が。

シンフォギア装者となり贖罪の為に奮闘していく彼女の未来に幸があれ。

 

『風鳴翼』

 これからも応援していきます以上。

 

 

 

 皆、それぞれの過去を背負い向き合おうとしている。だがそれは時として刺激を与えてしまえば爆弾のように飛び火する可能性もある。

だからこそ俺は過去に触れない。

例えそれが俺自身の過去であろうと、俺は目を逸らし続けるだろう。

 

……けど、

 

「バイト君、ご飯のおかわりを所望します」

「えー、これで9杯目だよね?もうこれで終わりにしてくれない?」

「そんな殺生な!?」

 

 いずれ彼女が"俺の側から居なくなる時まで"には、俺自身ちゃんと過去に向き合えるように強くなれるといいな。

 

「……ありがとう、そしてこれからもよろしく。エックス」

「……どういたしまして。そして、これからも宜しくお願いしますね。バイト君」

 

 

 

『謎のヒロインX』

 二課による検査結果、残り稼働時間およそ1()()()()()()。それまでにどうか彼女にとっての幸せが見つかりますように。

 

 

 

 





〜〜人物紹介〜〜

東間(あずま) 媒人(ばいと)
通称バイト君。
名前には人と人との間に立ち、力を貸してあげられるような人として生きて欲しいと言う両親の想いが込められている。
彼が新しいバイクは購入すると高確率で廃車になる。

『謎のヒロインX』
本作のヒロイン(?)らしき不思議生命体。
しかしして、その実態はアーサー王の人格、記憶、その他諸々を詰め合わせたホムンクルス。その為か彼女の寿命は長く保たないだろう、しかし持ち合わせたポジティブ精神とセイバーへの殺意で何とかする事だろう。きっと、メイビー。
ちなみにアホ毛はすぐに生え変わる。

『立花響』
好きな物はごはん&ごはんの原作主人公。しかし何の因果かギア、生身問わずその強さが留まる事を知らないので逆に周りから心配されるレベル。
得意な事は高町式会話術(とりあえず殴る)

『風鳴翼』
紆余曲折を経てついにイマジナリー奏を取得する事に成功したSAKIMORI。彼女のスキルは殆どが戦闘方面に費やされる為、家事・料理方面は悲惨な事になっている。
得意技は防人ビーム(生身でも可能)。

『雪音クリス』
感想欄では「こっちの方がヒロインじゃね?」とコメントされている真ヒロイン。やはりメインヒロインよりもサブヒロインの方が人気あるってハッキリ分かんだね。
好きなアニメ・漫画作品は『怪傑!うたずきん』シリーズ全般。

『天羽奏』
一度死んで生き返った初代ガングニールの装者。幽霊の生活はそれなりに楽しんでいたが、今もSAKIMORIにどのようなセクハラをしようか楽しんでいる模様。任意で幽体離脱が可能。
ランサーが死んだ!→この人でなし!

『小日向未来』
愛がグラビティな人。バイト君とはそれなりに付き合いが長い為か、お互いに気を遣わない仲らしい。彼女の内に秘めたるは響への想い、きっといつか伝えられるようにと今日も今日とても彼女は旦那(響)へのアプローチを忘れない。

「ところでバイトさん、私いつになったら響と結ばれるんです?」
「(知ら)ないです」

『風鳴弦十郎』
THE・OTONAにして二課の司令官。取り敢えずこの人にシンフォギアを運用出来れば全て解決すると思う。
身体中に穴が空いたが、数日で完治した。

『緒川慎次』
眼鏡がトレードマークのNINJA。この人も大概に強い。

『フィーネ/櫻井了子/モルガン』
EP1にて立ちはだかった無印のボスにして先史文明から幾度も転生を繰り返して来ている恋愛を拗らせた人。モルガンは無事に成仏したらしいが、扱いに関しては何も言わないで欲しい。fate作品に出てくれば掘り下げる事が出来ただろうが何も言わないでくれ……。
未だにバイト君にタクシー代を返していない。 

『錬金術師の皆さん』
基本全裸な局長や最近痔が悪化したロリ娘などが居る。



〜用語紹介〜
『災厄獣』
元ネタはワイルドアームズより。星を破滅へと導く力を撒き散らす存在。事象・概念に宿る守護獣(ガーディアン)が反転した存在と言われている。



しないフォギア編(エピローグ)はもうちょっとだけ続くんじゃ。
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