未知との遭遇〜アルトリウムを添えて〜   作:ゴランド

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カムラの里と競馬場を行ったり来たりしてたので投稿が遅れました。
※流血描写有り


27話 カーニバル☆リディアズム Q

「カラオケ大会とは万葉な事をしているデスねぇ…」

「面妖だよ切ちゃん。万葉は木葉(このは)の群集の事だから」

「にしてもカラオケ…デスか…」

「………」

「わ、分かってるデスよ調。私達はそんな事できる立場じゃないって事くらい」

 

 武装組織フィーネの一員である暁切歌と月読調は潜入目的で此処リディアン音楽院のホールに足を運んでいた。彼女達の目的は相手側の情報とギアのペンダントを入手する事だ。

決して美味いもんMAPを埋める為に来た訳ではない(戒め)

 

 最終目的である月の落下阻止の為に必要な完全聖遺物『ネフィリム』は聖遺物を喰らう事で成長する特殊な性質を持つ。その為に二課が保有管理しているシンフォギア、または他の聖遺物に関する情報を是非とも手に入れる必要があるのだ。

 

「ともかく!この大会が終わったらそのまま尾行調査デスよッ!そんでもってギアペンダントを奪う隙を伺うデs」

 

「さぁ、最優秀賞のお米3ヶ月分と商品券3万円は誰のものにッ‼︎」

 

「──お米…ッ⁉︎」

「──商品券…ッ⁉︎」

 

 武装組織フィーネは財政難である。F.I.S.より離脱した事によりスポンサーであるパヴァリア光明結社から提供された資金は専らドクターの研究や計画遂行の為の費用に回されれているので食糧的な意味で財政難なのである。

 

「さぁ!我こそはと言うチャレンジャーは出て来るのでしょうかッ!」

 

そんな彼女達の前に吊るされた豪華賞品。今、2人の頭の中に潜入調査と言う文字は消え失せた。

 

「チャンピオンに…」

「挑戦デース…!」

 

今まさに2人による世紀の挑戦が始まったのである。

 

 

 

 

「テメェら、どうして此処にッ!」

「それを聞くのは野暮と言うものデス!」

「此処に居る理由。そして貴女に挑戦する理由。言わなくても答えは分かる筈」

「面白ぇ、やり合おうって言うならトコトンやってやろうじゃねぇか!」

 

 不適な笑みを浮かべ首元のペンダントを取り出そうとした瞬間、猛スピードでステージへと駆け上がって来たエックスが制止した。

 

「やめなさいアーチャー! 今此処で変身するのは得策ではありません!」

「…ッ、クソ」

 

 此処には観客達も居る。もし仮に相手側がノイズを操る術であるソロモンの杖を所持していた場合を想定すると尋常ではない被害が出てしまうだろう。

頭を冷やしたクリスは「悪い」とエックスに告げる。

 

「落ち着きましたか?」

「まぁな。まさかお前にそんな事を言われる日が来るとは思ってもなかった」

「おっと私に対してどんなイメージを抱いてるのか気になる所ですがまぁ良いでしょう。此処でやり合うのは非効率的です。チャンスはあの者達が歌い終わった瞬間。背後から刃渡り20cm程の刃物で、こう…グサッと!」

「そう言うとこだぞお前ッ!」

 

 そんなクリスの声が荒ぶる一方、観客席の一角から響達が立ち上がる。

 

「調ちゃん…!」

「……立花響」

 

 響と調の視線が交錯する。

 

「所詮、私と貴方は分かり合う事の無い敵同士。話せる事は何も無い」

「そんな事無いよッ! 私達はこうして歌う事が出来る!」

「それが偽善だと言っているッ!歌う事が出来たとして分かり合う事が出来ないからこうして私達は対立しているんだッ!」

「だとしても…ッ!」

 

 己が心の奥底から放たれる叫びがホール内に木霊すふ。きっと相手には届かないだろうと言う悲痛な叫び。

二人は互いに距離を詰め、口論は熱烈なモノへ変貌を遂げて行く。

 

……その時だ。

 

「────仲良さそうだね」

「「えっ」」

 

 二人の間に割って入るかの如く小日向未来がエントリーして来た。そしてすかさず月読調の方へ向き直ると笑みを浮かべたまま自己紹介を始めた。

 

「どうも、こんにちは。調ちゃんだっけ?私、響の1番の親友の小日向未来って言うの」

「え、あ、はい。どうも」

「フフフ、私の響がお世話になってるみたいだね」

 

 月読調は一歩後退した。なんだこれは、なんなんだこれは?なんなのだこれは⁉︎

彼女が抱いたのは不気味さと恐怖。目に見えないが確かにそこにある違和感に調の中に臆する感情が芽生えかけていた。

 

「え、えっと未来…?」

「響、この子と随分仲良さげだったけど?」

「別にコイツと仲良くなんか……」

 

嘘だッ!

「「!?」」

 

 小日向未来のシャウトに響と調は驚愕する。

 

「そうやって最初は敵意向けて中盤以降から『あれ?もしかしてこの人そんなに悪い人じゃないのかも…?』って心が揺れ動くんでしょ!(あたしゃ)騙されないよ!」

「未来!」

「そうやって最初はツンケンしたムーブかまして後からクリスみたいなあざとい姿を見せつけるツンデレヒロイン属性を発揮するんでしょ‼︎ かーーっ、見んね響!卑しか女ばい‼︎

「未来!?」

 

 響に対するグラビティボルテージが次第に高まって行く未来。そんな相手を前に立ちすくむ調であったが、横から割り込む形で切歌が言葉を投げかけて来た。

 

「調を馬鹿にするなデス!そんなツンデレヒロイン属性無くとも調は充分あざといデス!」

「切ちゃん!」

「調の真骨頂は無表情から飛び出してくるギザギザした言葉の数々ッ!加えて無知から来るトキメキ属性がヤヴァイ魅力が調本来のムーブなのデスよッ!」

「切ちゃん!?」

 

 親友の口から謎の言葉の羅列が飛び出て来た事に驚愕する調。

 

「よく分からないですが盛り上がってまいりましたッ!お二人が優勝した暁に望む物は一体何なのでしょうかッ!」

「それは終わった後に直接頂く事にします」

 

「直接!(私達からペンダントを奪うつもりかッ⁉︎)」

「直接⁉︎(まさか響のハートをッ⁉︎)」

「……(なんかすれ違ってませんかこれ)」

 

 ヤキソバを頬張るエックスは密かにそう思ったそうな。

 

「それでは唄って頂きましょう!えーっと……」

「月読調と…」

「暁切歌デースッ!」

 

「OK‼︎ 2人が歌う『ORBITAL BEAT』ッ!もちろんツヴァイウィングのナンバーだッ!」

「この曲は翼さんと奏さんの…ッ⁉︎」

「何のつもりのあてすこり! 挑発のつもりか…ッ!」

 

 

 

 ▼ ▼ ▼

 

一方、その頃のバイト君。

 

「いらっしゃいプレさんにカリさん。何頼みます?」

「麻婆豆腐、無論激辛で」

「あのさぁ…プレさんさぁ…、散々それ食って医者からストップ掛かってますよね?カリさんもなんとかして下さいよ。相方でしょうに」

「何度言っても無意味なのよねぇ」

「フ、コイツは私に何度も屈辱を与えて来たワケだ……が、辛さへの耐性を付け始めた私に撤退の文字は無い。今回こそ食べ切ってみせるッ!」

「ウチ、お好み焼き屋なんだけどなぁ……」

 

 そう言いながらも豆腐の下茹準備に入り材料を中華鍋に投下。作業の手を進めて行く。そんな彼に露出の多い格好をしたカリさん(仮)が口を開く。

 

「と言うかカラオケ観に行かないの?学祭の目玉イベントなんでしょ?」

「人生は100年と短いからな。ここで出店しているよりは少し覗いた方が良いと思うワケたが」

 

「そう言われても、マリアさんの曲が流れてないカラオケ大会なんて行く意味ありますか」

「「えぇ……」」

 

 

 

 ▼ ▼ ▼

 

 

 

 採点結果【96点】

 

「ば…馬鹿なッ!」

「クリスちゃんの点数を…」

「上回った……ッ⁉︎」

 

 94点であった雪音クリスの得点を上回った切歌と調のデュエット曲。2人は誇らしげな表情を浮かべながら口を開く。

 

「これで私達がチャンピオン」

「その通り!1+1は2では無いのデェス!私達は1+1で200!10倍デスよ10倍!」

「切ちゃん⁉︎」

 

「し、知らなかった…ッ!」

「まさか1+1の心理は200だったとは…ッ!」

「うちの馬鹿共に変な事吹き込んでんじゃねぇぞこの馬鹿ッ!」

 

 クリスが負けてしまった事の驚愕で起きた弊害か、それとも元々頭がゆるゆるだったのか、変な事を口走る響とエックス。

 

「さぁて貰う物を貰うとするデスよ」

「くっ…!」

 

 このままではギアペンダントを奪われてしまう(思い込み)。万事休すか…と思った次の瞬間、その場を制する声が高らかに上がった。

 

「いいや、まだ終わっていない!」

「まだ此処に私等が居るぞッ!」

「せ、先輩達ッ‼︎」

 

 そこに立っていたのは風鳴翼と天羽奏の2人。彼女達の登場によって場の盛り上がりは最高潮に達する。

 

「で、出たーーーッ!ツヴァイウィングの2人だーーーーッ!」

「何か知らない内に話が進んでますがコレはナイスな展開です!」

「もう色々と凄い展開だけど取り敢えず行けーーーーッ!」

 

「…あの、板場殿達は着替えないのですか?」

「歌った衣装そのままで観るのはちょいと周りの視線が痛いんだが……」

 

 尚、一部についてはノーコメント。

 

「こ、これはーーーーッ‼︎まさかまさかのサプライズな飛び入り参加ッ!なんと次なる挑戦者として立ち上がったのはあのアーティスト『風鳴翼』と『天羽奏』のタッグだーーーーーッ!!」

 

 ステージへと上がるツヴァイウィングの2人。そんな彼女達へ向けられる視線は期待、羨望、そして少々の不安が入り混じったモノであった。

 

「両翼を取り戻し不死鳥の如く復活を果たしたツヴァイウィング。過去のノイズ襲来事件による長期間の休養明けにより、コレはある意味での復活コンサートになるだろう」

「どうした急に」

「天羽奏の約二年(730日以上)によるブランクはかなりの影響が及ぼされると考えられる。加えてカラオケによるデュエットはお互いの声調、タイミング等のコンビネーションが重要だと言って良い。久々のユニット曲でツヴァイウィングがあの2人に勝るのだろうか」

「確かに。あの娘達のコンビネーション息ぴったりだったもんな」

 

「だからと言って翼さん達が負ける道理はありません!」

「その通り、奏ならばその程度の支障どうと言う事は無いッ!」

「「ご、ごめん!」」

 

 そんな観客席から響く声を背に切歌達は不満の声を漏らす。

 

「むむむむ…なんと大人気ない奴等デスかッ!」

「汚い。これだから大人は汚い」

 

「所詮この世は弱肉強食。負けた方が悪ッ!貴様等は敗北しその汚名を後世まで語り継がれる運命なのですよフハハハ!」

「いや偉そうな事言ってるけど歌ってない貴女が言える台詞じゃないよねエックス?」

 

「そこまで言うならそっちが負けた暁にはキリさんから貰ったこのダサTを着て貰うデスッ!」

「何ィィーーーーーっ⁉︎」

 

 奏は驚愕する。アレはバイトが持っていた人前では絶対に着たく無いデザインのTシャツ。

何故、武装組織フィーネの一員である彼女がそれ持っているのか定かでは無いが奏の脳内にもし負けてしまったら?と言う最悪のビジョンが浮かび上がってしまう。

 

「……ちょっとそれは勘弁s「良いだろう受けて立つッ!」翼⁉︎」

 

「まさかの強く出て来た」

「そこまでの自信があると言う事デスか…ッ!」

 

 何処からそんな意欲が湧いてくるのか。

ふんす、と意気込みを入れながら翼は更に言葉を続ける。

 

「無論ッ!なんならこちらが負けたら立花や雪音達全員がそのシャツを着ても良いッ!」

!?

 

 瞬間、響達の顔が絶望色に染まった。

 

「何とまさかの連帯責任で罰ゲームを受ける事になってしまいましたッ!コレはより一層の期待が出来そうです‼︎」

「おまっ、先輩おま…ふざけんなよ先輩お前ェェッ!」

「翼さん!私達を巻き込まないでくれませんか翼さん!!」

「案ずるな立花。世界に羽撃く(予定)トップアーティストである私達があのような者達に遅れを取ると思っているのか?」

 

 その言葉に響はハッとなる。そうだ。曲がりなりにもこの人は世界に注目を集めるトップアーティストの風鳴翼本人。加えてその相棒である

 

「見せてあげましょう奏!私達の唄をッ!」

「よっしゃ、やってやろうじゃんか!」

 

「では風鳴翼、天羽奏(ツヴァイウィング)の2人で歌って頂きましょう!織田光子さんの『恋の桶狭間』ッ‼︎」

 

「おう!恋の桶狭間……えっ」

「「「「「えっ」」」」」

 

 奏に続く形で観客席より腑抜けた声が響き渡る。

何故そうなったのかは理由は明白。普通、ツヴァイウィング両名が揃ったのならば逆光のフリューゲル辺りを選ぶだろう。

 

だが翼は違ったッ!本気を出すあまり己が十八番を選んでしまうと言う暴挙に出たであったッッ!

 

「えっと…翼?」

「初手より本気(おはこ)で行かせて貰うッ!」

「翼!?」

 

 奏を含めた奏者達は謎の不安に駆られた。

 

 

 

▼▼▼

 

 

一方、その頃。

 

「あははははははははははははははッ!食べ切ったッッ!遂に食べ切ってやったぞぉぉぉぉぉぉぉぉおおおおおおおッ!」

「あらぁ、良かったじゃない…まぁ、この後にお医者様にどやされるんでしょうけども」

 

 空になった麻婆の器を手に彼女は勝利の雄叫びを上げる。麻婆豆腐を口に酷い目に遭いかれこれ数ヶ月。

幾多もの戦闘を繰り広げ、彼女は遂に麻婆豆腐を食べ切ったのである。

 

「お、食べ切ったんですねプレさん」

「フン、当然なワケだ。この程度で辛さで一々肛門爆発してたまるか。まぁ所詮極限の辛さと言うのはこの程度。三大欲求を極めたこの私が激辛に負ける筈は────」

「えっ」

「えっ」

「ん?」

 

「…あー、プレさん。実はウチの麻婆って激辛の上に超辛、極辛、獄辛があって別に極限って訳じゃないんですよ」

 

 何という事であろうか、ここで新たに判明した事実にプレラーティは硬直した……そして。

 

「………ふ、ふふふ良いだろう!そこまで言うのならばッ!この私に逃走と言う選択肢は無いッ!さぁ今此処で両方とも食べ切って────」

 

この後、無茶苦茶辛さで悶絶した。

 

 

 

 ▼ ▼ ▼

 

 

 

『………』

 

 結果として翼達は切歌達の点数を越える事は出来なかった。

せめて逆光のフリューゲル辺りを歌えば勝てたかもしれないが、そこを外して行くのが風鳴クオリティと言うヤツなのだろう。

そんなこんなで現在響達は連帯責任として死んだ目をしながらダサいTシャツを身に付ける事となったのである。

 

「そう落ち込むな皆。このシャツの着心地は意外と悪くないぞ、いや寧ろ良いまでにあるな!」

「何で気に入ってるんですか翼さん」

 

 Artsとデカデカ書かれた青いシャツを纏い不思議とキラキラした面向きを見せる翼。どうやら気に入ったらしい。

 

「勝敗は決した」

「優勝は頂いたデス!」

 

「……仕方ありません。プランBで行きます」

「オイやめろ。その剣をしまって座ってろ」

 

 聖剣片手に暗殺しに行こうとするXを宥めるクリス。

しかし、この後どうしたものかと彼女は考える。

もし自分かもう一度歌えば勝つ可能性は無くはない。だがカラオケ大会のルール上、同じ人物が2回もステージ場に立つ事はできない。

 

一体どうすれば……そう考えるクリスだったが突如としてステージ近くの観客席から声が上がった。

 

「待ちなさい!己が優勝を豪語するのならばッ!」

「俺達を負かしてから言うんだなッッ‼︎」

 

「な、何奴デスか!その姿を見せるデスよ‼︎」

 

 切歌の呼び声に応えるようにステージ上に"謎の仮面"を付けた人物がその姿を現した。

 

「だ、誰デスかッ⁉︎」

 

マスク・ド・虞ッチャンよ

「え?」

マスク・ド・虞ッチャンよ(2回目)」

「そして俺は謎の奇跡スレイヤー・アイランド仮面

「謎の奇跡スレイヤー・アイランド仮面!?」

 

 突如として現れた不審人物2人の登場に困惑を隠せない調達。マスク・ド・虞ッチャンに謎の奇跡スレイヤー アイランド仮面、一体何者なのだろうか……?

 

「……どう考えても前の2人ですよね」

「ああ、そう…だよな」

 

 どうやら謎の仮面を被る二人組に心当たりがあるらしい風魔と坂田。しかしこれ以上の追及は確実に面倒臭い事になる事確定。触らぬ祟りに何とやらで男2人は静観を決め込む事にした。

 

「…何やってるんだヒナ子」

「マスク・ド・虞ッチャンよ」

「いやどう見てもヒナ子だろお前」

「違うから!どう見ても赤の他人に決まってるでしょッ!だからさっさと私達に歌わせなさいッ!」

「クソ!こいつ恥を掻いてでも無理矢理でもリベンジするつもりかッ‼︎」

 

 良い歳して惜しげもなくハッチャける2名にカドックは頭を抱える。どうしてうちの高校の奴等はこうも頭のおかしい奴等ばかりなのだ!そんな慟哭が聞こえて来そうな表情を浮かべる彼だったが、災難はまだ終わらない。

 

「ハイハイ、部外者は引っ込んでいましょうね」

「ええい放しなさいこの馬だかなんだか分からない生き物!」

「そうだ!俺を誰だと思ってい……いや何だこの生き物⁉︎(驚愕)」

「呂布ですが……む?」

 

 警備員の赤兎馬が不審者2名を摘み出そうとしていると突如としてホール内の電源が落ち、暗闇に包まれる。

 

「な、なにこれ⁉︎」

「まさかアイツ等が何かやりやがったのかッ!」

「私達は何もしてないデスよ!し、調!はぐれないように手をしっかり繋いでおくデス!」

「切ちゃん違う。それ手じゃない、ツインテールだから」

 

 黒き帳の中で暗中模索をする彼女達だったが、ステージ上方に設置されているスポットライトが点灯。一条の光が舞台上に差し込み、また新たな人物の姿を照らした。

 

「この花舞台、正しく我等にとって相応しい場所と言えるであろう!」

「この会場に集まってくれた子豚達〜〜、遂に私達の出番が来たわよ!」

「次から次へと!今度は誰デスかッ!」

 

 切歌の声を待ってましたと言わんばかりに赤い衣を纏った2人の姿が露わとなる。

 

「世界が、時代が、この瞬間を待っていたァ!」

「キュートでクールに尚且つパッションに!ファンが其処に居るのなら、私達がベリー・ウェルダンのように熱く盛り上げなくちゃ行けないわッ!」

「そう、余達こそ…ッ!」

 

 

「「輝ける赤き偶像(アイドル) その1番と2番よ‼︎/である‼︎」」

 

 

 この2人の登場に場は騒然。そして後にリディアン血の雨事件に繋がるとはまだ誰も知る由も無かった。

 

 

 

 

 ▼ ▼ ▼

 

 

 

一方、その頃。

 

「プレさん、フローレンス先生に連れ去られちゃいましたね…」

「えぇ、電光石火の勢いで連れ去られたわね…」

 

 一方、媒人達はプレさんが保健医に拉致されて行く場面を目撃し唖然としていた。あまりの手際に一瞬の感動を覚える程だ。

 

「と言うか良いんですか放っておいて?、」

「あれくらいが丁度良いお薬よ……と、こ、ろ、で」

 

 

 

「バイトクンダァ……ぐすっ、まだ堕ちてない頃の純粋なバイト君が今目の前にぃぃぃ……」ズビビ

 

 彼等の視線の先には変なゴツゴツしたパワードスーツを纏った不審者が咽び泣いていた。

 

「あの茂みで隠れてるようで隠れ切れてないロボット的なの、アレってあなたの知り合いかしら?」

「(知ら)ないです」

「でもあなたの名前を呟いてるけど」

「(本当に知ら)ないです」

 

 

 

 ▼ ▼ ▼

 

 

「……嫌な予感がする」

 

 ふと調はそう呟いた。何故嫌な予感がしたのか、何故そう呟いたのかは自分でも分からない。しかし、自分の中にある何かがそう告げている。

具体的に『悪い事は言わないから早くその場から逃げなさい』と金髪金瞳の女性が必死な様子で訴えている感じだ。

 

「……(まぁでもわざわざ言う事でもないか)」

 

 親友の切歌に迷惑になるかもしれない。そう考えた彼女は己が口を慎む事を選んだ。そして隣で『お前ーーーーッ⁉︎』と驚愕している女性の霊的な何かが見えた気がした。

 

そんな最中、突如として現れた2名に仮面を付けた不審者達が絡み始めた。

 

「ちょっと、これから私達が歌う予定なのよ。アンタ達は出しゃばらないで貰えるかしら」

「どうせお前達程度では100点中半分行かないに決まっている。帰ってタピオカでも啜っているんだな!」

 

「やーん、マスターってば辛辣〜 (人の事言えねーだろ)」

 

 仮面を付けた2人の言葉に心にも無い事を呟くガリィ。その内心ではツッコミたい気持ちで一杯だったのは言うまでも無い。

 

「ふっふっふ、そう妬むな。我等に万雷の拍手と喝采が送られて来ると言う摂理に目を背けたくなる気持ちは理解出来る」

「いや何の話よ」

(みな)まで言うな。即ちローマは全てに通じる。古今東西の芸術に秀でた余の歌声は全てを魅了する事であろう」

「そう、これは私がトップへのし上がる為の第一歩!私が唯一無二のシンデレラアイドルになるレッドカーペットって訳ね!今の時代はユニット!そんでもって血のように滴る新鮮な赤が求められているの‼︎」

 

 自称ローマの赤い子と隣にいるアイドル志望の赤い子の言葉に奏は感心したような表情を浮かべる。

 

「ユニットねぇ…確かに一理あるかもしれないな。翼とマリアが組んだ途端に世界中大騒ぎだったし」

「はははそうね奏ははは。あのマリなんとかさんが私と組んだのは確かに良い宣伝効果だったわ。その代償にファンが1人寝取られたけど(殺意)」

「ヒェ、猛烈な殺意」

 

「私と同じ金髪、顔…さてはセイバー(殺戮対象)だなオメー」

「ステイ、ステイ、エックスちゃんステイ」

 

 主に青い人達方面に喧嘩を無自覚で売っているローマの赤い人。加えてセイバー抹殺プログラム()がインストールされてるエックスは理性で抑えるのも限界到達まで秒読みまっしぐら。即ちYOU本能のままに殺っちゃいなYO!ってヤツだ。

 

「はい待ちましたー!と言う訳でいつもの奴(死ねセイバー)‼︎」

「「「エックスゥゥゥウウウ!」」」

 

 このヒロインXには我慢と言う言葉が無いのであろう。刃物を引っ提げ武装組織フィーネの事は忘れて狙うは自分と良く似た顔立ちをした自称ローマの赤い子のみ。

 

「うむ!場も温まって来た所だな!それでは余の歌声を披露するとしよう!……ついて来れるか?」

「ついて来れるかじゃないわ…そっちがついて来なさいッ!」

 

「ちょっと!勝手に始めてるんじゃな────

「俺達がまだ歌ってな────

 

 

 

 204X年。

その日 リディアン音楽院は音響破壊兵器の炎に包まれた。歌を歌で冒涜するような行為に大半の観客達の記憶がキングクリムゾンされたような錯覚に陥った。ユニヴァース世界からのストレンジャーは音波の嵐をまともに喰らい、奇跡の殺戮者と芥ヒナ子は至近距離でモロに受け、奏はショックで死に、プレラーティの痔が爆発した。

 

う ぼ あ

「「「エックスゥゥゥウウウッ⁉︎」」」

 

 その歌声(?)は凄まじかった。音痴やテンポを外してるとか歌詞が致命的と言うレベルを超え、神羅天征並の破壊力を持つ斥力によりエックスはホールの壁に叩きつけられ減り込む羽目になった。

 

「エックスちゃんが死んだッ!」

「この人で無し!」

「生きて…ますよ…ぐふっ」

『ま、私は死んでるんだけどな』

 

 そんなエックスの側には奏の死体が転がっていた。そんな凄まじい歌声によるショックでやられた奏を見た小日向未来は口を開く。

 

「奏さんは……うん。まぁいつものですね」

『あれ、オイ未来?私に対してドライじゃね?私死んだんだぞ?私アーティストぞ?日本での最高知名度と言っても過言じゃないぞ?』

 

 小日向未来は半ば考えるのをやめていた。自分にはバイトさんのような適応力とクリスのようにツッコミし切れる程のスタミナは持っていない。なのでなるべくスルーに徹する事にしたのだ。

 

「………」

「ちょっとマスター、大丈夫ですか!何故か記憶(思い出)が一瞬飛び掛ける程の衝撃波が襲って来たんですけど!」

「……く」

「…? どうしたんですかマスt」

 

「………糞味噌煮込み」

「は?」

 

ブシャッ‼︎

 

 直後、キャロルの全身の穴という穴から血が噴出した。

 

「マスタァァァァァァァァァァァァッ!!?」

 

うわあああああああああああああああああああああああああああああああッ!?

 

「ふむ、何という事だ。まさか我々の歌に聴き惚れ、嬉しさのあまり大量出血してしまうとは」

「どんなポジティブ思考ならそんな結果に行き着くんだよ!?マスター!しっかりしてくださいマスタァァッ!」

「……あ、ガリィの顔がパパに見えて来た」

「それは幻覚って奴ですよマスターッ!」

 

 騒然となる観客席に血溜まりを作る小さな錬金術師。そんな彼女の従者が呼びかけても「パパァ…オギャァ…」と半ば幼児退行した台詞しか返って来ない。

 

「……た、助かったデス」

「あって良かったドクター印の耳栓」

「と言うか地獄デスか此処は…学園祭と言うのはこんなにも恐ろしい所だったのデスか……⁉︎(畏怖)」

 

 そんな地獄が広がる最中、切歌と調はいつの間にか装着していた防音性MAXの耳栓で事なきを得ていた。調の中で響く声、具体的に『逃げろ。もしくは耳塞げ』と言う謎の天啓に救われた彼女達は危険を感じ取りそそくさと逃げ出そうとする……が、その場で佇んでいた芥ヒナ子にぶつかってしまう。

 

「うわっ…と⁉︎ ご、ごめんなさいデス!ワザとじゃないんデスよ!いやホントデス!」

「その、午後ティー出すので勘弁してください……あれ?」

 

 謝罪する調達に全くの反応を見せない仮面を付けたヒナ子。疑問に思った切歌達が「おーい」と声を掛け、揺さぶった数秒後。

 

「───ミ゜ッ゛

「「え?」」

 

パァンッ!!

 

 

 マスク・ド・虞ッチャンは爆発四散。おお、なんと言う事だろうか。ステージには臓物が飛び散り血の雨によって包まれる。哀れ、ナムサン。

 

『………………………』

 

 そんな惨状に観客席にいる客達は無言。あまりのショックにより言葉を失っている状態に陥っていたが、ステージ上にいる赤い2人の言葉により現実に引き戻される事となる。

 

「むぅ、なんと驚いた!これは我々を祝福する雨か⁉︎」

「気が利いてるじゃない!ライスシャワーならぬブラッドシャワーなんて私好みよッ!それじゃ続けて第二曲行くわよ〜〜〜〜ッ!」

 

 

う、うわああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああッ!?

 

 

 直後ホール内に居た観客全員はその場から逃げ出した。

 

 

 

 ▼ ▼ ▼

 

 

 一方、その頃。

 

「……なんかアッチの方が騒がしいなぁ」

「そうねぇ、何か事件でもあったのかしら?」

「まっさかぁ。こんな人の多い場所で事件起こすような馬鹿は……あー、まぁ…はい。うん。すみませんなんでもありません」

「心当たりあるのね…」

 

 

 

「グズッ、久しぶりのバイト君のごばん゛ん゛ん゛ん゛ん゛ん゛……美味しい…お゛い゛し゛い゛よ゛お゛ぉ゛ぉ゛ぉ゛ぉ゛…」

 

「…ねぇ、やっぱり貴方の知り合いじゃないの?」

「(ホントに知ら)ないです」

 

 バイト君等は謎のアーマードスーツを纏ったロボ的なサムシングに餌付けをしていた。

 




流血描写(爆発四散)
ぐっちゃん()が出て来た時点で何人かの読者はこのオチを予想してたかも知れません。

次回『装者VSバイト君VSダークライ』
ぜってぇ見てくれよな(悟空)




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