未知との遭遇〜アルトリウムを添えて〜   作:ゴランド

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※ダークライは出てきません。




28話 装者VSバイト君VSダークライ

「はぁ…はぁ…、やっぱり魔境だったデスよ此処は。変態先進国と言われし日本。恐るべし所デス…!」

「うん確かに恐ろしいけど、此処は異様過ぎる気がする」

 

 そう呟きながら月読調と暁切歌は血塗れと服を脱ぎ捨て新しい服(ダサT)に着替えていた。そりゃ(目の前で人が爆散したら)そうするだろう。

とにかく2人は混乱に乗じて賞品である米俵と商品券数万円分を持ち出し学園の裏側にある森へと逃げ込み、このままマリア達の居るエアキャリアへ向かおうとしたその時だ。

 

「ドーモ!謎の=ヒロインXデス!」

「「うわあああああああああああッ!」」

 

 青いジャージのならず者のエントリーだ!地面からズボォ!と出現した事によるショックで思わず腰を抜かす2人。更に装者である響達一向もそこへ駆け付ける。

 

「見つけた!」

「ぐ、もうこんな所まで!」

「一体どうやって私達の場所を…!」

 

「多分、そんな米俵を堂々と持っているからだと思うよ?」

 

 未来の呟きの通り、森の中で異様に目立つ米俵。そんなものを持って居場所がバレる筈も無いだろう。

 

「数の利ではこちらが有利。観念するんだな」

「……それはまだ分からない」

「っ⁉︎」

 

 翼の言葉に対し調は服の下からソレを取り出す。翼には馴染み深いモノ。シンフォギアとの適合率を高める薬品であるLinkerを2つ、彼女は手に取ったのだ。

 

「もし此処で争えばそちらの失う者が大きい」

「ぐ……」

 

 クリスは悔やみの声を上げる。近くには秋桜祭によって人だかりが多いに加えて、何故かついて来た未来達も此処に居る。此処でシンフォギア装者との戦いに巻き込んでしまえば彼女等に危険を及ぼしてしまう。

 

「そうデス!決闘デス!然るべき決闘を申し込むのデス‼︎」

「決闘の日時はこちらが決める。だから───「知るか!とりあえず死ねェッ!」人の話聞いてた!?」

 

 見逃せと言おうとした瞬間、後方よりXによって振り払われる聖剣。コイツいっつもそう言ってんな。

 

「ま、待つデス!然るべき決闘を…」

「じゃかぁしいッ!勝手に敵地に乗り込んで来た挙句に米俵と商品券を強奪した阿呆共にそんな事言われる筋合いは無い!」

「そんな‼︎エックスがマトモで正論な事を言ってる⁉︎」

「おっとミク。まるで私が常日頃からおかしな言動をしている人物に勘違いされるような発言は謹んでもらいましょうか…まぁ、良いです。とにかく!覚悟して貰いましょう。あと、そのお米は私がいただきましょう!」

 

 そう言いながら聖剣の切先を敵2人に向けるエックス。敵地にて最大のピンチに陥ってしまう2人。そんな彼女達とエックスの間に割って入る者が居た。

 

「待ってエックスちゃん!」

「響⁉︎」

「ヒビキ⁉︎一体何を!」

「私もお米欲しい!」

「響⁉︎」

 

 どうやら今回は助ける気よりも食べる気の方が勝ったらしい。そんな響の言葉に笑みを浮かべながらエックスは高らかに叫ぶ。

 

「流石はヒビキですね!今回ばかりは褒めてあげましょう。お米は8:2と言う事で良いですねッ!」

「万事休す……」

「遂にここまでと言う事デスか……」

 

 そうしてエックスが2人を拘束しようと近づいた…その時。

 

「待ってエックスちゃん。その8:2っていうけどどっちが8なの?」

「む?それは私の方ですが」

「うん、それじゃ納得できないかな。せめて7:3にしようよ」

「ふむ…まぁいいでしょう。それで手を打って───」

「うん!それじゃ私が7って事で良いよね!」

「おう、ちょっと待って貰おうか」

 

「……ありゃ?」

「何だか様子が……」

 

 米の分け前について互いに一歩も引かない2人の口論は更に白熱して行く。

 

「いいですか?この者達を発見したのは私の功績。つまり強奪された物は私の物。OK?」

「つまり…私が捕まえればお米は全部私のもの…⁉︎」

「ハハハ、何を馬鹿なハハハ。結局私が捕まえるのでお米は全部私の物ですよハハハ」

「そっかー、ハハハ」

 

 そんな和気藹々な雰囲気を出しながらも双方とも構え始めた。そんな一触即発の状況に翼が叫ぶ。

 

「やめろ2人共ッ!そんなに左右を決したいのならば…ッ!"じゃんけん"で決着を付けて貰うぞ‼︎」

「…まぁ、それが妥当ですね」

「うん。それじゃ翼さんの案で決めようか!」

 

「…ふぅ、流石は先輩だ。馬鹿2人を落ち着かせやがった」

「この程度は造作もない事だ。立花並びにエックスはどちらも単純な面があるからな。平和的な方法で最後までやらせる事が重要だ」

 

 何故このタイミングでじゃんけん?とツッコむのは野暮と言うもの。せめて早く終わって欲しいとクリスが翼に羨望の視線を向けている中、響とエックスは互いに握り拳を前に出す。

 

「それでは一回勝負という事でいいよね?」

「ええ問題ありません、それでは行きましょう」

「「最初はグー、じゃーんけーん……」」

 

 その瞬間、エックスの袖口より聖剣が飛び出ると同時に黒い光の刃がバシュゥゥゥ!と伸びた。

 

チョォキィィィイイイ(カリバァァァアアア)ッ‼︎」

「「「やりおった!?」」」

 

 まさか米の為にそこまでの事をすると思わなかったクリス達。エックスに取って勝利こそが全て。過程や方法などどうでも良いのだァーーーーッ!と言わんばかりに彼女は叫ぶ。

 

「フゥーハハハッ!私のチョキは全てを切り裂くぅーーーーッ!」

 

 聖剣を振り下ろすエックス。それに対して立花響は両手を広げ、真っ向から立ち向かった。

 

「師匠直伝ッ!白羽取りィーーーーーーッ!」

「何とォーーーーーッ⁉︎」

 

 風鳴弦十郎との特訓により習得した真剣白羽取り。ビームが伸びる剣を響は迷う事無く受け止める事に成功したのだった。

 

「私の…パーは……ッ!全てを受け止めるッ!せいやァ゛ーーーーッ!!」

 

 瞬間、立花響が側面より力を加える事によってベギン!と音を立てながらエックスの持つ黒剣は根本からポッキリと折られてしまった。

 

「ああーーッ!私の聖剣(黒いヤツ)がああああああ‼︎」

「コイツへし折りやがった…って、コイツ素手でへし折りやがったぞッ!!?」

 

 前に見た事のある光景にクリスは声を上げる。そんな彼女のリアクションを他所に響は勝利の雄叫びと共に拳を天高く突き上げる。

 

「私の……勝ちだぁぁぁぁッッ!!」

「いや、ルール上立花の負けだぞ」

「え゛ーーーーーーーーーーーーーッ!?」

「私のけんんんんんんんんんんんんん゛ッ゛ッ゛!」

 

 チョキはパーに勝つ。勝負に勝ちジャンケンに負けた響は驚愕の声を上げ、エックスは慟哭が響き渡る。

そんな壮大に何も始まらない雰囲気の中、冷えた視線を向けていた小日向未来は気付く。

 

「…あっ、2人が居ない⁉︎」

 

 

 

 

 ▼ ▼ ▼

 

 

 

 

「…ふぅ、助かったデスよ」

「うん。こんな所に良い隠れ蓑があって良かった」

 

 一方、切歌と調は屋台の裏に身を潜めていた。二課の装者達より逃れる為に己の小さな体格を生かし隠れたのである。

人を隠すなら人の中、人混みの多い秋桜祭の屋台ならば見つから無いだろうと言う作戦は見事に成功した。

 

「さてと、しばらくここで休んだら此処を離れるデスよ調」

「そうだね、いつ奴等の仲間が此処に来るか分からない。なるべく早く此処から立ち去って───」

 

「いや、人の屋台で何してるの君達?」

「「うわあああああああああああ‼︎出たァァァァァァッ!」」

「え、そこまで怯える?酷くない?」

 

 土の中から飛び出て来た青ジャージが余程、記憶に定着したのか背後からの声に大きなリアクションをする切歌と調。

そんな彼女達だったが、声を掛けてきた者の顔を見て「あ!」と反応を示した。

 

「よく良く見ればお好み焼き屋のバイトさんじゃないデスか!」

「こんな所に出張開店してたなんて…」

「君達は確か……思い出した!あの時、マリアさんの歌を紹介してくれた少女二人組じゃないか。2人も此処に来てたんだ」

 

 そんな再会を祝してかバイトは手に持ったソレを2人に渡す。

 

「ほら、良ければ試作のクレープどうぞ。こんな所に隠れてどうしたんだい2人とも」

「クレープどうもデス。いやぁ語ると長くなるのデスが──「切ちゃん」っと、あはは…やっぱ何でもないデスよハハハ…」

 

 危うく口に出そうになったソレをグッと堪えた切歌。口が裂けても「自分等がシンフォギア装者に追われている」などと言う事は出来ない。関係のない彼を自分等のいざこざに巻き込む訳にはいかないのだ。

 

「まぁ見ましたかおっきー!バイトさん懲りずに女の子の知り合いを作ってますよ!」

「かぁーっ、見んね!卑しか男ばい!」

「どうした急に」

 

 そんな光景を目の当たりにしていた刑部と清姫。同人ペーパー雑誌配布の休憩で此処に来ていた2人は思わず先の言葉を口にしていた。

 

「バイちゃんさぁ…なに?ハーレム系主人公属性にでも目覚めたの?いけないなぁ…フラグ管理しっかりやっとかないとアンチスレで叩かれる末路を辿る事になるよ?」

「創作のネタとしては有りとは思いますが、そう言う男性きよひーちゃんイラっと来ちゃうなーって」

「「???」」

「うん、大丈夫。2人(調と切歌)は気にしなくて良い事だから」

 

そうバイトが言うと客と来ている刑部と清姫に向き合う。

 

「そう言われても、俺普通に男友達居るからね?何なら女友達よりも多いし」

「嘘だッ!百歩譲ってビッキーちゃん達とは友達としよう…だけどエックスちゃんについてはどうなの!?」

「アレはほら、居候って言うか、赤兎馬(ペット)と同じ扱い的な…」

「ペット!?いやぁーッ!いやらしい!家の中じゃ忠犬なんでしょう!主導権握ってあんな事やこんな事をさせてるんでしょう!嘘付いても私にはお見通しなんですからね!」

「……まぁ、ある意味でエックスは犬(狂犬的な意味)だね」

「「やっぱり!」」

「何が???」

 

 そんな一方的に騒がしい会話を耳にしていた切歌と調は冷や汗を掻いていた。会話に出て来た『エックス』と言うか単語。彼女等はコレをつい最近、耳にした事がある。と言うか10分位前に対面していた。

 

「き、切ちゃん…」

「分かってるですよ。ここは悟られない内にそーっと抜け出して……」

 

 まさかの味方だと思っていた存在が敵に近しい存在へと変わったと気付いた2人。この場から早く退散しようとしたが時既に遅し。二課の装者達が現れた。

 

「そこまでだッ!観念して貰うぞ賊めッ!」

「あ、いらっしゃ……え、何事?」

 

 クソダサTシャツを見に纏い、鬼のような形相でやって来た翼達にバイトは思わずそう呟いた。

 

「小日向さん、なに?なんで皆してお揃いのダサTシャツ着てるの?」

「それ以上聞こうものなら舌を噛み切ります」

「あ、うん」

 

 そんな未来の様子にバイトはそれ以上の追求をする事はなかった。

 

「まぁとりあえずさ、皆してどうしたの?そこの2人に敵意を持ってるぽいけど」

「おっと、それに関しては機密事項なので秘密ですよバイト君」

「おいエックス、それ半分答え言ってるようなもんだぞ」

 

「ねぇバイちゃん。エックスちゃん達ってさどう言う集まりなんだっけ?」

「秘密事項です(目逸らし)」

「あのそんな事言われても納得できないのですが。響さん教えてくれm」

「秘密事項です(食い気味)」

「「ホントどう言う集まりなのッ⁉︎」」

 

 二課のシンフォギア装者達はその存在を徹底的に秘匿されている。一般市民にはその情報を明かしてはならない。

無理矢理にでもその口を閉ざさなければならないのである。

 

そんな彼女達だったが、この後起こる展開に思わず声を上げる事となった。

 

「バ、バイトさん助けて!」

「コイツ等、私達を襲って来るんデス!」

「え、そうなの?」

『なっ⁉︎』

 

 まさかのバイトに助け舟を出すと言う戦法に翼達は驚愕する。

だがしかし、相手はあのバイト君。彼はこれまで幾多の困難(言う程幾多では無いが)を乗り越えて来た仲間であり友である。

そう簡単に相手の言う事を信じる訳が……

 

「こらーエックス達!女の子泣かせちゃダメでしょ!」

『バイト(さん)⁉︎』

 

 まさかの疑う余地も無く相手の言う事を信じ切ったバイトに装者達は2回目の驚愕を覚えた。

 

「バ、バイト君!何故そんな奴等の言う事なんかをッ⁉︎」

「私等の事が信用出来ないってのか!」

「いやだってエックス達の事だしなんかやらかしたんだろうなーって」

「マイナス方面での信用!?」

 

 思い返される苦労の絶えない日々。正直に言ってしまうとマリア・カデンツァヴナ・イヴと言う素晴らしいアーティストに巡り合わせてくれた言わば恩人に当たる2人に乱暴な真似は出来ないのである。

 

「くっ…、ならば仕方あるまい。耳を傾けろッ!そして聞けッ!」

 

 翼が何か考える素振りを見せたかと思うと声を高らかにして叫ぶ。

 

「その者達こそ武装組織フィーネの一員ッ!あのマリア・カデンツァヴナ・イヴの仲間なのだッッ‼︎」

「「「「な、なんだってーーーーーーッ⁉︎」」」」

 

 その場にいたバイトと未来に加え何も知らない刑部と清姫も驚愕の声を上げる事となった。

そのような事態に響は口を開く。

 

「つ、翼さんいいんですか⁉︎そんな重要な事を口走っちゃって⁉︎」

「大丈夫だ私が許す!」

「情報の秘匿性がユルすぎんだろッ!」

「問題ありませんアーチャー。いざとなればそこの2人(おっきー、きよひー)を捕らえておけば口外される事はありませんので」

「「!?」」

 

 いつの間にか捕まる事が確定されている2人。そんな彼女等を他所にエックスは聖剣(折れたけど直した)を構え臨戦態勢に入る。

 

「まぁ要するに!そこに居る2人は敵!判決ギルティ!即決即斬対象!閉廷!解散!私の聖剣を折った仇をここで晴らさせて貰おうかッ!」

「いやお前の剣折ったのそこの馬鹿だけどな」

 

 囲まれる調と切歌。絶体絶命の状況に追い詰められた彼女達だったが、調にはとある秘策があった。

 

「バイトさん」

「はいバイトです。え、なに?こんな状況で俺に一体何の用が───」

「マリアのサイン」

「え」

 

 とある秘策。それはこの男をこちら側の手中に収める事だった。このバイトと言う男は相手側にとって重要な人物である事に間違いない。

加えてマリアの話題になるとかなりチョロくなる。

そう考えた調はマリアの事をダシに使ったのだ。

 

「マリアさんのサイン…え? もう夢物語に等しいマリアさんのサ…え?え?サインって……え?」

 

「……あの、バイト君?」

「媒人?何故そんなに目を泳がしているんだ?」

「いや、いやいやいや。まさかそんな訳無いだろ」

「ハハハそうですよ。いくらなんでもバイトさんがそんな───」

 

 響が笑いながらそう言っていると切歌が「それじゃ」と言葉を付け加える。

 

「マリアの握手も付けるデス!」

「今日から武装組織フィーネで働く事になりました東間媒人です。よろしくお願いします」

「「「こいつ、物欲に目が眩みやがったッ!」」」

 

 何と言う事であろうか、まさかまさかの裏切り行為に驚きを隠せないエックス達。そんな彼に翼は問い掛けるように言葉を紡ぐ。

 

「待つんだッ!今の彼は正常では無い!きっと何かの間違いに違いないんだッ!……正気に戻ってくれ媒人ッ‼︎思い出すんだ!私達と過ごして来た日々を…ッ!」

「……過ごして来た日々…?」

 

 ふと、脳裏に過ぎる彼女達との思い出の数々。それは夜空で煌びやかに輝く星々のように彼の頭の中からブワリと浮かび上がって来た。

 

 買ったばかりの新車(バイク)を強奪され、壊された時の記憶。

 味噌汁と称した劇物を飲まされた時の記憶。

 バイクが破壊された時の記憶。バイクが破壊された時の記憶。

 

………。

 

……………。

 

…………………。

 

 

「青はオワコン。時代は大人の黒と桃色(ピンク)だな」

「「ぐあああああああああああああああああッッ‼︎」」

 

 何気ないバイトの一言でその場に崩れ落ちるアーティストと青いジャージ。

 

「翼さんんんんんんんんッ⁉︎」

「あと何故かエックスにも流れ弾がッ!」

 

「な、何故だ…私のどこに落ち度があると言うのだ媒人ぉ……!」

「駄目だッ!今の先輩は使い者になんねぇ!」

「バイトさん!裏切るって正気なんですかッ!」

 

 未来の言葉に対し彼は「うーん…」と考える素振りを見せる。

 

「裏切るって言うか、うん。アレだよマリアさん達の組織って裏では世界を救う為に色々と暗躍しているに違いないんだよ。だから俺はそれを手伝うだけであって別に裏切ってないよノーカンノーカン」

「こッ、ここに来てそんな見苦しい言い訳をッ!」

「タチの悪い暴走…まるで未来みたい…!」

「ねぇ響。それってどう言う事?」

 

 拗らせたオタク特有のぶっ飛んだ思考回路(偏見)によって暴走するバイト。もうコイツは殴って正気に戻した方が良いのでは?と言う考えが浮かび上がった時、後方から声が響く。

 

「話は全部聞かせて貰ったッ!」

「か、奏さんいつの間に⁉︎」

「死んだ筈じゃ⁉︎」

「ああ、そんで知らない看護婦に拉致されたかけたけどな!」

 

 蘇った矢先に謎の保健医に連れて行かれガチ目の死を覚悟した奏。そんな彼女を救ったのは3人の少女達であった。

 

「いやぁー、まさしくアニメ3本分に該当する熱烈な駆け引きだったわ!」

「えぇ、あの救出劇は見事なものでしたね」

「もうあんなスリルは味わなくて良いかなぁ…」

 

 襲い掛かる婦長。片手に銃を、片手に脱脂綿とアルコール液(濃度100%)を持ち迫って来た時、板場の下の方が漏れた液体により少し湿った事は秘密だ。

 

そんな見事な脱出劇を繰り広げたアーティストの奏は正面の男に向かって問い掛ける。

 

「おいバイト。本当に私達とやる気か?」

「……だとしたら?」

「シメる(即答)」

『判断が早い!?』

 

 既に臨戦体勢を整えている奏はズンズンとバイトに向かって進んでいく。

 

「ほう、向かって来ると言うのか?この俺に」

「舐めるなよ私は装者。ちょいと身体は鈍ってるが戦闘センスじゃ私が上だ」

「面白いやってみるか?海外のあちこちで紛争に巻き込まれて生き延びた元帰国子女を舐めるなよ?」

 

 互いのオーラが拮抗し合い、相手との睨み合いと言う名の激闘が繰り広げられる。これから戦いが始まるのではない。既に戦いは始まっているのだッ!

 

「恐らく次の一撃は勝負は決するデス!」

「奏さんが勝つかバイトさんが勝つのか…目が離せない…ッ!」

「切ちゃん。なんでそっち側と仲良くなってるの?」

「響。どうして一緒になって解説してるの?」

 

 そんな他愛も無い会話の最中、先に動いたのは天羽奏。空へと羽ばたく猛禽類のように彼女は跳躍し叫ぶ。

 

「死ねぇぇぇッ!バイトォォッ!」

((((いやそれ死ぬ側が言う台詞!))))

 

 天を舞う隼の如く、飛来し襲い掛かる天羽奏。空中戦を得意とする彼女に対してバイトも同じく飛び上がると、オーバーヘッドキックの体勢に入った。

 

「ロー…キィックッ!」

 

ゴシャァ!

 

「がああああああああああああああああああああああああッッッ!!?」

「奏ぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇッ!」

 

 ドシャァと地に落ちる()。空中で脛を強く打った彼女はその場で苦痛の表情をしながら悶絶する。

 

「ひ、酷い!義足の方で弁慶の泣きどころを強打させた‼︎」

「流石バイト君!人体急所への攻撃に一切の躊躇いが有りません!」

「でも顔面じゃないよりかはマシだと思います!」

「と言うか無駄に高度な技だなオイ!」

 

「〜〜〜〜〜〜っ!この程度で…私がやられるかァァッ!」

 

 そう言いながら立ち上がる天羽奏。今までの彼女ならばそのまま死んでいたのだろう。しかし気力と根性を振り絞る事で先の攻撃を耐えて見せたのだ。

ここでシンフォギア装者第一号は伊達では無いと言う事を見せて来た。

 

「立った…奏さんが立ったッ!」

「さぁ第二ラウンドとシャレこもうじゃないk「脛ぇッ!」ぐあああああああ⁉︎同じ所にィィッ!」

 

 しかし起き上がった瞬間を狙っていたように、バイトはすかさずローキック(2回目)を繰り出した。痛みで悶絶する奏に対しバイトは己が攻撃の手を緩める事はなかった。

 

「脛ーッ!脛ぇーッ‼︎もう一発脛ぇーーッ‼︎」

「グワーッ!グワーーッ‼︎グワワーーーッッ!!」

 

「やめたげてよぉ‼︎奏さんのライフはゼロだよぉ‼︎」

 

 弁慶の泣き所に対し執拗に攻撃を加えるバイト。しばらくして奏は無事に(?)ノックダウン。バイトが勝利を収める結果となった。

 

「小足見てからの ローキック余裕でした」

「思い知ったデスかバイトさんの底力ッ!」

「やーい、ざーこ。お前ら一般人以下ー」

 

「何もしてねぇお前等が偉そうにふんぞり返ってんじゃねぇ!」

「おのれ虎の威を借りた狐共め!汚い。流石武装組織フィーネ汚い!」

 

 脛部へのダメージでダウンした奏が翼によって介抱される傍ら、バイトの身体能力に驚愕を受ける装者達。二課司令官である風鳴弦十郎までとは行かないが彼もまた人の域から飛び抜けるのではないか?と言うレベルの実力の持ち主。

雪音クリスは心の中で「これ無理ゲーなのでは?」と思っていた。

 

「フフフ…ランサーをやるとは流石はバイト君。しかし彼女は二課装者四天王の中で防御力最弱、シンフォギア装者の面汚しよ」

 

 そんなバイトの前に立ったのは居候の身であるヒロインX。奏の事をdisりながら聖剣(テープ補強)を手にし、彼女は構える。

 

「しかし!この私は例えバイト君相手でも一切容赦しないセイバー!裏切ったんですから、ちょっとくらいの火傷は覚悟して貰いますよッ!我が最終奥義、エクス…カリb────「何を馬鹿な事をしてるんですか、このなんちゃってセイバー‼︎」ぐぇえええ!?」

「「「なんか変なのに轢かれたッ⁉︎」」」

 

 側方から謎のアーマーを纏ったナニカがエックスに衝突したかと思うと、そのまま馬乗りの状態で殴り始めたのである。

 

「どうしてこうも貴女はイカレた思考回路をしてるんですかッ!馬鹿なんですか!阿呆なんですか!ああ、本当にコレが同一人物と思うと悲しくなって来ますよ!」

「ちょっ⁉︎待っ⁉︎誰ッ⁉︎やめッ⁉︎殴るのっ⁉︎やめっ⁉︎」

 

 お前が泣くまで殴るのをやめないと言わんばかりにエックスの顔面に機械仕掛けの拳が叩き込まれる。

そんな異様な光景を前に立花響は恐る恐る声を掛けた。

 

「あ、あのぉ〜…」

「何ですかッ!今ちょっと立て込んでい……ル…」

 

 コンピューターがフリーズしたように固まる謎のロボット。そんな怪しさの集合体はポツリと声(ボイス加工済)を振り絞る。

 

「……あっ、ん、ン゛ンッ。シツレイシマシタ、私ハ通リスガリの宇宙OL。怪シイモノデハアリマセン」

「「「怪しさしかないんだけど⁉︎」」」

「怪シクナイデス!エエ、ホント怪シイモノデハアリマセンカラッ!ギャラクシー免許取得済ミノ、タダノ宇宙刑事デスカラッ!」

「んな言い訳が良く通じると思ったな⁉︎ それだと怪しさを更に加速させるだけだぞ!」

「ノー!アイアム普通ノロボット!タダノ通リスガリデース!」

 

 もはやロボットかどうかも怪しい人物の登場によりこの場は更なる混沌に包まれる……故に、彼女の堪忍袋の緒が切れるのもおかしくない事であった。

 

「───だーーーッ!いい加減にしろこのごじゃっぺ(馬鹿)共ッ!もういい、もう沢山だッ!私を怒らせた事後悔させたらァ!」

 

 そう叫んだのは雪音クリス。ツッコミを担当し、ボケにボケが重なりアホがかけ合わさった状況に限界が到達してしまった彼女はヤケになり胸元からペンダントを取り出した。

 

「クリスちゃん⁉︎流石に生身の人間相手にギアってやり過ぎじゃ──」

「うっせぇ!このおだってる(調子のってる)奴に天誅下さなきゃ気が収まらねぇんだよ!」

 

 何故か八つ当たりの対象となったバイト。まぁ裏切り者はハラキリ案件だって昔の日本からそう決まっているので是非も無いよね。

 

「オラァ覚悟しやがれ!Killter Ichaiva───

 

 聖詠を口遊(くちずさ)イチイバル(シンフォギア )の展開準備に入ろうとするクリス。しかしそれを見逃す程、東間媒人は甘くはなかった。

 

「はいお好み焼きどうぞ」

「むぐッ⁉︎」

 

 一気に距離を詰めたかと思うと雪音クリスの口中に甘ダレのソースと鰹節の香りが絶妙にマッチしたお好み焼きを詰め込んだのである。

 

「んむ、むぐ…ゴクン……っぷは、美味しいなコレ…って!いきなり何しやがる!もう容赦しねぇ!Killter Ichaival tro───

「おかずクレープどうぞ」

「むぐぐ⁉︎……あむ、んむんむ……ゴクン 意外とおかずクレープって美味いんだな…って!いきなり口ん中に食べ物突っ込む奴があるかッ!今度の今度こそ容赦しねぇぞ!Killter───

「焼きそばどうぞ」

「むぐぐぐーーーっ⁉︎」

 

 次々と口の中へ放り込まれる食べ物。その様子に翼はクリスに向かって言葉を投げかけた。

 

「駄目だ雪音!媒人は聖詠を唄い終える前に口を塞ぐ魂胆に出ている!奴はこちらに変身させる機会を与えないつもりだッ!」

もががぁ(クソがぁ)ーーーーーーーーッ!!」

 

 焼きそばを頬張りながらの慟哭が響く渡る中、彼女等は周りからやって来る者達の存在を察知するのに時間が掛かった。

 

「手を挙げろッ!君達は既に包囲されている!」

「「っ⁉︎」」

 

 そこに現れたのは黒服の男達。彼等は特異災害対策機動部二課の職員達であった。元米軍のジョニー佐々木、そんなプロ達がバイト及び武装組織フィーネの一員である切歌と調を囲うように現れる。

 

「悪いな、こちらも装者として手段を選んではいられない。まさか卑怯とは言うまいな」

「先輩…!」

 

 風鳴翼はただ東間媒人による一方的な蹂躙を許している訳では無かった。切歌達を発見した時から既に二課には連絡を入れ、敢えて時間を稼ぐ為に道化を演じていたに過ぎなかったのである。

 

「防人として情けない姿を見せた……が、刻下の私を侮るなかれ。既に我が心は焼き、叩き、鋼と化した。東間媒人ッ!これ以上の蛮行を私は赦す訳にはいかないッ!」

「「「「つ、翼さん!(羨望の眼差し)」」」」

 

「…そうか、それならここまでだね」

「バイトさん!諦めちゃ駄目デスよ⁉︎」

 

 無理だ。と付け加えバイトは口を開く。

 

「この人達は特異災害に立ち向かう為設立された精鋭部隊。加えて流石は風鳴翼さんだ。その大胆な行動力と類稀な指揮系統、恐れ入ったよ」

「かーっ、それ程でもないがな!(御託は良い、投降するなら丁重に扱おう)」

「そう言うとこだぞ風鳴さん」

 

 呆れた様子を見せる媒人。そんな彼に不安気な表情を浮かべながら月読調は言葉を紡いだ。

 

「本当に無理なの?」

「無理だよ調さん。正直言って俺としては君達の目的は何かは分からない…けど、今投降すれば優しい弦十郎さんの事だ。きっと良い計らいをしてくれるに違いな…」

「何とかしてくれたらマリアの手料理膝枕、あとハグも付けるけd」

 

馬鹿野郎!こんな所で終われる筈がねぇだろ俺はやるぞこの野郎!

 

 その時のバイトはマリア・カデンツァヴナ・イヴに対する姿勢を曲げる事の無いファンの鑑として相応しい姿だったと言う。

 

「この人チョロ過ぎない???」

「将来が不安になって来るレベルデスよ…」

 

「やめてバイトさん!私達が戦うなんて間違ってる!」

「ハッ、そう言うのはなぁ!戦場で死に逝く負兵がほざく台詞なんだよォォッ!」

 

 響の言葉を一蹴しながら彼は己の懐に手を入れた。その姿を見て囲んでいた二課の職員達が警戒を一層強める。

しかし後々になって、この時の判断は間違っていたと全員は口を揃えて言っていた。彼は東間媒人、海外を渡り歩いて来た事により窮地(ピンチ)に陥るによってその実力が爆発的に発揮されるタイプなのだ。

 

「そ、それはまさか……ッ⁉︎」

「あ、ああ……っ!」

 

 天羽奏と月読調は懐から取り出されたソレを見て顔を青ざめさせた。直感で理解出来る。それは地獄への片道切符。駄目だ、それを奴に使わせてはいけないのだと脳が危険を感じ取ったのである。

 

「う、動くなッ!こちらは発砲を許可されt「駄目だッ!今すぐバイトの動きを止めろォーーー!"それ"をヤツに使わせるなァーーーーーッ!」

 

 職員達が銃を構えた瞬間、奏は悲痛の叫びを上げる。何事か?と疑問に思う人々。それ故に彼にそれを使わせるチャンスを与えてしまったのであった。

 

「奥義『自家製紅洲宴歳館泰山風 極辛麻婆豆腐(粉末タイプ)』ッ!」

 

 男が手に持った詰め物が地面に叩きつけられた瞬間、その周囲一体が赤く染まった。

しばらくしてそれが晴れた頃にはバイトと調・切歌の3人の姿は消え、代わりに地獄のような(から)さと(つら)さで悶絶する二課職員及び装者+αが残されていた。

 

 





復活の麻婆豆腐。
そして秋桜祭の一角にて自作の汚染兵器を使用するバイト君。
1番武装組織らしい事してる気がする(KONAMI感)


そしてなんと春風駘蕩さんより支援絵を貰いました!


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素晴らしい…!(ボ卿感)
本当にありがとうございました!
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