【完結】転生せし音色~夢に縋る青年だった少女~ 作:詠符音黎
――この世に天使がいるものなら 私の頬にも恵みをくれ
報わることない労苦背負い 日陰に佇むこの私に
――人間椅子『無情のスキャット』
◇◆◇◆◇
「お疲れ様ですー……」
俺はその日のバイトを終え、疲れた体に鞭打ちながら帰路につこうと歩き始めていた。
肩にはいつも背負っているギターケースを担いでいる。
このギターが表しているように、俺は音楽をしている。
俺の夢は歌手としてメジャーデビューをすることだ。
そのために色々と努力しているつもりだ。路上ライブという古典的な方法から、ネット上に好きな歌手のカバーをアップしたり、オリジナルソングを作って流したりなどもしている。
もちろんライブハウスにも行き、歌声を披露している。
更には当然、オーディションを受けたり、レコード会社にデモテープを送ったりもしている。
とにかく、考えられる手段はいろいろ取っている。
だが、俺の実力が足りないのか、それとも運が無いのかはわからないが、なかなかメジャーデビューまでこぎつけることができない。
必死にギターの腕を磨いても、歌声を鍛えても、作詞作曲の術を研究しても、である。
そんな生活を高校から続けて気づけばもう三十という年齢が近くなっていた。
いわゆる、いい年というやつである。
親は夢を捨ててまともな仕事に就職しろという。
でも、俺はどうしても夢を捨てることができなかった。
歌手になりたい。なって、俺の歌を世界中に届けたい。
そんな輝かしい妄想への憧憬を捨てられずにいた。
でも、やはり芽は出ない。
正直、俺は少し疲れていた。
「ふう……今日はオリジナルソングの収録はちょっと休んで、友達から借りたアニメでも見直すかな……そろそろ返す期限だし」
俺は吸収できるものならすべて吸収しようという考えがあり、アニメもその目的で友達から借りた。
音楽が主体となっているアニメで、紅白歌手として有名な声優が出演しているアニメだ。
その名も『戦姫絶唱シンフォギア』
歌って戦う少女達の物語に、俺は引き込まれた。物語も、曲もとても素晴らしい。
アニメの類は子供の頃に卒業していたのだが、久々に見たそのアニメはとても俺を引き込んだ。
今ではお気に入りで何度も見直すアニメだ。友人にそろそろブルーレイを返すタイミングだが、正直返さずに見ていたい。
でもそうはいかないので、返したら自分でブルーレイを揃えるつもりだ。
そんなことを思いながら、俺は街でも特に大きい川の上に架かっている橋を渡る。
「それにしても、今日は本当に疲れた……」
俺は足元をフラフラとさせてしまう。いけない、このままだと路上で倒れてしまう。
そう思って、俺は姿勢を正そうとする。
と、そのときだった。
ギターが不意にぐらりとして、俺の体を引っ張ったのだ。
普段ならどうとでもないそれは、今の力無い俺の足では耐えられず――
「――えっ」
そして、俺はそのまま柵を越え、川へと落ちていった。
「やば――」
そうして俺は、水の中に沈む。
これが、俺の人生の幕引き。
『第一』の生の、終焉である。