未知との遭遇〜アルトリウムを添えて〜   作:ゴランド

29 / 34

 ラクキンやウマ娘にハマってたらいつのまにか時間が過ぎてました。冨岡義勇が腹を切ってお詫びします。



26話 カーニバル☆リディアズム 破

 

 冷える風が吹く秋桜祭。二校共同運営によって行われるビックイベントであるカラオケ大会は外の寒さに負けじと観客の熱気によってステージが燃え上がっていた。

 

「さぁ波瀾万丈の激動続くカラオケ大会ッ!現在、89点を叩き出したチームノーブルレッドが一位と言う結果‼︎この強豪を討ち取る者は現れるのかッ⁉︎」

 

「無駄無駄無駄ァ、無駄だゼ!ウチ等に敵う奴等なんて居るわけないんだからなッ!」

「ガンス!」

「このままお米と商品券は頂くわよ〜〜‼︎」

 

 勝ち抜き式カラオケ大会の優勝者に送られる賞品を目当てに歌う者、己が声色に自信がある者と千差万別に参加者が存在。

司会者であるリディアン音楽院学生はマイクを手に声を上げる。

 

「このカラオケ大会果たしてどうなるのでしょうか‼︎解説のカドックさんそこら辺はどう思いですか⁉︎」

「…まぁそうだな。現状で上位に並ぶ奴等は全てに於いて高い実力の持ち主。ちょっとやそっと歌に自信があるだけじゃ一位にはなれないだろうな」

 

 実況席にて「なんで俺がこんな事を…」と愚痴を零す生徒会の一員であるカドック。ちなみに何故ここに居るのかと言うと現在、学祭エンジョイ中の会長が行方不明中であるので代理で仕方なく出ていたりする。

 

保護者が見つかるまでの辛抱だが、途中からカドック自身、真面目に解説し始めているのは言うまでもない。

 

「さぁ!飛び入りの挑戦者は居るか〜〜ッ⁉︎ 観客席に居る皆様も自信があるのならばどうぞ参加して行ってください‼︎」

 

 そんな最中、ふと司会進行の女子生徒の目に特徴的な格好をした女の子の姿が飛び込む。

ステージをより一層盛り上げる為、特徴的な服装を見に纏う金髪の幼子にマイクを向ける。

 

「そこのお嬢ちゃんも是非!参加してはいかがですが!」

 

「───ほう、この俺に歌わせようと言うのか」

 

 金の髪を揺らしステージへ上がった少女が不適な笑みを浮かべた後、マイクを無理矢理奪い、高らかに叫ぶ。

 

高くつくぞ、俺の歌はッ!!

 

 

 今此処に小さき錬金術師(奇跡の殺戮者)の70億の絶唱を凌駕せし歌声が響き渡る…!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

採点結果【36点】

 

 

クソがあああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああッ‼︎

 

奇跡の殺戮者ことキャロル・マールス・ディーンハイム。ここに散る───。

 

 大口叩いた割に大した事の無い点数。そんな結果に納得出来ないキャロルはステージの上で地団駄をそれはもう踏みまくる。

ハァハァ…と息切れした頃合いを見計らったようにバレリーナの如く舞いながら青の服装で身を固めた少女が現れる。

 

「あらぁマスター?高く付くどころか半分にも達していないじゃないですか。見栄を張った割にはお粗末な結果でしたね〜」

「黙れ‼︎ 長くシャトーに居た所為か、歌詞が分からなかったんだよッ!」

 

 歌っている途中、具体的にはサビを越した後からほぼフフフンフ〜ンと鼻歌へと変わって行った事実を嘲笑うかのように青いメイド服を纏う少女、ガリィは口を開く。

 

「まぁ?ガリィとしてはマスターが大勢の前で顔を赤くしながら最期まで足掻いて歌っている姿は面白おかしk…とても勇ましかったと思いましたよ〜」

「ガリィィィィィィイイイイイイイイイッッ‼︎」

 

 ステージ上、加えて観客達の前である事をそっちのけで叫ぶキャロルと面白そうに笑みを浮かべるガリィ。

そんな2人の元へ新たにステージ上へ移動して来る人物が姿を現した。

 

 

 

 

「懐かしい気配を感じたと思ったら、まさかお前と此処で会うとはね」

「き……貴様はッッ⁉︎」

 

 そこに居たのは太縁の眼鏡を掛けた絶世の美女。美しくも何処となく儚さを感じさせる美貌を備えた女性はフン、と氷のように冷徹な眼差しをキャロルに向けていた。

 

「貴様…(あくた)ヒナ子!何故こんな所に…ッ!」

「私が居る場所は私自身が決める。あと、36点の雑魚は引っ込んでいなさい。此処はアンタみたいな敗北者が立っていい場所じゃないの」

 

 そう告げながらヒナ子がキャロルの手よりマイクを奪うと声高らかに叫ぶ。我が

 

「本当は気が乗らないけど無様な人間(アンタ)に見せてあげるわ。我が華麗なる輪舞曲(ロンド)をッ‼︎

 

 華やかに咲き誇る虞美人草(ひなげし)の花。一瞬の時が永遠なる悠久の刻と見間違う程の歌を今此処に……!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

採点結果【27点】

 

 

はあああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああッ⁉︎

 

雛芥子(ひなげし)のロンド此処に散る───。

 

「はい、美しい声でした。美しい舞いでした。でも歌は駄目でしたね」

「美声だったのですが、音程外しまくってまして………」

「ちゃんと趣旨を理解して参加したのか疑わしい限りですね」

 

ふざけるなあああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああッ‼︎

 

 それはもう見事なダメ押しにヒナ子は地団駄を踏んで踏んで踏みまくる。加えて、今大会の中で一番の低得点を叩き出した事態にヒナ子は更に荒れ狂う。

そんな人間台風に向かってハハハハ!と嘲笑う声が響いて来る。

 

「無様な格好だなぁ、ええ?見栄を張った割にはお粗末な結果が残ってしまったなァーーーッ!」

「黙れ‼︎ 歌を披露するだなんて稀に無い事なのよ!ちょっと喉の調子が狂っただけでアンタに負けて無いわ!」

「ハッ、未だ勝った気でいるのか27点の茶ヒナ子!」

「ぶっ殺すわよ‼︎あと、茶じゃなくて芥だってのッ!」

 

(あー、争いは同じレベルの者同士にしか起こらないって言いますけどこう言う……)

 

 しっちゃかめっちゃかにキャットファイトを繰り広げる2人を前にガリィは静かに見守る事を選ぶ。

 

「ハァ…ハァ…ねぇ、そこの人形だけ何もしてないの狡くない?」

「ハァ…ハァ…奇遇だな。俺もそう思っていた所だ」

「げ」

 

 そんな飛び火しないよう出来る限り影を薄くしていたガリィだったが、詰め寄られるた後に無理矢理マイクを押し付けられてしまう。

ガリィは「私達がやったんだからお前も歌って恥を掻け」と言う念が篭ったキャロルとヒナ子の眼差しに不服そうな表情を浮かべた。

 

「おーっと、どうやら次は青い服の似合う女の子の登場です!」

 

 加えて司会者の発言によって退路が絶たれてしまう。彼女に残された選択肢は既に一つしか残っていない…。

 

「さぁ、ガリィ。オートスコアラーであるお前の力を見せてやれ!」

「心配する事は無いわ、ちゃんと最期まで観てあげるから感謝しなさいよ」

 

「…えー、ガリィちゃん困っちゃう〜〜。でもぉ、そこまで言うなら歌っちゃおうかなぁ〜〜」

 

 不承不承心にも無い事を口にしながらガリィ・トゥーマーンは意を決して歌を披露する事にした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

採点結果【84点】

 

「ま、こんな所ですかね」

「「なんでだああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああッッ⁉︎」」

 

 意外にも高得点と言う展開に36点と27点はシャウトした。馬鹿な、そんな信じられない。何故あんな人形風情がと衝撃を受ける2人にガリィがニヤリと笑う。

 

「お二人と違って外界からしっかり情報を得ていますからねぇ、長生きの引き篭もりマスターとポンコツ属性とでは練度が違うと言いますかぁ?」

「誰が引き篭もりだッ!」

「誰がポンコツ属性よッ!」

 

 うがーっと納得できない様子を見せる女子2人。そんな最中、ヒナ子の背後より仮面を付けた男性が現れたと思うと羽交い締めを行う。

 

「失礼。こちらの方が迷惑を掻けました」

「あ!ちょっと、こら!いきなり何なのよ⁉︎」

 

「いえいえ、こちらこそ私のマスターがとんだ迷惑を…はいはいそれじゃ敗北者はステージから降りますよ〜」

「オイ、コラ!俺を脇で抱えるな物扱いかッ⁉︎」

 

「「それでは失礼します」」

「「放せぇぇぇええええええええええええええええええええええ‼︎」」

 

 そのまま保護者的立ち位置の人物にズルズルとステージから降ろされ退場して行く様を観客に見守られながらカラオケ大会は続く。

 

「…さ、さて!気を取り直して、続いてはリディアン音楽院の一年生のトリオの挑戦者達!」

 

 観客達による盛大な拍手によって迎えられる少女3人の姿。

しかし観客の期待を裏切るように予想していた姿とは異なる様装に身を包み板場達はステージ上より現れたのである。

 

「なんか前のでインパクトを持っていかれた感じがするけど気にしないで行くわよ2人共!」

「ね、ねぇ…本当にこの格好で歌うの?」

「もっちろん!アニソンを歌うのならば、最上最大のリスペクトを忘れちゃいけないッ!そうでなければ最優秀賞なんて夢のまた夢なのよッ!」

「ブレないですね板場さん」

 

「登場のご挨拶ありがとうございます。今回二校共同でのカラオケ大会ですが、優勝した暁には賞品と共に生徒会権限の範疇で一つだけ望みが叶えられますが果たして彼女達は何を望むのかッ!」

 

「無論、アニソン同好会の設立です!そこから私の野望も伝説も全てはそこから始まります!」

「部の成立とは大きく出ました!これは高得点に期待できそうです‼︎」

 

「ナイスですわ…これっぽっちもブレてませんもの」

「あぁもう…なんかもうどうにでもなれぇ……!」

 

 そんなアニソン同好会の設立を宣言する板場達が纏うそれは約40年程前に放送されたアニメ映像、電光刑事バンに登場する劇中再現コスチュームであった。即ち、これから歌う曲は知る人にとっては容易に予想可能だ。

 

「それでは熱唱してもらいましょう。テレビアニメ電光刑事バンの主題歌で『現着ッ!電光刑事バン!』」

 

「太陽輝くその下で涙を流す人々の…悲しみ背負って悪党退治!吼えろ現着、電光刑事‼︎」

※オープニングナレーション

 

 

 

 ▼ ▼ ▼

 

 

 

 

「来ましたね…出番が」

「来たな…出番が」

 

 ステージ上の3人を真剣な眼差しを向ける者、風魔小太郎と坂田金時は観客席の一角にて何故か重苦しい雰囲気を漂わせていた。

そんな彼等にその場の雰囲気に似合わない声色をした少女達が現れる。

 

「あ、風魔さんに坂田さん。こんな所に居たんですね!」

 

 声を掛けて来た者達はリディアン音楽院の生徒である立花響一行であった。そんな彼女達は空いてる席に座り両手一杯に抱えた出店の料理を頬張り始める。

 

「いやぁ、ここのホール飲食禁止じゃなくて良かったですよ。お陰で一休み出来そうです!」

「良かったと言いますか…」

「それ、大丈夫か?食い過ぎじゃねぇのか?」

 

 即座に「大丈夫です!」と口に食べ物を入れながら答えるエックスと同じようにフランクフルトの二刀流で「お腹空いてるんで!」と頬張りながら答える響。

そんな2人の後ろで申し訳無さそうにする未来が言葉を切り出した。

 

「そう言えば板場さん達の番は……」

「おう、今始まったばかりだ」

「ほら見てください。あそこでコスチュームを身に包んだ3人です」

 

 ステージに注目すると3人がそれぞれのパートを担当しながら歌っている光景が広がっていた。しかし疑問に思うのはあんな衣装いつの間に用意したのだろうか。自前にしてはやけに気合いが入っているなと言う未来が疑問に答えるように風魔は口を開く。

 

「あの衣装、実は僕等が作ったものなんですよ」

「へぇ………え!?そうなんですか‼︎」

「おうよ!これでも小さい頃から養親の人に裁縫を教わって来たからな。同じアニメ好きの仲として手伝ったと言う訳さ」

「ちなみに僕も手伝わせていただきました」

 

 故に緊張のひと時。自身等が見繕った衣装を纏う板場達は果たしてどこまで行けるのか?心の中でアニメ好き同盟としての板場らが上位に入ってくれる事を願うのであった。

 

「アリバイ崩す デカの直感 所轄は地球ゥーーーーーー‼︎」

 

カーン

 

「「えっ」」

「「「あ」」」

 

 そんな最中、突如として鳴り響いた甲高くも無慈悲な音。不合格を現す鐘の音がホール内に鳴り響いたのであった。

 

「えぇーーーっ⁉︎まだフルコーラス歌ってない…二番の歌詞が泣けるのにィーーーーーーッ‼︎」

 

 板場の慟哭がホール内に響き渡る。そして、それを見ている風魔と坂田も同様に悔しそうな表情を露わにする。

 

「うぐぐ、やはりマイナー作品(電光刑事バン)では駄目でしたか…」

「くそっ…せめて5人まで参加OKなら俺達が入って男性パートを歌えたんだがよ…ッ!」

「すみません、ちょっと何言ってるか分からないです」

 

 そんな男の2人に対し理解不能の意を示す響だったが、板場達が立つステージに新たな人達が来るのに気付いた。

 

「わはははは!残念だったのなんちゃってトリオッ!お前等の伝説が来る事は金輪際無いわ!」

「誰がなんちゃってトリオよ!姿を現しなさい!」

 

 高笑いと共にスポットライトの外より足を踏み入れて来たのは板場達と同じ3人の女子。なにやらギター的なサムシングを担ぎ、煌びやかな装飾が備えられた軍帽を被る少女が口を開く。

 

「アレは誰だ?鳥か?尾張か?もちろん儂じゃよ‼︎」

「だから誰よッ!」

「えー、巷で有名な渚の第六天魔王系シンガー(自称)のノッブこと儂を知らんとは遅れとるのぉ〜」

 

 渚の第六天魔王を自称するノッブ。無論、そんな事を知る由も無い板場達にノッブは言葉を続ける。

 

「まぁ前座としては中々面白いけどな?やっぱ色物枠はお呼びじゃないんだよねー」

「何ですってッ! 電光刑事バンは色物枠じゃないッ!熱いハードボイルドの燃焼系アニメなのよッ!」

「いやそっち(アニメ)の話はしておらんのじゃが」

 

 どこかズレている返答に「えぇ…」とノッブは呆れた様子を見せる。

 

「まぁ私達としては?どうしても出て欲しいと言われて来たのだけれど…ふーん?なによこの娘達、素材は中々優秀じゃない」

「お、マジ?つーか衣装もスゲーし中身までパネェとか最強ジャン。トンデモない逸材の爆誕ジャン!RINE交換しよ」

 

「まぁ随分と社交性な方々ですね。その姿勢、私的にはとてもナイスです!」

「まぁ確かにそうだけど…せめて此処じゃない所でやって欲しいなぁ…って。それにこの格好してるの恥ずかしいし…」

「そぉ? ウチ的にはヨシ!って感じだけどなー」

「そうそう。シャキッとしてればバカにされる事が無いんだから。自信持ちなさいって」

 

 そんな最中、他の4人は仲を深めていた。

ノッブと共にやって来た彼女等は意外にもパリピ系ギャル女子。安藤創世と寺島詩織と波長の合うタイプ…と言うよりは立花響並のコミュ力を持つ誰とでもすぐに絆レベル爆上げ系女子。

 

そんな彼女達に敵対している相手と仲良くなれないと言う道理は無いのである。

 

「うぉい!儂ら放って仲良くなっとんじゃねー!」

「そう言うアニメ的な和解シーンは後にしなさいよッ!」

 

「「えぇー…」」

「いやえぇー…じゃないからな。これでも歌いに来たんじゃから!とにかく、そこのズッコケ3人は儂らの特性敦盛でも見ているが良いわ!」

 

 ギターらしきサムシングを構えるノッブに渋々と従うパリピギャル2人。カラオケなのにギターを弾くのか?と言う疑問を他所に無理矢理始めようとする…が、しかし。このノッブただで歌う訳では無かったのかニヤリと不敵な笑みを浮かべた。

 

(ククク、残念だったなぁ。儂には秘策あり!この特製チューニング式謎ギター的なHESIKIRIには特殊電波を発して故意にカラオケ得点マッシィーンを操作する事が可能ッ!)

 

 何と言う事であろうか。まさかの不正行為をバリバリにやる気であった渚の第六天魔王。

汚い、流石ノッブ汚い。

 

(先のなんちゃってトリオには試運転で脱落させてもらったが…ま、儂ってばこう言う策を平然とやっちゃうタイプだから是非も無いよネ!え、金髪ロリとポンコツ眼鏡はどうしたかだって?知らん。ありゃノーコメントで)

 

 もはや止められるのは誰も居ない。そう確信した彼女はギターの弦的な部分をギャィーン(擬音)と響せて一気に高得点を狙う…が、しかし突如として頭の中に謎の声が聴こえ始めた。

 

『あら?そんな事を企んでいたなんて…関心しないわね』

(儂の脳内に呼び掛けて来るとは何奴!…つーか直接脳内に声を送るってどう言う事⁉︎ニュータイプかッ⁉︎)

『私は通りすがりのお姉ちゃんロボ。身体から放たれる超音波で貴女が持つそのギターだかなんだか分からない物体は機能しなくなるようにさせて貰ったわ!』

(お姉ちゃんロボってなんだ!機動戦士的なアレなのか⁉︎と言うかHESIKIRIのチューニングに違和感があったと思ったらそう言う事かッ!おのれ卑怯な!)

『卑怯なのはそっちでしょッ!』

 

「…どうしたのかしら、顔を顰めたまま微動だにしてないわよ?フレーメン反応?」

「んん、どっしたノッブ?また変なもんでも拾い食いして腹壊したか?」

 

 ノッブが脳内にて謎ランゲージによる対話を繰り広げるとは夢にも思っていないだろう。パリピ系筆頭のメイヴちゃんとなぎこさんが話しかけても尚、反応を示す事は無い。

 

『さぁ、これ以上私達の食い扶持を脅かす真似はしないで貰おうかしら』

「(おのれぇ…だが、こちらの知力を甘く見たな。策と言うのは何重にも練っておくのが基本じゃからな)作戦Bに変更!」

 

「きゃっ⁉︎ちょっと、急に大声出さないでよ!知ってるのかしら?人って驚愕するとビタミンCが損なわれるのよ!」

「へぇーマジか知らんかったわ、SNSで豆知識自慢出来るなこれ。んで作戦Bってなによ」

 

 突如として叫ぶノッブに驚愕するメイヴちゃん。果たして作戦Bとは何なのか?不適な笑みを浮かべるノッブは口を開いた。

 

「え?知らんぞ、んなもん。要はノリじゃよノリ。まぁここはアレじゃ出店で買ったアレを贈呈すりゃ何とかなるじゃろ」

 

 そう言いながら何処から出したのか手提げ袋より飲料らしきものを審査員であるカドックの前に差し出す。

 

「つまらないモノですが」

「……これは?」

「見りゃ分かるじゃろレモネードじゃ。これ美味いんだよねー」

 

 唐突にレモネードを差し出されたカドックが困惑に満ちた表情を浮かべる中、残りのギャル2人も後に続くように懐から何かを差し出して来た。

 

「これ少ない気持ちだけどタコ焼きね」

「これ少ないけど私のブロマイド。これを受け取ったからにはサービスをお願いね♪」

 

「おぉーーーっと、賄賂的です!これを審査員の方々はどう応えるのかッ!」

 

 司会進行役の女子生徒が叫ぶ。そんなノッブ達からそれを半ば押し付けられる形で受け取った審査員達はと言うと……。

 

「…いや反則だろ」

「そうですね」

「堂々と賄賂を贈って来た事についてはある意味で称賛します」

 

 その後ノッブ達は言うまでもなく賄賂による不正により退場となった。

退場される直前、彼女が残した言葉は「ま、是非も無いよネ!」と言う反省してるんだかしてないんだか反応に困るモノであった……。

 

「悪は去った…これでお米と商品券は頂きね……」

「先程からヴァネッサは何を呟いているのでありますか?」

「んー…分かんないゼ」

 

 現時点一位のノーブルレッド。悠々とした態度でポップコーン(Sサイズ)をシェアしながら優勝賞品を狙う。

最早彼女達の優勝は揺るがないもの…そう思われていたのだが、次に現れた挑戦者によってそれはアッサリと打ち砕かれる事となる。

 

「それでは続いての挑戦者の入場ですッ!」

 

 その一言と共に慌ただしい様子で姿を見せた人物。リディアン音楽院の指定制服を纏い銀髪を揺らす少女の姿に響達は驚愕の表情を露にした。

 

「響、アレって……!」

「クリスちゃん⁉︎なんで⁉︎」

「クラスメイト達に頼まれて仕方なく、だそうだ」

「隣邪魔するよ」

 

 そんな響達の疑問に答えるように現れたのは風鳴翼と天羽奏の2人だった。

 

「しかしアーチャーが参戦するとは驚きましたが、それ以上に高得点を狙えるのですか?見た感じかなりシビアな判定ですよ」

「大丈夫だよ、あいつならやれるさ。今、自分が居る場所を見つけた雪音クリスなら…な」

 

 天羽奏は雪音クリスをかつての自分と重ねていた。復讐に囚われていた己が感じていたのは虚しいまでの孤独。

自分は此処に居るべきではない。こんな輝かしい場所に居て良い筈がない。そんな事を長い間言い聞かせ、この先も自信は独りなのだと思っていた。

 

……けど違う。彼女には居場所がある。側に寄り添ってくれる人も居る。かつての自分()がそうであるように側には()が居てくれた。

 

「…なぁ、翼」

「どうしたの奏」

 

 かつて地に落ちた片翼。けど、今こうして両翼が共に揃っている事に奏は笑みを浮かべ告げる。

 

()()()()()()()()()()()()()

「……それはこっちの台詞よ奏」

 

 雪音クリスが奏でる歌で感謝の言葉が彩られて行く。彼女もまた同じように自分が居て良い場所を見つけたのだと奏は感じた。

 

(お前は此処に居て良いんだよ。誰もお前を否定しない…ありのままの自分を曝け出して良いんだよ)

 

 雪音クリスは歌が嫌いだった。壊すしかない自分の歌が大嫌いだった…それでも、自分の歌を好きになってくれる人が居るのだと気付いた。

そんな会場内の観客や友人、そして自分までも幸せな気持ちで一杯に溢れ返っていた。

 

 

 

 

 ▼ ▼ ▼

 

 

 

雪音クリスが歌い奏でた教室モノクローム。

 

採点結果は脅威の【94点】。

それはカラオケ大会での最高記録を叩き出す事となった。

 

「「「ああああああああああああああッ!(慟哭)」」」

 

 そして、それと同時にトップだったチームノーブルレッドをトップから蹴落とす結果にもなったのである。

 

「凄い!凄いよクリスちゃん!あんなに歌が上手だっただなんて!」

「無論 雪音だからな、加えて私が推薦したのだ。あれくらいは容易いだろう」

 

 興奮する響に対し冷静な翼。しかしそんな防人の口元がニヤけていた事を未来と奏は優しく見守る事にした。

 

「私達の食い扶持がぁ…」

「無念で…あります…」

「絶対に許さねぇゼ…風鳴翼ァ!」

 

「!?」

 

 何故か一方的な恨みを持たれた事に驚愕する翼。そんな事をお構い無しに司会進行の言葉が紡がれる。

 

「今此処に可愛らしい歌声で場を染め上げた新チャンピオンの雪音クリス選手が誕生しましたッ!」

「し、新チャンピオンって…!」

「さぁ!我こそはと言うチャレンジャーは出て来るのでしょうかッ!」

 

 ハッキリ言ってしまえばこれ以上の高得点を出すのは不可能に近いだろう。新チャンピオンである雪音クリスでさえあのレベルだったのだ。

そんな未来のアーティストとも言える逸材が此処に居るとは思えない。

 

……そう全観客が思った瞬間、挙手する者が"2人"現れた。

 

「……ッ⁉︎」

 

 その姿を見てステージのクリスはおろか、響やエックス達までもが驚愕に満ちた顔をする。

 

「チャンピオンに…」

「挑戦デース‼︎」

 

 何故なら其処に立っている2人の少女こそが自分達が敵対している武装組織フィーネの一員である装者の暁切歌と月読調だったのだから。

 

 

 

 

 

 

 

 

【おまけ】

『その頃きりしらは何を』

 

 秋桜祭の裏側にて、武装組織フィーネに所属する切歌と調は美人捜査官眼鏡を引っ提げて調査しに来ていた。

バイト君 VS Ms.フラメンコの激闘が繰り広げられている最中、彼女達はと言うと秋桜祭における魔の洗礼を受けていた。

 

「そこの少女達‼︎是非我が交流サークルにッ!」

「いいや、そんな所よりも直流サークルにッ!」

「ねぇ貴女達。マハトマに興味はあるかしら?こんな出会いもきっとマハトマのお陰に違いないわ!」

「「いやあああああああああああああああッ!!」」

 

 謎の科学者、ライオン頭に謎電波発言の信仰者(仮)から勧誘されたり。

 

「貴女方も是非ぐっ様を崇める会に‼︎」

「何を馬鹿な事をッ!こいつ等は姉上を讃える会に入るんだ!」

「「いやあああああああああああああああッ!!」」

 

 頭のネジが数本飛び抜けたファンクラブ会員に目をつけられたり。

 

「むぅんッ!一に筋肉ニに筋肉、三四を飛ばして五に筋肉!筋肉とは即ち計算力ッ!さぁ、貴女達も我等がスパルタ式筋肉強化トレーニング部に入会をッッ!」

「「いやあああああああああああああああッ!!」」

 

 人前で己が筋骨隆々の肉体を見せびらかす筋肉モリモリマッチョマンから逃げたり。

 

「ゴッホ開花!ゴッホ増殖!ゴッホ縦横無尽‼︎ゴッホ爆裂!!!ゴッホ超融合召喚ッ!」

「「いやあああああああああああああああッ!!」」

 

 謎の地球外生命体(フォーリナー)と遭遇したり。

 

「ドーモコンニチハ通リスガリノ宇宙刑事デス。スミマセンガ、"バイトクン"ガ今何処ニ居ルカ知リマセンカ?」

「「いやあああああああああああああああッ!!」」

「エ、アノ⁉︎ ナンデ逃ゲルンデスカ‼︎」

 

自称通りすがりのロボット刑事にも声を掛けられた。

 

 

「ひぃ…ひぃ……な、なんて所デスか此処はッ!」

 

 何と言う誤算だったのだろう。視察がてら美味いもんマップを埋めて行く筈が、ヤバいもんマップを埋めて行く羽目となった。

 

「二課はあんなヤバい輩がウヨウヨしてる所だとは思わなんだデス…途中から人間かどうかも怪しかったデスよぉ……」

 

 この学園は魔境なのか?と目元に涙を溜めながら呟いていると背後より何者かが声を掛けて来る。

 

「そこの君。見ない顔だが…一般の参加者かい?」

「へ?」

 

 そこに居たのは白いスーツで身を包んだ金に輝くロングヘアーの男性だった。その圧倒される程の覇気に切歌は思わず生唾を飲み込む。

 

(な、なんちゅー神々しいオ上流階級オーラ…!見たら分かる。住む世界が何段階も上と言う感じの人物に違い無いデスよッ!)

 

 加えて自称IQ53万の知的切歌指数から、この男は二課関係者に違いないと察した。

此処で尻尾を出す訳には行かないだろう…故に!彼女は二課関係者(推定)と接触する事で相手側の情報を引き抜こうとしているのだッ!

 

「(こんな事もあろうかと美人捜査官眼鏡を掛けて来たのデス。そこら辺は抜かりないデスよッ!)まぁ何と言いますか色々と疲れてしまったのデスよ…」

「成る程。あちら側の賑わいから察するにクラブ、サークルの勧誘を潜り抜けて来たと言う訳か…面構えが違う」

「はいです…けど、意外と楽しかったかもデスよ」

 

 暁切歌はレセプターチルドレンと言う名前の保険だった。己が生まれた日も、本当の家族の姿形名前すらも知らない。

白い孤児院にて適合者として選ばれた自分達には無縁の世界…それは怖く、騒がしく、そして楽しい所だった。

 

喧嘩して、笑っていて、怒鳴って、楽しそうで、頭がおかしくて…羨ましい景色だった。

 

「なんと言うか……とってもワクワクするデスよ」

「……ああ、そうだな。私もそう思う」

 

 男は一息置いた後、そう応える。

すると我に返った切歌はハッと感傷に浸っていた自分を鼓舞させる。

 

「(って、何してるデスか私はッ!相手は敵(推定)デスよ!長々と話をするのは野暮ってもんデス!)さぁて調、休憩も済んだ所で少し歩くデs……」

 

 振り返った先には何もなかった。

居る筈の親友がその場から居なくなっていた…と言うよりも最初から居なかったのである。

 

「し……調ェェ!?」

「おや、その様子から察するに…迷子かい?」

「ま、迷子だなんて…そ、そんな年齢じゃないデスよ私はッ!」

 

 フフフと笑う男に切歌は顔を赤く染めながら抗議する。そうだ、これは間違いだ。何か手違いで調は消えたのでは無くお花を摘みに行ったのだと思う。きっと、多分、メイビー。

 

「まぁ、落ち着いて欲しい。これでも私には知り合いが多くいてね。それならば君の探している友人も見つかる事だろう」

「むむむ、それはありがたいのデスが……」

「そう気に病む事じゃないさ。それじゃあカイニス、この娘の友人を見つけてあげようじゃないか………あれ、カイニス?……カイニス?どこへ消えたんだ?」

「………」

「………」

 

 しばしの沈黙、そして………。

 

「くっ、秋桜祭…中々に侮れないイベントじゃないかッ!」

「私達は知らずの内に恐ろしい所に足を踏み入れてたのデスか…ッ⁉︎」

 

 各々の相方が行方不明と言う事態に彼等は正常な判断が出来なくなっていた。ツッコミ不在の恐怖を感じる。

 

「まさかこうなってしまうとは…本当にすまない。君の友人を探してあげたい所だが…私自身はぐれてしまったカイニスを見つけ出さなければならない」

 

 探し人とは1人から2人へ増えるだけで捜索難易度はぐんと上がる。加えて今日は学園祭であるため人で賑わっている。正直言ってしまえば探し出すのは不可能に等しい事だろう。

 

「…いや、ある。あるデスよ。2人を簡単に見つけ出す方法が!」

「……なに?」

 

常人なら此処で諦める事だろう…しかしこの暁切歌は一味違ったッ!

 

「人とは古来より美味しいモノを求め集う習性があると言う…即ちッ!この『美味いもんマップ』を埋める事によって自ずと尋ね人が見つかると言う寸法デースッ!」

「なん…だと……ッ⁉︎」

 

 バァンと取り出すは秋桜祭の出店詳細が記された地図。そんなガバガバな妙案に男はワナワナと震え出す。

 

「そんな…そんな……天才じゃぁないかッ!その発想は無かったッ!」

「ふふーん! それ程じゃないデスよッ!」

 

 まさかの乗り気である。この男キリシュタリアは名門ヴォーダイム家の出身にして加流底亜高等学校の生徒会長。才色兼備、眉目秀麗、美女に劣らない花顔柳腰。立てば芍薬、座れば牡丹、歩く姿はイングリッシュ・ブルーベルの美男子。

 

しかしその実態はテンション爆上げでノリに乗る、大真面目に天然ボケをかますバイト君出身高校の中でトップレベルの問題児なのである。

 

「私の名前はキリシュタリア・ヴォータイム」

「暁切歌デース!」

「ほう、同じ"キリ"が付く者同士。友を探そうじゃないか」

「よし来たデス!それならばまず初めにイカ焼きにレッツトライと洒落込むデース!」

「待ってくれ。私としてはこのホッピングボバなる物も捨て難い!」

 

 こうして誕生した奇跡のタッグ、W(ダブル)キリちゃんズ同盟。

俺達のお楽しみはこれからだと言わんばかりに2人は出店が並ぶ方向へと全力疾走するのであった。

 

 

「…………」

「…………」

 

 

 尚、出店のヤキソバを食べている最中 保護者×2に発見と同時に説教を喰らった事は言うまでも無い。

 

 





何処かで見た事のある人達が出て来ましたね…読者の皆さんは全員分かったかな?
次回、流血沙汰描写注意。
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。