未知との遭遇〜アルトリウムを添えて〜   作:ゴランド

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投稿が大変遅れてしまいました。
ウマ娘のイベント周回するのに夢中だったりスマホが故障して買い替えたりしてたんです。本当に申し訳ない。


30話 ネフィリム襲来

 どうもこんにちはバイトです。今思えば身勝手で浅はかな行動により武装組織フィーネへと突っ込んだ自分は捕虜として扱われる事になりました。

でもまさか、ほんな武装組織でナスターシャお婆ちゃんと再会するとは思ってもなかった。両親と共に海外を渡ってた頃に顔を合わせてたけど…まさかこんな形で再び相見えるとは……人生どうなるか分からないもんだなぁ。

 

電子牢で囚われる俺の元にナスターシャお婆ちゃん達が足を運んで来る。あ、マリアさんも居る!(満面笑)

 

「気分は如何ですか? 東間媒人君」

「 絶 好 調 」

「え、あ ハイ…(引き気味) まぁいいでしょう」

 

 眼鏡の縁をクイッと上げるウェル博士。動揺し変な空気になりかけたのを立て直すかのように彼は言葉を紡ぐ。

 

「こんな形とは言え君とは一度会ってみたかったんですよ東間君」

「俺と?」

「ええ、遺失科学の分野でその名を馳せていた東間夫妻の子。将来有望な研究者になりそうですね。いやぁ2人は良いお土産を持って来てくれました」

「「ッ!」」

 

 流し目で切歌と調に視線を送ったジョン博士は「それはそれとして」と言葉を付け加える。

 

「あちら側の装者達に関しては私に任せていただきましょう。こちらとしてもそろそろネフィリムに餌を与えなくてはならないので」

「…ネフィリム?」

「貴方が気にする事じゃなくてよ、東間媒人」

 

 ポツリと言葉を漏らしたバイトにそう言い放つのはもう1人のガングニール適合者であるマリア・カデンツァヴナ・イヴさん。

ネフィリムと言う単語が気になるが今はそんな事どうでもいい。とにかくマリアさんだ。マリアさんは全てに於いて優先される…!

 

「二課関係者である君を此処から早々に解放する訳にはいかない。加えて諜報活動を行う可能性も捨て切れない…悪く思わないで欲しい」

「マリアさん…!(歓喜)」

(あれ?何でこの子こんなに喜んでるの?おかしい…おかしくない?)

 

 何故か怪訝な目を向けてくるマリアさん。一体どうしたのだろうか?ううむ……まぁ美しいのでヨシ!

 

「まぁとにかく。しばらく君は此処で大人しくして貰おう「おや、そんな悠長な事を言ってて良いのかいマリア」…ドクターウェル」

「おいおい、そんな怪訝な顔を向けないでくれ。彼には捕虜以外の利用価値(使い道)があるのさ」

「仮にも人間相手に物扱いする気かッ!」

「物扱い? 心外だね、寧ろ今この場で処理するよりかはマシな扱いだとは僕は思うよ」

 

 そう言って取り出したのは……紫の筐体に銀のプレートが装着されたもの。それを目にした瞬間、俺は思わずその名前を心の中で叫んだ。

 

(ソロモンの杖だとッ⁉︎)

「おや、その表情を察するにコレの事をよく知ってるみたいだ。ならこれをどう使えば君を殺せるか分かるだろう?」

 

 ジョン博士がこちらに向け、完全聖遺物の起動状態に入るのが気配で分かる。

 

「いい加減に……ッ⁉︎」

 

 暁さんが割って入ろうとした瞬間、彼女の首筋に黒の剣が当てられる。そこには俺の知っているXよりも生気を抜いたような顔色をした"彼女"が立っていた。

 

「切ちゃん!」

「おっと残念。英雄の仔は僕側に付いている。いい加減にするのはそっちだよ」

「……英雄か」

 

 英雄の仔、その言葉に浮かび上がってきたのは円卓の騎士主席であるブリテンの王 アーサー・ペンドラゴン。

フィーネさんが遺した言葉から推測するに目の前に居る彼女はXと同じとある目的で作られた人造生体。そんなXの同列機(姉妹)と敵対するかもしれないと言う可能性を想定すべきだった…否、想定するのを敢えて避けていたのかもしれない。

 

ちなみにこの黒い子がフィーネだと言う事はエックスに機密事項にも関わらず教えられた。今更だけど装者達の情報規制ガバガバ過ぎない?

 

怪訝な表情を浮かべているとジョン博士がマリアさんに向かって口を開く。

 

「全く、随分と甘い考えになったものだ。そうだろうマリア…終わりの名を冠する者、フィーネ」

「フィーネ…?何を言ってるんだ。そこに居るのはマリアさんで…」

「やれやれ、少し考えれば君でも分かる簡単なトリックなんですがね」

 

 簡単なトリック、そうジョン博士に言われて俺は思考に海に沈む。フィーネさんが現世に復活するのはリインカーネイションと言うフォニックゲインに接触した人類史より刻まれたフィーネさんの遺伝子を呼び起こし再誕させる輪廻天才システム。

相変わらず埒外な技術力に脱帽するが、今考えてみると簡単に理解できた。そもそもの話Xに似た彼女はフィーネさんに目覚めていない。世界人口は億を超え、その中からたった1人が選ばれる。

 

「だとするとこっちはブラフ?…まさか本命は…ッ‼︎」

「そうその通り、こちらに居る世界の歌姫は仮の姿ッ!その正体こそ現世に舞い戻りし先史文明期の巫女フィーネ本人さ!」

「マリアさんが…!」

「………」

 

 何も答えない、その沈黙は恐らく肯定と言う意図なのだろう。

 

「マリアさん…」

「否、私はマリアでは無い。私は先史文明の巫女」

「じゃあ櫻井フィネガンツァヴナ・イヴさん」

「え、あ…え?何?なにかの呪文?」

 

 困惑する彼女へ俺は立て続けに疑問を投げ掛ける。

 

「本当に二課と争ったフィーネなんですか?」

「私が首を縦に振れば納得するのかしら?」

「月を穿つ破滅の塔(カディンギル)を建設したフィーネが本当にマリアさんなんですか…!」

「そうね、そんな事もあったかしら」

「俺の腕をへし折ったり首を掻き抉ったり俺の脚をこんな物にしたフィーネさんがマリアさん本人だと言うんですかッ‼︎」

「……そ、そうね(えっ、フィーネそんな事したの⁉︎ 酷いッ!まだこの子学生なのに!鬼!悪魔ッ!外道めッ!冥界で悔いて業火で焼かれろ!)」

「それじゃあ俺が代わりに支払ったタクシー代の事も覚えてるんですね?その時の4080円。出来れば早めに返して貰えれば…」

流石にそれは嘘でしょ

 

 えっ?

 

「ははは、面白い冗談を言いますね。その度胸、僕自身としては気に入りましたよ」

「えっ」

「フン、生憎私が本物のフィーネと判断しようと言う魂胆なのでしょうが残念。その程度の嘘で見定めようだなんて浅はかね」

「え、いや、でも実際にお金払って…」

 

 直後、俺の元に月読さんが歩み寄って来る。すると次のように言葉を紡いだ。

 

「フィーネはそんな事しない」

「月読さん?」「し、調…⁉︎」

「フィーネはそんな事してないし、そんな事実も知らない」

「月読さん⁉︎」「調⁉︎」

「だからタクシー代は無効。いいね?」

「え、アッハイ」

 

 何だろう、人が変わったように詰め寄って来たんだけど。え、怖い。気の所為か瞳がギラギラ金色に光ってるし。

 

『姉さん…』

『フィーネ…』

 

 なんか変な霊的なのが見えるし……って、本当に誰だよこの2人⁉︎

ここに来た時からずっと見えてるけど本当に誰なんだよ!いや奏さんと同じようなヤツ(幽霊)なんだろうけど一変に2人来るか普通⁉︎

 

そんな頭を抱えている俺を前にナスターシャお婆ちゃんが口を開いた。

 

「…ドクターウェル。貴方の言い分も理解しました、そこで彼に監視役としてO-Xを付けるとしましょう」

「おや?英雄である彼女をたった1人の子供(餓鬼)相手に見張りを任せようとするとは妥当とは思えませんがねぇ」

「その子供に使い道があると言ったのは貴方です。加えて英雄の力を持っているとしてもシンフォギア装者達を全員相手するのも彼の処遇についてはこちらに任せ、貴方は貴方をやるべき事をしなさい」

「……仕方ありませんね、英雄の見せ場はこれから。こちらはこちらでお出迎えの準備をするとしましょう」

 

 ジョン博士がそう呟くと、エックスに似た少女…O-Xだっけ?彼女が牢を開け、俺を解放すると言う意図を促して来た。

……なんか今更だけどこの娘はなんと呼べば良いんだろうか。エックスに似た少女ではなく、ナスターシャお婆ちゃんのようのO-Xとでも呼べば良いんだろうか?

 

「私の事をなんと呼べば良いか分からない顔している(きみ)、それなら私の事をX(セイバー)と呼んでくれたら助かります」

「サラッと心読まないで?あと余計にややこしくなるから」

「ならば愛称とあっちの頭のおかしいアサシンへの侮辱を込めてエックスの頭文字を取って『えっちゃん』と呼んでください…それにO-Xと言うのはあまり好みませんので」

「あ、はい。よろしくお願いします?えーと…えっちゃん?」

 

 え、なに?急に距離を詰めて来たんだけどこの子。一応自分捕虜の身だけどそんな仲良くしていいの?

 

「あ、勘違いしないように。私はヒロインである前にヴィラン属性を兼ね備えたヒロイン。青い方の知らぬ間にいつのまにか私達の仲が進展するのを見せ付ける事が目的なので悪しからず」

「思ったより捻くれた考え⁉︎」

 

 うーん、改めて対話してみると分かる。このえっちゃんと言う娘は確実ににエックスと同じ系列だ間違えない。喋ってるとこっちまで頭がおかしくなりそうな所とかエックスそっくりだもん。

……ん?でもその考えだと長期間エックスと共に暮らして来た俺の頭は既におかしくなってないか?

 

『大丈夫ですよ、このえっちゃんは優しい子なんです。そんなに警戒しないでください』

 

……そうか、幽霊が見えてる時点で俺の頭は既におかしくなっていたのか(遠い目)

 

『いやあの聞いてます?』

「すみません、ちょっと寝させてもらって良いですか?」

「この状況下でッ⁉︎」

「すみませんマリアさん。ちょっと見えちゃいけないモノが見えてて…」

「何か危ないものでもキメているのッ⁉︎」

 

 ごめんなさい。否定しきれないです(真顔)

 

 

 

 ▼ ▼ ▼

 

 

 

 特異災害対策機動部二課仮設本部である特別潜水艦。その作戦司令室にて耳を貫くように非常アラーム音が鳴り響く。

 

「ノイズ発生パターン検知!場所解析を……コレはッ⁉︎」

「どうした藤尭!」

「場所は東京都番外地。特別封鎖区域…旧リディアン音楽院の───!」

「カディンギル跡地(あとち)だとぉ!」

『!』

 

 その言葉を耳にした装者達は各々反応を示す。ルナアタック事変の中心となった戦場であると同時にかつて在りし二課の本部が健在してた頃、フィーネが表の顔として活動していた場所。

 

「開戦の狼煙のつもりかッ!」

「己が死に場所より蘇ると言う意図でもあるってのかよ」

「…響」

「分かってるよエックスちゃん」

 

 エックスの言葉に響は頷く。言葉を交わし、未来を託された自分。そして今これから未来を託してくれたフィーネと争う事となるのは確実だろう。

……故に。

 

「私やるよ。フィーネさんが託してくれたこの星の未来、その為にも私はフィーネさんと戦うッ!」

 

「……立花」

「なんだ翼。ちょっと寂しいか?」

「そうね奏、立花は私が思ってた以上に成長してたみたい」

 

 片翼を喪った時に突如として姿を表した3人目のシンフォギア装者。

出会った当初では折り合いは決して良いものとは言えず衝突する事が多かっ……いや、言う程衝突してたか?寧ろ違う方(エックス)との衝突が多かった気がする。

 

そう考えれば謎のヒロインXは図らずも緩衝材としての役割をしてくれたのだろう。

 

「エックスにはお礼を言わないとね」

「え、なんで?」

「それは……あれ、なんでかしら?」

「アレ、もしかして私、悪く言われてませんか?」

 

 

 

 

 

 

 

 場所は変わり特別封鎖区域、元はリディアン音楽院が建立していた地帯だが現在はカディンギル撤去作業が行われており重機やトラック等が頻繁に出入りしている。

 

そんな大掛かりな解体工事により必然的に人手も多くなる所にノイズの発生。シンフォギア装者達を呼び込むには打って付けな場所と局面だろうが意図的にやったのであれば悪趣味だ。

 

「そらそら、早く来ないと人で出来た塵芥の山が積もりに積もりますよ」

 

 武装組織フィーネに属するドクターウェルが手にするソロモンの杖より召喚されるノイズが混乱を招き起こす。その表情には真っ当な科学者には思えない愉悦の表情が溢れて出ており、人が死ぬ事に対して何も思わない所か喜んでいるようにも思える。

 

「…と、どうやらご到着のようですね」

 

 そこに現れたのは4人の装者と1人の剣士。剣を携えた彼女等の登場によりノイズによる一方的な蹂躙が一変する。

 

「ご機嫌よう、装者の皆さん」

「ウェル博士ッ!やはり貴方が裏で糸を引いていたのかッ!」

「切歌ちゃんと調ちゃんは!」

「あの2人は謹慎中です。その代役として僕が今この場にいると言う訳ですよ!」

「ならバイト君は⁉︎」

「彼は大切なお客人なのですので、こちらで丁重に扱わせてもらっていますよ」

「「「……チッ」」」

「んん?今舌打ちしませんでしたか」

「気の所為だ」

 

 仮にドクターウェルがバイトを人質にした場合、間違って一緒に攻撃を叩き込む作戦が崩れた事にエックスは思わず舌打ちをしたのだが、どうやら彼の耳には届かなかったようだ。

 

「その手にあるヤツ…成る程、列車の時もお前がノイズを操ってた訳か」

「その通りです、全ては僕が身を隠す為。貴方達には感謝を述べなければなりませんね」

「何故だ、何故に武装組織に手を貸すような真似をするッ!」

「一体何を企てているF.I.S.ッ!」

「企てる?人聞きの悪い事を聞きますね、我々が望むのは人類の救済。未曾有の大厄災より無垢なる命を救う事ですよッ!」

「救済⁉︎」

「一体何を言って────‼︎」

 

 直後、クリスは己が足元に…否、地の底から何か異様な物を感じ取る。バキバキと地面が割れ、崩れ、隆起し、何かが競り上がって来る。

 

咄嗟にその場から飛び退くと、闇夜と同じ体皮に月明かりの如く不気味に浮かび上がる発光期間。自分の知る限りの生物とは違う何かが姿を現したのだ。

 

「なんだコレはッ!」

「これはノイズなのか?」

「にしてはあいつ等特有の位相差障壁が見られないぞ!」

 

 謎の怪物体が出現し困惑がその場を支配する一方でエックスはポツリと言葉を漏らした。

 

「私と同じだ…!」

「え?」

「コレは私だから分かります。アレは私と同じく生命体であると同時に造られたモノッ!私とは根本的に異なる人造生体ッ!」

「ご名答ですよ騎士王の現し身よ!これの名前はネフィリム。F.I.S.が長年所有して来た生ける聖遺物であると同時に人類史を救済する答えだッ!」

「何をふざけた事をッ‼︎」

 

 ドクターウェルの片手に収まるソロモンの杖に狙いを定め、アームドギアをライフルに変形させる。

直線状に伸びるエネルギーの閃光がノイズの操作端末を撃ち穿つ…と思われたその時。ネフィリムがエネルギーを吸収した。

 

「なッッ⁉︎ビームに食らいつきやがった!」

「ならば我が得意手にて押し通すッ!」

 

 翼のアームドギアが大太刀形態に姿へと変わりネフィリムへとの一気距離を詰める。太刀より放たれる剣閃、無数の剣戟が闇夜に煌めき黒き獣を捉える。

いくら自律する完全聖遺物だと言えどもこのまま攻撃を受け続ければ──そう考えた次の瞬間、ネフィリムの顎が大きく開かれる。

 

「翼さん!」

「っ!」

 

 眼前の光景から響の声により現実へと引き戻された翼は脚部のブースターを吹かせ後方へと退く。

 

「大丈夫か翼ッ!」

「問題無いわ奏…と言いたい所だけど」

 

 視線の先には防人の手に収められたアームドギア。だが、人の身を超す刃渡りを持っていた剣は根本から折られて…否、抉り千切られたのだった。

 

「私の魂に等しき天羽々斬(あめのはばきり)が…ッ!」

「アイツ、アームドギアを喰らいやがった!」

 

 バリバリと咀嚼音を響かせるネフィリム。その獣が刃を飲み込んだ直後、筋肉繊維が隆起し発光器官がより一層の輝きを放つ。

 

『ネフィリムから発せられるエネルギー現在量、許容量共に上昇しましたッ!』

『全員気を付けろ、ヤツの力が途端に上がった!先程までのネフィリムとは違うぞッ!』

 

 オペレーターと弦十郎の報告に警戒する装者達。溢れんばかりのパワーを利用しネフィリムはこちらに向かって突進を仕掛けて来る。

 

「愚直に飛び込んで来ても────‼︎」

 

 突撃槍のアームドギアを構える奏。切先を激しく回転させカウンターを与えようと構え、ネフィリムの頭部に向かって突き放つ。

 

「……なにっ⁉︎」

 

 が、奏の予想は大きく外れアームドギアによる攻撃が弾かれる。先までの強度とは比べ物にならない程の頑丈さ。まるで堅牢な城壁に向かって棒を打ち付けるかの如く、錐揉み回転する矛は獣の皮膚を貫く事は出来なかった。

 

「ゴオオオオオオオオオッ!」

「くっ!」

 

 雄叫びと共に突進を食らった奏。咄嗟に槍を盾にする事で体当たりによるダメージを抑え、崩れた体勢を戻す事に成功する。

 

「奏さん!」

「大丈夫だ、この程度なら問題無い!」

 

 平気へっちゃらだと身振り手振りで示すが、現状良いとは言い難い。あのネフィリムと言う自律型完全聖遺物は他の聖遺物を喰らう事で力を増す特性を持っているのは先までの光景を見れば分かるだろう。

 

普通の攻撃では弾かれ、遠距離での攻撃も吸収。近づけばシンフォギア そのものを食われる危険性もある。一体どうすれば……そう考えていた次の瞬間。

 

「ならば内側より抉り穿つまでよッ!」

「うおっ‼︎私を踏み台にッ⁉︎」

 

 エックスが奏を踏み付けながら飛び出して来た。エネルギーを纏った聖剣を携え、ネフィリムとの距離を詰める。

 

「待てッ!いかに策があろうとも今近づくのは得策ではないッ!」

「せめて私等にそう言うの伝えとけっての‼︎」

 

 そう言いながらクリスは弾丸をネフィリムに向かって放ち、エックスへの注意を逸らす。強固な皮膚を持とうともその弾幕に一瞬怯んだその隙を聖剣で捉える。

 

「そこ─────ッ!」

 

 恐らく皮膚の中でも強度が低いであろう細く短い首筋に向かって突きを放つ…が、ネフィリムに刃を突き立てるよりも凄まじい速さでその獣は聖剣に齧り付いた。

 

「なにッ‼︎」

「あの馬鹿お得意の不意打ちに反応しただとッ!」

「強度やパワーだけでなく俊敏性まで向上してるのかッ!」

 

 そのまま剣に齧り付いた状態で狩猟生物の如く振り回し、地面に叩きつけるようにネフィリムは暴れる。

無論。聖剣の使い手であるエックスもその被害に遭ってるのは必然でありボロボロの状態になった所でスポンと聖剣がネフィリムの牙から抜け宙を舞う結果となる。

 

「あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛っ!」

「エックスちゃん‼︎」

「ッ!」

 

 響の呼び声に即座に反応。空を舞い、逆さまになりながらもエックスは聖剣の出力を高める。

 

「風よ、槍となりて射抜けッ‼︎」

「うおおおおおおおッ!」

 

PALLADION・AIR

 

 風の鉄槌が立花響を大きく吹き飛ばす。そのま巨大な弾丸と化した拳がネフィリムに向かって炸裂する。

 

「ゴオオオオオオオオ‼︎」

「効いてるッ!」

「よし、これならば────⁉︎」

 

 突如として、全員がその場に膝から崩れ落ちる。まるで穴の空いた風船から空気が漏れるように全身の力が抜けていく感覚が全身を襲う。

 

「力が…入らない……⁉︎」

「一体何が……いや、コイツはまさかッ‼︎」

 

 この状況、この状態、加えて()()()()。全ての要因(ファクター)が綺麗に揃った場面に既視感を覚えたクリスは咄嗟に奏向かって言い放つ。

 

「奏先輩!風だ!風を起こしてくれッ!」

「無茶言って…くれるなァ!」

 

LAST∞M ETEOR

 

 怠い身体を無理矢理動かし、槍を回転。吹き荒れる暴風を巻き起こす。直後、ブワリとギリギリ視認できるレベルの赤い靄のような何かが闇夜に向かって消えて行く。

 

「そりゃそうだよな…!フィーネがシンフォギアシステムの情報を横流ししたとするならアレを作れるのはお前みてーな奴だよな!」

「これは───アンチ・Linker(リンカー)かッ‼︎」

「ご名答」

 

 アンチ・Linker(リンカー)。フィーネが米国政府に横流ししたシンフォギアシステムの情報を元に製作され、故意に適合係数を低減させる事が可能な薬物。

F.I.S.の研究者であったドクターウェルは聖遺物研究以外にシンフォギアシステムに関連したLinkerの開発も行なっている。ルナ・アタック事件にてフィーネが使用したアンチ・Linkerは何を隠そう彼が製作した物。事前にシンフォギア 装者が来るのを見越して散布していたのだ。

 

「そんな正解者にはノイズをプレゼントだぁ!」

 

 ソロモンの杖より放たれるノイズの大群。クリスと翼、奏を囲うように特異災害は展開される。

 

「クリスちゃん!」

「おっと、待ちなよ融合症例。君の相手はこのネフィリムだッ‼︎」

「くっ! エックスちゃん、皆をお願い!」

 

 飛び退く響と地面を破壊しながら突き進むネフィリム。

召喚されたノイズにより翼達と分断。完全聖遺物相手に一対一で挑む状況となってしまった。恐らくこれもウェル博士の作戦の内なのだろう、この後に何が待ち受けているか予想も付かない。

 

「だとしてもッ!」

 

 今の立花響に撤退の文字は無い。仲間が後ろにいるこの状況で敵に背を向けると言う選択肢は彼女の中に存在しないのだ。エックスが弱った3人を助けるまでに時間を稼ぐ…否。

 

(別にこのまま倒してしまっても構わないよねッ‼︎)

 

 全速全身で速攻で最短距離で一直線に真っ直ぐに。ネフィリムを撃破する。融合症例である故にその人知を超えた力で目の前の黒い怪物を追い込んで行く。

力に対し力を、速さに対して速さを。時間が経つにつれネフィリムを圧倒して行く。生ける聖遺物すらもその圧倒的なパワーで捩じ伏せるのは融合症例である立花響だからこそ可能に出来る事。

 

直後、ネフィリムの反撃と言わんばかりの突撃をマトモに食う響。ぐぅっ!と声を漏らしつつもすぐに体勢を整え攻撃を再開させる。

 

「人を束ね、組織を編み、国を建てて、命を守護するッ!ネフィリムはその為の(ちから)ッ!」

「でぇぇぇええええいッ!」

「ルナアタックの英雄よ。その拳で何護るッ‼︎ そうやって君は誰かを守る為の拳でもっと多くの誰かをぶっ殺してみせる訳だッ!」

「ッ!───おおおおおおおおお!」

 

 ウェル博士の言葉に一瞬だけ顔を歪ませる。だとしても関係無い、このまま行けばネフィリムを倒せる。その事だけを頭の中に詰め込み響は強く踏み込み、拳を振り上げる。

 

──人殺し

 

「……え」

 

 ルナアタックの英雄。そう称された彼女の功績は素晴らしいものと言えるだろう。例え彼女にその気が無くとも希望を求める人々は立花響と言う人間をヒーローにしようと祭り上げる。

 

故に、逆もまた然りだ。

 

 

──人殺し 税金泥棒 何故お前が生きている 亡くなったあの子を返して どうして代わりに死んでくれなかった お前だけ助かった

 

ルナアタックの英雄よ。お前はより多くの人を救ったが、それ以上の命を奪って来たのだ。

 

「────あ」

 

 心の奥底から掘り返されたトラウマが彼女の身体を弛緩させる。思考がまとまらない。恐怖で身体が強張る。

霞む視界の中で立花響が我に返った時、ネフィリムが己が眼前に位置しておりその巨大な顎をグパリと開かせていた。

 

(あ、駄目避けないと──でも、無理────)

 

 身体の半分以上が聖遺物と同化(融合)した事により人の身でありながらガングニールそのものでもある立花響が捕食対象として見做されるのは必然だ。ウェル博士が分断を習ったのも最初からこれが狙いだったのも頷ける。

 

翼達が響に向かって叫ぶが最早どうにもならない。その聖遺物を喰らう牙は無慈悲にも少女に向けられ、闇夜に散らばる星と輝く月の元で鮮血が舞う。

 

 

 

 

と、思われた次の瞬間。ネフィリムが吹き飛ばされた。

 

『!?』

「ネフィリムがッ⁉︎」

「あ、貴方は────!」

 

 九死に一生を得た立花響。そんな彼女を救った猛々しい姿を持つ影は月に照らされその正体を露わにして行く。

八尺(※約240cm)を超す巨体に凡そ人に見える事の無い異形のシルエット。神話・物語にしか見られないようなその佇まいは見る者全てを驚愕し圧倒させるオーラを放っている。

 

そして立花響とその仲間達はソレを知っている。その力、その体格、その気性、そしてエックスにも負けない異常性を彼女達は知っているッ‼︎

 

「どうも。私こそ人馬一体の武勇が世界中に大きく膾炙した存在、そう誰もがご存じ呂布奉先です」

なんですかこのナマモノはッ⁉︎

 

 月を穿つ塔が屹立(きつりつ)する傍らでジョン・ウェイン・ウェルキンゲトリクスの驚愕に満ちた声が上がった。

 




シリアスはもう十分だろう…と言うわけで次回はユニヴァース汚染マシマシで行かせていただきます。
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