【完結】転生せし音色~夢に縋る青年だった少女~   作:詠符音黎

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ワタシ空想生命体

「まつ、り……?」

 

 響は言葉を失う。

 目の前で起きたことが信じられなかった。嘘だと言ってほしかった。夢だと思った。ありえない。おかしい。たちの悪い冗談だ。

 そうやって必死になって目の前で起きたことを否定する。だが――

 

「シャッ!!」

「立花ッ!」

「きゃっ!?」

 

 飛びかかってきた祭であったものから、翼に救われたことにより響は現実に戻される。

 

「くっ、危なかった……大丈夫か、立花!?」

「翼、さん……私……」

「しっかりしろ立花! 来るぞ!」

「シャアアアアアアアアアッ!!」

 

 混乱する響をよそに、再び飛びかかってくる祭。

 翼はそれを、今度は彼女の刀で受け止めた。

 

「ぐっ……! なんて腕力だ……!」

「シャアアア……!」

「翼さんっ!」

 

 祭の混沌とした様相を見せる両手に押され、踏ん張ったまま背後に動かされる翼。それでも翼はなんとか両手で剣を支える。

 そんな彼女の顔に、祭の祭でなくなった顔が近づく。目がなく、樹木と金属のパイプが入り混じった脳みそのような相貌。

 顔なき顔から伸びる長い長い涎のこぼれる舌。

 その舌に、翼の顔は舐められそうになる。

 

「翼ッ!」

「今助けるっ!」

「デェス!」

「行くっ……!」

 

 窮地に立たされる翼を助けようと、マリアとクリス、そして切歌と調が突撃する。

 それを察知した祭。その次の瞬間――

 

「****************――!!」

 大きな“音”で“啼いた”。

 

「ぐうっ!?」

「がっ!?」

「かはっ!?」

「デェッ!?」

「っ!?」

 

 その“音”が鳴り響いた瞬間、祭に飛びかかった四人は逆に吹き飛ばされる。更に、近くで剣を交えていた翼も、膝を着いて剣を落とし両手で耳を塞いだ。

 

「か……!?」

 

 そして、彼女らの体を覆っていたギアにヒビが入り始める。

 かろうじて体がギアに守られている、そのような印象を遠くで見守っていた響と未来は受けた。

 

「ッア!!」

 

 その直後に、祭はその不自然に長い腕で翼を近くの壁まで吹き飛ばす。

 

「ぐはっ!」

「翼さん! 大丈夫ですか!?」

 

 翼に駆け寄る響。一方で翼は、

 

「あ……立花……?」

 

 響の姿だけに、反応しているようだった。

 

「すまない、立花……耳がやられた……しばらくはお前の声が聞こえそうにない……」

「そんな……翼さん!」

 

 声が聞こえないと分かっていても、響は翼に叫ぶことを止められない。

 そんな響の姿を見て、翼は彼女の肩に手を置く。

 

「いいか立花……お前の声が聞こえないから、これからお前に勝手にものを言うぞ……。立花、弓弾と、戦え」

「えっ!? で、でも……! もし、一姫さんのときみたいに助けられなかったら……!」

 

 困惑する響。そこに、

 

「シャアアアアアアッ!」

 

 と声を上げて祭が突っ込んでくる。

 

「させ、ないっ……!」

 

 だが、それを起き上がったマリアが立ちふさがり止める。

 

「オラアッ!」

「聞こえないけど行かせないデェス!」

「連携が取りづらい……!」

 

 さらに、そこにクリスや切歌、調も加わる。

 戦う四人を背後に、響は翼の言葉を聞き続ける。

 

「ふっ、目で見てもわかるように混乱しているな……だが、戦わねばならんのだ。お前は、親友にこれ以上手を血で染めさせてもいいのか? これ以上、罪で彼女を苦しませる気か?」

「っ!? それは……!」

「戦うんだ立花……! もしかすれば、奇跡が起きるかもしれん……! いや、起こすんだ! お前の手で、守りたいものを守って見せろ……!」

「……っ!」

 

 翼の言葉に、ハッとする響。そして、翼はそこまで言うと、ゆっくりと壁際で立ち上がった。

 

「……先に行っているぞ」

 

 そこで、翼は響を置いて祭との戦いに参加した。残された響は、ギュッと握りこぶしを握る。

 

「響……」

 

 そんな彼女に更に話しかけるものがいた。未来だ。

 

「未来……」

「……止めよう、祭を。例えそれが、祭の命を奪うことになったとしても」

「……うん!」

 

 未来の言葉に、力強く頷く響。

 

「でも、祭は殺さないよ……だって、救うんだもの、私の手を、祭に伸ばすんだから……!」

 

 そうして、強く握った握りこぶしを見つめた後、彼女達は駆ける。祭との戦場へ。

 だが、戦場は混沌としていた。

 響と未来を除いた五人の装者は耳をやられているため、それぞれ勝手に歌を歌い戦っていたからだ。

 シンフォギアは歌を歌うことによってフォニックゲインを高め力とする。だが、耳をやられた装者は自分の勘に頼って歌わないといけないため、そこから調和が失われる。

 つまり、不安定な音程で歌われている歌がぶつかりあって、不協和音を出しているのである。そのせいで、フォニックゲインがうまく高まらず、装者達は全力を出せていないのだ。

 そんな状況につっこんだ響と未来は、ひとまず歌うことを一時止め、そのまま祭へと攻撃を仕掛ける。

 

「祭いいいいいいいいいっ! はあっ!」

 

 響の拳が祭に飛ぶ。だが、それを祭は――

 

「****ッ!」

 

 “音”のバリアで悠々と防いだ。

 

「なっ!? そんなっ!?」

「**ッ!」

 

 更に、そこで強烈な“音”を響にけしかける。それにより、響は軽く吹き飛ぶ。

 

「がっ!?」

「響っ!」

 

 吹き飛んだ響を、遠くからレーザーで攻撃しながらも避けられ、防がれていた未来が受け止める。

 

「大丈夫!?」

「う、うんっ! ありがと! でも……!」

 

 響は未来に礼を行った後、顔を正面に戻す。そこには――

 

「はああっ!」

「でやああっ!」

「シャア!!」

「ぐふっ!?」

「きゃあっ!?」

 

 息も合わずに刃を持って飛びかかったところを祭の腕により飛ばされる翼とマリア。さらに、

 

「デヤアアアアアッ!」

「ララララッ!」

「セイッ!」

 

 攻撃をそれぞれ独自に斬撃、銃撃、ヨーヨーと遠距離攻撃をしかける切歌、クリス、調。それもまた――

 

「*****――」

 

 祭の出した“音”のバリアによって防がれる。そこからさらに、

 

「******ッ!」

「「「きゃあっ!?」」」

 

 強烈に指向性された“音”を飛ばして三人に遠距離攻撃を返す。

 その光景はあまりにもおぞましく、強烈だった。

 

「みんなっ……! くっ……!」

 

 倒れる仲間達の後に再び駆ける響。そして、祭目掛けて拳を飛ばす。

 

「セイッ!」

「***!」

「ハッ!」

「**!」

「オラオラオラオラオラオラッ!」

「*************!」

 

 響が次々と畳み込む拳。そのすべてが“音”によって阻まれる。

 まるで、祭が響の手を否定するかのように。

 

「***********――!」

「ぐっ!」

 

 そして、一際大きな“音”を祭が発して、響を再度吹き飛ばす。

 ズザザッ! と地面を滑る響。だが、すぐさま立ち上がり祭へと向かう。

 

「まだまだっ! ハアアアアアアアアアアアッ!」

「****ッ!」

「キャアッ!」

 

 再度の突撃も、また同じように飛ばされる。その後も、装者達は次々と攻撃をそれぞれしかけていった。だが、すべてが、彼女の“音”によって防がれてしまう。

 鉄壁の守りと、絶対の攻撃。その両方を、今の祭は兼ね備えていた。

 

「ああっ!」

 

 もう何度目かもわからないぐらいに吹き飛ばされた響。彼女は「く……」と奥歯をかみながらゆっくりと立ち上がろうとするも、ボロボロになった彼女はついにガクリと膝を折ってしまう。

 

「ぐっ……! くそ……どうして……まだ、祭に手を伸ばせてないのに……!」

「響……!」

 

 駆け寄る未来。そんな未来の手を借りて立ち上がる響。その表情は、悔しさに満ちていた。

 

「祭にこの手が届かない……! あまりに祭が私達を拒絶するから……! どうすれば……どうすれば私の手が彼女に……!」

 

 そう言い歯噛みする響。そんなときだった。

 

「はああああああああああああああああああっ!」

 

 突如、上空から野太い声がしたかと思うと、祭目掛けて大きくケリを浴びせかけたものがいたのだ。

 

「っ!?」

 

 その姿はあまりに早く、祭は“音”を発する隙を与えられず仕方なく腕で防ぐ。が、

 

「――シャッ!?」

 

 防いだはずのそのキックの勢いに、祭は耐えられず今度は彼女が大きく吹き飛ばされた。

 

「……今のは――」

 

 祭がいた場所に上がる土煙。その中で立ち上がる人影。そのシルエットを、その場の誰もが知っていた。

 そう、彼こそは――

 

「――師匠!」

 

 風鳴弦十郎。二課の長、祭の恋い焦がれた相手、勇猛果敢の士が、その場に立っていた。

 

「待たせたな、みんな! 反撃開始だ! 祭君を、元に戻すぞ!」

 

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