さーて、今週のしないフォギアさんは?
「バイトです。エックスの隠れ設定を公開したら一部の読者が驚愕を露わにしてました。いやぁ〜乱世乱世、荒んでいるでゴザル。でもエックスなら何とかなると思います。だってエックスだし(小並感)」
と言う訳で今回は
【クッキング装者+他】
【ダイナミック☆UMA】
【えさやり】
の三本立てでお送りします。
【クッキング装者+他】
「ひーーーまーーーーだーーーーーっ」
「うるせぇ、もうちょい静かにしてやがれ」
ここは二課の仮設本部。未だに行動制限が解除されていない装者達は日を見る事さえ許されておらず、日々堕落した生活を送り続けている。
……えっ、前にBBQをしていた?何の事かさっぱりですね。
「だってぇぇぇぇぇぇぇ…かれこれ数週間。未来やバイトさんが暇潰し用に色々と雑誌とか色々な物を買って来てくれるけどこのままじゃ暇過ぎてヒマワリになっちゃいそうだよぉぉぉぉお……」
「勝手にヒマワリになってやがれ」
「あーーーーッ!なんでもいいから何かイベントをやりたいよぉぉぉおおおおおおッ!!」
「と、言うわけで響ちゃんの暇だ発言により始まりました『第4回ッ!チキチキ特異災害対策機動部二課料理対決』〜〜〜〜ッ!!」
『イェェエエエエエエエエエエエッ!!』
二課仮設本部にて謎の集会が行われていた。盛り上がる二課職員達と、狭い所で憂鬱になっていた為かタガの外れたテンションで叫ぶ装者達。
「司会進行はこの私、あったかいものどうぞで定評のある友里あおい。そして実況解説は前回チャンピオンの……」
「この俺、藤尭朔也でお送りします」
オペレーターを務める2人がマイクを握り、口を開く。
「それでは今回の選手入場ッ!!」
立ち昇る煙の向こう側より現れる6人の姿。
「エントリーNo.1 立花響ッ!」
「好きな物はごはん&ごはんですッ!…え、私作る側なんですか?」
「エントリーNo.2 風鳴翼ッ!」
「いざ尋常に推して参るッ!」
「エントリーNo.3 天羽奏ッ!」
「時は来た…それだけだ」
「エントリーNo.4 雪音クリスッ!」
「まぁ?然程興味はねーが、せっかくだからな。優勝は私様がいただくッ!」
「エントリーNo.5 謎のヒロインXッ!」
「え?毒物持ち込んじゃ駄目ですか?そんなー」
「エントリーNo.6 小日向未来ッ!」
「好きな物は響です(真顔)」
「未来!?」
「続いて審査員登場ですッ!」
「いやあの未来の最後の発言については何も言及しないんですk」
選手達の入場を終え、次に用意された三つの席にスポットライトが当たる。
「1人目は我等が特異災害対策機動部二課の司令官ッ!風鳴弦十郎ッ!」
「今日はよろしく頼むぞ!」
「続いて、外部協力者にしてヒロインXの手綱を握りし者ッ!東間媒人ことバイト君ッ!」
「呼ばれて来たけど…え?一体何の話をs」
「最後に元米軍の顔はいいけどその体質が残念ッ!ジョニー佐々木こと
友里の疑問にバイトが答えるように口を開いた。
「あー、あの人なら「やばいッ!大きな波が来たッ!」と言いながら便所へ駆け込んで行きました」
「「ええっ!?」」
本来なら3人の予定の筈が1人欠け、審査員が2人だけとなってしまう。このままでは料理対決は難しい。万事休すかと諦めかけたその時とある声が耳に届く。
───その抜けた穴、儂が埋めるとしようッ!!
「っ、何奴ッ!姿を現せッ!」
突如として響き渡る声。しかししてその姿は見えず、一体何処に居るのか辺りを見渡していると……
「フフ、貴様の背後よ」
「な───!?(気配を察知出来なかったッ!?この益荒男、一体何者ッ!?)」
風鳴翼は咄嗟に飛び退く。
防人である己の背後、そこに声の正体は居た。最初からそこに存在したかと錯覚してしまう程の技術に加えて、その実力は司令である風鳴弦十郎と並ぶ…いやそれ以上の手練れだと感じさせる。
「仮面を付けた貴様、名を名乗れッ!」
「我が名は『マスク・ド・護国』ッ!主等の料理を味わう者よッ!」
「マスク・ド・護国…だとぉッ!?」
マスク・ド・護国と名乗る男性はドカッとジョニー佐々木が座る予定だった審査員席に腰掛ける。
「特異災害対策機動部二課に揃う防人を志す者達よ、己が腕によりを掛け料理を作る。それ即ち"護国"に通づるモノと覚えよッ!!」
「「「「「「何故そこで護国ッ!?」」」」」」
「いや、あの……それは別に良いんですけど。なんでおじさん座ってるんです?別に審査員じゃ無いですよね?」
「フフ、気にするでない。些細かつ複雑な事は老兵に任せ若人は前を向けば良いのだ」
「そんな俺の眼前に貴方が居るから気になって仕方ないって言ってるんですよ?言ってる事分かります??」
しかしそんな仮面を装着した不審人物をバイトが見逃す筈も無く、問い詰めようとするが、のらりくらりとはぐらかされる。
「ねぇ、あの人って……」ヒソヒソ
「完全に先代の司令官だよな?」ヒソヒソ
「……あそこでああ言われてますけど?」
「はて、何の事かさっぱり」
「この人は…ッ!(半ギレ)」
「しかし、何用で此処へ来たと言うんだッ!親父…じゃなかった。マスク・ド・護国ッ!」
「腹が減ったので少し寄ってみた」
「親父言った!今さっき弦十郎さん親父と言ったッ!?」
「言ってない」
「この人は…ッ!(半ギレ)」
二課職員達の口から、その正体について色々な情報が零れ落ちるが幾度言っても無意味のようだ。
「マスク・ド・護国……一体何者なのだ……ッ!?」
「あれ、翼さん?さっきまでの情報開示で第三者の俺でも正体分かるんですけど、なんで理解してないんですか翼さん?」
そして、そのような事態にも色々な意味でブレる事の無い風鳴翼。それはまるで折れる事の無い真っ直ぐ伸びた剣を体現したかのようだった。もう少し考えた方が良いぞこのTURUGI。
「ではこれより、食の対決を始めるにあたって制約を申し出るッ!」
料理のルール。
・制限時間50分。
・料理のジャンルはご飯もの。
・決められた材料の中から選んで作る。
「審査員が一人につき10ポイント。そして我等三人の合計30ポイントで採点を行うッ!」
「だが俺達は妥協しないッ!やるなら徹底的にだッ!!駄目な所は指摘していくからな、覚悟しろよッ!」
「えー……」
「それでは料理始めッッ!」
隣で無駄に燃えるOTONAの圧に呆れるバイト。そんな彼の意思を他所に第4回目の料理対決の火蓋が上がったッ!
各々の少女達は調理器具や材料を手にしていく。そんな最中、僅か数分後審査員達の前へ出る1人の少女の姿が在った。
「一番槍は私が貰いますッ!」
「なんとぉぉぉおおッ!早くも響ちゃん料理完成させた模様ですッ!」
「一番手の利点としては空腹である審査員に好印象を与える事です。下手に凝った料理は時間切れの恐れもありますしなかなか中々良い選択ですよこれは」
「ノリノリですねお二人とも」
そんな司会進行、実況解説役の2人の言葉の通り立花響の料理を楽しみにする審査員の3人。
ガングニールを纏いし少女が出したその料理は……ッ!
「これが私の自信作ッ!『ごはん&ごはん』ッ!」
「いや、ただのご飯だこれェーーーーッ!?」
ご飯の上に更にご飯を盛った料理…料理?であった。
そんな彼女が作った手料理を口にしたバイト以外の審査員2人はそれぞれ点数を挙げる。
「やはり米は日本人の魂よ。立花響に5点ッ!」
「漢なら一度は憧れる炭水化物+炭水化物。分かってるじゃないか!響君に6点だッ!」
「嘘だろこの大人共ッ!?」
まさかの点数に驚愕を隠せないバイト。そのような結果を目にした響は勝ち誇ったような表情を浮かべる。
「どうですか、私が好きな物と好きな物を組み合わせて作った最高傑作の品ッ!ふふ、残念ながら優勝は頂きました」
「もしかして馬鹿なのでは?」
「最初からそうだろ」
「あぁ…(納得)」
バイトの言葉に答えるクリス。そんな少し頭が残念な彼女はフッフッフと笑みを見せながらバイトに向かって口を開く。
「さぁバイトさん!私の点数は如何にッ!?」
「あーうん。2点で」
「ほああああああああああああっ!?」
【立花響 合計13点】
「な、何故ッ!?何故にそのような結果にッ!?」
「いや、こんなもの炊き立てご飯大盛りと全く変わらないし、全く調理してないから殆ど手抜きとも言えるし。せめておにぎりとかお茶漬けなら3点出せた」
「そんなぁ〜……」
「全く…これだから馬鹿は何処まで行っても馬鹿なんだよ」
響にそんな辛辣な言葉を吐きながらクリスが前に出る。
「おっと、二番手は雪音クリスちゃんのようですッ!」
「新しく仲間に入った彼女。銃の腕前は勿論、料理の腕はどうなのか見ものですね」
「いいか、こう言うのはな『速く・上手く・簡単に』の三原則が大事なんだよ。これを如何に守って飯を作るかがポイントなんだよ」
「ほう?中々の自信じゃないか。なら見せて貰おうクリス君の腕前をッ!」
弦十郎の言葉にクリスが不適な笑みを浮かべ、それを前に出した。
「上等ッ!これが私様の『雪音スペシャル』!おあがりよッ!!」
「いやコレご飯の上にアンパン乗っけただろォォォォォォッ!?」
それは一言で言い表すならば不均衡。
白い米の山に立つは茶色いパン。それはクリスのソウルフードであるアンパンが聳り立つ謎の料理…たぶん料理らしき物である。
「西洋のモノに小豆を入れた我が国発祥の食べ物を使うとは……中々やりおる。6点ッ!」
「ほう、面白い発想をしてるじゃないかクリス君。5点だッ!」
「オイ、どう言う採点基準してるんだオイ」
謎の得点に驚きを隠せないバイト。そんな彼にクリスはやれやれとした表情を見せる。
「ま、気にすんなよ。分かるヤツには分かるって事だ。なぁに、お前もいつか理解できる時が来るさ」
「な訳ないでしょ馬鹿にすんな。2点」
「はぁああああああああああああッ!?」
【雪音クリス 合計13点】
「一緒だねクリスちゃん♪」
「この馬鹿と同レベル……」
バイトによる評価と響と同じ点数にダブルショックを受けるクリス。なお、採点理由は響とあまり変わらない模様。
そんな彼女達はさておき、次に審査員達の前に出て来たのは小日向未来であった。
「出来ましたッ!『小日向式特製カレー』お待ちどうさまッ!」
「カレー…だとぉ!?」
「いきなり本格的なのが来たッ!?……あ、いや 前の2人が駄目なだけか」
「「!?」」
ショックを受ける2人を無視しながらカレーを頬張る審査員達。その料理は先程採点したものとは月とスッポン程の差があると分かるのか好評の意を見せる。
「ほう、これは何と言う……8点ッ!」
「野菜と肉の旨みがカレーに溶け混ざり合い絶妙なハーモニーを生み出している!実に美味いぞ未来君ッ!俺からは9点だッ!」
「やったッ!」
2人から高得点を貰った未来は喜びの感情に染まる。
この時点で既に17点、流石の小日向未来。女子力高めの彼女は響とクリスのような失態は踏まないのだろう。
が、しかし。
「うん美味しい……でも、この短時間でどうやってこんなカレー作ったの?」
「……へ?」
バイトの何気ない一言でその流れは一変する。
「普通、野菜とか肉とかここまで柔らかくするのには長時間煮込んだり、圧力鍋使わないといけないし」
「そ、それは圧力鍋を使ったからで……」
「えっ? 何言ってるの小日向さん。用意された調理器具の中に圧力鍋なんか無いけど?」
「………」
「………」(訝しんだ視線)
お互い無言の空気が流れる事数十秒。ダラダラと脂汗を流し始めた小日向未来にバイトは言い放つ。
「確保ォーーーッ!容疑者確保ォォオオッ!あと雪音さんはゴミ箱チェックだッ!」
「嫌ッ!離してッ!乱暴する気なんでしょうッ!ピク○ブのR-18イラストみたいに…ッ!ピ○シブのR-18イラストみたいにッ!!」
「は?他キャラよりエロ絵少ない癖して何言ってんの(真顔)」
「はぁーーーーーっ!?そんな事ありませんーーーッ!少なくともエックスよりはエロ絵あると自負してますーーーーーーッ!」
「それは一体どう言う了見ですかミク貴様ァッ!」
小日向の発言によって何故か調理中のエックスに飛び火する。その最中、雪音クリスがゴミ箱を漁ると袋状の何かを見つけた。
「なっ!?これは……ッ!」
「ああーーーっと!小日向選手のゴミ箱に使用済みのレトルトパウチ(袋状の容器)がッ!!」
「いや反則じゃんッ!美味しいけどコレ反則じゃんッ!!」
なんと小日向未来特製カレーの正体はまさかのレトルト食品。それを指摘された彼女はガクリと膝から崩れ落ちて行く。
「未来…どうして、どうしてレトルトなんかを……?」
「だって……私、本格的な料理作れないのッ!簡単な料理しか作れないのッ!ビーフストロガノフだってマトモに作った事が無い女の子なのッ!今までだって響にイイトコ見せたくて料理して来たけど、その殆どはお惣菜だったのッ!」
愛しき人を前にした見栄により彼女はソレに手を染めてしまった。
もう響に合わせる顔が無い。そんな自意識に蝕まれる彼女だったが、立花響はそれを真正面から否定する。
「だとしてもッ!私は未来の料理が好きだッ!私の為に手間暇掛けてくれる未来が用意してくれた料理が好きだッ!!」
「───っ! 響ッ!」
「未来ッ!」
未来と響、お互いが抱き合い傷を舐め合う。
ああ、美しきかな。例え親友が反則に手を染めたとしても響はそれも未来の魅力の一つだと包み込む。
「いい…話だな。反則だが情けで5点だ」
「娘達の仲に茶々を入れるのは無作法と言うもの…6点譲渡しよう」
「皆さん……!」
「うん、でもそう言うのは家でやってね?」
「ソッコーで茶々入れられたッ!?」
「あと俺からの情けは1点」
「うわああああああああああああッ!手抜き勢より下なんて嫌ああああああああああああああああッ!」
「「!?」」←手抜き勢(響、クリス)
【小日向未来 合計12点】
現状最下位に落とされた小日向未来。
そして3人はようやく理解した。この料理対決、審査員の中で最も厳しいのは司令でもマスク・ド・護国と名乗る不審者でも無い。目の前のバイト本人だと言う事を。
(((この人/コイツ、実は1番ノリノリなんじゃ……)))
「…どうしたの?」
「「「いえ、なんでも」」」
部屋の隅で正座待機する事となった平均点以下の3人は、喋るのをやめた────。
そんな正座待機組は他所に、現在調理中の人物に焦点を当てて行こう。
「えーと、確か次は肉とそれと玉葱に…ほうれん草も使うか?」
「おや、奏さん。次々と材料をみじん切りにして行きます。これは一体……?」
「この材料…どうやら
荒ぶる鷹の如き朱色の髪を束ねた天羽奏は揃えた材料を手にした包丁で細かく刻んで行く。
病み上がりとは思えない手付きで淡々と調理を進ませて行く様はプロの料理人のようだ。
「驚いた…ここまで慣れた手付きだとは思わなんだ…!」
「へへ、任せときなって弦十郎の旦那。これでも死ぬ前は翼の代わりに飯を作ってやったり、アーティスト活動の時に料理番組をやったりと色々経験して来たんだ。そう簡単に料理の腕は衰えたりしないさ」
「これは頼もしい言葉ですね!」
「ええ、高得点が期待出来そうですよ!」
「ほう…では見せて貰おう。黄泉返りの体現者。その腕前を」
「やっとマトモな人が出て来て一安心です(安堵)」
各々が自信満々の様子の奏に注目する……が、しかし。
ザクッ
「いて」
未だに本調子では無いのか、調理の最中に誤って指を切ってしまう。
「おっと、奏選手の動きが止まりました。久々の包丁捌きで手元が狂ってしまったか!?」
「しかしコレをリカバリーしてこその奏選手。ここから一気に化けますよ!」
…………。
………………。
……………………。
「あ、あれ?奏選手動きませんね?」
「どうしたんでしょうか。時が止まったように静止しています」
傷付けた指を抑えた状態で奏は凍り付いたように動かない。
その様子に困惑する全員だったが唯一、バイト君のみが彼女が一向に動き出さない原因を突き止めた。その原因とは────
「…奏さん?」
『悪い、私 死んだわ』
「奏さん!?」
まさかの突然死である。
「ランサーが死んだ!?」
「この人でなし!?」
「奏ぇぇええええええええええッ!!?」
【天羽奏
「あぁーーーーっと!ここで奏選手、まさかのリタイアですッ!」
「いや、なんでだぁぁぁあああッ!何で奏さんスペランカー並の耐久力になってるんだァァァァッ!」
『いやぁ、私もビックリだわ。人間一度死を経験すると死にやすくなるのかぁ』
「関心してる場合!?と言うか化けるってそう言う意味での化けるなのッ!?」
天羽奏、まさかの採点する以前にリタイア。幽体のまま正座待機組に加わる彼女に呆れ果てるバイトの耳に1人の少女の声が入って来る。
「ククク、へたっぴ。全員料理がなってない、へたっぴですねぇ……!」
「…エックス?」
それは謎のヒロインX。この料理対決において風鳴翼と並ぶダークホースがその沈黙をハンチョウ的口調で破ったのである。
「これはエックスちゃん、かなりの自信です!」
「まさか己の料理にそこまでの自信があるとッ!?」
「当然ッ!これが私の会心の傑作ッ!!見よッ!この輝ける我が料理をッッ!!」
直後、辺りは光に包まれた。一言で表すのならばそれは
超新星が此処に誕生したと言わんばかりに煌めくソレは見た者の記憶に深々と刻み込まれる程の美しさであった。
「な、何という光だッ!これがエックスの料理だとぉッ!?」
「馬鹿な、我が眼を持ってしても料理を視認出来ないまでの煌とは何と言うッ!?」
「ハハハハ!流石私、セイバーオブセイバーッ!料理界No.1のセイバーの称号は私が貰いましたよッ!勝ったな(確信) 風呂入って来ます」
正座待機組に見下すどころか見上げるまでのレベルのポーズを取る程に勝ち誇るエックス。
誰もが彼女の優勝を確信した……と、その時。
「あの……エックス」
「なんですかバイト君」
「……いや、本当に光輝いてるんだけど…これって…なに?」
輝きに目が慣れ、まじまじと観察するとその料理は蒼く発光している何かがザバーッとかけられた丼物だった。尋ねられたエックスは堂々を口を開き言い放つ。
「マトリクスコスモテクターブルーライトニング丼V×Vです」
「え、なに?なんだって?」
「マトリクスコスモテクターブルーライトニング丼V×Vです」
再度聴いても理解する事は不可能だった。マトリクスコスモテクターブルーライトニング丼V×Vと言うパワーワードを聞かされて、それが料理だと誰が分かるのだろうか?
少なくともバイト君自身は料理とは思えない…いや、思いたく無かった。
「まぁ、なんだ。とりあえず口にしてみるとしよう」
「未知の食への探求…どれ冒険と行こうではないか」
「マジかよこの人等。躊躇いもせずに行きやがった」
この審査員2人はそれ程までの勇気があるのか、それともただ無謀なだけなのか……。
彼はとりあえずエックスにこの料理について質問を行う事にした。
「ねぇ…これ食っても大丈夫?体に影響無い?」
「勿論、体に害なんてありませんよ?ただ……」
刹那、エックスの理解を口にした2人の身体が蒼く輝いた。
「食べると謎の発光現象が起こる程度です」
「いやどう考えても人体に影響あるだろォォォォォッ!」
夜の海にて浮かぶホタルイカの如く輝きを帯びる事となった審査員の弦十郎とマスク・ド・護国なる者。目の前で超常現象が起きた事に対してバイトはエックスに向かって声を上げた。
「ちょっと!?これ大丈夫だよね?大丈夫なんだよねッ!?これ以上変な事起きない?急に分裂したり頭が2つになったり、曲を背後にワープ進化したりしない!?」
「お、落ち着いてくださいバイト君。そんな埒外物理学的現象は起こりませんので安心してください」
「そう?それなら良かった」
「ええ、もし何かが起こるとしても……」
「¥°5〆v4≡.☆&@@/!」
「^〜*±″≫◎♯★ ̄\\〈〒※?<」
「言語機能がバグる程度なので安心してください」
「何がだァァァァァァァァ!現在進行形で問題起こりまくりじゃねぇかァァァァァァァァッ!」
【謎のヒロインX 失格】
「「『「
「嫌だぁぁぁああああああああああああああ!!」
少女達+幽霊によってあちら側に引き込まれて行く謎のヒロインX。
これによって6人中5人が平均点以下と言う事態となった。
こ れ は ひ ど い 。
「あの…もう帰っていいですか?」
「最後までやらないとダメだよ「ファッキン藤尭さん」バイト君!?」
料理対決の筈がマトモな飯が出て来ない事態に思わず悪辣な言葉が吐かれる。
……そんな時だ。
「……ん゛!?」
「どうしたの響?」
「い、いや……何か刺激臭が…?」
謎の香りに顔を顰める響。それに釣られて未来、エックス、クリス。そして幽体だった奏が身体に引き戻されて復活する程にソレは部屋中に充満する。
「こ、この匂いは…まさかッ!?」
二課職員達の視線が一箇所に注がれる。その日、人類は思い出した。
風鳴翼の恐怖を。このTURUGIの料理、家事に対しての下手さの度合いが桁違いだと言う事を。
「な、なぁ…翼」
「どうしたの奏?」
「いや……何作ってるんだ?」
奏の目の前に広がる虹色の物体。ソレを指摘された翼は「あぁ」と呟いた後、答える。
「私は王道の味噌汁を作ってみたの」
「……味噌汁?」
鍋の中に存在するゲーミング的なグロテスクかつドロドロした謎物体。
近くに居るだけで、意識が無理矢理奪われそうになった奏はその場から無言で離れ正座待機組に加わる。
「あの、奏さん」
「言うな。それ以上言うな」
「いや言いますよ私。なんですかアレ、翼さんは今何を作ってるんですか?と言うかアレは料理何ですか!?何故に料理対決で
「それ以上言うなァーーーッ!」
響の問いに奏は叫ぶ。
アレは駄目だ。アレはこの世に存在してはいけないものだ。
エックスの作ったマトリクスコスモテクターブルーライトニング丼V× Vが美味しく見えるレベルのヤバい代物がこの世に解き放たられれば世界から戦争が消えて無くなる代わりに星が死の惑星へと変貌を遂げるだろう。
「バイトさん…これでお別れになるなんて……ッ!」
「いやそんな大事になる訳ねーだろ!」
「それじゃあクリスはアレを口にして生き延びる自信はあるのッ!?」
「そ、それは……」
小日向の言葉を否定する事が出来ない。アレを食べれば恐らく…いや、十中八九死ぬ自信がある。
もしかしたら食べたら美味しいと言うシュレディンガーのTURUGI特製料理的な法則が存在するかもしれないが、絶対に御免被る。
Q.それでも、あの3人を犠牲にして自分達だけ生き残る事は正しいのだろうか?
A.うるせぇ、生き残った方が勝ちなんだよ。
雪音クリスは口と共に目の前の光景をシャットアウトする事にした。自分は何も見ていない─────。
「よし、後は仕上げてと……防人ビーム(弱火)ッ!」
ボシュゥゥウウウウウ
『ヒェッ』
全員が思わず悲鳴を漏らした。手作りダークマターが更にマトリックスエボリューションを遂げる。
この世の全ての悪を煮詰め、怨天大聖が裸足で逃げ出す衝動に駆られるだろうソレはこの場に居る全員に死を覚悟させた。
「完成ッ!私の傑作『風鳴風味噌汁』だッ!!」
<コロシテ…コロシテ…
((((((((呻き声的な幻聴がッ!?))))))))
味噌汁と言う名の暗黒物質より聴こえるソレはこれより起こるであろう未来の自分達の姿を意味しているのだろうか。
それを見て気絶していく職員達が続出する中、審査員達の前にそれが運ばれまった。
「さぁ、審査の程をお願いする」
((((((((遠回しの死刑宣告ッ!?))))))))
おおブッダよ、あなたは今も寝ているのですか!と叫びたくなるレベルだ身体が拒否反応を起こす中、審査員の内一人である風鳴弦十郎は呟く。
「そう言えば、腹が減っているんだったよな?俺の分も食べるか?」
「隣に押し付けたッ!?」
「自分の命惜しさに父親を犠牲にしようとしてるぞ このオッサン!」
「はて…チヨさんや。飯はまだかのう?」
「対してこっちはボケて乗り切ろうとしてやがるッ!」
「み、醜い…ッ!命を掛けた大人のやり取りが醜いッ!」
翼の最終決戦兵器を前に醜いやり取りをするOTONA達。そんなヤバい代物を生み出した風鳴翼はポツリと呟く。
「いえ……良いんです叔父様。無理しなくても良いんです」
「翼…?」
「私の料理は不出来なのでしょう?……そんな事、分かりきっています」
容器によそった味噌汁(?)を手に取り、己自身を嘲笑うかのように彼女は口を開く。
「私の身は鉄火場に生き、剣を握る為に存在します。そんな常在戦場しか頭に無い私が料理など……烏滸がましいにも程がある……私の料理なんて────食べるに値しないモノだと、分かりきった事なのですッ!」
自らの手で作った料理。誰かに食べて欲しいと言う純粋な願いで作られたソレを皆は拒否するのは目に見えていた。
こんなもの……こんなもの、無くなってしまえばいいッ!
そんな彼女の慟哭と共に床へと叩き付けられる──その直前、翼の手を掴む者が居た。
「何をする……バイトッ!」
「……」
それは彼女のファンであり、審査員の1人でもある東間媒人。彼が彼女の手から味噌汁(と言う名の何か)を取り上げると、何と言う事だろうか。そのまま口に運ぼうとし始める。
「な、何を考えてる媒人ッ!死ぬ気かッ!!」
「そうですよ、早まらないでくださいッ!」
「否ッ! 推しが丹精込めて作った手料理を食べずして何がファンだッ!何がドルオタだッ!!」
制止する周りだが、その程度で彼の決意は揺るがない。
彼の風鳴翼への"愛"それが恐怖を押し除け、勇気への原動力に繋げたのである。
「馬鹿なッ!そんなもの不味いに決まっていますッ!」
「そんな事…食べてみなければ分からないだろエックス」
「なら…ッ!ならばッ!私のマトリクスコスモテクターブルーライトニング丼V×Vは防人のセイバーの作った料理より劣って見えると言うのですかッ!?そんなモノが私の作った手料理より美味しそうに見えるとでも言うのですかッ!」
「そうだよ(即答) いただきまーす」
「バイト君!?」
その一言と共に翼の作った味噌汁がバイトの口の中へと流し込まれた。ごくごくと無理矢理胃の中へと押し込めるばかりか、他の容器。そして鍋の中身にまでも手を出す始末。
「や、やめてバイトさんッ!」
「嫌ぁ!死んじゃ嫌ぁあ!!」
「駄目だ!!そんな!!もうこれ以上そんな力ッ!!一体この先どれほどの…ッ!!」
それでも彼は止まる事を知らない。いや、既に止まる事をやめているのだろう。彼は食べ、飲み、流し込む。己の身体の内へと収める。周りの人の為にも、目の前にいる己が愛する者の為に彼はそれを"食べ尽くした"。
「─────ふぅ」
「バイト……君?」
空になった地へ鍋が落ち、ヒロインXが彼の安否を確かめる為に声を掛ける。そして、数秒の間を置き彼の口が開かれる。
「風鳴翼さんに……100点満点ッ!」
「っ!!」
『あ、愛が勝ったッッ!?』
こうして、第4回チキチキ特異災害対策機動部二課料理対決は幕を閉じた───誰もが優勝者だと言うバイトの一言で丸く収まり、誰一人として欠ける事なく、1日が終わったのだった。
翌日、東間媒人が突如として原因不明の熱・震え・嘔吐・その他諸々を発症。緊急搬送されたのは言うまでも無い。
【ダイナミック☆UMA】
「……実は君にしか頼めない事があるんだ」
「俺にしか頼めない事ッ!?一体何なのでしょうかソレはッ!」
東間家…通称バイト宅にお邪魔した風鳴翼は真剣な面持ちで彼に話し掛ける。
「実は…動物の事について相談したいんだ」
「動物……もしかしてペットとか?」
「ああ、実は私に懐いてしまった動物が居て飼おうにも我が家は動物を飼うのを父に反対され、緒川さんにも飼うのをやめた方が良いと言われてしまって……」
「それで俺に預かって欲しい……と言う訳ですか?」
極端に言ってしまえばそうなる、と彼女は応える。申し訳なさそうにする彼女だが仕方ない事なのかもしれない。
行動制限が解除されたとは言え、表向きフィーネが起こした事件であるルナアタックの処理、様々な地域でチャリティーライブ、天羽奏とのユニット再結成など様々な事に時間を割く彼女がペットに構う暇は無いに等しい。
「それくらいならお安い御用です。俺だって一応は二課の外部協力者ですから」
「バイト……ッ!そう言って貰えるとありがたい。実はもう既にここへ連れて来ているんだ」
「そうなんですかッ!?(でもまぁ、そう言う少し抜けている所も翼さんの良い所なんだけどね)」
リビングから庭へと続く掃き出し窓をガララと開ける翼。そんな彼女は少し申し訳無さそうに口を開く。
「実は……馬なんだ」
「馬⁉︎ 馬なんて一体何処から拾って来たんですか!?」
「ま、まぁ落ち着いて欲しい。馬といっても中々賢い奴だから君の言う事もちゃんと聴いてくれる筈だ」
そう言いながら彼女が出て行くと庭の外よりパカラパカラとリズムを刻みながら蹄で地を叩く音が耳に入って来る。
そして手綱を引く翼と共に美しい毛並みを揃え強靭な筋肉を携え、凛々しい鳴き声を発しながら
「それではバイト、私がアーティスト活動に専念している間コイツの世話を頼んだぞ」
「ブルルルッ」
「………」
それは馬と言うよりは、馬に近しい生き物と言った方が正しいのだろうか。バイトの眼前にその身を甲冑で包み長柄の武器である巨槍を手にしたケンタウロス擬きのナマモノが出現したのである。
「馬じゃない」
「えっ?」
「馬じゃない…UMAだこれぇぇぇぇッ!?」
▼▼▼
「と、言う訳で皆でしばらく俺の家で飼う事になりましたUMAです」
「ヒヒン」(イケボ)
『うわあああああああああああああああああああああああッッ!!??』
遊びに来ていた響達に加えて板場、安藤、寺島の絶叫が彼家に響き渡る。無理も無い、そんな馬だかケンタウロスだか分からない生命体を家に上げれば普通にビビる。
「一体全体どうなりゃこんな馬を飼う事に…って馬じゃねぇよ!何だよこの化け物は!?」
「翼さんの頼みでしばらく飼う事になったんだよ」
「聞いてるのはそこじゃねぇんだよッ!コレが何なのかお前に聞いてるんだよッ!」
「知らない」
クリスの質問に馬らしき生物の身体を撫でながら答えるバイト。そんな馬に興味深々に近寄る板場達とエックス。
「へー、凄いじゃない。まるでアニメって感じの質感だわ」
「そうだね。馬なんて初めて見るけど、こんな生き物初めて見るよ」
「確かに。どんな生活をしていればこのようになるんでしょう……?翼さんはこの子を何処で見つけたんですか?」
「なんか、風鳴家の私有地である山で槍を振り回しながら疾走していた所を捕まえたんだって」
「待て、捕まえるまでの過程がおかしい。なんだよ槍を振り回すってヤベーヤツじゃん」
「馬…馬ですか……これは余程の鍛錬によって引き締められた筋肉だと見て分かります………ところでバイト君。本日の夕飯なんですがさくら鍋でどうでしょうか?」
「食うのかッ!?お前、この馬だか分かんないのを食うつもりなのかッ!?」
「……ハハハ、そんなまさかハハハ」
露骨に目を逸らすエックス。そんな彼女の手元に握られた聖剣は肉を捌く為に用意した訳ではない。きっと、メイビー。
「ヒヒン!…まぁ、より良い健康はより良い身体作りからと言いますからね。私の身体を注目してしまうのは仕方ありません」
「はぁ…そう言うもんなのk───」
と、クリスが口を開くが途中で止まる事となる。先程の言葉は一体誰の口から出されたものだと言うんだ?
そんな声が聞こえて来た方へ視線を向ける女性陣。
そこには……。
「ところで、どなたか人参を持っていませんか?朝はあまり食べていないのですよ」
『うわああああああああああああああああああああ喋ったぁぁぁぁぁぁぁああああああああああ!?』
「……ブルルッ? 勿論喋りますが何か問題でも?」
「問題しかねーよッ!おい、本当に飼うのかッ!?考え直せッ!今すぐに考え直せッ!!」
バイトに詰め寄るクリス。そんな彼女に対して「えぇ…」と口を開いた。
「それじゃ…野生に返すの?」
「あったりまえだッ!そんなものすぐに捨てて…!」
「雪音さん。それはちゃんと考えた上での発言かい?」
「っ! どう言う事だそりゃ…」
彼の眼光に面を喰らう。いつもの彼らしからぬ顔にクリスはおろか、響やエックス達までもが唾を飲み込み見守る。
「いいかい?俺はこの生き物の面倒を見る気でいた。そんな生物を見捨て、世に放つ。それが何を意味するか分かるかな……?」
「……そう、だよな悪い。生き物をモノ扱いってのは駄目だよな」
ペットを飼う者は、命を預かる立場となり育てる義務がある。クリスはその気構えが成っていないのだと自覚しバイトに頭を下げた……が、しかし。
「いや…俺がそう言いたいのはそうじゃないんだけど」
「えっ」
「あのね、俺が言ってるのは…この馬かも分からないナマモノを放置していいのか?って言いたいの」
「…あっ(察し)」
こんな変な生き物を世に放てば、一体どうなるのか?答えはこの街に腕が生え、槍を手に持った危険生物が跋扈。加えて池に広がる波紋の如く機動隊や色々な所から厄介なモノを呼び寄せる火種になってしまうのである。
「と、言うわけで俺達で"コレ"何とかする必要がありますッ!あ、弦十郎さんからは許可を受諾済みですッ!」
「コイツ…最初から私達を道連れにするつもりだったのかッ!」
「まぁまぁ、面白そうだから私達も協力しようって」
「そうだよ。今まで私達が厄介事を運んで来た側だったから偶にはバイトさんに協力してあげないと」
「そう言う事ですアーチャー、諦めなさい」
「お、ま、え、ら、なぁ〜〜ッ!」
今回に限らずあちら側に協力する響とその親友に呆れるクリス。無論エックスは最初からバイトの味方なので諦めている。
そんな彼女達に「それに」とバイトは付け加えた。
「ただでさえ【妖怪白タイツ】が未だに捕まって無いんだッ!これ以上、変なのが野ざらしってのは嫌なんだよッ!」
「────」
刹那、クリスは固まった。
「バイトさん、その妖怪白タイツって言うのは何なの?」
「妖怪白タイツ。それは人の前に現れては高笑いしながら鞭を振るい、誘拐を目論むドヘンタイクリーチャー…かく言う俺も被害に遭った。と言うかそもそもの話、ソレの所為で俺のツヴァイ(初代バイク)が…くそう、くそう…ッ!」
「可哀想に……!」
「そんな見下げ果てた外道が…元気出してください。ほら麦茶をどうぞ」
「その通りですよ。ほら私の人参をどうぞ」
「アリガトウ、アリガトウ…ううっ、ツヴァイ…!」
馬(らしきナマモノ)と女子高生3人に囲まれながら慰められると言うシュールな光景が広がる一方、雪音クリスは響、未来、Xの3人に囲まれていた。
「クリスちゃん?」
「クリス?」
「アーチャー……まだ明かしてないんですか」
「……その…いつか、言おうとは思ってる…けど…」
ルナアタック事件より妖怪白タイツの正体。それは紛れもない雪音クリス本人だと彼女は未だに明かせずに居た。理由は至極単純、言うタイミングを掴めずにいたからである。
※(既に未来は響から正体を教えて貰っています)
「「「…………」」」
「わ、分かった!ちゃんと協力してやるから、そんな目で私を見るなッ!」
無言の圧力に耐えきれず狼狽えるクリス。そんな彼女を他所に安藤創世が「あっ」と声を漏らす。
「そう言えば名前。名前は何なの?」
「名前ですか……残念ながら私に名前と言う概念はありません。あるものと言えば私が人・馬・鎧・武具が勇猛合体した存在だと言う事だけなのです」
「ごめん。何を言ってるか分からない(真顔)……うん?」
その時、安藤は何かに気付く。胴体に装着してある鎧の背中。そこに小さく何かが彫られているのである。
【SK-T:0B】
謎の英数字羅列。何を意味するか分からないソレに気付いた少女達はマジマジと観察する。
「何これ、変なのが書いてある?」
「ん?これって……流石に名前じゃないか、あるとしてもこの馬…馬?コイツ特注の具足の個別番号ってとこだな」
「
そんな中、メモ用紙にソレを書き記しながらそう呟くバイトは馬らしき生物に向き直り語り掛ける。
「赤兎馬」
「せきと…?」
「ん、三国志で有名な呂布奉先。その飛将軍と共に戦場を駆け、人馬一体を体現し猛威を振るったとされる汗血馬さ」
「で、出たーー!バイトさんの妙に歴史に詳しい実況解説スタイルッ!説明ありがとうございます!」
「ふむ…赤兎馬、赤兎馬ですか…赤兎馬……クワッ!」
己に付けられた名を反芻するように繰り返し呟き、時折のフレーメン反応。
まるで自分の為にあるかのような名前を彼…彼(?)は口にする度、内臓が燃え盛り、絶対的強者になったかのような覇気が湧き上がって来る。
「良いですね、その名前。気に入りましたッ!」
「そうか、それは良かった。それじゃ今日から君の名前は『赤兎馬』で…異論はある?」
「いや、良いと思いますよ赤兎馬」
「そうだな。下手に変な名前付けるよりもマシだ」
彼のネーミングセンスにケチを付ける者は居ない。寧ろ好評のようでバイト自身少し照れ臭い気持ちになるが、それを紛らわすかのように赤兎馬の腕をポンポンと軽い力で叩く。
「んんっ、…これからよろしく頼むよ赤兎馬」
「ええ。そしてそれはつまり私は呂布と言う事になりますね」
「うんそうだn…えっ、なんだって?」
「人中に呂布、馬中に赤兎。人馬一体を体現する名を持つと言う事は───私は呂布と言う事になります」
「えっ、いやでも赤兎馬って」
「呂布です」
「いやだから赤兎b…」
「呂布です(鋼の意志)」
「はい」
こうしてバイト宅に新たな謎生物が居候する事となった。
あとついでに周りからは東間媒人の家は一種の魔境区域と認識される事となった。
【えさやり】
「赤兎馬ー、はい人参!」
「おや、これはどうも。気が利きますね」
「まぁね!たーんとお食b」
ガリッ(手ごと行く音)
「がああああああああああああああああ!!」
「響の手があああああああ!?」
元は赤兎馬は1番誰に懐くか始めた餌付け。一番手の響だったが自分の手ごと噛まれた事によりノックアウトする。
「全く、ダメですねヒビキは。いいですか?こう言うのはちゃんと皮を剥いてあげるのがいいんですよ」
「な、成る程…その手があったか〜〜〜〜ッ」
「と言うわけで私からの奢りの人参です。遠慮無くお食べくだs」
ガリッ(手ごと遠慮無く行く音)
「ぐあああああああああああああああああ!!」
「エックスの手がああああああ!?」
第二陣エックスまでもノックアウト。美味い美味いと人参の味を噛み締める赤兎馬ニ対しギリッとエックスは歯を噛み締める。
「おのれ…いつか馬刺しにしてやる……ッ!」
「皆駄目よ、駄目なのよそれじゃッ!」
続いて板場弓美。彼女が取り出したのは人参…では無く、紅く輝く
「リンゴ…だとぉ!?」
「ふっふっふ……、知らないでしょうけど実は馬ってリンゴが好物なのよッ!」
「そうなんですか!?」
「……いやでも、赤兎馬って"馬"にカテゴライズしていいのか不明なんだけど良いのそれで?」
「良いのよッ!さぁ、アンタにこの林檎をあげるわ!」
「ほう、リンゴですか…いいですね。
すると板場は勝ち誇ったような表情を浮かべる。
「どーよ見なさいッ!やっぱりアニメ的にも皆リンゴが大好きなのよn」
ガリッ(やはり手ごと行く音)
「おあああああああああああああああああ!!」
「ユミの手があああああああ!?」
「リンゴより人参の方が好きなんですよね私」
「アニメじゃ馬は人参よりリンゴの方が好きって学んだのに…騙されたッ!くそう、くそう!」
「全く…アホかお前等。そもそもの話、エサの与え方がなってないんだよ」
悔やむ板場に呆れながらクリスが前へと出る。
「いいか?大事なのは
「へぇ、そうなんだ」
「物知りだねクリス」
「まぁガキの頃に牧場で餌やり体験した事あるからな。馬なんざこうやっていれば餌を前にすりゃ馬鹿みてぇに食い付くのさ」
「………」
そう言うとクリスは人参を片手に赤兎馬の前に差し出す。
「ほらよ人参だ。ありがたく食っt───」
ガリッ(頭に齧り付く音)
「なんでだああああああああああああああ!!」
「アーチャーが食われたッ!?」
「クリスちゃん!?」
「馬を侮る方は嫌いですブルルルッ」
倒れ行くクリスを見下げるUMA。人馬一体の身である彼にとって人として侮辱、馬としての侮辱はどちらも彼の逆鱗を撫でる事となるので注意である。
「く、うう…!お願い未来。私達の仇を取って……!」
「ごめん響。私噛まれたくないから」
「未来!?」
まさかの頼みの綱である親友は棄権。もはやこれまでなのだろうか?このまま此処にある人参や林檎は全て食べられてしまうのだろうか……?
「いやさ、皆して何やってるの?」
そこへやって来たのは家主の東間媒人。状況を見て理解してない様子の彼にエックスは説明を施す。
「無論、餌やりですよバイト君。しかし相手は中々の手練れ、我々の食糧も底をつきかけて……クッ!」
「いや"クッ!"じゃねーから!それ俺の林檎!それ俺の人参!それ俺の食糧だからッ!」
そんな事を口にしながら無造作に置かれた人参を手に取るバイト君。それを見た響達は呼び止めようと必死に声をあげる。
「駄目ですッ!バイトさんまで犠牲になる事はありません!」
「その通りです、油断すればアーチャーのように頭からイカれますよッ!」
「コレがアニメなら死ぬ役だろうけど言ってやるわ……ここは私達に任せて先に行ってッ!」
「あの人達は何を言ってるの?」
「無視して大丈夫ですよバイトさん」
「うん、ちょっとビッキー達変なテンションになってるだけだから」
「そう言う事ですので、お気になさらず」
「あ、うん」
そんな彼が野菜を手にすると赤兎馬に向かって言葉を投げ掛ける。
「人参…どうする?生のまま?それとも茹でようか?」
「いえスティック状にカットして欲しいです」
「分かった。他にも何か付け加えておくよ」
「ほう、そうですか。それはそれは…」
口端を釣り上げうんうんと頷く様はまるで幾多もの戦場、修羅場を生き抜いて来た戦友の如く(当社比)。
『…………』
「ん、どうしたの皆?」
摩訶不思議ナマモノ相手に友情的な立場を一瞬の内に築き上げた東間媒人にこの場に居る者達の視線が注がれる。
『バイトさんって
「ハッ倒すぞ(半ギレ)」
〜〜キャラクター紹介〜〜
『マスク・ド・護国』
仮面を装着した謎多き老人。そのあまりの戦闘力を抑える為に施された仮面の下は一体どのような顔か知る者は居ない(事にされている)。
何故か風鳴翼を気に掛けたり、一課の職員達が「訃堂様が何処かへ行ったぞーッ!」と慌てていたが関係性は無いだろう…多分。
マスク・ド・護国…一体何者だと言うのだ……。
『赤兎馬』
風鳴家の私有地である山を自由に駆けていた所を翼に捕獲、無理矢理ペットにされたらしい。その為か翼にはあまり懐いてはいない。
好物は人参だが、無駄にイケボ。たてがみは美しいの一言に尽きるが、腕が生えてるし、なんなら火も吹く。
果たして、呂布を自称するトンデモ生物をバイト君は制御しきれるのだろうか?