未知との遭遇〜アルトリウムを添えて〜   作:ゴランド

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 俺のターン ドロー!
場にいる『バイト君のバイク』をリリースして???をアドバンス召喚ッ!そして俺は手札から装備魔法『ヴォルフガングの仮面』を発動する!



5話 逆襲の天羽々斬

 

「こん…クソッタレがぁああああああッ!!」

「せりゃあああああああああああッ!!」

 

 黒剣と鞭が互いに拮抗する。ネフシュタンがパワーならばエクスカリバーは手数とスピードで相対する。

 

「バイト君を誘拐しようとは…汚い、バーサーカーならぬ手段を選ばないアサシンめいた行為汚い!」

「いつも不意打ちかますお前が言えた義理かッ!!」

 

 互いに罵り、力で捻じ伏せ、この負けられない戦いに勝つ。雪音クリスは己が信念を糧に。ヒロインXはバイトの彼を誘拐されそうになった事に対する怒りを糧に。

戦闘は更に激しくなっていく。

 

「うっさい!少しでも"あれ?もしかして良い娘だったりする?"って私の純粋な気持ちを返せこのヤロー!」

「お前の方こそ"もしかしてコイツってそんなに悪い奴じゃないんじゃ…"って純心さを返しやがれッ!!」

 

 鞭で剣を絡め取り、獲物である黒の剣を奪うが素手で接近戦を繰り広げて来るヒロインXに驚きつつもクリスも負けじとステゴロで対応。

 

そして、お互い気付かぬ内にノーガード戦法の殴り合いと言う名のキャッツファイトを繰り広げていた。

 

「はぁ…はぁ…!遠距離主体と思いきや中々……!」

「ぜぇ…ぜぇ…!そっちもチャンバラ無しでも以外とやるじゃねぇかよ……!」

 

「……名前は?」

「あ?」

 

「いい加減、下乳のバーサーカーと呼ぶのもアレですし名前を聞いておこうと思いまして」

「……ハッ、なら冥土の土産に教えてやるよ。クリス、雪音クリス。それが私の名前だッ!!ヒロインX!」

「そうか、ならば雪音クリスッ!そんな鎧を捨ててかかって来いッ!」

「あぁ?なーにヘンチクリンな事をッ!!」

 

 雪音クリスの言う事はご最もである。ヒロインXの言ってる事はとどのつまり己から弱体化しろと言ってるのと変わらない。それを敵から言われて了承する程彼女は馬鹿では無いのだ。

 

「まぁ、そう言うと思いました。なんせ、それを纏ってないと私とまともに戦えませんからね」

「何ィッ!」

「さぁ、どうした。私を蜂の巣にしたいんだろう…?」

「ざ、ざけんな…!」

 

 歯を食いしばるクリスを前に内心でほくそ笑む。

 

(ククク、そうだ。そのまま乗ってしまえ…!ネフシュタンの鎧を脱いだ瞬間がお前の最期。無防備なその身体にエクスカリバー(強めのパンチをぶち込んでやりますよ…ッ!)

 

 ヒロインXの戦法とは勝って支配する。過程などクソ喰らえ。勝てば良かろうなのだ。セイバーらしく正々堂々?知らない言葉ですね。彼女は完全に卑劣な手を使う気満々である。

 

「ぶっ飛ばしてやる……!これ(ネフシュタンの鎧)なんて必要性ねぇや…ッ!アーマーパージだッ!野郎ブッ殺ッしゃあああああああああああ!!!」

「えっ、ちょっ!?」

 

 直後、周囲に向かって銀色の無数の破片が散弾の如く放たれ、土埃が舞い上がる。

……しばらくして周りの景色が晴れて行くと同時に光と共に歌が広がる。

 

「私に歌わせた事……後悔しやがれッッ!!」

「な、何ィ!?」

 

 そこには先程までの姿とは異なる"赤の戦装束(シンフォギア)"を纏った雪音クリスの姿が在った。

 

「それはまさか……っ!」

『パターン照合!これはまさか…ッ⁉︎』

『イチイバルだとぉ!?』

 

 ソレはかつて二課が保有していた第二号聖遺物。数年前紛失した筈のそれが敵の手に渡っていた事実を知る由も無いヒロインXだが司令官の風鳴弦十郎の声色から何かしらの因縁があるのを察知する。そして、それ以上に……、

 

「本当にアーチャーだったとはッ!!」

「オラ蜂の巣だッ!!」

 

 このイチイバルの殲滅能力にヒロインXは危険だと己の身体が察知した。弓兵の如く一点を撃ち抜かず、狩猟者の如く獲物を喰らわず。

狩猟神ウルの弓を扱う雪音クリスのシンフォギアは凄惨なまでに目前の敵を塵芥へと変える圧倒的な力だ。

 

「完璧ゴリゴリ弓のくせして弓を扱わない本物のアーチャーだと言うのかッ!?」

「相変わらず訳分かんねぇ言語を扱いやがって。だがテメェの言う通り捨ててやったぜネフシュタンッ!こっからはイチイバルの独断、独走のパーティだッ!ありったけ全部をバーニングだッ!!」

「訳分からない言語を扱ってるのは貴方もでしょうがああああああああっっ!?」

 

 弩弓型のアームドギアから放たれる無数のエネルギーの矢を躱し、絡め取られた黒の剣を取り戻しつつもそれで防ぐ。口論を行いながら戦闘を繰り広げるが、戦況は雪音クリスが優っていた。

先日、折れてしまった(正確には折られた)聖剣エクスカリバー。あれは"己と繋がっている"ので自然回復こそしているものの、完全に扱える状態ではない。現時点で修復率43%と半分も行かない状態での剣を振えば再び折れるのは目に見えている。

 

おのれ立花響許すまじ…今度ふらわーでお好み焼きの中にたっぷり山葵をぶち込んでやると考えていると雪音クリスの持つアームドギアの形状がクロスボウから更に大型のモノへ変形して行く。

 

「それ持っていきな!鉛玉の大バーゲンだッ!」

 

BILLION MAIDEN

 

 連射式銃火器のガトリングガンへ変形したアームドギアから放たれる雨霰の弾丸。先程以上の威力と物量に対し旋回しながら剣を振るい弾くが、その顔は苦渋によって歪んでいた。

 

(まずい……ッ!"黒い方"でなんとか捌いてますがこれ以上増えれば単純な物量で圧倒される……!)

「オイオイ、この程度だと思ってるなよッ!追加のミサイルだ持って行けッ!!」

 

MEGADEATH PARTY

 

腰の装甲が展開し、現れたのは多連装射出器。そこから放たれる小型ミサイルの数々は驚愕するヒロインXを姿が爆煙によって見えなくなるまで降り注いだ。

 

「……私に歌を歌わせたからだ…!歌わさなければこんな事には……ッ!?」

 

 直後、煙の向こう側からは無機質な視界を塞ぐ程の大きさをした、さっきまで無かった筈の壁が広がっていた。

 

「盾…?」

 

「剣だッ!!」

「そして、撃槍ガングニールだぁぁあああああッ!」

 

 その声と同時に流星の如く空から拳を打ち込んでくるのは同じくシンフォギアを身に纏う立花響。

上空から不意打ち気味に出された彼女の右手だったが、雪音クリスはその場から飛び退き回避する。

 

「はっ、こんな見え見えの攻撃にわざわざ当たってやる程優しくはないぜ私h──"ごしゃッ!"──ぐぼっ!なんでバイクゥウウウウウ!?」

 

 しかし、側面から突撃して来たバイクの衝突からの爆発に巻き込まれた雪音クリス。そんなピタゴラスイッチめいた光景に思わず唖然とするヒロインXだったが、しばらくして我に帰るとすぐ側に(そびえ)え立つ巨剣の上に立つ逆光を浴びた戦士に視線を向ける。

 

「この声、この立ち振る舞い、そしていつものようなバイクを犠牲に現れるその登場シーケンス!やはりあなたですか防人のセイバー。もとい風鳴つばs─────

 

「否、我が名は『防人アイランド仮面』ッ!!」

 

──って、なにしてるんですかッ!?」

 

 巨大な剣の上に立つのは己を防人アイランド仮面と称する仮面を付けた謎の少女剣士。「とぅっ!」と声を出しながら着地するとそこへ立花響が駆け寄って行く。

 

「流石、防人アイランド仮面さん!凄いですね!」

「……えっ?防人…?アイランド…?」

 

 何故か防人アイランド仮面と名乗るその人物と面識のある立花響の様子にヒロインXは頭の中が疑問符だらけとなる。

 

「……えーと、ミス立花。そちらは……」

「エックスちゃん!防人アイランド仮面さんだよ!」

「い、いやミス立花。そんな一般常識のように説かれても……完全に風鳴翼ですよねアレ」

 

 ヒロインXの言う通り。仮面こそ付けているものの、その正体は風鳴翼本人である。身に付けているのは聖遺物『天羽々斬』のシンフォギア。無論、現状纏えるのも風鳴翼のみである。

 

つまりはそう云う事である。

 

「ええっ!?そうなの⁉︎……そこら辺の所、実際どうなんでしょうか?」

「私は風鳴翼ではない」

「ほら、違うって」

「いやいやいやいや」

 

 首を左右に思い切り振るヒロインX。完全に騙されてますよ、と言うか単純過ぎませんかアナタ⁉︎と言いたいが立花響と言う人間は純粋無垢な南極に棲まうペンギンの如く天然さを持つ存在。

サンタはいると思いますか?と問われれば「居るッ!」と答えてしまうのではないかと心配される位の天然さだ。

 

「痛てて…クソ、よくもやりやがったのこの…この……」

「むっ、出たな!」

「……いや、何やってんだお前」

「お前じゃないッ!立花響と防人アイランド仮面だッ!」

 

「いや、本当に何やってんだ!?」

 

 復活した雪音クリスが叫ぶ。

 

「つーか、お前!何をヘンテコリンな仮面着けてんだよ⁉︎と言うかなんだよ防人アイランド仮面って!お前、風鳴翼だろ!」

「この仮面は我が魂、そして防人アイランド仮面とは我が真名……決して風鳴翼と言うトップアーティストでは無いッ!」

「─────おい」

 

「いや、敵である私に助けを求めないでください。こっちも対応に困ってるんです」

 

 雪音クリスはジッとヒロインXを見つめるが思い切り顔を逸らされる。相手のアーチャー(仮)から顔を背けた彼女だったが通信機から司令である弦十郎の声が耳に届く。

 

『何をやってるんだ翼!まだ病院で治療を受けていた筈!?』

「……何の事でしょう。私は防人アイランド仮面。決して風鳴翼と言う防人に相応しい歌女では無い!」

「そうですよ師匠!それに本人だって翼さんじゃないって言ってますし!」

『………これも風鳴の血か』

 

「何をどうしたらそう納得したんですかッ!?」

「馬鹿か⁉︎此処には馬鹿共しか居ないのか!?馬鹿共のスーパーマーケットなのか此処はッ!」

「今、私も含めて馬鹿と言いましたか!!」

「その通りだよこの阿呆共ッ!やっさいもっさいいいいいいッ!!」

 

 もはや考えるのをやめて全てをブッ壊す事が最適解と判断した彼女はアームドギアから放たれる弾丸を3人に向けて発砲。

それにより彼女達は蜂の巣にされる……筈だった。

 

「否、そのような飴細工の霰で我が剣を貫けるか」

「なっ─────!?」

 

 しかし、それをいとも簡単に()()弾き落とされる。剣を手に戻って来た彼女は前のとは比べ物にならない程の強さを持っている。

そう雪音クリスは頭では無く、身体で感じ取った。

 

「何なんだよ…お前……」

「防人アイランド仮面だ」

「何なんだよお前ッ!!(半ギレ)」

 

「ほんと、何なんですかねこの防人のセイバー。病院先で改造手術でも受けたのでしょうか……?」

「凄い!凄いですよアイランド防人仮面さん!」

 

 興奮した様子の立花響。ポン、と彼女がアイランド仮面を称する彼女ほ肩に手を置いた瞬間……

 

ぐあああああああああああああ!!

 

「「「うわああああああああああああ!?」」」

 

 風鳴つばs……防人アイランド仮面は血を吐き、崩れ地に伏した。

 

「いや、完治して無いじゃないですか!そんな状態でよくもまぁ病院側もそれでOK出しましたね!」

「ぐう、……こ、この程度……ッ!病院を何度も抜け出そうと緒川さんと対峙した時と比べれば大した事……!」

「いや、病院で大人しくしてろよお前ッ!」

「と言うか抜け出そうとって……抜け出して来たんですかッ⁉︎」

 

「この程度で……折れる剣では無いッ!!そうでしょ奏ッ!!」

 

 

 

 

 しばしの静寂(いつものエア奏タイム)が訪れる。虚空に向かって語り掛ける風鳴翼(仮面)。

そして────

 

 

 

「奏……あ、あれ?いつも隣に居るはずの奏は?奏、何処なの?奏……かなでぇぇえええええええええッッ!!

 

「速攻で折れましたよこの(つるぎ)ッ!」

「はえーよ!脆すぎるだろうがッ!!」

 

 響き渡る慟哭。その場で蹲る防人アイランド仮面。そしてそろそろツッコミにも疲れて来た2人。状況を良く理解してない立花響。

言う所のカオス空間であった。

 

もはや敵味方関係無しに入り乱れた空間だったが、それに乱入して来るモノが居た。

 

「───ッ⁉︎ クリスちゃん危ないッ!」

「なっ!」

 

 特異災害ノイズ。それが槍の如く降り注いで来たのだ。

 

「これはノイズ達⁉︎」

「奏ぇ…」

「そんな事言ってる場合ですか!ほら立ってください!」

 

 次々と落ち地を穿つノイズ達から逃れ、迎撃を行う事で対処を行う。

そんな中、困惑した様子の雪音クリスにXが声を上げる。

 

「これって……何なんだよフィーネ…!」

「どう言う事ですか!私達全員を呼び込んで灰に変えると言う作戦……いえ、その様子では違うみたいですね!」

 

 

 

── 命令された事も出来ないなんて、貴方には失望したわクリス。

 

「ッ⁉︎ フィーネ!どう言う事だよこれはッ!」

 

「フィーネ……?それが仇敵の名かッ!!」

 

 

──まんまと任務を失敗し、敵と仲良しこよし。一体何をしているのかしらね?

 

「ち、違う!仲良しなんかじゃねぇ!」

「うわっ!ひ、酷いよクリスちゃ……あれ?あそこに人が……!」

 

 全身を黒で塗り潰したような帽子とサングラス、そしてコートを羽織る金髪の女性。一見すれば単なる市民だが、異質なそれを手にしている事からただの人では無い事が分かる。

 

「ソロモンの杖を……!」

「……あの者は⁉︎」

 

 風鳴つb…否、防人アイランド仮面はその者が発する雰囲気から、そしてヒロインXは己の直感から。相手がただ人間では無いと察した。

 

………いや、それ以上に。風によってその女性の風や衣服がたなびいた瞬間、その場に居る全員がその者の存在自体が"異質"だと感じ取れた。

 

「「「ッ!?」」」

 

 立花響、謎のヒロインX、防人アイランド仮面は見た。否、見てしまった。彼女が羽織る黒いコートの下に()()()()()()()()()()()()()()事に───。

 

 

「「「へ、変態だああああああああ!?」」」

 

 

──失礼ね、これは正装よ。

 

 

「「「より一層の変態度を増したあああああああああああああッ!!」」」

 

 クリスを除く3人が思わず叫ぶのも無理もない事だった。まさか自分等が対する黒幕的ポジションの相手が痴女だった事に哀しみ、驚愕が入り混じった声が森の中で木霊する。

 

「っ! コイツなんか居なくても私だけで戦争の火種を根絶してみせるッ!そうすりゃ人は呪いから解放されてバラバラになった世界は元に戻る!どうなんだよフィーネッ!!」

「えっ、クリスちゃん⁉︎」

 

 立花響は戦慄した。クリスちゃんって、こんな変質者の下で働いていたの……⁉︎と。

 

 

──もう貴方には用は無いわ

 

「なんだよ……何だよソレッ!」

 

──分からないのかしらクリス。私情を挟んで任務には失敗……と言うかネフシュタンの鎧はどうしたの?

 

「……あっ(今気付いた)」

 

──……。

 

「あー、ネフシュタンって私と合ってないと言うか、壊しても放っとけば治ると言うか……いやー、こう言う使い方しても結構平気だろと思って……」

 

──………さようならクリス。

 

「フィーネッ!?」

 

 こちらを見向きもせずにソロモンの杖を操ると多量のノイズを出現させる。精神的なショックによりクリスは反応が遅れ、アームドギアを展開しようとした矢先ノイズ達の攻撃によりガトリングガンが破壊されてしまう。

 

「しまッ────!」

 

 十を越す程のノイズの軍団が槍となり雪音クリスに向かって陸から、空から襲い掛かって来る。武器を失い絶体絶命となり、残り数秒で串刺しとなる直前。そこに割り込む者が居た。

 

「おおおおおりゃぁあああああああああああッッ!!」

 

 その者は融合症例、立花響。

槍となり螺旋回転を行うノイズを一体掴むとそのままバットのように振り回し他のノイズ達を消し飛ばす。

 

「はいっ!はいッ!はいいいいいッッ!!」

 

 一発、二発、三発と殴り、蹴り、撃ち抜く。インパクトによって生じる余波に巻き込まれたノイズはその身を炭へと変える。

 

「こおぉぉぉぉ………───っ!破ッ!!

 

 トドメと言わんばかりに溜めたエネルギーを拳に集中。ソレを地へ叩き付ける事によって放たれた衝撃波はノイズ達を炭素へ変換。全てを吹き飛ばし森の中に似合う事の無い異物を一体残らず消したのである。

 

 

「…オォウ、ランサー強い。槍を使わないランサー強い……」

「……流石だな!(思考放棄)」

 

 尚、その流れるような作業でノイズ達を個人で一騎当千した立花響を見た先輩2人は深く考えるのをやめた。

 

 

「……ふぅ、クリスちゃん!大丈夫?怪我は無い?」

「お前、どうして……」

 

「そりゃあ、私達って同じ人間だから。こうやって戦わなくても手と手を取り合える」

「…………何だよそれ」

 

 響は歩み寄り、手を差し出す。誰かと繋ぎ合えると信じたその手を雪音クリスに向ける。

 

「クリスちゃん!今どうなってるのかよく分からないけど、私は貴方と戦いたくない!きっと分かり合える!だから────

 

パァン!!

 

───えっ?」

 

 突如として響いた発砲音。それは雪音クリスが形成したアームドギアから発せられた弾丸によるモノだった。

 

「ク、クリスちゃ……「来るなッ!化け物ッ!」えっ?」

 

 "化け物"その言葉に一歩後ろへ引き下がる。

 

「何が分かり合うだッ!!敵同士で殺し合った相手と分かり合う?ちゃんちゃらおかしい事を口にするのもいい加減にしろッ!!」

「そ、そんな…私はただ────」

 

「分かり合いたいから? 分かり合えるものかッ!お前のような人の心を持たない化け物が!」

「っ!」

 

「アーチャー!貴様……!」

「色物は黙ってろッ!!人同士分かり合えるだとッ!それじゃあ、今の私はどうだ、分かり合えたと思っていた奴から裏切られた!それを見てお前は分かり合えると思っているのかッ!」

 

「………」

「その手を差し出してどうするつもりだ?握手のつもりだろうが、私から見りゃノイズすらもぶち殺した化け物の血濡れた手だ!」

 

 目を伏せ、ポツリと呟く。本当は嬉しかった。

こんな自分に手を差し伸ばして来れる友と呼ぶに相応しい人が現れるとは思わなかった……。 

 

「テメェみたいな奴は自覚してねぇようだから言ってやる……!いつかお前は後悔する。今の私みたいに……!(違うッ、違うだろ……ッ!私はそんな事を言いたい訳じゃねぇッ!)」

 

 しかし、それ以上に雪音クリスは怖かった。

差し出された手が、再び希望を灯してくれる火であると同時に絶望と言う名の奈落の底へ引き摺り込むような悪魔の手に見えてしまった。

 

フィーネに切り捨てられた先程の感情はもう味わいたくない。誰にも見捨てられたくない。

それならば、いっその事────突き放してしまえばいい。

 

……それを悪手だと気付くのには遅過ぎた。彼女は気付く後ろから己を見つめる二つの視線。

軽蔑し、嘲るような、忌まわしく貶めるようなモノが篭った視線を雪音クリスは感じ取ってしまう。

 

「(やめてくれ……!そんな目で私を見るのは…やめてくれよおおッ!!)う、うわああああああああああああああああ!!」

 

 逃げ出した。ここから速く逃げ出したかった。そう考えギアを纏った彼女は跳ぶ。

 

締め付けられるような心の痛み。最低な事を言ってしまった後悔。そして押し潰されそうな罪悪感から、背後から私を殺してくれと言う彼女の願いは永遠に叶う事は無かった……。

 

 

 

 

 

「化け物……」

 

『ねぇ、立花さんって』『人殺しだ』『ノイズと同じ人殺しだ』『返してよ!私の弟を返してッ!』『なんでお前が生きているんだ!』『消えろ、この化け物め!』

 

 己の心に深々と突き刺さった言葉。人と人との間には必ず陽だまりが存在するから分かり合える。そう信じて止まない彼女の記憶の脳裏に数年前の言葉がチラつく。

 

「エックスちゃん。私は………」

「………ヒビキ。とにかく今日は帰りましょう」

「うん」

 

「……立花」

 

 仮面で素顔を隠した風鳴翼は拳に力を込める。彼女は未熟だが、我々と同じ剣と盾を携えた同じ戦士だ。

だからこそ彼女を支えねばならない。もう、何も失わせやしないと決めたのだから……でも、

 

(…奏の姿見えないと言う事は……今の私は皆を守護する防人として相応しくないの?)

 

 片翼を失った彼女はこの先に待ち受けるであろう戦場(いくさば)に立ち続けられるか、一抹の不安に駆られるのであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ところで……連れ去られた者は何処(いずこ)へ?」

「「あっ」」

 

 

 

 

 

 

「……俺、こんな所で何やってるんだろう」

 

 この後、木の上でずっとスタンバって居たバイト君は職員達によって無事に保護されました。

 

 





 色々と書いていたら後半から不穏な雰囲気が漂って来た。それにしても防人アイランド仮面、 一体何鳴翼なんだ……。

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