【完結】転生せし音色~夢に縋る青年だった少女~ 作:詠符音黎
『あ……これ……は……?』
気づいたとき、俺の体は変質していた。
木と金属が入り混じった体は、まるで元からそうであったかのように俺の体に馴染んでいる。
そして、その異常な変化を当たり前のように受け入れている自分がいる。そのことが、とても気持ち悪かった。
「…………」
『……っ!』
と、俺が自分の変化をまじまじと受け入れている時間はなかった。
ノイズが変化した俺に集まってきていたのだ。
『……ふん!』
【Tuning】
そのとき、俺はどうするべきかを理解し動いていた。
俺は金属の右腕を地面に叩きつける。
すると、金管楽器と木管楽器、そして弦楽器がそれぞれ音を調律するかのような音が辺り一帯に響いた。
そう、まさしくチューニングのように。
「…………!」
すると、俺を取り囲んでいたノイズに異変が起こる。
おぼろげな輪郭と不安定な色彩が、どちらもはっきりと見えるものになったのだ。
俺の“音”はやつらをこの三次元世界に固着させたのだ。
ゆえに――
『だあっ!』
俺の蹴りが、ノイズを二つに割いた。
物理攻撃がノイズに通るようになったのだ。
しかし、俺に格闘の心得はない。今の蹴りも、このスーツで強化した勢いと力に任せたものに過ぎない。
俺には俺の戦いがあると、このスーツが言っている。
『はぁっ!』
俺はその場で高く跳ぶ。
そして、スーツについているヘルから、ノイズめがけて“演奏”した。
【forte】
強烈な音がノイズめがけて降りかかる。
すると、その音の範疇にいたノイズ達は細かく体を振動させ、それぞれを爆散させた。
俺の出した音の振動が、三次元世界に固着し実体化したノイズのそれぞれの固有振動に共振、破壊したのだ。
しかし、まだまだノイズは迫ってくる。
「……!」
宙に待っていたノイズが、槍のようになって俺に迫ってくる。
俺はそのノイズめがけて、先程とはまた違った音色を奏でた。
【piano】
すると、ノイズの動きかまるでスローモーションになったかのように緩慢になったのだ。
ノイズ周辺の重力子に干渉、動きを制限したのだ。
そして俺は再び【forte】で空中のノイズを破壊する。
次々とノイズを撃破する俺に、奴らは俺を危険対象とみなしたようで、さらなる数のノイズが俺に迫ってくる。
俺はそんなノイズに対し、戦闘態勢を取ることにした。
【Thrash Metal】
音楽ジャンルの一つ、更に言えばメタルの一ジャンルであるスラッシュメタル。
今の俺は、それを奏でることによって攻撃的なスタイルに移り変わることができた。
『さあ……奏でるよ』
俺の体からスラッシュメタルが奏でられる。
それと当時に、俺の手首からビームウィップが飛び出る。
俺はそれを、メタルを奏でながら振るい、ノイズを駆逐していった。
『はっ! だあっ!』
音楽と一体になりながら戦う俺。
それは知らない何者かに体を動かされているようだった。
まるで何者かの糸で動かされる操り人形のようで、少し気分が悪くなるほどに。
『だあっ!!』
「でやっ!!」
と、そこで背中が誰かとぶつかりあった。
俺は即座に後ろを向く。一方で、相手も即座に振り向いた。
「えっ、祭!?」
「響っ……!」
俺と背中をぶつけ合わせたのは、シンフォギアをまといながら少女を抱える響だった。
お互い、人外の力をまとった身での邂逅だった。
「どうしたの祭!? 何その姿!?」
『人のこと言えないだろ響だって……それよりも、くるぞ響!』
「えっ!? あっ、うん!」
こうして、共に肩を並べる俺と響。
そして、迫りくるノイズ。
今、自由に戦えるのは俺だけ。俺は響と少女をかばうように前に立った。
そのときだった。
「はあっ!」
俺達の前に、颯爽とバイクで青い影が現れたのだ。
そしてその青い影は、俺が固着させたノイズにバイクをぶつけ、俺達の前に降り立つ。
「……翼、さん?」
「呆けない!」
現れたのは、やはり翼さんだった。
この流れを、俺は知っている。翼さんと響が、お互い装者として初めて出会う場面だ。
俺という、異分子が存在するが。
「Imyuteus amenohabakiri tron……」
そして彼女は歌い、まとう。
シンフォギア、天羽々斬を。
「はあっ!」
そして翼さんは、次々とノイズを駆除していき、場のノイズのすべてを倒してしまった。
『すごい……』
その圧倒的な力に、俺は見惚れる。
これが“防人”である風鳴翼なのかと。
「……あなた達には、私と一緒に来てもらいます」
ノイズをすべて倒した翼さんは、俺達に言った。
おそらく二課の黒服の人間を引き連れながら。
そうして、俺達はついに行くことになった。リディアンの地下にある、二課の秘密基地へと。